ワスレグサ
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ワスレグサ | ||||||||||||||||||||||||
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![]() ヤブカンゾウの花
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Hemerocallis fulva (L.) L. | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ワスレグサ(忘れ草) ワスルルクサ(忘るる草) カンゾウ(萱草) | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Orange Daylily Tawny Daylily Tiger Daylily Ditch Daylily |
ワスレグサ(忘れ草、学名:Hemerocallis fulva)は、キスゲ亜科の多年草の一種。
広義にはワスレグサ属(別名キスゲ属、ヘメロカリス属)(Hemerocallis)のことを指し、その場合は、ニッコウキスゲ(H. dumortieri var. esculenta)などゼンテイカもユウスゲ(H. Baroni var. vespertina)もワスレグサに含まれる。また長崎の男女群島に自生するトウカンゾウ(H. aurantiaca)などもワスレグサと呼ばれる。
ワスレグサ(忘れ草)は、花が一日限りで終わると考えられたため、英語ではDaylily、独語でもTaglilieと呼ばれる。実際には翌日または翌々日に閉花するものも多い。中国では萱草と呼ばれ、「金針」、「忘憂草」などとも呼ばれる。
分類[編集]
以下、参考までにゼンテイカ群(日光キスゲ、武蔵野キスゲ、蝦夷カンゾウ、姫カンゾウ、飛島カンゾウ)、トウカンゾウ以外でカンゾウと呼ばれているもの。
ヤブカンゾウ[編集]
- 和名 : ヤブカンゾウ(藪萱草)
- 学名 : Hemerocallis fulva var. kwanso
- 原産 : 中国
- 自生地 : 日本では本州以南の野原や薮などに群生する。
- 生態 : 3倍体のため結実せず、匍匐茎(ほふくけい、ランナー)を出して拡がる。
- 草丈 : 約80cm
- 葉 : 狭長
- 花 : 7月から8月に、茎頂にユリに似た八重咲きで橙赤色の花を開く。
- 根 : 黄色、末端は塊状である
- 別名 : ワスレグサ、カンゾウナ
ノカンゾウ[編集]
- 和名 : ノカンゾウ(野萱草)
- 学名 : Hemerocallis fulva var. longituba
- 分布 : 中国、朝鮮半島、日本、サハリン
- 自生地 : 日本では本州以南の原野などに群生する。
- 生態 : 多年草だが、冬季には地上部の葉が枯れる。
- 草丈 : 約80cm
- 葉 : 狭長
- 花 : 7月から8月に、茎頂にユリに似た橙赤色の花を開く。園芸品種としては白・黄・赤・橙・紫・赤紫・桃・黒褐色など多様な色がある[1]。花弁は6枚。開花直前の花を干して利尿・消炎薬とするほか、乾燥したものを水でもどして食用とする[1]。乾燥させた花が「ユリの花」として売られていた時代がある[1]。
- 根 : 黄色、末端は塊状である
- 別名 : ベニカンゾウ
ハマカンゾウ[編集]
- 和名 : ハマカンゾウ(浜萱草)
- 学名 : Hemerocallis fulva var. littorea
- 原産 :
- 自生地 : 日本では、暖地の海岸などに群生する。
- 生態 : ノカンゾウに似るが、自生地がほぼ海岸に限られることと、冬季にも地上部の葉が残ることで判別できる。
- 草丈 :
- 葉 : 狭長
- 花 : 他より遅咲きで、夏から初秋にかけ、ノカンゾウに似た花を開く。橙赤色で花弁は 6枚。
- 根 :
その他[編集]
- ニシノハマカンゾウ Hemerocallis fulva var. auranntiaca
- 花はノカンゾウに似る。日本では九州以南の海岸などに自生する。
- アキノワスレグサ(別名トキワカンゾウ) Hemerocallis fulva var. sempervirens
- 花はノカンゾウに似る。常緑性。日本では九州南部および南西諸島に自生する。沖縄県での方言名はクワンソウ、クヮンソウ、カンソウ、グワンソウ、ガンショウ、クワンシヤー、ガンソウ、ハンソウ、フファンサ、ファンツァ、フファンツア、ニーブイグサ、ニーブイカンソウ、パンソー、カンゾーバナ、ウプンサ、ビラティなど。これらの大半は「萱草」が訛ったものである。注目すべきはニーブイグサ、ニーブイカンゾウと呼ぶ地域があることで、これは沖縄の方言で眠いの意である「ニーブイ」からきたもので、直訳すると眠り草と解釈できる。
- 沖縄においては伝統的農産物として栽培されており、野菜として用いられる他、成分であるオキシピナタニンによる睡眠改善効果をうたったサプリメントが作られている[2][3][4][5]。白くて歯触りの良い茎を茹でて、和え物や煮込み料理に使う[6]。
- ホンカンゾウ Hemerocallis fulva var. fulva
- 日本では自生していない。
- Hemerocallis fulva var. europaea
人間とのかかわり[編集]
食用[編集]
若葉は、おひたしにして、酢味噌で食べる。花の蕾は食用され、乾燥させて保存食(乾物)とする。中華料理では、主に「金針花」(チンチェンファ jīnzhēnhua)、「黄花菜」(ホワンホアツァイ huánghuācài)と称する花のつぼみの乾燥品を用い、水で戻して、スープの具にすることが多い。
沖縄県では不眠や精神安定に効果があるとして、クヮンソウ茶や、クヮンソウを用いたサプリメントも販売されている。
根は生薬としても使われる。
外見、特に花の様子が非常によく似た植物にキツネノカミソリがある。キツネノカミソリは外用薬として使われることがあるが、リコリンなどの毒成分を含むため口に入れると中毒を起こすので注意したい。キツネノカミソリは他の雑草などが生い茂る時期になると葉を落とす習性があり、花期はちょうどそのような時期にあたるのでそれで区別ができる。蕾などを摘む際は花茎の根元を見て葉があるかを確認すると良い。ヤブカンゾウは主に日当たりの良い河原に生育し、採取時期には名前の通り、藪のように他の草が繁茂するような場所で花を咲かせる。一方、キツネノカミソリは、やや日陰を好み、蕾の下部に丸い膨らみがある場合が多い。いずれにせよ、花が咲けば判別は容易であるから、開花した株の蕾を採取するのが確実である。
和歌[編集]
和歌では、夏の季語、および悲しいこと(忘れたいこと)があった心境を表す言葉として詠まれる。
忘れ草 垣も繁みに植えたれど 醜(しこ)の醜草(しこくさ) なお恋にけり — 『万葉集』巻十二3062
わが屋戸の軒のしだ草生ひたれど恋忘草見れどいまだ生ひなく — 『万葉集』巻十一2475
脚注[編集]
- ^ a b c 森谷 1980, p. 573.
- ^ 家庭菜園にクワンソウを 沖縄の植物漫歩(2) - 琉球新報Style - 沖縄の毎日をちょっと楽しく新しくするウェブマガジン。
- ^ 沖縄の伝統野菜・クワンソウから生まれた快眠成分 [睡眠 All About]
- ^ クワンソウ-オキシピナタリンで快眠生活!! | クレイ沖縄
- ^ 島の恵み、島の味 その36 クワンソウ|沖縄CLIP
- ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、60頁。ISBN 978-4-415-30997-2。