フィプロニル

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フィプロニル
フィプロニルの構造式
フィプロニルのスティックモデル{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 120068-37-3
PubChem 7848105
J-GLOBAL ID 200907081918619941
KEGG D01042
ChEBI CHEBI:5063
ChEMBL CHEMBL101326
特性
化学式 C12H4Cl2F6N4OS
モル質量 437.15
密度 1.477-1.626
融点

200.5

危険性
安全データシート(外部リンク) ICSC 1503(日本語)
呼吸器への危険性 痙攣、振戦
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

フィプロニル(英:fipronil)は、バイエルクロップサイエンス (de:Bayer CropScienceの前身であるローヌ・プーランが開発したフェニルピラゾール系殺虫薬の1つ。神経伝達物質であるGABAの作用を阻害することによりノミ、ゴキブリアリアルゼンチンアリシロアリなどの駆除に使用される。遅効性の毒物であるため、混ぜたエサを摂食した昆虫が致死するまでに巣やコロニーに戻る時間余裕があることが特徴である。ゴキブリやアリの場合、その死骸やフンを摂食した巣の仲間にまで効力を発揮するため巣の集団全体へその効果が広がっていく。

毒性[編集]

PRTR法で、第1種指定物質(政令番号22)に指定されている。ネオニコチノイド系殺虫剤とともに、ミツバチ蜂群崩壊症候群(CCD)の原因の仮説のひとつとなっている。

経口摂取による半致死量LD50はラットで92 mg/kg、マウスでは49 mg/kgである。[1]

ヒトの中毒では0.14mgの経口摂取により軽度意識障害が報告されている。[1]

体重1kgあたりの一日許容摂取量(ADI)は0.00019 mg/kg/dayに設定されており、これは日本で登録されている農薬の中で最も低く設定されている値である。 ちなみに2008年1月の中国製冷凍餃子中毒事件で混入され問題になった、メタミドホスですら、ADIはフィプロニルのより3倍以上(0.0006 mg/kg/day)高い。

日本で売られている家庭用ゴキブリ駆除剤でもフィプロニルが使われているものが多いが、駆除剤1個当たり0.5mg~1mgのフィプロニルが含まれ、これは一日許容摂取量の約2,500倍から5,000倍相当となる。

フィプロニルを含有する製品[編集]

  • プリンス      米・野菜などの殺虫剤
  • フロントライン   ペットのノミ駆除剤
  • アジェンダ     シロアリ駆除剤
  • ブラックキャップ  ゴキブリ駆除剤
  • グリアートフォルテ 不快害虫駆除剤
  • コンバット     ゴキブリ駆除剤
  • ゴキファイター   ゴキブリ駆除剤

歴史[編集]

1985年と1987年の間にフランスの化学薬品会社ローヌ・プーランによって開発され、US Patent No. US 5,232,940 B2のもと1993年に商品化された。1987年から1996年の間に、フィプロニルは世界中の60作物で250以上の害虫で評価され、1997年にはフィプロニル総生産の約39%が作物保護剤としての用途であった。2003年以降、ドイツの化学薬品会社BASFが、多くの国でフィプロニル系製品の製造および販売に関する特許権を保有している。

卵汚染問題[編集]

2017年7-8月に、オランダ食品消費者製品安全庁(NVWA)によって高レベルのフィプロニルに汚染された鶏卵が発見された後、数百万の鶏卵がオランダ、ベルギー、ドイツ、フランスの市場から売却または撤去された[2]。約180のオランダの農場が一時的に閉鎖された[2]。ドイツのマーケットチェーンAldiは8月上旬、予防措置として、ドイツの店舗で販売されているすべての卵を撤去すると告知した[3]。この鶏卵汚染問題は、EU加盟国の15か国の他、スイス、香港にまで波及した[4][5][6]

フィプロニルに汚染された卵は、今回の発見以前から長い間販売されていた可能性がある。オランダ当局は、2016年11月の段階で卵がフィプロニルで汚染されている事を発見していたが、その結果を伝えられなかったという匿名の通報があった[7]

