ウェスト・コホーテク・池村彗星

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ウェスト・コホーテク・池村彗星
76P/West-Kohoutek-Ikemura
仮符号・別名 76P/1975 D1 = 1975IV = 1975b;
76P/1980 V2 = 1981VIII = 1980r;
1987XV = 1987x;
1993XXI = 1993o
分類 短周期彗星
木星族彗星[1]
発見
発見日 1974年10月15日(初観測)[1]
発見者 リチャード・マーティン・ウェスト
ルボシュ・コホーテク
池村俊彦
発見場所 チリの旗 チリラ・シヤ天文台[1]
軌道要素と性質
元期:2019年11月13.0日(JD 2458800.5)[2]
軌道の種類 太陽周回軌道
軌道長半径 (a) 3.475 au[2]
近日点距離 (q) 1.605 au[2]
遠日点距離 (Q) 5.345 au[2]
離心率 (e) 0.538[2]
公転周期 (P) 6.48 [2]
(2,366.82
軌道傾斜角 (i) 30.457°[2]
近日点引数 (ω) 0.022°[2]
昇交点黄経 (Ω) 84.125°[2]
平均近点角 (M) 2.717°[2]
前回近日点通過 2013年5月7日5時36分51.6秒[2]
(JD 2456419.73393[2]
次回近日点通過 2019年10月26日3時21分33.4秒[2]
(JD 2458782.63997[2]
物理的性質
直径 0.66 km[1]
絶対等級 (H) 13.9[1]
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ウェスト・コホーテク・池村彗星[3](ウェスト・コホーテク・ いけむらすいせい、英語: 76P/West-Kohoutek-Ikemura)は、1975年に発見された短周期彗星である。

発見[編集]

この彗星の発見事情は複雑なものになっている。1975年2月下旬、チェコの天文学者ルボシュ・コホーテクは、同年2月9日におうし座を撮影したプレート上に、南西-北東方向に移動する14等級の彗星状天体を発見した。1枚の写真上では移動方向が分からなかったため、移動方向を外挿して南西と北東の位置を撮影したところ、2月27日に南西への移動を仮定しておひつじ座を撮影したプレート上から13等級の彗星を再発見し、天文電報中央局に報告した。そしてこの彗星は「コホーテク彗星(1975b)」として公表された[4]

愛知県のアマチュア天文家池村俊彦は、新城市の観測所でコホーテク彗星(1975b)を撮影すべく、3月1日19時(JST)に500ミリf/4.5望遠レンズ+103a-Oフィルムを使用し予報位置付近を撮影した。ところが池村は、移動方向を間違え予報と逆の位置を撮影していた。撮影中に池村は間違いに気づいたがそのまま続行し、複数枚の写真を確認したところ、予報されたコホーテク彗星の方向とは逆に移動する12等級の彗星状天体が写っていたために、翌3月2日東京天文台(当時)の香西洋樹を通じて新彗星として報告した。

各地の観測から、池村が3月1日に発見した新彗星はコホーテクが2月27日に撮影した彗星と同じであることが分かり、「コホーテク・池村彗星(1975b)」として改めてアナウンスされた[5]

一方、2月9日にコホーテクが撮影した彗星はコホーテク・池村彗星とは別物で、同27日にコホーテク自身が前述の北東の位置を撮影した際に写っていた15等級の彗星と同定され「コホーテク彗星(1975c)」としてアナウンスされた[6]。現在、この1975c彗星は75D/コホーテク彗星と呼ばれている。

コホーテク・池村彗星(1975b)の軌道が算出されると、ウェストが報告していた未確認天体とも同定された。1975年1月、ヨーロッパ南天天文台 (ESO) のリチャード・マーティン・ウェストは1974年10月15日にほうおう座を撮影したプレート上に12等級の彗星状天体が写っていることを報告した[7]。撮影から3ヶ月が経過し見失われたと思われたが、この彗星と連結され「ウェスト・コホーテク・池村彗星(1975b)」と再度改名された。同時にアーク(観測期間)が延びたために短周期彗星であることも判明した[8]

軌道[編集]

発見前は近日点距離5 au、周期30年以上の大きな軌道を描いていたが、1972年に木星に0.012auに接近して近日点距離が1.4 auに縮まったところを発見された。1983年に木星に0.57 auまで接近し、近日点距離1.6 au、周期6.5年の現在の軌道に至る。

今後、2055年には木星から0.22auを通過して近日点距離は1.1auに縮まり、直後の近日点通過である2057年12月頃には地球に0.24auまで接近する。さらに2067年には木星から0.49auを通過して近日点距離は1.02~0.97au、周期5.5年まで小さくなる見込みである。

出現[編集]

1975年の回帰では2月25日に近日点を通過した。既述のとおり、11等~12等級の明るさで観測された。

初回帰となった次の近日点通過は1981年4月11日。1980年11月12日にヨーロッパ南天天文台の100cm望遠鏡で検出され、近日点通過は予報より1.3日早くなった。約17等級で観測された。

1987年の回帰は1987年9月28日にアリゾナ大学月惑星研究所スカッチが、キットピーク天文台により17等級で検出した[9]。また、10月1日には高知県関勉によって18等級で独立に検出された。この回帰での観測条件は悪く、観測は多くない。

1993年の回帰は、同年7月20日にキットピークでスカッチが20.1等級で検出した[9]。ほぼ衝の位置で近日点を迎えたため、最大12等級で観測されたが、次の2000年の回帰は、回帰条件が最悪で非観測に終わった。

2006年の回帰では、2006年8月25日に核光度19等で初観測され、2007年初に各地で15等級で観測された。

2013年の回帰では1月に核光度19等で観測されている。5月に近日点通過するが、18等級にとどまる見込みである(2013年4月現在)。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 76P/West-Kohoutek-Ikemura”. JPL Small-Body Database. Jet Propulsion Laboratory. 2019年6月15日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 76P/West-Kohoutek-Ikemura”. Minor Planet Center. 2019年6月15日閲覧。
  3. ^ 天文年鑑編集委員会『天文年鑑 2019年版』誠文堂新光社、2018年、167頁。ISBN 978-4-416-71802-5 
  4. ^ IAUC 2752: 1975b; NEW X-RAY SOURCE; 1975a
  5. ^ IAUC 2754: 1975b; COMET KOHOUTEK
  6. ^ IAUC 2755: 1975c; 1975b; 1975a; SN IN Anon GALAXY
  7. ^ IAUC 2741: Occn OF kappa Gem A BY 433 EROS; COMET WEST; N Per 1974
  8. ^ IAUC 2756: 1975b; 1944 III; 1974h
  9. ^ a b 1995年以前の意味での検出。現在では通常の(初)観測として扱われ彗星符号は振られない。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]


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