ジムカデ (植物)

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ジムカデ
乗鞍岳(長野県松本市)の高山帯の岩場に自生するジムカデ(2013年7月21日に撮影)
ジムカデ、2013年7月
乗鞍岳の高山帯、長野県松本市にて
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : キク類 asterids
: ツツジ目 Ericales
: ツツジ科 Ericaceae
亜科 : ジムカデ亜科 Harrimanelloideae
: ジムカデ属 Harrimanella
: ジムカデ H. stelleriana
学名
Harrimanella stelleriana (Pall.) Coville[1]
和名
ジムカデ

ジムカデ(地百足[2]学名Harrimanella stelleriana (Pall.) Coville[1])は、ツツジ科ジムカデ属分類されるほふく性[3]常緑小低木の1[4]。地をはう茎がムカデに似ていることが和名の由来[5]。種小名のstellerianaは、ドイツ人分類学者ゲオルク・シュテラーを意味する[3]

特徴[編集]

は直径約1 mmの細い針金[4]で、分岐しながら地をはって広がり[6]、枝先は斜めに起き上がるか直立する[3]。木の高さは3-7 cm[2]は長さ2-3 mm、幅約1 mmの楕円形または広被形(鱗片状[7])でほとんどがなく厚みがあり[4]革質[7]、枝に密に互生する[6]。葉の多くは2年生[7]、上面はなめらかで濃い緑色で、下面は太い中脈が通り、光沢があって毛はない[3]。枝先に短い花柄を出し、白い花を下向きまたは横向きにつける[4]。開花時期は7-8月[2][5]花冠は長さ4-5 cmの先がややつぼまった広鐘形で5深裂する[6]は紅紫色で5全裂する[4]雄蕊は10個で、に角状の突起がある[6]果実の朔果は直径3.5 mmほどの球形で[6]、直立し[4]、円錐状の花柱が残る[3]

分布と生育環境[編集]

高山帯の岩場に生育するジムカデ

日本千島列島樺太カムチャッカアリューシャンから北米北西部にかけての北太平洋沿岸や島嶼に分布する[4][7]基準標本ベーリング島のもの[2]

日本では、北海道礼文島大雪山系夕張山地日高山脈知床山地[注釈 1][8][注釈 2][9]本州中部地方以北(月山[10]吾妻山飛騨山脈木曽山脈赤石山脈中部以北[3])に分布する高山植物[2]である。

寒帯高山帯[2]、岩場、礫地、草地[6]に生育する。日当たりのよい多湿な場所に群生する[7]

分類[編集]

同属のH. hypnoides
アウゴスト・メンツ編、『スカンディナビアの植物図鑑』から

ジムカデ属は2種(本種:H. stellerianaH. hypnoides)が知られている[2][5]。日本には本種のみが分布する[2]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ジムカデは、田中澄江の『新・花の百名山』で羅臼岳を代表する花の一つとして紹介されている。
  2. ^ ジムカデは、北海道自然保護条例による高山植物の指定を受けている。

出典[編集]

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ジムカデ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2016年7月26日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 清水 (2014)、276頁
  3. ^ a b c d e f 前沢 (1970)、48頁
  4. ^ a b c d e f g 林 (2011)、581頁
  5. ^ a b c 佐竹 (1981)、11頁
  6. ^ a b c d e f 豊国 (1988)、262頁
  7. ^ a b c d e 小野 (1987)、263頁
  8. ^ 田中 (1995)、37頁
  9. ^ 北海道立自然公園条例による高山植物の指定” (PDF). 北海道. pp. 8 (2004年3月9日). 2016年7月26日閲覧。
  10. ^ 月山(庄内区域)における自然環境現状調査報告書” (PDF). 山形県. pp. 8. 2016年7月26日閲覧。

参考文献[編集]

  • 小野幹雄林弥栄(監修) 編『原色高山植物大図鑑』北隆館、1987年3月30日。ISBN 4832600079 
  • 清水建美門田裕一、木原浩『高山に咲く花』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑8〉、2014年3月22日。ISBN 978-4635070300 
  • 田中澄江新・花の百名山文藝春秋、1995年6月。ISBN 4-16-731304-9 
  • 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1 
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本Ⅲ合弁花類』平凡社、1981年10月。ISBN 4582535038 
  • 前沢秋彦『高山植物』保育社〈標準原色図鑑全集 11〉、1970年1月。ISBN 4586320117 
  • 林弥栄『日本の樹木』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2011年11月30日。ISBN 978-4635090438 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]