コンテンツにスキップ

コウゾ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コウゾ
コウゾ
分類APG
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: バラ目 Rosales
: クワ科 Moraceae
: コウゾ属 Broussonetia
: コウゾ Broussonetia × kazinoki
学名
Broussonetia × kazinoki Siebold (1830)[1]
シノニム
和名
コウゾ

コウゾ(楮、栲[4]学名: Broussonetia × kazinoki)は、クワ科コウゾ属(カジノキ属[5])の植物。古くから和紙の原料として栽培されてきたコウゾを栽培コウゾといい[6]ヒメコウゾ(学名: Broussonetia kazinoki)とカジノキ(学名: B. papyrifera)の交雑種である[7][注釈 1]。一部野生化している[9]。別名、カゾともよばれる[5]

なお、野生種のヒメコウゾを通称でコウゾともいうが[6]、本項では紙の原料として栽培され一部野生化している樹種(Broussonetia × kazinoki)をコウゾとして述べる。

概要

[編集]
フランスの通俗科学書『産業の驚異・第二集』に掲載されたコウゾ (1873年刊)[10]

コウゾは文献により種とするものと雑種とするものがみられるが[8]、ヒメコウゾとカジノキの雑種という説が有力視されている[4][11]。ヒメコウゾは雌雄同株、カジノキは雌雄異株であるが、コウゾは雌雄異株とされているものの同株という説もあり曖昧とされる[9]

本来、コウゾは繊維を取る目的で栽培されているもので、カジノキは山野に野生するものであるが、野生化したコウゾも多くある[4]

コウゾの標準学名は、Broussonetia × kazinoki で、シノニムBroussonetia × hanjianaBroussonetia kazinoki × B. papyrifera とされる。

古い時代においては、コウゾとカジノキは区別されていなかった[4][9]江戸時代に日本を訪れたフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトも両者を混同してヨーロッパに報告したことからヒメコウゾの学名がBroussonetia kazinokiとなってしまっており[9]、命名者がカジノキと間違えて名付けてしまったものである[4]。一方、カジノキの学名は B. papyrifera とされ、紙の原料となる樹木であることに由来して名付けられたものである[4]

ヒメコウゾとコウゾについても、ヒメコウゾをコウゾの別名とする文献とその逆とする文献の両者があることが指摘されている[8]

なお、コウゾの花言葉を、「過去の思い出」とする文献がある[5]

特徴

[編集]

落葉広葉樹低木[5]、高さ2 - 5メートル (m) で、樹皮は褐色。樹皮は灰褐色で縦に浅く裂け、カジノキに似る[11]は短柄をもって互生[5]葉身は卵形で鋸歯があり、深く2 - 3裂する[7]。葉の裏側は色が薄い[7]冬芽は互生し、丸みのある円錐形で、冬芽やその周囲には毛がある[11]

雄花
雌花

花期は春から初夏(4 - 6月ごろ)で[5]、葉が出るのと同時にが咲く[7]。果実はほとんど結実しない[5]核果はキイチゴ状に集まって6月ごろに赤く熟す[7][12]

一方、ヒメコウゾは山野に自生し、コウゾよりも全体に小さい[7]

利用

[編集]

樹皮から繊維を採って糸を作り、布を織るために使われたため、古代から日本各地で栽培が行われた[4]

樹皮の繊維は長く、繊維が絡み合い強靱なため、コウゾを使った紙は粘りが強く揉んでも丈夫な紙となる[7]。日本古来の和紙は、奈良時代にアサカラムシを使った麻紙が最初に作られたが、ほどなくコウゾの樹皮を使った楮紙(こうぞがみ)が普及し、穀紙(こくし)とも呼ばれた[13]。楮紙は薄くても丈夫なため、さまざまな用途に使われた[13]

コウゾの皮の繊維を蒸して水にさらし、細かく割いて作った糸を木綿(ゆう)といい、同じ字の木綿(もめん。ワタの繊維)とは別のものである[14]。ワタの木綿が普及する以前は、楮布(こうぞふ)が広く使われたが、現在では徳島県那賀郡木頭で伝承されているのみである[14]。これは阿波太布(あわたふ)といって、その製造技法は徳島県の無形文化財に指定されている[14]

神道の祭事に用いられるが、後に紙で作られた紙垂も用いられるようになった。

生産

[編集]

山間地の傾斜地に栽培されることが多い。しかし、シカによる食害などがあるため、生産意欲が減退した地域もある。人家近くの林の中で野生化しているものもある[5]

日本国内では、高知県本山町いの町茨城県大子町常陸大宮市などが主な産地であるが、越前和紙美濃和紙・細川紙など、多くの漉き手から高い評価を得ているのが大子町産の「那須楮」である。世界各国の有力輸入先としてタイ王国中華人民共和国パラグアイなどが挙げられ、うち中国産とパラグアイ産の品質が高く、価格も比較的に安い。現在、日本国内で流通しているコウゾのおよそ半数が日本国外産と見られている[15]

耐用年数

[編集]

日本では、平成20年度税制改正において、法人税等の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」が改正され、別表第四「生物の耐用年数表」によれば平成20年4月1日以後開始する事業年度にかかるコウゾの法定耐用年数は9年となった。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ただし、1990年代の文献でも種とする文献と雑種とする文献の両者があることが指摘されている[8]

出典

[編集]
  1. 米倉浩司・梶田忠 (2003-). Broussonetia x kazinoki Siebold コウゾ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年2月1日閲覧。
  2. 米倉浩司・梶田忠 (2003-). Broussonetia x hanjiana M.Kim コウゾ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年2月1日閲覧。
  3. 米倉浩司・梶田忠 (2003-). Broussonetia kazinoki Siebold sensu Kitam. x B. papyrifera (L.) L'Hér. ex Vent. コウゾ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年2月1日閲覧。
  4. 1 2 3 4 5 6 7 田中潔 2011, p. 98.
  5. 1 2 3 4 5 6 7 8 田中潔 2011, p. 99.
  6. 1 2 岩瀬徹「身近な雑かん木 (4) クワ(ヤマグワ)とコウゾ(ヒメコウゾ)」『植調』第46巻第3号、植調協会、2012年。
  7. 1 2 3 4 5 6 7 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 238.
  8. 1 2 3 細木大輔. コラム 緑化植物 ど・こ・ま・で・き・わ・め・る コウゾ”. https://www.jsrt.jp/. 2026年4月14日閲覧。
  9. 1 2 3 4 渡邊高志ほか「ソハヤキ植物要素区系における和紙原料「楮」の葉の形態的差違とその起源に関する地理情報システム応用研究(第1報)」、高知工科大学。
  10. ルイ・フィギエ
  11. 1 2 3 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 189.
  12. 渡辺資仲「コウゾ」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p225 日本林業技術協会 1984年(昭和59年)発行。
  13. 1 2 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 94.
  14. 1 2 3 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 259.
  15. 和紙原料の生産・流通状況、日本特用林産振興会。

参考文献

[編集]
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 田中潔『知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2011年7月31日、98 - 99頁。ISBN 978-4-07-278497-6 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、238頁。ISBN 4-522-21557-6 

関連項目

[編集]