オニヒトデ

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{{生物分類表 |色 = 動物界 | 画像 = Acanthaster planci(kaiyukan).jpg
海遊館での飼育展示 | 画像キャプション = | 名称 = オニヒトデ | 界 = 動物界 Animalia | 門 = 棘皮動物門 Echinodermata | 綱 = ヒトデ綱 Asteroidea | 目 = アカヒトデ目 Valvatida | 科 = オニヒトデ科 Acanthasteridae | 属 = オニヒトデ属 Acanthaster | 種 = オニヒトデ A. planci | 学名 = Acanthaster planci
(Linnaeus, 1758) | 和名 = オニヒトデ | 英名 = crown-of-thorns starfish 外来種

オニヒトデAcanthaster planci, 鬼海星、鬼人手)とは、オニヒトデ科に属する動物の一種である。

形態[編集]

輻長約15-30 cm の大型のヒトデである。多数のを持ち、全身がに覆われている。

生態[編集]

サンゴ礁に生息し、成体がサンゴも餌とする。ビピンナリア幼生は植物プランクトンを摂取して成長し、定着した幼体は石灰藻デトリタス(魚などの死体が分解してできた有機物)を食べるが、ある程度の大きさまで成長すると石灰藻食、デトリタス食に加えて珊瑚を捕食するようになる。石灰藻、サンゴとも摂食するときは口からを裏返して広げて餌生物に押し付け、消化吸収を行う。寿命は6~8年。なお、通常はミドリイシ類やコモンサンゴ類等の成長が早いサンゴを好むため、サンゴ礁の多様性を維持する役目を負っていると考えられている[1]

大発生について[編集]

時をおいて大発生することがあり、成長の速いミドリイシ類やコモンサンゴ類を食べ尽くして、成長の遅いサンゴまで食べるため、サンゴ礁環境の保全上有害とされている。沖縄近海のサンゴ礁ではオニヒトデが大量発生しており、問題となっている。また、2009年2月には、徳島県牟岐町牟岐大島に生息するハマサンゴの周辺にも存在が確認されている。

この大発生に関して、自然の長期サイクルによるとする説と、人間の環境破壊に要因を求める説があるが、富栄養化がオニヒトデ幼生の餌である植物プランクトンを増殖させ、大発生につながるとする説が最も有力視されている。2010年オーストラリア海洋科学研究所オーストラリア北東部のグレート・バリア・リーフのオニヒトデ大発生が「農業肥料や都市排水などでサンゴ礁が富栄養化したために頻発するようになった」という仮説を多方面から検証した日本人オニヒトデ研究者・岡地賢らによる共同論文が公開された[2]。また岡地はネット上で一時期話題になった「オニヒトデ駆除が大発生を生み出す」説に対して「オニヒトデを傷つけると、腕の付け根あたりか らブドウの房のような卵巣や精巣がこぼれ出てきます。その房の中に入っている卵や精子は、特殊な細胞の層に包まれていて未熟な状態ですので、そのままでは受精できません。仮に細胞層がやぶれて受精しても、大多数は正常に成長せず死滅します。このような生理的な卵成熟のメカニズムは、ヒトデ類全般に共通しています。オニヒトデの卵を包んでいる細胞層 は、オニヒトデ自身が体内に分泌する化学物質(ホルモン)の作用を受けて初めてこわれ、卵が放出されます。このホルモンがオニヒトデ体内で分泌される時期、すなわち繁殖期は、水温が約28℃になる6月上旬(八重山の場合)であることがわかっています。」と、「オニヒトデ駆除が大発生を生み出す」説の誤謬を明確に解説している[要出典]

なおグレート・バリア・リーフと沖縄本島周辺に生息するオニヒトデのゲノムをオーストラリア海洋科学研究所と沖縄科学技術大学院大学などが解析したところ非常に似ていることが判明。幼生が海流に乗って太平洋で広く拡散していると推測されている[3]

オニヒトデの天敵造礁サンゴで、オニヒトデ浮遊幼生を造礁サンゴポリプが食べて相互の天敵関係となる。ホラガイをオニヒトデの天敵とする説があるが、ナマコウニなども捕食する他、1個のオニヒトデを消化するのに1週間かかると言われており、大発生したオニヒトデの前では天敵となりえない。そしてオニヒトデが汚染に強いこととあいまって、大発生のサイクルが短くなっている、という指摘もある。[要出典]

