パパラギ

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パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集
Der Papalagi: Die Reden des Südseehäuptlings Tuiavii aus Tiavea (1920)
著者 ツイアビエーリッヒ・ショイルマン編著
訳者 岡崎照男(日本語訳)
イラスト 和田誠絵本版
発行日 2009年2月18日
発行元 ドイツの旗Unikum
日本の旗ソフトバンククリエイティブ
ジャンル フィクション偽書
ドイツの旗 ドイツ日本の旗 日本
言語 ドイツ語、日本語
形態 ドイツの旗ペーパーバック
日本の旗文庫
ページ数 ドイツの旗120頁
日本の旗184頁
公式サイト www.sbcr.jp/products/4797352399.html
コード ドイツの旗ISBN 978-3845712352
日本の旗ISBN 978-4-7973-5239-9
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パパラギ』(: Der Papalagi)は、1920年ドイツで画家兼作家のエーリッヒ・ショイルマンによって出版された書籍である。ヨーロッパを訪問したサモアの酋長ツイアビが、帰国後、島民たちに西洋文明について語って聞かせた演説をまとめたものとしているが、実際はショイルマンの手によるフィクション偽書)である[1]

概要[編集]

「パパラギ」とは「白い人」「外国人」の意である。本書では、ツイアビがヨーロッパを訪れた際に目にした「パパラギ」の社会について語るという形式で、西洋文明への批判が展開される。ショイルマンはサモアに1年滞在したが、第一次世界大戦の勃発によりサモアを離れた。

本書は10以上の言語に翻訳された。ヒッピー・ムーブメントの時代には人気を博し、出版から50年後にカルト本としての様相を呈した。ドイツ語版だけでも170万部が売れた。

日本では、1981年に『パパラギ―はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集』(著:ツイアビ、訳:岡崎照男)として立風書房から出版された。そのでは開高健村上龍朝日新聞天声人語」が賞賛の言葉を寄せている。

文化人類学者の間では、ツイアビの演説がサモアの話法と異なっていることなどから、本書は実際にはツイアビの演説をまとめたものではなく、ショイルマンの創作ではないかと考えられてきた。上記の「天声人語」での評も、ツイアビが実在の人物かどうかは不明というスタンスを取っている。

近年の研究により、ツイアビは現地語で「酋長」を意味する言葉であり、本書でツイアビとされている人物はアガエセ(Agaese)という名のドイツ軍の軍属で、ヨーロッパを訪問したこともなかったことなどが分かっている。しかし、ドイツ及び日本での出版時にはフィクションとの断り書きがなかったので、真実だと取り違えている人も多い[2]

書誌情報[編集]

原書[編集]

  • Tuiavii (November 2011). Der Papalagi: Die Reden des Südseehäuptlings Tuiavii aus Tiavea (1922). Erich Scheurmann. Unikum. ISBN 978-3845712352 

翻訳[編集]

朗読カセット[編集]

脚注[編集]

  1. ^ (1999c) “Weird Papalagi and a Fake Samoan Chief - A Footnote to the Noble Savage Myth”. Rongorongo Studies - A Forum for Polynesian Philology 9(1): 23-32 & 9(2): 62-75.
  2. ^ 例えば、日本版のサモア風の装釘をした和田誠は『ほんの数行』(七つ森書館2014年)に「当時の彼の言葉は少しも古くなっていない上に、ますます耳が痛い言葉である」といって、疑っていない評を書いている。

外部リンク[編集]

英語版

日本語での解説

  • 鬼頭秀一『自然保護を問いなおす』ちくま新書、1996年、とくに序章「「パパラギ」問題――「共生」の文化論への道」