リビングの松永さん
リビングの松永さん | |
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ジャンル | 少女漫画、恋愛漫画[1] |
漫画 | |
作者 | 岩下慶子 |
出版社 | 講談社 |
掲載誌 | デザート |
レーベル | KCデザート |
発表号 | 2017年2月号 - 2021年8月号 |
発表期間 | 2016年12月24日[2] - 2021年6月24日 |
巻数 | 全11巻 |
話数 | 全44話 |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | 漫画 |
ポータル | 漫画 |
『リビングの松永さん』(リビングのまつながさん)は、岩下慶子による日本の漫画作品。『デザート』(講談社)にて、2017年2月号から[2]2021年8月号まで連載された[3]。作者による略称は「リビ松さん」[4]。連載前の仮タイトルは『リビングの野本さん』であったが[5]、変更された。話数のカウントは「room」[6][7]。
2017年11月6日に発売された『月刊MdN』(エムディエヌコーポレーション)12月号で組まれた特集「マンガタイトルのデザイン、新たな進化」では、本作のロゴが解説された[8]。
2018年6月には単行本第4巻の発売を記念して、本作のPVが制作された[1]。2018年11月には単行本第5巻の発売を記念した特典として、鈴木達央が松永に扮して作中のセリフを読み上げる「お世話焼きボイス」が公開された[9]。
単行本第9巻の帯には、本作に対し「親近感を持っていた」というCreepy NutsのDJ松永がコメントを寄せている[10]。
あらすじ[編集]
シェアハウスで暮らすことになった女子高生のミーコは、同じシェアハウスで暮らす年上のデザイナー・松永のことが気になり始める[1]。住人たちと交流しながら距離を縮めていくミーコ。松永の元カノのような存在の小夏や、ミーコと同じ職場でアルバイトをしたことがきっかけで親しくなった凌との関係など、いろいろ乗り越えてミーコは松永と両想いになる。しかし交際は高校を卒業した後と決め、ミーコは不安になる。松永がシェアハウスを卒業することになり、新しい住人を迎える。
登場キャラクター[編集]
園田 美己 () / ミーコ- 高校2年生[2]。唯一作れる料理はカレー[11]。
松永 純 ()- 在宅勤務をするデザイナー[2][11]。ぶっきらぼうであり、せっかちだが世話好きな性格[2][11]。
北条 凌 ()- シェアハウスで暮らす無口な大学生[11][12]。
大貫 朝子 ()- シェアハウスで暮らすネイリスト[11][12]。
鈴木 健太郎 ()- シェアハウスで暮らすバーテン[11][12]。
服部 あかね ()- シェアハウスで暮らしていたが[12]、結婚したためにシェアハウスを去った[13][14]。
小林 夏未 ()- ミーコのクラスの担任が産休となったため、代わりの担任となった教師[15]。美術担当[15]。過去にシェアハウスで暮らしていた時には、住人から「小夏」と呼ばれていた[16]。
- まつり
- ミーコの後にシェアハウスに入居した住人[17]。
- サバコ
- シェアハウスで暮らす猫[18][19]。凌に恋をしている[19]。
評価[編集]
他者からの評価[編集]
本作について、ファーストサマーウイカは「面白くていっき読み」したという[20]。松永の見た目や「グイグイさ」についても褒めている[20]。ファーストサマーウイカによると、本作の魅力は登場人物のもつ「ピュアさ」であるといい、全員に垣間見える「もろさ」や「不完全さ」について共感するという[20]。特に共感するキャラクターは服部だという[20]。
商業的評価[編集]
単行本第4巻が発売された時点で既刊が重版された[21]。2021年8月時点で電子版を含めた累計発行部数は200万部を突破している[22]。
制作背景[編集]
テーマについて[編集]
作者の岩下はまず「どういう男の子を描きたいか」と考えた時に、「大人男子を描きたい」と思ったという[21]。しかし主人公を女子高生とした時に相手を大人の男性にすると、「先生や兄の友人など、想定できる設定が限られてくる」と難問にぶつかった[21]。そこで担当編集者からシェアハウスを舞台にした作品はどうか、と提案された[21]。担当編集者はもともと『デザート』にシェアハウスをテーマにした作品があったらいいと考えていたが、作品を作るなら「大人」をしっかり描くことができる作家にお願いしたいと思い、岩下が浮かんだのだという[21]。
岩下はきょうだいの末っ子で、子供のころに姉の友人など、年上に構ってもらったことが嬉しかったという記憶があり、「シェアハウスならそういうおいしい状況をたっぷり描けるのではないか」と考えた[21]。しかし「女子高生をどうシェアハウスに住ませるのか」、「どういう状況ならば不自然ではないのか」という問題に悩み、「親族(叔父)が運営しているシェアハウスならば安心」と落としどころを見つけた[21]。
ミーコについて[編集]
主人公のミーコについて岩下は「ザ・女子高生!というシルエットにしたい」と決めていたため、髪型が前髪ありのロングとシンプルなデザインになった[21]。今まで岩下は大人びた主人公を多く描いてきたが、ミーコに関しては岩下自身の高校生時代を振り返り、「高校生らしさにチューニングを合わせていった」という[21]。
松永について[編集]