かつて大発生時には対症療法的に多大な予算をつぎ込んで駆除作業が行われることが多かったが、すべてのオニヒトデを駆除することは不可能であること、また漫然とした駆除がかえって間引きによるオニヒトデの成長を助長しオニヒトデの再生産に荷担する可能性があることなどから、近年[いつ?]、状態の良いサンゴ礁において徹底的に駆除を行い、それらのサンゴ礁を保全することで、将来的に、食害に遭ったサンゴ礁へのサンゴ幼生の供給源とする考えに基づいた駆除が行われている。[要出典]

毒性[編集]

オニヒトデの体表面には多数の有毒の棘が生えており、生理活性作用の高いplancitoxin I及びplancitoxin IIを主成分とする毒物質(オニヒトデ粗毒)を有している[4]。 これがヒトの皮膚に刺さると毒素によって激しい痛みを感じ、アナフィラキシーショックによって重症に陥ることがあり、最悪の場合、死に至ることがある。刺された時の対応は、なるべく早くポイズンリムーバーで血液を吸引し、後に温湿布で患部を温める。

  • 37 kDaの塩基性糖タンパク質で、肝毒性を持つ。マウス LD50(静脈投与)140 μg/kg、致死時間 96時間程度[4]

珊瑚の死滅と海洋環境の変化について[編集]

1970年代、インドー太平洋海域で約1500万匹のオニヒトデが駆除された。国内の琉球列島では約1300万匹の駆除記録が残る。国内で最もオニヒトデの餌となるサンゴ礁面積が広く、国内サンゴ礁面積の55%を持つ八重山諸島(石垣島・石西礁湖・西表島)では、1972年〜1994年の22年間で約163万匹駆除されたが生サンゴ被度は著しく低下し1990年以後から回復を始めた。サンゴの死滅は海草類を増加させて海草食の魚類や貝類の一時的増加が見られる。

サンゴの回復を目指して1987年~1990年に沖縄本島南部の知念村沖で「サンゴ礁造園技術の研究」が、1990年 - 1993年には石西礁湖で「サンゴ移植」が試みられたが、「サンゴ礁造園技術の研究」[5]は失敗してやぐらも撤去され、石西礁湖「サンゴ移植」[6]は移植サンゴの周りから自然再生したサンゴに覆われて移植効果が見いだせなかった。

1990年代は、沖縄県内のサンゴは回復傾向を示していたが、1998年、8月末から9月にかけての地球規模の海水温上昇によるサンゴ白化が回復途上のサンゴに大きなダメージを与えた。沖縄本島周辺は2003年までサンゴ礁モニタリングが毎年行われておらず[7]、回復を示す海域や影響を受けてない海域も一部見つかっている。サンゴ白化は潮流や波当りの強い外洋に面した礁嶺で回復が早く、海水循環の劣るリーフ内礁池や八重山諸島・石西礁湖海域の回復が遅れている。

回復の早かった礁嶺を多面積有する八重山諸島・宮古島には再度のオニヒトデ大発生が現在[いつ?]進行中である。

利用・活用[編集]

愛媛大学南予水産研究センターの研究によると、オニヒトデの分泌液には魚の成長を促進する成分が含まれており、これを利用した飼料開発により、養殖魚の白点病の抑制や養殖漁業を効率化に役立つのではないかと期待されている[誰によって?]

オニヒトデが大量に駆除される沖縄県では、沖縄本島・宮古島市・石垣市で農業用有機肥料として活用されている[8]

日本での分布[編集]

主に南西諸島に生息し、黒潮を通じ北上、本州でも確認されている。

脚注[編集]

  1. ^ サンゴの敵、オニヒトデの正体を知ろう - 山口正士(元琉球大学理学部海洋自然科学科教授)
  2. ^ Three lines of evidence to link outbreaks of the crown-of-thorns seastar Acanthaster planci to the release of larval food limitation
  3. ^ The crown-of-thorns starfish genome as a guide for biocontrol of this coral reef pest”. 『ネイチャー』. 2017年6月8日閲覧。
  4. ^ a b オニヒトデ刺棘のタンパク毒(ミニシンポジウム海洋動物の刺毒に関する最近の知見) 日本水産学会誌 Vol. 69 (2003) No. 5 P 831-832
  5. ^ 「サンゴ礁造園技術の研究」 - 海洋研究開発機構 - ウェイバックマシン(2001年7月7日アーカイブ分)
  6. ^ 八重山サンゴ礁保全協議会・ニュースレター サンゴ礁 No.1 - 八重山サンゴ礁保全協議会(1999年11月)
  7. ^ サンゴ礁モニタリング調査 - 沖縄美ら島財団(2021年6月6日閲覧)記事内に、2004年に予備調査実施とある。
  8. ^ オニヒトデ駆除活動と有効利用 - シンソーグリーンブログ(2009年6月2日)2021年6月6日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]