保安基準の緩和

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保安基準の緩和(ほあんきじゅんのかんわ)とは、道路運送車両法によって規定されている保安基準を緩和することを指す。

「車両の登録時に対する緩和」と「車両の運行時に対する緩和」の2種類が存在する。

保安基準の概要[編集]

道路法47条は、「道路を走る車両(中略)の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、政令で定める」としている。道路運送車両法40条は、「自動車は、その構造が、次に掲げる事項について、国土交通省令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない。 」としている。

車両制限令及び道路運送車両の保安基準によって、主に

  • 全長12.0メートル
  • 全幅2.5メートル
  • 全高3.8メートル
  • 軸重10t
  • 輪重5t
  • 隣接軸重
    • 隣り合う車軸の軸距が1.8メートル未満のときは18.0トン
    • 隣り合う車軸の軸距が1.3メートル以上、かつ隣り合う車軸の軸重がいずれも9.5トン以下のときは19トン
    • 隣り合う車軸の軸距が1.8メートル以上のときは20.0トン
  • 接地圧200kg/cm
  • 旋回半径12.0メートル

よりも車両の寸法や数値が大きくなってはならないと規定している。 また、

と規定されている。

これらの基準のいずれか一1、または複数の項目を緩和することを「保安基準の緩和」または「基準緩和」という。

主だったものとして、

などはこれら基準の緩和が必要となる。 道路運送車両の保安基準第55条の3において「第一項の認定を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を地方運輸局長に提出しなければならない。」とされている。これは、一 氏名又は名称及び住所、二 車名及び型式、三 種別及び用途、四 車体の形状、五 車台番号、六 使用の本拠の位置、七 構造又は使用の態様の特殊性、八 認定により適用を除外する規定、九 認定を必要とする理由、などを記述した書類の提出を求めたものである。また、55条の4において「前項の申請書には、同項第八号に掲げる規定を適用しない場合においても保安上及び公害防止上支障がないことを証する書面を添付しなければならない。 」と定められており、走行ルートや走行計画を記した書類の添付を求めることが謳われている。

保安基準緩和の方法[編集]

特殊車両の例。ネオプランメガライナー
JR BUS kanto mega liner D750-00501.jpgJR BUS kanto mega liner D750-00501 ria.jpg
JRバス関東 D750-00501(つくば号時代)

基準緩和申請書等の書類による審査によって車両の登録および車検を受けることができる。

このような審査を受け合格した車両を「保安基準緩和車両」という。保安基準緩和車両は後面の見えやすい位置に「」状の一辺が15cm以上である逆三角形の保安基準緩和標章を表示するほか、緩和されている事項を車体後面および運転席に表示しなければならない[21]。ただし、車両寸法等の保安基準以外の事項の緩和等、緩和内容によりこれらを表示しなくてよい車両も存在する。

一般に「緩和標章」と呼ばれる「」状の表示[22]は、運行上の制限があることを意味する表示である。よって、保安基準の緩和を受けた車両であっても、運行上の制限が附加されていない車両については、その表示をしなくてよい。車両寸法重量等の緩和であれば制限が附加されるのが通常であるが、それ以外の比較的軽微な緩和内容のみであれば、運行上の制限が附加されないことが稀にある。反対に、保安基準の緩和を受けていなくとも、何らかの運行上の制限のある車両はその表示をしなくてはならない。ぬかるみ等の危険な道路で主として運行する自動車[23]や、整備不良車や不正改造車[24]として整備のための運行のみ認められた自動車などがある。ただし、そのような車両は稀であり、一般に「」状の表示は緩和標章と呼ばれ、保安基準の緩和を受けた車両に貼付するものとされている。

通行条件[編集]

通行許可の取得の際に道路管理者へ申請書を提出し、道路管理者による審査によって通行に必要な条件を提示の上、許可が発行される。この条件を通行条件という。

通行条件は主に、A.B.C.Dの四段階に分けられていて、更に寸法と重量によっても条件が変わる。

具体的には、

  • A条件…徐行等の特別の条件を付さない。
  • B条件…重量についての条件としては徐行および連行禁止を条件とする。寸法についての条件としては徐行を条件とする。
  • C条件…重量についての条件としては徐行、連行禁止および当該車両の前後に誘導車を配置することを条件とする。寸法についての条件としては徐行および当該車両の前後に誘導車を配置することを条件とする。
  • D条件…徐行、連行禁止および当該車両の前後に誘導車を配置し、かつ2車線内に他車が通行しない状態で当該車両が通行することを条件とする。 道路管理者が別途指示する場合はその条件も付加する。この条件は重量についての条件にのみ適用される。

許可期間は、

  • 旅客自動車運送事業の用に供する車両で路線を定めている車両においては1年
  • 自動車運送事業用車両で路線を定めていない車両、第二種利用運送事業用車両、自動車運送事業用車両及び第二種利用運送事業用車両以外の車両で通行経路が一定し、これらの経路を反復継続して通行する車両においては1年以内
  • その他の車両においては半年以内の必要な日数