岩下によると、松下の構想は紆余曲折あったという[21]。「一日中家にいてシェアハウスの主になるような仕事」を考え、映像作家という設定が最初に思い浮かんだ岩下[21][23]。しかし岩下は映像作家に詳しくないため悩んでいた時に、担当編集者からデザイナーを提案されたという。松永は「俺の力で相手を幸せにしてやる!」というタイプの人間であるため、「作品で見る人を喜ばせるデザイナーという仕事」が当てはまると考え、職業が決定した[21]。
デザインについて、はじめに7、8パターンほどイメージビジュアルを描いたが、担当編集者と「前髪なしはどうか」と話し合った結果、現在のフォルムにたどり着いたのだという[21]。松永のトレードマークである「ツーブロックに眼鏡」について、岩下が今まで出会ったデザイナーがその風貌であったこともあり、そのデザインに決まった[21]。岩下は松永を「少女漫画で人気のタイプではない」と考えていたため[24]、『デザート』2018年8月号にて「ツーブロ眼鏡の男が少女漫画の表紙を飾らせていただけるなんて」と語り、読者に感謝の言葉を述べている[25]。松永は少女漫画界にお手本があまりいないため、「少年漫画の方が参考になるキャラクター」であると岩下はいう[20]。
『リビングの○○さん』とタイトルに名前を入れることはあらかじめ決定していた[21]。「イケメンっぽくてメジャーな名前がいい」と岩下は考えていたが、悩んだため、最終的に姓名判断で決めたのだという[21]。「松田」や「五十嵐」や「野本」など[21][23]、複数の候補を姓名判断のサイトでチェックし、その中から「もっとも彼らしいもの」を選び、「松永純」に決まった[21]。岩下によると、姓名判断で松永の名前を入れると、彼らしい性格の診断結果になるという[21]。
凌について[編集]
凌の名前も松永と同じ方法で決められている[21]。岩下によるとミーコと「結ばれてほしい」という気持ちはあったが、「凌と結ばれる可能性はなかった」という[24]。一番悩んだキャラクターに凌を挙げており、動かし方について毎回悩んだという[24]。しかし三角関係については、1巻の段階から展開が決まっていた[20]。
ほかのキャラクターについて[編集]
岩下によると、服部がシェアハウスを去ることはもともと考えられていたが、退去の際には「好きなキャラだったのでさみしい」と語った[26]。
サバコの恋のエピソードについて、岩下は楽しんで描いたという[27]。
取材について[編集]
本作を描くにあたり、岩下は実際にシェアハウスを取材している[21]。取材を行う前は「一緒に暮らすといっても他人同士」であり、「どこかよそよそしかったりする」のではないかと岩下は考えていた[21]。しかし取材を行ったことにより、シェアハウスが「すごく楽しそうで、まさに家族という雰囲気」だと感じた岩下は「イメージがいっきに膨らんだ」という[21]。
作中の松永の誕生日のシーンに登場するケーキの保存方法や、鍵が壊れてミーコと松永がトイレに閉じ込められるシーンは、岩下が取材で耳にしたことが参考にされている[21]。取材で得た細かなエピソードから、本作らしいエピソードが生み出されている[21]。
作品への想い[編集]
岩下が本作を描くにあたり一番大事にしていることは、読者に「シェアハウスっていいな」と思ってもらうことである[21]。作品を読み、読者がそう感じたら「すごくうれしい」という[21]。
岩下によると松永は「初期の段階からお母さん的な要素を持たせよう」と決めていたといい、兄のようで母のようで「最高の愛情を注いでくれる男の子がいたら最高じゃないか」と考え、できあがったキャラクターである[21]。「自分が恋できるキャラクターじゃないと描けないタイプ」である岩下は、松永の不器用なところを愛おしく思いながら描いているという[21]。
書誌情報[編集]
- 岩下慶子 『リビングの松永さん』 講談社〈KCデザート〉、全11巻
- 2017年5月12日発売[18][7]、ISBN 978-4-06-365909-2
- 2017年10月13日発売[28]、ISBN 978-4-06-365932-0
- 2018年2月13日発売[29]、ISBN 978-4-06-510913-7
- 2018年6月13日発売[1][30]、ISBN 978-4-06-511669-2
- 2018年11月13日発売[9][31]、ISBN 978-4-06-513576-1
- 2019年5月13日発売[32]、ISBN 978-4-06-515515-8
- 2019年11月13日発売[33]、ISBN 978-4-06-517611-5
- 2020年4月13日発売[34]、ISBN 978-4-06-519416-4
- 2020年10月13日発売[35]、ISBN 978-4-06-520973-8
- 2021年3月12日発売[36]、ISBN 978-4-06-522632-2
- 2021年8月12日発売[37]、ISBN 978-4-06-524688-7
出典[編集]
- ^ a b c d “岩下慶子「リビングの松永さん」4巻&初期短編集が同時発売、PV&インタビューも”. コミックナタリー (ナターシャ). (2018年6月13日) 2021年7月10日閲覧。
- ^ a b c d e “デザートで桐島りらが再びバンドマン×JK描く新連載、岩下慶子の新作も登場”. コミックナタリー (ナターシャ). (2016年12月24日) 2021年7月10日閲覧。
- ^ 「リビングの松永さん final room」『デザート』2021年8月号、講談社、2021年6月24日、 527頁、 ASIN B096TL8P54。扉ページより
