マルバウマノスズクサ

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マルバウマノスズクサ
1. マルバウマノスズクサ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : モクレン類 Magnoliids
: コショウ目 Piperales
: ウマノスズクサ科 Aristolochiaceae
亜科 : ウマノスズクサ亜科[1] Aristolochioideae
: ウマノスズクサ属 Aristolochia
亜属 : ウマノスズクサ亜属[1] subgen. Aristolochia
: マルバウマノスズクサ A. contorta
学名
Aristolochia contorta Bunge (1833)[2][3]
シノニム
和名
マルバウマノスズクサ、コウマノスズクサ[2]

マルバウマノスズクサ学名: Aristolochia contorta)は、ウマノスズクサ科ウマノスズクサ属に属する多年生つる草の1種である(図1)。全体は無毛、は円心形から卵状三角形、筒状でやや湾曲した葉腋に数個ずつつけ、花筒の先端上部は糸状に伸びる。本州朝鮮半島ハバロフスク地方から中国ベトナムにかけて分布する。

特徴[編集]

多年生つる草であり、地上部は冬には枯れる[1][4]。全草無毛、は長さ2–3メートルになる[1]互生し、薄い紙質で粉白を帯び、全縁、円心形から卵状三角形、長さ3–13センチメートル (cm)、幅 3–10 cm、先端は円頭から鈍頭、基部は浅い心形、葉柄は長さ 2–7 cm[1][4](図1)。

2a. 花
2b. 果実

花期は7–8月[1]葉腋に2–8個が集まってつき、花柄は長さ 1–3 cm[1][4](上図2a)。花被)は花筒(萼筒)を形成し細長く、長さ 2–3 cm、やや上方に湾曲し、基部は球形に膨らみ(室部とよばれる)、舷部(先端の広がった部分)上方は舌状になり先端は長く糸状に伸びる[1][4](上図2a)。花筒内面には逆毛があるが、のちに逆毛が脱落する[1]。花筒はふつう黄緑色、ときに褐色を帯び、舷部内面は黄緑色で腺毛がある[1](上図2a)。

果実は倒卵状球形、長さ 3–7 cm、蒴果であり、果柄も含めて基部側から6裂する[1](上図2b)。種子は心状三角形、長さ5–8ミリメートル、扁平で膜状の翼がある[1]染色体数は 2n = 14[1]

分布・生態[編集]

本州日本海側(山形県から島根県)と群馬県長野県などに点在し、ハバロフスク地方沿海州朝鮮半島中国ベトナムに分布する[3][1]

明るい林縁などに生えている[4]

保全状況評価[編集]

絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト

日本では全国的に少なく、絶滅危惧Ⅱ類に指定されている (2023年現在)[4][5]。また下記のように、個々の都道府県でも絶滅危惧種に指定されている。以下は2023年現在の各都道府県におけるレッドデータブックの統一カテゴリ名での危急度を示している[5]

人間との関わり[編集]

ウマノスズクサ果実は馬兜鈴(ばとうれい)、は青木香(せいもっこう)とよばれ、それぞれ咳や痰、虫毒や下痢に対する生薬とされるが、これに含まれるアリストロキア酸は重篤な腎障害を引き起こすことが知られている[6][7]。マルバウマノスズクサも、馬兜鈴や青木香の原料とされることがある[7][8]

分類[編集]

3. ウマノスズクサの花

草本性のつる草である点、茎や葉が無毛である点、花筒の湾曲が弱い点、舷部の上部が舌状に伸びる点、花柱が6裂する点、果実が基部から裂開する点などから、ウマノスズクサ属のウマノスズクサ亜属に分類される[1]。日本産の類似としてはウマノスズクサAristolochia debilis)があるが、葉がやや厚く幅狭い点、葉柄が短い(1–2 cm)点、花は葉腋にふつう1個ずつつく点、舷部内面が紫褐色で上端が糸状に伸びない点などでマルバウマノスズクサとは区別される[1](図3)。また日本に自生するウマノスズクサ亜属の種としては、他に宮古諸島尖閣諸島に分布するコウシュンウマノスズクサがある[1]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 東馬哲雄 (2015). “ウマノスズクサ属”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 57–59. ISBN 978-4582535310 
  2. ^ a b 米倉浩司 & 梶田忠 (2003-). “マルバウマノスズクサ”. BG Plants 和名−学名インデックス (YList). 2023年6月3日閲覧。
  3. ^ a b c Aristolochia contorta”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2023年6月3日閲覧。
  4. ^ a b c d e f マルバウマノスズクサ”. 京都府レッドデータブック. 京都府. 2023年6月5日閲覧。
  5. ^ a b マルバウマノスズクサ”. 日本のレッドデータ 検索システム. 2023年6月5日閲覧。
  6. ^ ウマノスズクサ”. 薬草園 植物データベース. 熊本大学薬学部. 2023年6月3日閲覧。
  7. ^ a b 馬兜鈴(バトウレイ)”. 生薬の玉手箱. ウチダ和漢薬 (2017年11月10日). 2023年6月3日閲覧。
  8. ^ 内野花 (2006). “『本草綱目』に見る周産期の妊産婦管理に関する漢薬”. 関西大学博物館紀要 12: 19-46. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]