ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償

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ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償
Judas and the Black Messiah
監督 シャカ・キング
脚本 シャカ・キング
ウィル・バーソン
原案 シャカ・キング
ウィル・バーソン
ルーカス兄弟
製作 シャカ・キング
ライアン・クーグラー
チャールズ・D・キング
製作総指揮 ジェイソン・クロース
ジンジ・クーグラー
アーロン・L・ギルバート
テッド・ギドロウ
ポッピー・ハンクス
ニーヤ・クイケンドール
キム・ロス
アニカ・マクラレン
ラヴィ・D・メータ
セヴ・オハニアン
ジェフ・スコール
出演者 ダニエル・カルーヤ
ラキース・スタンフィールド
ジェシー・プレモンス
ドミニク・フィッシュバック
音楽 マーク・アイシャム
クレイグ・ハリス
主題歌 H.E.R.Fight for You
撮影 ショーン・ボビット
編集 クリスタン・スプレイグ
製作会社 パーティシパント
ブロン・クリエイティブ
プロキシミティ
MACRO
配給 アメリカ合衆国の旗 ワーナー・ブラザース映画
公開 アメリカ合衆国の旗 2021年2月12日
日本の旗 劇場未公開
上映時間 126分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 26,000,000ドル[1]
興行収入 アメリカ合衆国の旗カナダの旗 5,453,633[2]
世界の旗 $7,030,560[2]
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ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』(原題:Judas and the Black Messiah)はアメリカ合衆国伝記映画。監督はシャカ・キング、主演はダニエル・カルーヤラキース・スタンフィールドが務めた。

本作は第93回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、このうち助演男優賞(ダニエル・カルーヤ)と歌曲賞(H.E.R.「Fight for You」)を受賞した。本作は日本では劇場公開されなかったが、2021年9月3日にレンタルリリースとなる予定[3]

ストーリー[編集]

1966年シカゴ。17歳のウィリアム・オニールは警官になりすまして自動車を乗っ取ろうとした容疑で逮捕された。そんなウィリアムに対し、FBIのロイ・ミッチェル特別捜査官が取引を持ちかけてきた。「もし君がブラックパンサー党のイリノイ州支部に潜入し、FBIの捜査に協力してくれるなら、今回の一件はなかったことにしようじゃないか」と。刑務所に入りたくなかったオニールは二つ返事で取引に応じた。

その頃、ブラックパンサー党イリノイ州支部長、フレッド・ハンプトンはその話術を駆使して敵対関係にあったギャングと和解するだけではなく、運動に黒人以外のマイノリティを取り込んだり、貧困層の子供に無料の朝食を提供するサービスを始めたりしていた。FBIは急速に支持を拡大していくハンプトンのカリスマ性を恐れ、オニールを内通者として送り込むことにしたのである。入党したオニールは徐々にハンプトンの信頼を勝ち取っていき、ついには彼の警護を命じられるまでになった。そうした業務の中で得た情報をミッチェルに流すことで、オニールはFBIから報奨金を得ることができた。

ハンプトンの行動を間近で見ているうちに、オニールの中である疑念が大きくなっていった。「ハンプトンは本当に悪人なのか」と。そんなある日、党の事務所でシカゴ市警と党員による銃撃戦が発生した。オニールは隙を突いて事務所から脱出することに成功したが、事務所が爆破される様子を見たオニールは死の恐怖を感じるようになった。そこで、オニールは内通者を辞めたいとミッチェルに申し出たが、「君は罪を帳消しにするだけの働きをまだしていない」と言われたため続けざるを得なかった。

1969年12月3日、ついに決定的な出来事が起きてしまう。FBIのJ・エドガー・フーヴァー長官の指示を受け、ミッチェルたちがハンプトンの暗殺を実行することになったのである。ハンプトンの恋人、デボラ・ジョンソンが妊娠していたこともあり、オニールは内心では暗殺に協力したくなかった。しかし、ミッチェルから「君がFBIに内通していたことがバレたらどうなるだろうね」と脅迫され、オニールは暗殺に加担するより外なかった。

キャスト[編集]

※括弧内は日本語吹替[4]

製作[編集]

構想及びプリ・プロダクション[編集]

本作以前にもフレッド・ハンプトンの伝記映画の製作に乗り出した者は少なからずおり、その中にはフォレスト・ウィテカーアントワン・フークワのような大物映画人も含まれていたが、彼らの力を以てしてもなお製作に漕ぎ着けることはできなかった[1]