- ^ 「最近のわたし」『デザート2017年3月号』、講談社、2017年1月24日、 565頁、 ASIN B01N4B0AX8。
- ^ 「デザート2月号予告」『デザート2017年1月号』、講談社、2016年11月24日、 ASIN B01LY2ZJER。
- ^ 第1巻 2017, Contents
- ^ a b “リビングの松永さん(1)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2021年7月10日閲覧。
- ^ “「アオハライド」も「君に届け」もこの人の仕事、MdNでデザイナー川谷康久特集”. コミックナタリー (ナターシャ). (2017年11月6日) 2021年7月10日閲覧。
- ^ a b “岩下慶子「リビングの松永さん」5巻発売記念、鈴木達央の“お世話焼きボイス”公開”. コミックナタリー (ナターシャ). (2018年11月13日) 2021年7月10日閲覧。
- ^ “Creery NutsのDJ松永さんも胸きゅん!累計120万部(電子含む)突破の『リビングの松永さん』最新9巻が10月13日(火)発売!”. PR TIMES (PR TIMES). (2020年10月13日) 2021年7月10日閲覧。
- ^ a b c d e f 「Character」『デザート2017年4月号』、講談社、2017年2月24日、 544頁、 ASIN B01N30V37W。ほか、雑誌掲載時の登場人物紹介より
- ^ a b c d 第2巻 2017, Character
- ^ 第6巻 2019, room22
- ^ 「Character」『デザート2019年5月号』、講談社、2017年3月23日、 397頁、 ASIN B07PHVLK8C。ほか、room24以降の雑誌掲載時の登場人物紹介より
- ^ a b 第4巻 2018, room15
- ^ 第5巻 2018, room19
- ^ 第10巻 2021, room37
- ^ a b “変わり者ばかりのシェアハウスで暮らす女子高生の年の差ラブ1巻”. コミックナタリー (ナターシャ). (2017年5月12日) 2021年7月10日閲覧。
- ^ a b 第2巻 2017, 番外編「リビングのサバコさん」
- ^ a b c d e f 「最近のわたし」『デザート2021年5月号』、講談社、2021年3月24日、 292頁、 ASIN B08YHX1LM7。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac “眼鏡ツーブロックな松永さんに夢中な人続出中!『リビングの松永さん』4巻発売記念 岩下慶子さん、スペシャルインタビュー!!”. デザート公式. 講談社. 2021年7月10日閲覧。
- ^ 原作コミックス第11巻帯の表記より。
- ^ a b 第1巻 2017, あとがき
- ^ a b c 「『リビングの松永さん』完結記念 岩下慶子×担当のいまだから話せる! ここだけの5つの裏話」『デザート2021年8月号』、講談社、2021年6月24日、 528頁、 ASIN B096TL8P54。
- ^ 「最近のわたし」『デザート2018年8月号』、講談社、2021年6月24日、 55頁、 ASIN B07DKSPGLD。
- ^ 「最近のわたし」『デザート2019年4月号』、講談社、2019年2月23日、 252頁、 ASIN B07NBD1Q4N。
- ^ 「最近のわたし」『デザート2019年6月号』、講談社、2019年4月24日、 564頁、 ASIN B07Q6HNSY8。
- ^ “リビングの松永さん(2)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2021年7月10日閲覧。
- ^ “リビングの松永さん(3)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2021年7月10日閲覧。
- ^ “リビングの松永さん(4)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2021年7月10日閲覧。
- ^ “リビングの松永さん(5)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2021年7月10日閲覧。
- ^ “リビングの松永さん(6)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2021年7月10日閲覧。
- ^ “リビングの松永さん(7)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2021年7月10日閲覧。
- ^ “リビングの松永さん(8)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2021年7月10日閲覧。
- ^ “リビングの松永さん(9)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2021年7月10日閲覧。
- ^ “リビングの松永さん(10)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2021年7月10日閲覧。
- ^ “リビングの松永さん(11)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2021年8月12日閲覧。