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エプレレノン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エプレレノン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 セララ, Inspra
Drugs.com monograph
MedlinePlus a603004
胎児危険度分類
法的規制
薬物動態データ
生物学的利用能69%
代謝肝代謝 (CYP3A4)
半減期6-8 時間
排泄67% renal
32% biliary
識別
CAS番号
107724-20-9 チェック
ATCコード C03DA04 (WHO)
PubChem CID: 5282131
IUPHAR/BPS 2876
DrugBank DB00700 チェック
ChemSpider 10203511 チェック
UNII 6995V82D0B チェック
KEGG D01115  チェック
ChEBI CHEBI:31547 チェック
ChEMBL CHEMBL1095097 チェック
別名 Epoxymexrenone, SC-66110
化学的データ
化学式C24H30O6
分子量414.49
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エプレレノン(Eplerenone)は選択的英語版アルドステロン受容体拮抗作用を持つスピロラクトン英語版系高血圧治療薬である。商品名セララ。慢性心不全の補助薬としても用いられる国がある。心筋梗塞後の心血管イベントのリスクを低下させる。エプレレノンはスピロノラクトンよりも鉱質コルチコイド受容体選択性が高く、性ホルモン受容体や糖質コルチコイド受容体への拮抗作用は小さい。そのためスピロノラクトンで見られていた女性化乳房月経異常などがエプレレノンでは少ない。エプレレノンはカリウム保持性利尿薬であり、血中カリウムを低下させずに水分を排泄させる。

エプレレノンはファルマシア社が開発したが、2002年にファイザーが買収し、同社から販売されている。米国で販売承認されたのは2002年9月(高血圧)と2003年10月(心不全)[1]、日本で製造販売承認されたのは2007年7月である[2]。欧州でも承認されている[3]

効能・効果

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日本で承認されている効能・効果は「高血圧症[4]、慢性心不全[5] である。

高血圧

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エプレレノンは単剤または他薬との併用で高血圧治療に用いられる[6]。軽度・中等度高血圧の患者417名の患者を対象にエプレレノンを8週間投与したところ、収縮期英語版血圧と拡張期英語版が共に用量依存的に低下した[7]。エプレレノンの降圧効果はスピロノラクトン、エナラプリルロサルタンアムロジピンよりも高いが、死亡率を低下させるか否かは判明していない[7]

心不全

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エプレレノンは急性心筋梗塞後3〜14日の心不全および左心室不全患者の死亡リスク低下に他薬と共に用いられる。他系統の鉱質コルチコイド受容体拮抗薬に共通するカリウムおよびマグネシウムの枯渇を解消すべく、スピロラクトン英語版構造が導入された[8]スピロノラクトンの代替薬としては最も高価である[9]NYHA英語版分類I〜IVの患者6,632名を対象にエプレレノンを投与したEPHESUS臨床試験とNYHA分類IIIの患者1,663名にスピロノラクトンを投与したRALES臨床試験を比較した結果、エプレレノンの方がプロゲステロンアンドロゲン糖質コルチコイド様作用が弱く、効果の持続時間はスピロノラクトンの方が長いことが判明した[6]

禁忌

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下記の患者には禁忌とされている[4]

副作用

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重大な副作用として、高カリウム血症(1.7%)が知られている。

副作用は体内の水分、ナトリウム、カリウムの変動によるものが多く、主に心臓および中枢神経系に発生する[6]。臨床試験では副作用は26.7%に見られ、主なものは頭痛(6.1%)、眩暈(2.6%)、嘔気(1.9%)、高カリウム血症(1.7%)、疲労(1.6%)、 ALT(GPT)上昇(1.4%)、γ-GTP上昇(1.3%)、消化不良(1.2%)、AST(GOT)上昇(1.2%)、筋痙攣(1.0%)、高尿酸血症(1.0%)等であった。低血圧、眩暈、腎機能変化、クレアチニン上昇も発生する[10]女性化英語版女性化乳房勃起不全、性欲減退、男性器萎縮などの性機能に関する副作用がスピロノラクトンよりも少ない[11] のは、構造上、プロゲステロンとの類似性がより低く、プロゲステロン作用・抗アンドロゲン作用が弱いことによる[6]。これらの薬剤を考える際には、アルドステロンの非ゲノム効果を様々に変化させることに注目することが重要である[6]

相互作用

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エプレレノンは主に肝臓シトクロムP450CYP3A4で代謝される。したがって、 CYP3A4を誘導または阻害する薬剤と相互作用し得る。具体例を挙げると、ケトコナゾールイトラコナゾールはCYP3A4阻害薬でありエプレレノンの血中濃度を増加させるので併用禁忌である。エリスロマイシンサキナビルベラパミルなどの併用にも注意が要る。

また代替塩、カリウムサプリメント、他のカリウム保持性利尿薬などカリウムの血中濃度を上昇させる薬剤との併用は、高カリウム血症を引き起こす危険がある[12]