ルーカス兄弟がハンプトンの伝記映画の製作に乗り出したのは2014年のことであった。2人はNetflixA24のようなスタジオにアイデアを持ち込んだが、そのアイデアが採用されることはなかった[1]。その頃、ウィル・バーソンもハンプトンの伝記映画の製作に関心を抱いていた。バーソンは自ら脚本を書き上げ、それをスタジオに持ち込んだが、どこも首を縦に振らなかった。それどころか、スタジオの重役が交渉の席でハンプトンを侮辱することすらあったという[1]

2016年、ルーカス兄弟はシャカ・キングと一緒に仕事をすることになった。2人がハンプトンの伝記映画についてアイデアを述べたところ、キングはすぐに関心を示した[1]。翌年1月、キングはハンプトンについてのリサーチを始めた。8月、バーソンの企画がプリ・プロダクション段階に入り、ケイシー・アフレックジョン・パワーズ・ミドルトンにプロデューサーの、F・ゲイリー・グレイに監督のオファーを出した。また、ハンプトン役にはジェイデン・スミスオシェア・ジャクソン・Jrの起用が検討された。しばらくして、キングは友人のジャーメイン・ファウラーからバーソンの存在を知らされ、彼の企画に合流することにした[1]。その後、キングたちは再度ハリウッド中を駆け回って製作費を確保すると共に、ハンプトンの遺族(デボラ・ジョンソンフレッド・ハンプトン・Jr)から伝記映画を製作する許可を取り付けた[1]

キャスティング[編集]

2019年2月、『Jesus Was My Homeboy』というタイトルの下、本作の製作が本格的にスタートし、ダニエル・カルーヤとラキース・スタンフィールドが起用された[5]。9月、ジェシー・プレモンス、ドミニク・フィッシュバック、アシュトン・サンダースの出演が決まった[6][7]。10月、アルジー・スミスがキャスト入りした[8]

撮影[編集]

2019年10月21日、本作の主要撮影オハイオ州クリーブランドで始まった[9]。12月4日、ジョンソンとハンプトン・Jrの立ち会いの下、ハンプトンが暗殺されるシーンの撮影が行われた。その日はハンプトン暗殺から50年を迎える節目の日であった。撮影に際し、ジョンソンは自らを演じるドミニク・フィッシュバックに涙を見せないよう強く頼み込んだという[1]。12月19日、本作の撮影が終了した[10]

音楽[編集]

2020年12月30日、マーク・アイシャムとクレイグ・ハリスが本作で使用される楽曲を手がけるとの報道があった[11]。2021年2月4日、H.E.R.が歌う本作の主題歌「Fight for You」がシングルとしてリリースされた[12]。12日、本作のサウンドトラックとスコアアルバムが発売された[13][14]

公開・興行収入[編集]

当初、本作は2020年8月21日に全米公開される予定だったが[15]新型コロナウイルスの流行が収束しなかったため、翌年まで公開が延期された[16]

2020年7月30日、本作のタイトルが『Judas and the Black Messiah』に正式決定した[17]。8月7日、本作のオフィシャル・トレイラーが公開された[18]。2021年1月13日、本作のオフィシャル・トレイラー第2弾が公開された[19]。2月1日、本作はサンダンス映画祭でプレミア上映された[20]。12日、本作は全米1888館で封切られ、公開初週末に207万ドルを稼ぎ出し、週末興行収入ランキング初登場2位となった[21]。また本作は、HBO Maxでも同時に配信された。

評価[編集]

本作は批評家から絶賛されている。映画批評集積サイトのRotten Tomatoesには247件のレビューがあり、批評家支持率は96%、平均点は10点満点で8.3点となっている。サイト側による批評家の見解の要約は「フレッド・ハンプトンの暗殺を見事な形でドラマ化している。『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア』は人種差別に対する強力な異議申し立てであると共に、シャカ・キング監督及び主要キャストにとってはキャリアを画する作品となった。」となっている[22]。また、Metacriticには45件のレビューがあり、加重平均値は86/100となっている[23]。なお、本作のCinemaScoreはAとなっている[24]

本作は第93回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、このうちダニエル・カルーヤが助演男優賞、H.E.R.が歌う本作の主題歌「Fight for You」が歌曲賞を受賞した。

受賞及びノミネートの一覧[編集]

