タイル

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絵タイル(組タイル)
トルコのタイル
はがれたタイル

タイル:tile)は、建設資材の一つで、の保護、あるいは装飾用に多数張りつける板状のもの。 英語のtileには、の意味もある。また、比喩的に、規則的に分けられた平面状の区画や、繰り返しによって構成される図画の各要素のことなどのこともタイルと呼ぶ。

概要[編集]

タイルの語源はラテン語で陶製の屋根板を指すテグラ(tegula)に由来すると言われる。テグラは広義には「ものを覆う」という意味があり、近世以降、屋根瓦と建築物の表面を覆う陶製の薄板の双方をテグラと呼ぶようになっている。

現存する世界最古のタイルはエジプト第3王朝、ジェゼル王が紀元前2700年に建てたサッカラ階段ピラミッドの通路に貼られた青釉のタイルと推測されている[1]

日本には6世紀の仏教伝来とともに寺院の装飾用として導入された。敷瓦、陶板、貼付け化粧瓦など様々な呼称があったが、大正11年に「タイル」に統一された[2]

形状は、隙間無く敷き詰めるため正方形長方形など四角形が多いが、小石の形など不規則な形状のものもある。 色彩も様々であり、一枚一枚に模様があるものや、色の違うものを多数並べることで大きな絵とする場合もある。

材質は、陶磁器コンクリートプラスチック大理石など各種ある。 陶磁器のものは、建物の外装や、浴室洗面所などの内装に、コンクリートのものは、歩道舗装用などに、 プラスチックのものはPタイルと呼ばれ、オフィスなどの床にそれぞれ用いられる。また、漆喰の特性を生かしたタイルも開発されている。

通常、タイルは一枚一枚接着剤モルタル金物によって躯体に固定されるが、非常に手間がかかり、施工技術も要求される。そのため、細かいタイルがあらかじめシート状に敷き詰められたものが製造されている。

主として建築用に用いられるが、 特殊なものとしては、スペースシャトルなどの宇宙船の外装に使用される耐熱タイルがある。他に、モザイク画陶板複製画のように美術性の高いタイル、陶板浴のように健康を目的としたタイルなどがある。

アンティークタイル[編集]

スイスのストーブ・タイル(16世紀)(Museum of Anthropology at UBC所蔵)

中世以降のヨーロッパイスラムのタイルは骨董品としてコレクションの対象となっている。アンティークタイルは私人の趣味に留まらず、美術館博物館の蒐集対象となっておりオークションにもしばしば出品される。

イスラムのタイル[編集]

中世のイスラムのタイルの特徴は六角形や八角形など正方形以外の様々な形がある事と、ラスター彩と呼ばれる金属的な輝きを持つ絵付けである。アラベスクや幾何学紋様、コーランの字句などが主なモチーフとされている。14世紀以降にはクエルダ・セカ様式、クエンカ様式と呼ばれる新しい技法を使ったタイルが急速に広まり、その影響はイベリア半島まで及んでいる。

15-16世紀には「イズニクウェア」と呼ばれる伝統的なのアラベスク模様より写実的な図柄の彩色陶器が流行した。17世紀には需要の低下とともにイズニクウェアが没落し、キュタヒヤがタイル産地として取って替わったが、盛期のイズニクウェアの美術水準に及ぶことはなかった[3]

ヨーロッパのタイル[編集]

15-16世紀には、イスラムのクエルダ・セカ様式、クエンカ様式の技術をもつトレドセビーリャがタイル産地の中心となっていた。しかし、イスラム勢力がイベリア半島から駆逐されるとともにその地位は失われた。 また、15世紀にはストーブを装飾するための型押しで作られるレリーフタイルが産業として確立した。このストーブ・タイルと呼ばれる特殊なタイルは他の技法の影響を受けながら今日まで作られ続けている[4]

ルネサンス期にはファエンツァマヨリカ焼きから発展したファイアンス焼き(マヨルカウェア)が「ゴシック・フロラル」と呼ばれる様式を確立し、16世紀にはイタリアの諸都市でマヨルカウェアを模したスズ釉のタイルが作られた。ファイアンス焼きは北、中央ヨーロッパにも波及し、17世紀にオランダで白地に青の釉薬で描かれる中国風のモチーフを取り入れたデルフトウェアへと変化した。17世紀のデルフトウェアのタイルは、メダイヨンと呼ばれる縁飾りで中央のモチーフを囲むデザインや、正方形に4枚組むことで成立するコーナー・モチーフが特徴である。18世紀前半には壁画とも言える特注品の大作が幾つも作られている。

