漢検協会事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

漢検協会事件(かんけんきょうかいじけん)とは、2009年に京都市内で発生した日本漢字能力検定協会を巡る事件。

私的流用問題[編集]

2009年2月、理事長らが法人の利益を以下のように不適切に、また私的に利用していたとして問題となる。

  • 京都市右京区宝厳院にある大久保家の墓と同じ区画に、亡くなった幹部のための供養塔を350万円をかけて建立。
  • 京都市左京区の6億7000万円の邸宅[1]を漢字資料館のためと称して購入したが、5年以上も用途を宅地から変更していない。
  • 理事長および息子の副理事長がそれぞれ社長を務めるファミリー企業4社と総額66億円の取引をしていたが、文部科学省への報告をしなかった[2]

理事長は、同年2月6日の評議員会では「記者の態度が悪い」とマスコミを批判[1]。さらに、「いろいろな記者会見を見てきたが、どれも最後には必ず謝っている。私は謝りたくないので会見はしない」と話した[1]。また、長男である副理事長が好きなプロ野球チームのユニホームに、協会が「漢検」のロゴマークを入れる計画を披露した[1]

2009年2月9日、文部科学省は、協会に対し立ち入り調査を行った[3]。同協会は、内部に調査委員会を設置したが[4]、検査を受けた後も、記者会見をはじめ肉声での説明は一切なく、協会のホームページには「調査に協力する」などのコメントだけが残っている[1]。また、漢検協会の取引先の「日本統計事務センター」がレーシングチーム(SUPER GTJIM GAINERチーム)へ資金投入していることが判明し、代表の副理事長は協会内の数人にメールで「辞めたい」と漏らしたが、これを聞いた理事長が激怒して止めたこともあったとされている[1]

また、これらファミリー企業や理事長、副理事長から、京都府内の自民・民主の国会議員ら4人の後援会や関連団体などに計942万円が献金されていた[5]

同協会はこれ以前にも、1999年から2007年までに、指導監督基準違反があるとして13回の文部科学省の指導を以下のように受けていた。

  • 検定料の値下げ(1999年から2007年にかけて4回) - 2007年に検定料を1級と準1級をそれぞれ1000円と500円引下げ(しかし、1級と準1級受験者は全体の1%にも満たない)[6]
  • 理事長が代表取締役を務める出版会社オークから、協会本部ビルを年1億8000万円で借り受けていることの改善(2005年
  • 公益法人として必要な財務台帳の作成や公認会計士の監査を行うこと(2007年)

ファミリー企業の実態[編集]

内部調査委員会の報告によると、ファミリー企業4社の実態は以下のようなもので、これまでの17年間で総額250億円にも及ぶ業務委託は、協会の利益を不当に流出させているといわれても仕方のないものであった[7][8]

  • 株式会社オーク
    • 理事長が代表者である。協会からは書籍等製作を受託していたほか、協会に対し所有するビルを賃貸している。同社の売り上げ(2007年度は約12億1300万円)のうち、約78%が協会との取引によるものであった。しかも、書籍製作は、協会の職員が実質的に行っていた。
  • 株式会社日本統計事務センター
    • 旧商号は株式会社オーク・フード。副理事長が代表者である。協会からは、システム開発と採点業務を受託。同社の売り上げ(2007年度は約13億8100万円)のうち、約82%が協会との取引によるものであった。
  • 株式会社メディアボックス
    • 旧商号は株式会社大久保商事。理事長が代表者である。協会からは、広報・広告の企画・製作を受託。同社の売り上げ(2007年度は約3億2300万円)は、ほぼ100%が協会との取引によるものであった。しかも、協会から委託された業務のうち、機関誌編集・印刷や広告印刷など業務は第三者に再委託し、他の広報企画・進行管理業務は理事長と副理事長自身が担当していたので、同社に委託させる意味はほとんどなかった。さらに、業務を担当している従業員は2人だけであった。
  • 株式会社文章工学研究所
    • オークが全株式を保有する子会社。理事長が代表者である。協会からは、調査研究支援業務を受託。同社の売り上げ(2007年度は約700万円)のうち、約83%が協会との取引によるものであった。しかも、従業員は1人だけであった。