発表美 カテゴリ 対象 結果 出典
ブラック映画批評家協会賞 2021年1月21日 作品賞トップ10 6位 [25]
AFI映画賞 2021年1月25日 作品トップ10 選出 [26]
ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 2021年1月26日 作品賞トップ10 受賞 [27]
ワシントンD.C.映画批評家協会 2021年2月8日 助演女優賞 ドミニク・フィッシュバック ノミネート [28]
助演男優賞 ダニエル・カルーヤ ノミネート
ダラス・フォートワース映画批評家協会賞 2021年2月10日 助演男優賞 ダニエル・カルーヤ 受賞 [29]
ネバダ映画批評家協会賞 2021年2月19日 助演男優賞 ダニエル・カルーヤ 受賞 [30]
ゴールデングローブ賞 2021年2月28日 助演男優賞 ダニエル・カルーヤ 受賞 [31][32]
主題歌賞 "Fight for You" ノミネート
放送映画批評家協会賞 2021年3月7日 助演男優賞 ダニエル・カルーヤ 受賞 [33][34]
アンサンブル演技賞 ノミネート
全米脚本家組合賞 2021年3月21日 オリジナル脚本賞 シャカ・キング、ウィル・バーソン、ルーカス兄弟 ノミネート [35][36]
全米映画俳優組合賞 2021年4月4日 助演男優賞 ダニエル・カルーヤ 受賞 [37]
アカデミー賞 2021年4月25日 作品賞 シャカ・キング、ライアン・クーグラー、チャールズ・D・キング ノミネート [38][39]
助演男優賞 ダニエル・カルーヤ 受賞
ラキース・スタンフィールド ノミネート
脚本賞 シャカ・キング、ウィル・バーソン、ルーカス兄弟 ノミネート
撮影賞 ショーン・ボビット ノミネート
歌曲賞 "Fight for You" 受賞