が許可される。

脚注[編集]

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  1. ^ 主に総重量、軸重、隣接軸重、輪荷重、全幅、全長、全高、接地圧、最小回転半径などに該当。
  2. ^ 主に総重量、軸重、隣接軸重、輪荷重、全幅、全長、接地圧、オーバーハングなどに該当。
  3. ^ 主に接地圧、全幅で該当。ブルドーザーにおいては最大安定傾斜角度の緩和を受けている場合があり、また走行装置がカタピラ等道路を損傷する恐れがあるため、「運行速度(あるいは回送速度、制限速度等)は5km/h未満とする」といった但し書きが後部に記載されている場合がある。なお、ブルドーザーや原動機付自転車のうちのモペッドなどの構造上平地での最高速度が20キロ毎時以下となる車両においては、尾灯方向指示器の装備義務が無い為に車両背面は非常にシンプルな様態となる。
  4. ^ 主に総重量、軸重、隣接軸重、全幅、全長、全高などに該当。
  5. ^ 前者「主に離島や地場に使用の本拠を置く」については○○島内専用車、後者「高速道路等を走行しない」については「高速道路不走行車」として車検証および車両の見やすい位置にステッカー等による記載がなされる。なお、速度抑制装置を搭載したり、オーバードライブギアとなるギア段を無効化したり、ファイナルギアのギア比を変更することで、最高速度100km/h以下となるような改造が定められている。
  6. ^ 主に座席、座席シートベルト等に該当。また車両によってはABS、乗車定員等に該当する場合もある。当該車両は車両の前後面および運転席に高速道路を60キロ毎時以下で運行する旨を記載し、60キロメートル毎時を超える速度で作動する速度警報装置を備え、その警報が運転者及び旅客が確認できることと定められている。
  7. ^ 東京空港交通の運行するエアポートエクスプレスについては、路線バスとしながらも起点終点間での乗降が少なく、降車設備等の設置を行わない為に緩和措置が取られている。
  8. ^ 連接バスは全長、全幅も該当することもある。シターロについては軸重も10tを超える。
  9. ^ 主に全幅、全長、軸重、オーバーハングに該当。なお除雪一括緩和による緩和申請が可能。
  10. ^ 点滅灯火の緩和。点滅灯火は制限区域内でのみ使用可能であり、制限区域内での車両の運用が終了した場合、即座に緩和申請の取り消しが必要。
  11. ^ 点滅灯火の緩和。装備できる個数は車体の上部の見やすい位置に2個(発光部の数)以下。
  12. ^ 点滅灯火の緩和。装備できる個数は車両の上部の見やすい位置に1個(複数の照明部を有し、構造上一体となっているものを含む)。ただし、二輪自動車および側車付二輪自動車は誘導車として使用できない。
  13. ^ ABSまたは被害軽減ブレーキの緩和。ABSにおいては運転者席において当該装置の作動状態を確認できる作動灯などの装置を備え、かつ、当該装置を道路以外の場所でのみ使用する旨の表示が必要。ABS、衝突軽減ブレーキの緩和事項を車両前後面および運転席に表示することと定められている。
  14. ^ 保安基準の緩和による基準緩和により、既存の軽自動車と同等の衝突安全基準を満たしているとみなしナンバープレートの交付を受けている。なお、超小型モビリティは車両の前後に様の保安基準緩和標章を掲示しなければならない。
  15. ^ 主に全長、全幅、総重量、軸重、隣接軸重、輪荷重、接地圧に該当。
  16. ^ 保安基準の緩和により既存の小型特殊自動車および原動機付自転車と同等の走行性能、および保安基準を満たしているとみなしてつくば市発行のロボットナンバープレートの交付を受けている。
  17. ^ 外装突起物規制に対する緩和。
  18. ^ 運用は片道に限る。
  19. ^ 例えばメルセデス・ベンツ・ゼトロス東日本大震災の際に緊急輸入され供されたが、この車両は全幅が保安基準より0.05メートル広い2.55メートルであるため、全幅の緩和を受けている。また、適合する排気ガス規制が欧州規制であるユーロ5であり、国内のポスト新長期規制に適合していない。
  20. ^ 冬季閉鎖中の公道を走行するためのカタピラを有する二輪様態の大型特殊自動車などの特殊車両や、改造により車両届出時の主要諸元から著しく変化の激しい車両など
  21. ^ 緩和事項が速度抑制装置、ABS、座席、座席シートベルト、乗車定員等の車両は車両前後面および運転席。
  22. ^ 道路運送車両法施行規則第54条 第19号様式による標識
  23. ^ 道路運送車両法第43条
  24. ^ 道路運送車両法第54条

外部リンク[編集]