作用機序

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エプレレノンは抗鉱質コルチコイド薬の一つであり、鉱質コルチコイド受容体(MR)の阻害薬である[13]。化学名は Pregn-4-ene-7,21-dicarboxylic acid, 9,11-epoxy-17-hydroxy-3-oxo, γ-lactone, methyl ester (7α, 11α,17α) であり、スピロノラクトンからは9α,11α-エポキシ架橋と 17α-チオアセチル基のメトキシカルボニル基への置換で得られる[7]。腎臓などの上皮細胞に存在するMRに結合してアルドステロンが血液量を増加させる[3] 事を阻害して血圧を低下させる[14]。エプレレノンのMRへの親和性はスピロノラクトンの10〜20倍低く[13]in vivo では抗鉱質コルチコイド薬としての能力は低い[15]。しかし、スピロノラクトンとは対照的にアンドロゲン受容体プロゲステロン受容体糖質コルチコイド受容体への親和性はほとんどない[13][15]。非ゲノム的な抗鉱質コルチコイド作用がある事も知られている(膜ミネラロコルチコイド受容体英語版参照)[15]。エプレレノンはスピロノラクトンとは排泄経路が異なり、不活性化物の組成が違う。また血中半減期はスピロノラクトンより短い[6]

薬物動態

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エプレレノンの血中半減期は5.00±1.74時間である[4]。糞中に32%、尿中に67%が排泄される[4]

出典

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  1. ^ Jennifer Craft (4 2004). “Eplerenone (Inspra), a new aldosterone antagonist for the treatment of systemic hypertension and heart failure”. Proc (Bayl Univ Med Cent). 17 (2): 217–20. PMC 1200656. PMID 16200104. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1200656/. 
  2. ^ エプレレノン:日本初の選択的アルドステロン阻害薬”. 日経メディカル (2007年8月16日). 2016年5月26日閲覧。
  3. ^ a b Inspra (Eplerenone)”. Drug Development Technology. 2016年4月19日閲覧。
  4. ^ a b c d セララ錠25mg/セララ錠50mg/セララ錠100mg 添付文書” (2011年2月). 2016年5月26日閲覧。
  5. ^ http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2016/2016_12_19.html
  6. ^ a b c d e f Struthers, Allan; Krum, Henry; Williams, Gordon H. (2008-04-01). “A Comparison of the Aldosterone-blocking Agents Eplerenone and Spironolactone” (英語). Clinical Cardiology 31 (4): 153–158. doi:10.1002/clc.20324. ISSN 1932-8737. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/clc.20324/abstract. 
  7. ^ a b c Brown, N. J. (20 May 2003). “Eplerenone: Cardiovascular Protection”. Circulation 107 (19): 2512–2518. doi:10.1161/01.CIR.0000071081.35693.9A. 
  8. ^ Montalescot, Gilles; Pitt, Bertram; Sa, Esteban Lopez de; Hamm, Christian W.; Flather, Marcus; Verheugt, Freek; Shi, Harry; Turgonyi, Eva et al. (2014-09-07). “Early eplerenone treatment in patients with acute ST-elevation myocardial infarction without heart failure: The Randomized Double-Blind Reminder Study” (英語). European Heart Journal 35 (34): 2295–2302. doi:10.1093/eurheartj/ehu164. ISSN 0195-668X. PMID 24780614. http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/35/34/2295. 
  9. ^ Chatterjee, S; Moeller, C; Shah, N; Bolorunduro, O; Lichstein, E; Moskovits, N; Mukherjee, D (August 2012). “Eplerenone is not superior to older and less expensive aldosterone antagonists.”. The American Journal of Medicine 125 (8): 817–25. doi:10.1016/j.amjmed.2011.12.018. PMID 22840667. 
  10. ^ Rossi S, editor.Australian Medicines Handbook英語版 2006. Adelaide: Australian Medicines Handbook; 2006
  11. ^ Craft, Jennifer (April 2004). “Eplerenone”. Proc (Bayl Univ Med Cent); Eplerenone (Inspra), a new aldosterone antagonist for the treatment of systemic hypertension and heart failure (Pub MedCentral) 17 (2): 217–20. PMC 1200656. PMID 16200104. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1200656/. 
  12. ^ LoSalt Advisory Statement (PDF)
  13. ^ a b c Delyani, John A (2000). “Mineralocorticoid receptor antagonists: The evolution of utility and pharmacology”. Kidney International 57 (4): 1408–1411. doi:10.1046/j.1523-1755.2000.00983.x. ISSN 0085-2538. 
  14. ^ Struthers, Allan; Krum, Henry; Williams, Gordon H. (April 2008). “A Comparison of the Aldosterone-blocking Agents Eplerenone and Spironolactone”. Clinical Cardiology 31 (4): 153–158. doi:10.1002/clc.20324. 
  15. ^ a b c Struthers A, Krum H, Williams GH (2008). “A comparison of the aldosterone-blocking agents eplerenone and spironolactone”. Clin Cardiol 31 (4): 153–8. doi:10.1002/clc.20324. PMID 18404673.