協会の対応[編集]

批判を受けて、協会は、内部で調査委員会を設置して調査報告書を作成したのち、2009年4月15日に文部科学省へ報告書及び改善報告書を提出した。

これにより、協会では以下の対応をとることとなった。[要出典]

  • 理事長と副理事長親子が、理事の職を辞する。文部科学省の報告書作成までは、2人は理事として残って協会運営に関わり続けるとしていたが、報告書提出の際に、一転して理事職も辞することを表明した。
  • 新理事長に、鬼追明夫弁護士(元日本弁護士連合会会長)が就任する。
  • 理事長ファミリー企業のうち、内部調査で実体がないとされた2社(メディアボックス、文章工学研究所)については、取引を止める。ただし、教材出版をしている「オーク」と、採点業務を委託している社「日本統計事務センター」の2社との取引は、継続する。
  • 漢字検定の検定料を引き下げる。引き下げ額については検討を継続する(報道では100円~500円とも)。
  • 漢字資料館名目で購入した邸宅は、売却する。
  • 大久保家の墓に隣接して建立した供養塔は、建設費を理事長と副理事長が協会に支払う。

新たな問題発覚[編集]

改善報告書提出の際の記者会見で、当時の理事長は、私的流用はない旨を明言したが、1週間も経たずに、下記の私的流用の疑いが報道機関で報道されるようになる[10][11]

  • 協会名義の法人クレジットカードを、当時の理事長が、個人的な飲食費や交遊費の支払に使用していた。協会のファミリー企業であり、自身が代表者を務める株式会社オークに弁済させ、理事長個人への貸付金として処理した。2008年12月現在で、オークの理事長への貸付金は4億8000万円にのぼる。
  • 2007年9月、当時の理事長が理事長の職に在任中でかつ退任の意向がないにもかかわらず、理事会や評議員会の承認を経ることなく、退職金名義で約5300万円を受け取っていた。これは、2008年6月から2009年1月に返還されている。
  • 当時の理事長の自宅警備費を、2002年11月9日から2009年4月15日(退任日)まで協会に負担させた。
  • 更に当時の理事長の娘を親族企業「文章工学研究所」の役員にあてがい、勤務実態が無いのにも関わらず年間約600万の役員報酬を不正に受け取っていた。漢字能力検定協会は平成18年4月~20年12月末の間に、同研究所に調査研究費1500万円を支払っており、これを着服し個人的な収入にし遊興費にしていた。(2009年5月25日)

前理事長側との紛争[編集]

上記の経緯より、協会は前理事長との間で、以下の紛争を抱えている。

  • 協会から前理事長らに対する約27億4千万円の損害賠償請求訴訟(前理事長らは理事会等の事後承認を得ている取引と主張)[12]
  • 協会から前理事長及びオークに対する漢検問題集の著作権確認訴訟(前理事長らは著作権がオークにあると主張)[13]
  • 協会からオークに対する本部ビルの賃料減額請求訴訟(協会は高すぎると主張)[14]
  • オークによる本部ビル賃料不払いを理由とした賃貸借契約解除(協会は損害賠償との相殺を主張して、2009年6月以降不払い)[14]

刑事訴追・裁判[編集]

2009年6月、京都地方検察庁は広告の発注に際してメディアボックスが仲介したように偽装した約2億5980万円の損害、および文章工学研究所への架空の業務委託で2700万円の損害を協会に与えたとして、前理事長と前副理事長の両名を背任罪で起訴した[15][16]

2012年2月29日、京都地方裁判所は前理事長と前副理事長の両名に懲役2年6月の実刑判決を言い渡した[17]。2014年12月9日、最高裁で実刑判決が確定した[18]

異論[編集]