捜査
フィプロニルは、農薬として農作物に適正に使用した結果残留する濃度であれば合法であるが、鶏舎に使用するのは違法であるため、すでに捜査が始まっている[2][8]
2社への捜査を中心に行われている[9]
  • オランダの害虫駆除サービスのプロバイダー「ChickFriend」が、何百人もの鶏の農家にフィプロニルが混ざったDEGA-16を使用・販売していた疑惑がある。8月10日に大規模な検挙が行われ、オランダ人オーナーが逮捕されている[10][11]
  • ベルギーの害虫駆除会社「Poultry Vision」は、「ChickFriend」にフィプロニルが混ざったDEGA-16を販売した罪に問われている。同社が、ルーマニアにある化学会社から6m3のフィプロニルを輸入したことが捜査で判明している[12][13]
【補足】 DEGA-16自体は、鶏の厩舎を清掃するために承認された清潔で衛生的な天然製品である。
8月8日に、オランダ安全委員会はオランダ当局の隠蔽容疑についての公式調査を開始したとアナウンスした[14][15]
報告されたフィプロニル濃度
卵中のフィプロニル最大残留限界は、EUの2005年2月23日の会議の結果『Regulation (EC) No 396/2005』という枠組みが作られ、検出限界0.005 mg/kg とされた[16]。WHOの毒性評価分類では、Class II: moderately hazardousで下から2番目の毒性の殺虫剤とされている。
オランダ食品消費者製品安全庁(NVWA)は、オランダのある養鶏場の卵の試験結果が、0.72 mg / kgの閾値を超えたことを報告した。この閾値を超えるフィプロニルを含む卵は、健康へ悪影響をもたらす可能性がある[17]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b 公益財団法人 日本中毒センター 保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報
  2. ^ a b c Daniel Boffey (2017年8月3日). “Millions of eggs removed from European shelves over toxicity fears”. The Guardian. https://www.theguardian.com/world/2017/aug/03/eggs-removed-from-european-shelves-over-toxicity-fears-fipronil 2017年8月3日閲覧。 
  3. ^ “Fipronil contamination scare: Aldi pulls all eggs from shelves in Germany”. Deutsche Welle. (2017年8月4日). http://www.dw.com/en/fipronil-contamination-scare-aldi-pulls-all-eggs-from-shelves-in-germany/a-39961471 2017年8月4日閲覧。 
  4. ^ “Eggs containing fipronil found in 15 EU countries and Hong Kong” (en-GB). BBC News. (2017年8月11日). http://www.bbc.com/news/world-europe-40896899 2017年8月11日閲覧。 
  5. ^ News, ABC. “EU: 17 nations get tainted eggs, products in growing scandal” (英語). ABC News. http://abcnews.go.com/Health/wireStory/danes-imported-20-tons-eggs-tainted-scandal-49152254 2017年8月11日閲覧。 
  6. ^ Boffey, Daniel (2017年8月11日). “Egg contamination scandal widens as 15 EU states, Switzerland and Hong Kong affected”. The Guardian. 2017年8月11日閲覧。
  7. ^ Fipronil scandal: Belgium accuses Netherlands of tainted eggs cover-up” (2017年8月9日). 2017年8月11日閲覧。
  8. ^ “Fipronil in eggs”. FoodQuality news.com. (2017年8月3日). http://www.foodqualitynews.com/Food-Outbreaks/Belkorn-JBS-USA-Amrita-Health-Foods-and-COPACK-in-recalls/(page)/1 2017年8月3日閲覧。 
  9. ^ Fipronil egg scandal: What we know(BBC)
  10. ^ Eigenaren Chickfriend opgepakt, invallen in Barneveld en Nederhemert”. 2017年8月11日閲覧。
  11. ^ Nederlanders gingen van deur naar deur met bloedluisverdelger Chickfriend”. 2017年8月11日閲覧。
  12. ^ “'Bedrijf Chickfriend wist dat het verboden middel kocht'” (オランダ語). https://nos.nl/artikel/2186485-bedrijf-chickfriend-wist-dat-het-verboden-middel-kocht.html 2017年8月9日閲覧。 
  13. ^ Germany, SPIEGEL ONLINE, Hamburg. “Giftige Eier: Spur führt zu rumänischer Chemiefabrik - SPIEGEL ONLINE - Wirtschaft”. 2017年8月11日閲覧。
  14. ^ Onderzoeksraad voor Veiligheid - Onderzoeken & Publicaties - Onderzoek vanwege fipronil in voedselketen”. 2017年8月11日閲覧。
  15. ^ Dierenpartij wil Kamer terug van reces om eierencrisis”. 2017年8月11日閲覧。
  16. ^ http://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2005/396/oj
  17. ^ https://www.nvwa.nl/onderwerpen/biociden/fipronil-in-eieren/fipronil-vragen-en-antwoorden-consumenten

参考文献[編集]

  • 『新獣医薬理学』 伊藤勝昭ほか編集 、近代出版、2004年、第二版。ISBN 4874021018

外部リンク[編集]