パワーテイクオフ

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農業用トラクタのPTO軸

パワー・テイク・オフ(英: Power take-off ) あるいは単に PTO (ピーティーオー)とも呼ばれる装置は、クレーンつきトラック、耕耘機農耕トラクターダンプカーなど、作業用の装置を備えた車両において、エンジン動力を作業機械用の動力として取り出すための機構である。

装備例[編集]

トラック[編集]

PTOが装備される車両は主に、クレーンつきトラック、ダンプカーなど、油圧装置による作業機械を備えた車両である。ダッシュボードに「PTO」の表示のあるボタンがあり、それを押して油圧ポンプを駆動させる。

使用にあたっては、車両を停止させ、トランスミッションのギアをニュートラル、またはパーキングに入れてから、PTOボタンを押すことで油圧モーターが始動し、機器に油圧が供給される構造になっている。クラッチつきの車輛では、始動にクラッチペダルを踏む必要があるもの、またパーキングブレーキを引く必要がある車輛もある。

PTOを作動させたままの走行は油圧モーターが過負荷で焼け切れる可能性があるため、厳重に禁止され、車両によっては警告音が鳴る。ダンプカーなどは、荷降ろし現場の状況によってはPTO装置を作動させたまま多少の走行も可能である場合もある。ミキサー車の場合、生コンクリートは撹拌を止められないので、走行中も常時作動できる特殊なPTOが用いられる。


特殊車両[編集]

二輪消防車
PTOを持った変わった乗り物としては排気量250ccのスクーターを用いた消防用のポンプスクーターが試作され、2004年に採用された。現場に自走していき、到着後PTOによってポンプを駆動する。
パラレル・ハイブリッド
いすゞ・エルフのハイブリッド車ではエンジンアシストとエネルギー吸収を行う電動機/発電機をPTOでリンクしている。
マスト車(飛行船係留車)

耕運機・農耕用トラクター[編集]

トランスミッションまたはトランスファーに出力軸を設け、エンジンの動力によってロータリーを回転させたり、直接装置を駆動したりする。ところが耕運機 をティラーとして用いる場合はロータリーは必要ではない。そのため、ロータリーへの動力伝達はPTO軸と呼ばれる軸を通して行われ、脱着可能になっている。また、PTO軸に接続された作業機の動作を停止するためのクラッチがある。

歴史[編集]

実験的なパワーテイクオフ装置は1878年にはすでに試みられていたが、インターナショナル・ハーベスターカンパニー(以下、IHC)は1918年に最初のPTOを装備したトラクタを製作した。1920年、IHCは自社の15から30馬力のトラクタにPTOの装備をオプション設定し、ネブラスカトラクター試験所(Nebraska Tractor Test Laboratory)に送られた最初のPTOを装備したトラクタとなった。

最初のPTO標準規格は1927年4月に米国農業工業会([:en:American Society of Agricultural and Biological Engineers ASAE])により採用された。PTOの回転数は536±10rpmとして指定され、回転方向は(トラクタ後方から見て)時計回りと定められ、後に回転数は540rpmに改められた。

1945年、カナダオンタリオ州ブラントフォードのCockshutt Farm Equipment社は、ライブPTOを装備したCockshutt Model 30を発表した。ライブPTOはトラクタの走行とは独立してPTOの回転を制御することが出来た。これは、作業機をPTOによって駆動しながらでも、低速で走行したり停車したり出来る利点があった。近代的なトラクターでは、ライブPTOは押しボタンスイッチや切り替えスイッチで制御され、作業者をPTOシャフトから遠ざけることによって安全性を高めている。

技術的標準化[編集]

PTO軸は左右のタイヤに挟まれた中央下部に配置される

農業用トラクタのPTOは寸法と回転数が標準化されている。PTOのISO規格はISO 500で定められており、2004年の改訂でISO 500-1(一般仕様、安全要求事項、防護カバーの寸法等)、ISO 500-2(小型トラクタでの防護カバーの寸法等)、ISO 500-3(主なPTO寸法とスプラインの寸法、PTO軸の位置関係等)の3つに分割された。

基本的なPTO軸は毎分540回転(rpm)で使用される。540回転で使用されるPTO軸は6本のスプラインを持ち軸の直径は1⅜インチである。また、より高負荷の機器を駆動するために1000回転で使用する2つの種類のPTO軸がある。20本のスプラインを持つ直径1¾インチの太いPTO軸と、21本のスプラインを持つ1⅜インチのPTO軸である。これら3種類のPTO軸はいずれもトラクタ側から見て反時計方向に回転する。

1948年のランドローバー等の初期の作業機は10本のスプラインを採用したものもあったが、一般的な6本のスプラインに変換するアダプターが提供された。

農業機械メーカーは通例として、トラクタの馬力を表す指標はPTO軸から取り出せる出力を表示している。

危険性[編集]

黄色い樹脂製の防護カバーに覆われたPTOシャフト

PTO軸とそれに接続されるPTOシャフト(ユニバーサルジョイント)は、農業はじめとする産業界に共通する危険要因である。米国安全性評議会([:en:National Safety council NSC])によると、1997年に米国でのトラクターによる死者のうち、6%がPTOにかかわる原因であった。衣服のほんの小さな一片でも回転部に接触すると簡単に巻き込まれてしまう。衣服が巻き込まれることによって、手や足の切断、或いは死亡事故に至る。

2009年4月13日、元メジャーリーガーのマーク・フィドリッチは、自宅の農場で作業中、PTOによる事故で死亡した。友人が彼を発見したとき、彼は大型ダンプトラックの下で作業をしており、「彼は稼働中のトラックのPTOシャフトに衣服が巻き込まれた。」と弁護士が声明を出している。

いくつかの作業機は、作業者がPTOシャフトに巻き込まれるのを防止するため、樹脂製の防護カバーを備えているが、PTOシャフトをトラクタやトラックに装着する時に注意する点がある。いくつかの国では、シャフトの防護カバーが無い状態で使用するのが違法だからである。防護カバーはベアリング、あるいはスリーブを介してPTOシャフト全体を覆っており、チェーンによって固定され作業者がPTOシャフトに巻き込まれる事故を防止している。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]