2013年、木村英輝(画家)、林みのる童夢特別顧問)、坂井直樹(コンセプター)ら京都の経済・文化関係者らを中心としたグループは、創業家の前理事長と前副理事長の親子が冤罪により漢検協会を追われたと主張し、漢字検定の正常化を図る活動「So What!」を呼びかけた[19]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b c d e f 漢字検定協会:理事長「謝るのいや」 会見なく1カ月 毎日新聞 2009年3月9日 閲覧(記事はWeb魚拓)
  2. ^ 漢検協会、ファミリー企業に66億円業務委託 3年間で asahi.com 2009年2月9日(同日閲覧)[リンク切れ]
    漢検協会:広告取引、文科省に報告せず 理事長の関連会社分 毎日jp 2009年2月9日(同日閲覧)[リンク切れ]
  3. ^ 漢検協会に立ち入り調査開始 文科省「利益水準大きすぎる」 NIKKEI NET 2009年2月9日(同日閲覧)[リンク切れ]
    受検者急増、清水寺で「今年の漢字」…成長の影で“専制”進む YOMIURI ONLINE 2009年2月9日(同日閲覧)[リンク切れ]
    もうけすぎ公益法人、漢検協会を文科省が立ち入り調査へ MSN産経ニュース 2009年2月9日(同日閲覧)[リンク切れ]
    漢検協会理事長系4社に66億円 業務委託名目で支出 47NEWS 2009年2月9日(同日閲覧)[リンク切れ]
  4. ^ 調査委員会を設置=漢検協会 時事ドットコム 2009年2月9日(同日閲覧)[リンク切れ]
  5. ^ 漢検フアミリー 自・民に献金 しんぶん赤旗 2009年3月2日
  6. ^ 文科省が漢検協に指導、9年で13件…検定料値下げなど 読売新聞 2009年2月8日[リンク切れ]
  7. ^ 漢検協の関連4社、売上高の8割から全額を協会に依存 YOMIURI ONLINE・2009年4月14日[リンク切れ]
  8. ^ 漢検協会に「抜本改善」求める 文科省 MSN産経ニュース・2009年3月10日[リンク切れ]
  9. ^ なお、公表されている調査報告書からは、すでに報道で明らかとなっている理事長(当時)等の個人名が抹消されている。
  10. ^ 漢検協、前理事長がクレジットカードを私的使用 Yomiuri Online・2009年4月19日[リンク切れ]
  11. ^ 漢検協会:前理事長在職時に5300万円退職金 全額返却 毎日.jp・2009年4月21日[リンク切れ]
  12. ^ 前理事長側が争う姿勢 漢検協会の損害賠償訴訟 京都地裁 MSN産経ニュース・2009年11月27日[リンク切れ]
  13. ^ 漢検、問題集などの著作権確認求め提訴 大阪地裁 MSN産経ニュース・2009年12月4日[リンク切れ]
  14. ^ a b 漢検本部ビルの賃貸借契約を解除 前理事長側が賃料不払いを理由に MSN産経ニュース・2009年12月8日[リンク切れ]
  15. ^ “漢検前理事長父子を起訴 京都地検、背任容疑で9日再逮捕”. 共同通信. (2009年6月8日). http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009060801000546.html 2012年3月1日閲覧。 [リンク切れ]
  16. ^ “漢検前正副理事長を追起訴 京都地検2700万円背任罪、捜査終結”. 京都新聞. (2009年6月29日). http://www.47news.jp/CI/200906/CI-20090629-00829.html 2012年3月1日閲覧。 [リンク切れ]
  17. ^ “漢検元理事長らに実刑 背任事件で京都地裁”. 共同通信. (2012年2月29日). http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012022901001294.html 2012年3月1日閲覧。 [リンク切れ]
  18. ^ “元漢検理事長らの実刑確定へ 架空取引で協会に損害与えた背任罪”. 産経新聞. (2014年12月11日). http://www.sankei.com/affairs/news/141211/afr1412110024-n1.html 2012年12月11日閲覧。 
  19. ^ "So What! SUPPORTER". PDF. 2013年7月31日閲覧。

関連項目[編集]