ホラガイ

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ホラガイ
Charonia tritonis in Guam.jpg
生きたホラガイ(撮影地グアム)
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 腹足綱 Gastropoda
亜綱 : 新生腹足亜綱 Caenogastropoda
: タマキビ型目 Littorinimorpha
上科 : ヤツシロガイ上科 Tonnoidea
: ホラガイ科 Charoniidae
: ホラガイ属 Charonia
: ホラガイ tritonis
学名
Charonia tritonis (Linnaeus1758)
和名
ホラガイ
英名
Triton's trumpet

ホラガイ(法螺貝)、学名 Charonia tritonis: Triton's trumpet)は、ホラガイ科(旧分類:中腹足目 フジツガイ科)[1]に分類される巻貝の一種。日本産の巻貝では最大級の種類で、殻高(殻長)が20cm[2]、40cm以上になる個体もある。サンゴを食害するオニヒトデを捕食する(前同 小林安雅 p.110.オニヒトデを食べ、再生不能にする事で知られる。)ことから「オニヒトデの天敵」と言われることもあるが、オニヒトデの大量発生を抑える程の効果は無いとされる(詳しくは「オニヒトデ」の項目を参照)。内臓の部分を除く身の部分は刺身などの食用とされる他、貝殻は楽器として使用されることでよく知られている。

分布[編集]

日本では、紀伊半島八丈島以南に分布する[3]

楽器としての利用[編集]

音を出せるよう加工されたホラガイの貝殻。2006年、岐阜城資料館。

貝殻の殻頂を4-5センチ削り、口金を石膏で固定して加工した吹奏楽器が、日本、東南アジアオセアニアで見られる。楽器分類法上は、唇の振動で音を出すため金管楽器に分類される。

日本での使用例[編集]

日本での使用例は平安時代から確認でき、12世紀末成立の『梁塵秘抄』の一首に、「山伏の腰につけたる法螺貝のちやうと落ちていと割れ砕けてものを思ふころかな」と記され、同じく12世紀成立の『今昔物語集』においても、本朝の巻「芋がゆ」の中で、人呼びの丘と呼ばれる小高い塚の上で法螺貝が使用されていた記述がある。

戦国時代には合戦における戦陣の合図や戦意高揚のために、陣貝と呼ばれる法螺貝が用いられた[4][5]

現存する中世の法螺貝笛として、「北条白貝(大小2つ、日本名貝の一つ)」があり、現在、福岡市美術館所蔵で、由来は16世紀末の小田原征伐の際、降伏した北条氏直黒田如水の仲介に感謝し、贈ったものの一つとされる[6]

近代期の戦闘においても陣貝は用いられ、一例として、明治期の秩父事件において、戸長役場の報告として、「町の東西北三方より暴徒600人計、螺(ホラ)を吹き、鬨の声を発し、押し来たり」と記録されている[7]

ハワイで使用されている法螺貝「プ」。航海カヌー「ホクレア」備品。
プージャー英語版の儀式でシャンカを吹くヒンズー教の祭司

修験道においては、「立螺作法(りゅうらさほう)」と呼ばれる実践が修行される。立螺作法には、当山派・本山派などの修験道各派によって流儀を異にし、吹奏の音色は微妙に違う。大まかには乙音(低音側)、甲音(高音側)、さらには調べ、半音、当り、揺り、止め(極高音)などを様々に組み合わせて、獅子吼に擬して仏の説法とし、悪魔降伏の威力を発揮するとされ、更には山中を駈ける修験者同士の意思疎通を図る法具として用いられる。

昭和初期に発表された醍醐寺三宝院当山派本間龍演師の『立螺秘巻』は、その後の修験者、とりわけ吹螺師を修行する者の必須テキストとして評価伝承されている。

東大寺二月堂の「お水取り」では、堂内から鬼を追い祓うため、法螺貝が吹き鳴らされる。

日本以外での使用例[編集]

チベット語でトゥンカルは「白いホラガイ」の意である。サンスクリットではシャンカ(śaṅkha)と呼ばれる[8]ヴィシュヌ神の象徴であり、奉納品で、海での安全を願う魔除けである。

装身具[編集]

シャンカから、バングルブレスレットなどが作られる[9]

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古代インドの医学書『アーユルヴェーダ』に Shankha bhasma という薬として書かれている。ライムジュースに浸して10-12回焼き、最終的に粉末とする。この粉末にはカルシウムマグネシウムが含まれ、制酸薬・整腸剤として機能すると考えられている[10]

栃木県芳賀郡の俗信として、「からみみになったら、法螺貝を削り、その粉を耳の中に入れると治る」とされた(後述書 p.675)他、民間療法として、三重県では、「できものには法螺貝のふたを焼いてつけると吸い出し効果がある」とされた[11]

備考[編集]

