パスポートカード

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米国パスポートカード(2009年)の表面

パスポートカード英語: passport card、以前は国民アクセス安全保障サービス英語: People Access Security Service)カードまたはPASSカードと呼ばれた)とは、アメリカ合衆国によって発行される、パスポートの代わりとなる渡航文書であり、西半球渡航イニシアチブの文書要件を満たすものである。米国のパスポートカードは財布に入るサイズであり、米国市民にのみ発給され、カナダ、メキシコ、カリブ海諸国およびバミューダから陸路または海路により米国に入国する場合に使用できる。パスポートカードは冊子体のパスポートに比べてより利便性が高く、発行手数料が低額である。空路の国際旅行には使用できない。

発給申請は2008年2月1日以降受け付けられ、同年7月以降発給が行われている[1]。2010年3月現在で、270万枚以上のパスポートカードが米国市民に発給されている[2]。カードはL-1 Identity Solutions社により製作されている[3]欧州連合の域内においては、国内外で身分証明書が用いられるのが一般的であり、パスポートカードはこれと同じ目的で用いられる。

解説[編集]

パスポートカードは、北米(カナダ、メキシコ、カリブ海、バミューダ)域内における陸路・海路の旅行の際、通常の米国パスポート冊子の代わりとなる。パスポート冊子と同様に米国の市民および国民のみに対して発給される。しかし、現在のところパスポートカードは空路の国際旅行には使用できない。国務省は、「航空旅行を含む幅広い用途にカード様式のパスポートを設計することは、9/11後の脅威の増した状況に対処するため民間航空の保安および渡航文書の仕様を強化するという国際的かつ広範な努力を阻害しかねない」ためであると述べている[4]

西半球渡航イニシアチブの発効により、旅行者は本人性および国籍の双方を確認できる単一の文書を所持することが求められるようになったので、従来の冊子体のパスポートに比べ安価であり携帯性に優れる文書のニーズが生まれたことに対応して、国務省がパスポートカードの発給開始を決めた。

陸路の国境検問の効率を向上させるため、パスポートカードには政府のデータベースにひも付けられた一意の識別番号を格納した、近接読み取り可能なRFIDチップが内蔵されている。冊子パスポートと異なり、パスポートカードのRFIDチップはより遠方からの読み取りが可能となるよう設計されており、識別番号を除いてはMRZ(機械読取領域)内の情報を格納していない。検問所への提示時以外にRFIDチップの情報が読み取られることを防ぐため、パスポートカードと一緒に電波遮蔽ジャケットが提供される[5]

REAL ID法のもと、パスポートカードは国内航空旅行や連邦政府建物への立入りなどの連邦法上の用途にも使用できることから、同法の義務づけ規定の発効後には、州の発行する運転免許証や身分証明書が同法の要件を満たさないような州の住民にとって魅力的な選択肢となることが想定される。TSAの規則は、パスポートカードを空港の保安検査場での提示が認められる本人確認書類の一つとして規定している[6]

市民権・移民業務局は、従業員就労資格確認書(Employment Eligibility Verification Form, Form I-9)の作成手続において米国パスポートカードの使用を認めると発表した[7]。パスポートカードは新たに雇い入れられる者が就労資格の保有を示すために提示する文書のうち「リストA」文書に含まれると考えられる。リストA文書は、Form I-9の記入時に被用者が本人性および就労資格の双方を証明するため使用する文書である。

在ドイツの米国領事館によれば、パスポートカードは米国内外において市民権の有効な証明および本人性の証明のため用いることができる[8]。しかし、米国内の公私の機関、企業などが本人確認書類としてパスポートカードを受け付けるかどうかはばらつきが大きい。

有効期間および発給手数料[編集]

パスポートカードの有効期間はパスポート冊子と同じく、16歳以上の成人は10年、16歳未満の年少者は5年である。2010年7月13日現在、資格を有する申請者(成人に限る、郵送申請)の更新手数料は30ドルである。初回申請者や窓口申請者はこれに加えて25ドルの処理手数料の支払が必要なので、合計で55ドルを要する。年少者がパスポートカードの発給を希望する場合は必ず窓口で申請しなければならず、手数料は40ドル(処理手数料25ドルを含む)である。

完全に有効なパスポート冊子をすでに所持している成人はパスポートの更新としてパスポートカードの発給を申請することができ、この場合の手数料は30ドルである。

米国の市民または国民はパスポートカードとパスポート冊子の双方を所持することができる。いずれかのパスポートを所持していれば、有効期間満了時に他方(または双方)のパスポートを「更新」扱いで郵送申請することができる。

カードの様式[編集]

図1: カードの白紙図版(2008年)
図2: カード裏面の図版(2008年)

パスポートカードの様式は、ICAO文書9303第3部第1巻に記載されたクレジットカード(ID-1)サイズの渡航文書の仕様に従っている。カードには、人間の読める情報と機械読み取り可能な情報が印刷される。後者は、パスポート冊子の身分事項ページと類似の書式により、カード裏面のMRZ(機械読取領域)にOCR文字列で印刷される。MRZはIPという文字列で始まる。これはICAOによりパスポートカードを意味するよう指定された文字列である[9]。次に発行国コードUSA、所持人の氏名が印刷される。パスポートカードの概略の様式は、メキシコ市民に対して発給される国境通過カードとほぼ同一であり、主な相違点は背景の文様および表題である。

偽造防止技術[編集]

内蔵のRFIDチップに加え、カード表面には米国の国章であるハクトウワシおよびその周囲に「United States of America Department of State」との文言を小さいが明瞭に読めるフォントで配し、さらにその周囲に同一の文言をマイクロプリントで反復して配する、複雑な多層のホログラムが使用されている。カードの裏面はさまざまな色彩およびマイクロプリントに富む円滑で織り合わせられた曲線からなる。カード上のほとんどの情報は凹版印刷(インキ部分が盛り上がる)により印刷され、生年月日、垂直な「USA」の文字列、レーザーにより刻み込まれたメインの顔写真画像の下部の英数字列は特に盛り上げが施されている。より小さな第2の「顔写真」が右側にあるが、よく見るとこの「顔写真」は所持人氏名中のさまざまな文字を組み合わせて元の顔写真の陰影を表現したものである。さらに、カードの上左隅には、13本の矢をつかんでいる鷲および米国1ドル紙幣の裏面にあるオリーブの枝を想起させるような刻印が、顔写真と部分的に重なる形で浮き彫りされている。裏面には、「PASSsystem」のマークが色彩変化インキで印刷されている。

通用国[編集]

パスポートカードは以下の北アメリカ各国で、陸路または海路によっての出入国に通用する[10][11]

脚注[編集]

外部リンク[編集]