デルフト様式はイギリスフランスにもコピーされ、18世紀前半には技術的にオランダに追いついた。イギリスではブリストルリヴァプールロンドンで盛んに生産された。18世紀後半になるとウェッジウッドなどが開発した新しい粘土素地を使ったクリームウェアによって、デルフトの製陶産業は駆逐されてしまう。 その後、ヨーロッパではフランス革命とその後の動乱から、タイルの生産はイギリスも含め各国とも極端に衰微してしまった。

建築用陶磁器タイル[編集]

建築では一般にタイルといえば、陶磁器製のものを指すことが多い。材質は、吸水率の違いにより、陶器質・せっ器質・磁器質タイルに分けられる。タイルメーカーでは、タイルの適した用途に応じ、屋内の水廻りや壁、床用、屋外の壁、床用などに分けている。一般的に、躯体(貼り付け箇所)への防水性に優れ、水がかり部に使用されることが多い。外壁用タイルにおいては、タイル自体の経年劣化はほとんどなく、貼り付け施工時の不具合による剥離、落下事故が起こることがあるが、現在では、モルタルと混ぜられる接着剤の性能や、施工法の向上が行われ、事故は減少傾向にある。仕上げには流行があるが、外装タイル貼の建築物は、他の外壁仕上げに比べイニシャルコストがかかる反面、耐候性に優れ、メンテナンスも比較的容易で、意匠上美しいことから、公共建築物やマンションなどで広く選択されている。


日本におけるタイルメーカーは、量産を得意とする大手から特殊なタイルを作る中小企業まで様々であるが、近年は需要の減少と共にメーカーの撤退が進んでいる。

岐阜県多治見市土岐市近隣には、良質な陶磁器の土が採掘されることから、原土や顔料を扱う原料会社、タイルメーカーやタイル販売商社など、多くのタイル産業が集積している。TOTOのタイル部門を担うTOTOマテリアは岐阜県土岐市に本社を置く。日本の建材の中で、産業集積地のある建材は珍しく、歴史と伝統のある地場産業ではあるが、それ故にタイル業界の体質は保守的なところもあり、海外メーカーとの今後の競争には多くの課題を抱えている業界でもある。

タイル目地[編集]

目地(めじ、めち)とは、タイルとタイルの隙間を指し、剥離防止や防水を目的として、通常モルタル白セメントが充填され、色はグレーまたは白になる。目地は性質上カビの発生源になりやすいため、こまめな清掃が不可欠である。

以前は、「外国製の輸入タイルの場合、タイルの大きさに誤差があり、目地が大きめにとられることが多い。日本のタイルは精度が高く、目地を小さくとることができる。」とよく言われたが、タイルの風合いや製法によるところがあるため、輸入タイルという区分で寸法精度について一概に評価するのは危険であり、個々のタイルの性質を理解した上で、目地幅を決定することが望ましい。

その他のタイル[編集]

ガラスタイル 
ガラス質の表面を持つタイルで透明感がある。下地色が濃くなると透けて見える場合があり施工には注意が必要。
タイルカーペット 
カーペットを正角に切断した片材を床に敷き詰めた床仕上げのひとつ。事務室などで使われる。とくにOAフロアにおいては部分的に剥がせる必要があるため、これが一般的である。
コルクタイル 
コルクで作られた正角の片板を床に敷き詰めた床仕上げのひとつ。保温性、吸音性、弾力性、触感に優れ、経済的で施工も容易。一般的に磨耗が激しく耐用年数は短い。住宅の居間や診療所の待合室などで使われることが多い。
吹き付けタイル 
建築物や構造物に用いられる左官外装仕上げのひとつ。光沢のある塗膜が得られる。合成樹脂を混合したモルタルなどを吹き付けガンで吹き付けた凹凸面を、コテ塗りやローラー塗りで均らし表情を出す。学校公民館などの公共建築物や集合住宅、戸建て住宅など、幅広く使われる。色彩の種類が多く、表情の選択に幅がある。凹凸があるため汚れが付着しても比較的目立ちにくい。弾性のあるものは下地の微細な亀裂にも追随して浸水を防ぐ。

主なタイルメーカー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 前田正明『タイルの美:西洋編』TOTO出版 1992年、ISBN 4887060408 pp.19-28
  2. ^ 『つくる陶磁器』編集部 編『すべてがわかる!:やきもの技法辞典』、双葉社、2008年、p.43
  3. ^ ノエル・ライリー 著、椋田直子 訳『タイル・アート:世界の壁面を飾った小さな美術品』美術出版社 1990年、ISBN 4568180449 pp.20-31
  4. ^ ノエル・ライリー 著、椋田直子 訳『タイル・アート:世界の壁面を飾った小さな美術品』美術出版社 1990年、ISBN 4568180449 pp.90-93

関連項目[編集]

外部リンク[編集]