  • 密教用語では、法螺は、「ホラ」ではなく、「ホウラ」と読む(後述書 p.152)。如来の説法の声を象徴し、その音を聞けば、罪は消滅し、極楽に往生できると経典に記され(後述書 p.152)、衆生の罪の汚れを消し去り、悟りに導く象徴として法螺が吹かれた(後述書 p.152)。空海が持ち帰ったともされ、灌頂の際には阿闍梨が受者に法螺を授けた[12]
  • 元々、軍用の陣笛は、動物の角などを用いていたとされるが(後述書 p.144)、のちに法螺貝に代わったとされる(後述書 p.144)。軍用の法螺は三巻半の貝が用いられ、山伏の法螺は三巻の貝が用いられた(後述書 p.144)。家紋としては、京都聖護院の「法螺貝紋」が知られ、「糸輪に法螺貝紋」などがある[13]
  • 新渡戸稲造が聞いた話として、「戦争で用いられる法螺笛は、なるべき傷があるものが選ばれたとされ、その理由として、海底で波とうに打たれ、たたかれ、かしこの岩や石にぶつかり、かん難を重ねた貝が一番良い音を発するゆえ、漁師が取っていた」としている(新渡戸稲造 『修養』明治44年刊、第十章「逆境にある時の心得」内の「逆境の人は心に疵を受けやすい」の項より)。
  • 秋田県の俗信として、「山伏が法螺を吹くと雨が降る」というものがある[14]

脚注[編集]

  1. ^ Strong, Elen E.; Puillandre, Niclas; Beu, Alan G.; Castelin, Magalie; Bouchet, Philippe. (2019-01). “Frogs and tuns and tritons – A molecular phylogeny and revised family classification of the predatory gastropod superfamily Tonnoidea (Caenogastropoda)”. Molecular Phylogenetics and Evolution 130: 18-34. doi:10.1016/j.ympev.2018.09.016. 
  2. ^ 小林安雅 『ヤマケイポケットガイド16 海辺の生き物』 山と渓谷社 2000年 p.110.
  3. ^ 小林安雅 『ヤマケイポケットガイド16 海辺の生き物』 山と渓谷社 2000年 p.110.
  4. ^ 上泉信綱伝の『訓閲集』(大江家の兵法書を戦国風に改めた兵書)において戦場における作法が記述されている。
  5. ^ ただし、西日本で取れる材料であることから、東では代用品として、「竹法螺」が作られ、用いられた。落語の『一眼国』では東北を舞台として、竹法螺が登場し、岩城騒動でも竹法螺が用いられたことからも東日本で使われたことが分かる。音は、法螺貝の音色に似ており、2012年11月4日(日曜)放送の日本テレビの番組『音のソノリティ』においても紹介されている。従って、法螺貝でなくては出せない独特の音というわけではない。
  6. ^ 『歴史読本 5 2013 特集 徹底検証!黒田官兵衛』 新人物往来社 p.12.
  7. ^ 古林安雄 『秩父事件 自由困民党の戦い』 埼玉新聞社 2014年 p.53.
  8. ^ 宮坂宥勝『仏教語入門』(1987年) p.178.
  9. ^ Rajendralala Mitra (2006). Indo-aryans. 285-8. Read Books. ISBN 978-1-4067-2769-2. https://books.google.com/books?id=V8KoGspmBGgC&pg=PA287&dq=sankha&lr=&as_brr=3&client=firefox-a&cd=44#v=onepage&q=sankha&f=false 
  10. ^ Lakshmi Chandra Mishra (2004). Scientific basis for Ayurvedic therapies. CRC Press. p. 96. ISBN 978-0-8493-1366-0. https://books.google.com/books?id=qo0VPGr0RF4C&pg=PT120&dq=sankha&lr=&as_brr=3&client=firefox-a&cd=57#v=onepage&q=sankha&f=false 
  11. ^ 鈴木棠三 『日本俗信辞典 動物編』 角川ソフィア文庫 2020年 p.675.
  12. ^ 『Books Esoterica 第1号 密教の本 驚くべき秘儀・修法の世界』 学研 第8刷1993年(1刷92年) p.152.
  13. ^ 『日本家紋総覧 コンパクト版』 新人物往来社 第5刷1998年(1刷90年) p.144.
  14. ^ 鈴木棠三 『日本俗信辞典 動物編』 角川ソフィア文庫 2020年 p.675.

関連項目[編集]

  • 山伏
  • ほら話
  • デロレン祭文 - 別名「貝祭文」。幕末から明治に盛んであった芸能。法螺貝に口を当てるが、吹くのではなく「でろれんでろれん」と声を出す(拡声器として使用)。
  • トリートーン - 欧米では、ホラガイは「トリトンのトランペット」と呼ばれる。
  • トラヴァンコール王国 - 18-19世紀にあったインド最南部の王国。国旗に神聖なホラガイが使用された。