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h ‘Judas and the Black Messiah’: Inside the Long Struggle to Bring Fred Hampton’s Story to the Screen”. Variety (2020年12月23日). 2021年2月17日閲覧。
  2. ^ a b Judas and the Black Messiah”. The Numbers. 2021年9月10日閲覧。
  3. ^ ワーナー・ブラザーズ ホームエンターテイメントさんのツイート”. Twitter (2021年4月16日). 2021年4月16日閲覧。
  4. ^ ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償”. NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン (2021年6月18日). 2021年6月18日閲覧。
  5. ^ Ryan Coogler & MACRO Set Black Panthers Pic With Warner Bros; Daniel Kaluuya & Lakeith Stanfield In Talks To Star”. Deadline.com (2019年2月19日). 2021年2月18日閲覧。
  6. ^ Jesse Plemons & ‘The Deuce’ Actress Dominique Fishback Join Daniel Kaluuya & Lakeith Stanfield In WB’s Black Panthers Pic ‘Jesus Was My Homeboy’”. Deadline.com (2019年9月19日). 2021年2月18日閲覧。
  7. ^ ‘Moonlight’ & ‘Wu-Tang: An American Saga’ Star Ashton Sanders In Talks To Join ‘Jesus Was My Homeboy’ With Daniel Kaluuya & Lakeith Stanfield”. Deadline.com (2019年9月25日). 2021年2月18日閲覧。
  8. ^ 'Euphoria' Actor Algee Smith Joins Daniel Kaluuya in Drama About Black Panther Activist (Exclusive)”. Hollywood Reporter (2019年10月28日). 2021年2月18日閲覧。
  9. ^ ‘Get Out’ actors to film Black Panther Party biopic in Cleveland, movie extras needed”. Cleveland19.com (2019年9月30日). 2021年2月18日閲覧。
  10. ^ Wrap!”. Instagram (2019年12月19日). 2021年2月20日閲覧。
  11. ^ ‘Judas and the Black Messiah’ to Feature Original Song ‘Fight for You’ by H.E.R.”. Film Music Reporter (2020年12月30日). 2021年2月20日閲覧。
  12. ^ H.E.R.’s Original Song ‘Fight for You’ from ‘Judas and the Black Messiah’ Released”. Film Music Reporter (2020年2月5日). 2021年2月20日閲覧。
  13. ^ ‘Judas and the Black Messiah’ Soundtrack Album Details”. Film Music Reporter (2021年2月9日). 2021年2月20日閲覧。
  14. ^ ‘Judas and the Black Messiah’ Score Album Details”. Film Music Reporter (2021年2月11日). 2021年2月20日閲覧。
  15. ^ Warner Bros Sets Release Dates For ‘The Matrix’ Sequel, ‘The Flash’ & More; ‘Akira’ Off Schedule”. Deadline.com (2019年12月11日). 2021年2月20日閲覧。
  16. ^ ‘The Batman’ Flies To Fall 2021, ‘Sopranos’ Prequel Moves To March & More As Warner Bros Makes Release Date Changes Due To COVID-19 Climate”. Deadline.com (2020年4月20日). 2021年2月20日閲覧。
  17. ^ Ryan Coogler’s Fred Hampton Biopic Has A New Name: ‘Judas And The Black Messiah’”. Relevant (2020年7月30日). 2021年2月20日閲覧。
  18. ^ JUDAS AND THE BLACK MESSIAH - Official Trailer”. YouTube (2020年8月7日). 2021年2月20日閲覧。
  19. ^ JUDAS AND THE BLACK MESSIAH – Trailer 2”. YouTube (2021年1月13日). 2021年2月20日閲覧。
  20. ^ ‘Judas and the Black Messiah’ to Premiere at Sundance Film Festival”. Variety (2021年1月12日). 2021年2月20日閲覧。
  21. ^ Domestic 2021 Weekend 7/February 12-14, 2021”. Box Office Mojo. 2021年2月20日閲覧。
  22. ^ Judas and the Black Messiah”. Rotten Tomatoes. 2021年2月20日閲覧。
  23. ^ Judas and the Black Messiah (2021)”. Metacritic. 2021年2月20日閲覧。
  24. ^ Thanksgiving Release ‘Croods: A New Age’ Tops Presidents Day Weekend Box Office, Challenged By Snow & Covid”. Deadline.com (2021年2月14日). 2021年2月20日閲覧。
  25. ^ Feinberg, Scott (2021年1月21日). “Black Film Critics Circle: 'Ma Rainey's Black Bottom' Named Best Film of Year (Exclusive)”. The Hollywood Reporter. 2021年2月2日閲覧。
  26. ^ Lewis, Hilary (2021年1月25日). “AFI Awards: 'Da 5 Bloods,' 'Minari,' 'Soul' Among Picks for Best Films of 2020”. The Hollywood Reporter. 2021年2月2日閲覧。
  27. ^ “Spike Lee's 'Da 5 Bloods' Named Best Film Of 2020 By National Board Of Review”. (2021年1月26日). https://deadline.com/2021/01/national-board-of-review-2020-winners-list-da-five-bloods-1234680677/ 2021年1月26日閲覧。 
  28. ^ Gordon, Tim (2021年2月8日). “The 2020 WAFCA Awards”. Washington D.C. Area Film Critics Association. 2021年2月8日閲覧。
  29. ^ Jorgenson, Todd (2021年2月10日). “DFW FILM CRITICS NAME “NOMADLAND” BEST PICTURE OF 2020”. Dallas-Fort Worth Film Critics Association. 2021年2月10日閲覧。
  30. ^ PROMISING YOUNG WOMAN NAMED BEST FILM OF 2020 BY THE NEVADA FILM CRITICS SOCIETY”. Nevada Film Critics Society (2021年2月19日). 2021年3月1日閲覧。
  31. ^ Bahiana, Ana Maria (2021年2月3日). “Nominations for the 78th Golden Globe Awards (2021) Announced”. Golden Globe Awards. 2021年2月4日閲覧。
  32. ^ ゴールデン・グローブ賞『ノマドランド』が作品賞!受賞結果全リスト”. シネマトゥデイ (2021年3月1日). 2021年3月1日閲覧。
  33. ^ Davis, Clayton (2021年2月8日). “Critics Choice Awards: ‘Mank’ Leads With 12 Nominations, Netflix Makes History With Four Best Picture Nominees”. Variety. 2021年2月9日閲覧。
  34. ^ Critics Choice Awards: ‘Nomadland’, ‘The Crown’ Among Top Honorees – Complete Winners List”. Deadline.com (2021年3月7日). 2021年3月17日閲覧。
  35. ^ WGA Awards Film Nominations: ‘Trial Of The Chicago 7’, ‘Sound Of Metal’, ‘One Night In Miami’, ‘Borat’, ‘Palm Springs’ & More”. Deadline.com (2021年2月16日). 2021年2月20日閲覧。
  36. ^ ‘Borat Subsequent Moviefilm,’ ‘Promising Young Woman’ Win at Writers Guild Awards 2021”. Variety (2021年3月21日). 2021年3月30日閲覧。
  37. ^ Hipes, Patrick (2021年2月4日). “SAG Awards Nominations: ‘Ma Rainey’, ‘Minari’ Lead Film List; ‘The Crown’, ‘Schitt’s Creek’ Top TV And ‘Bridgerton’ Arrives – Full List”. Deadline Hollywood. 2021年2月9日閲覧。
  38. ^ 【第93回アカデミー賞】「Mank マンク」が最多10部門ノミネート!監督賞に女性2人選出は史上初”. 映画.com (2021年3月15日). 2021年5月1日閲覧。
  39. ^ 【第93回アカデミー賞総括】「ノマドランド」が作品賞含む最多3冠!主演男優賞発表で番狂わせ”. 映画.com (2021年4月26日). 2021年5月1日閲覧。

外部リンク[編集]