イワン・クパーラ

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ロシアの現代画家セミョン・コジン(Simon Kozhin)の「イワン・クパーラ、花輪占い」(2009年)

イワン・クパーラロシア語: Иван Купалаウクライナ語: Івана Купала)は、ロシアウクライナベラルーシポーランドなどに住む東スラブ人の主要な民俗祝日の 1つで、古代からの民間伝統の夏至祭が、キリスト教受容とともに、洗礼者聖ヨハネの日の前夜祭洗礼者聖ヨハネの誕生祭[注釈 1]ユリウス暦6月24日[注釈 2])に取り込まれて祝われるようになったもので、前夜祭の儀式の方が当日のそれよりも内容豊富[1]かつ特徴的である。この祝日の名称は、東スラブ語の「kàpati」即ち「水浴する・水に浸す→洗礼を授ける」という言葉に由来している。

概要[編集]

ロシアの17世紀中葉イコンより部分(全6面中3面)。「夏の象徴」
*(左)聖大致命者凱旋者ゲオルギイ(カッパドキアの聖ゲオルギウス)。この聖人の祭日ユリウス暦4月23日)に半年の夏期が始まる[2]
*(中央)前駆授洗イオアン(洗礼者聖ヨハネ)。この聖人の祭日(ユリウス暦6月24日)は「夏の頂点」[3][1]
*(右)聖大致命者潤膏者[注釈 3]ディミトリイ(ディミートリー・ソルンスキー/テッサロニキの聖デメトリウスロシア語版英語版[注釈 4])。この聖人の祭日(ユリウス暦10月26日)[注釈 5]をもって半年の夏期は終わる[2]

この日は、年間暦ではクリスマスとちょうど半年違いである。両者(ヨハネの誕生とイエスの降誕、ヨハネイエス)の関係性は、聖書、奉神礼典礼)書、数々の聖訓を貫く基本的な主題のひとつである。

また、イワン・クパーラから「ペトル(聖ペトロ)の日」(ユリウス暦6月29日)[注釈 6][注釈 7]までを、夏の暦の中で、ひと続きの不可分の期間と見なす研究者もいる[6]

この祭りでは、自然に関する多くの儀式が行われる。薬草や花を集めて輪に編み、人、動物、家をそれらで飾る。そして花輪を水に浮かべ未来の伴侶を占う。水と火の両方が重視され、特に前日は日没までに水浴から上がり、日暮れてのち焚き火を起こし、その周囲で歌い踊り、火を飛び越える。前夜祭の焚き火は水辺や、それを囲む丘の上で開催される。若い男女の結婚を占い、その前途を祝す要素が強いのもこの祭りの特徴である。また、この日は太陽がいつもと違う動き方と輝き方をし(後述)、自然の驚異が起こると信じられていた。[7][8][9]

呼称[編集]

この祭日には「イワン・クパーラ」以外にも数々の呼称がある。ロシア語・ウクライナ語・ベラルーシ語の筆頭は、Wikipediaの各言語版の項目名に採用されているもの(2023年7月現在)。

  • 古ルーシ語:Кресъ(クレス)[注釈 8]
  • ロシア語Иван Купала(イワン・クパーラ)、Иванов день[1](イワーノフ・ヂェーニ=「イワンの日」)、Иванщина(イワーンシチナ[注釈 9])、Ивана Купалы(イヴァーナ・クパールィ)、Купала(クパーラ)、Иван Купало[10](イワン・クパーロ)、Купало[11](クパーロ)
Иван-травник[12](イワン・トラーヴニク=「薬草イワン」又は「薬草酒イワン」)、Колосок(コロソーク/カラソーク=「1本の(穀物の)穂」)、Кокуй(コクィ)(ノヴゴロド県)
Праздник летнего солнцеворота(プラーズニク・リェートニェヴォ・ソンツェヴァロータ[注釈 10]=「夏至祭り」)
Ярило[13](ヤリーロ)[注釈 11](ヤロスラヴリ県、トヴェリ県、ニジェゴロド県)、Ярилин день[14](ヤリーリン・ヂェーニ=「ヤリーロの日」)(ヤロスラヴリ県、トヴェリ県)、Ярилино гулянье[15](ヤリーリノ・グリャーニエ=「ヤリーロの祭」)
Иван добрый(イワン・ドーブルィ=「善き人イワン」), любимый(イワン・リュビームィ=「愛するイワン」), цветной[1](イワン・ツヴェトノィ)[注釈 12], чистоплотный(イワン・チスタプロートヌィ=「清廉なるイワン」)
  • ウクライナ語Свято Купала(スヴャート・クパーラ、直訳は「クパーラ祭」ないし「クパーロの祭日」)、Івана Купала(イヴァーナ・クパーラ)、Купайло[17](クパーィロ)、Купайла(クパーィラ)、Купало(クパーロ)[18]、Купайлица[17](クパーィリッツァ)、Копальний Іван(コパーリヌィ・イワン)
Сонцекрес(ソンツェクレス=「太陽の授洗者」)
Варфоломій і Варвара(ワルフォロミー・イ・ワルワーラ)[注釈 13]
  • ベラルーシ語Купалле(クパーッレ)[注釈 14]、Іван Купала(イワン・クパーラ)、Ян Купальны[1](ヤン・クパーリヌィ)、Ян(ヤン)、Янаў дзень(ヤナゥ・ヂェーニ=「ヤンの日」)
Свята Сонца і кахання(スヴャータ・ソンツァ・イ・カハンニャ=「太陽と愛の祭日」)
Іван Вядзьмацкі(イワン・ヴャヂマツキ)[注釈 15]、Іван Калдунскі(イワン・カルドゥンスキ)[注釈 15]

(※) 行政区画「県」(: губерния グベールニヤ)は、ロマノフ朝ロシア時代の18世紀からソ連時代初期まで使われていた。ノヴゴロド県ロシア語版英語版ヤロスラヴリ県ロシア語版英語版トヴェリ県ロシア語版英語版ニジェゴロド県ロシア語版英語版 参照。現在のノヴゴロド州ヤロスラヴリ州トヴェリ州ニジニ・ノヴゴロド州(=ニジェゴロド州)とかなり重なる。


諸国の「イワンの日」[編集]

「イワンの日」(即ち「ヨハネの日」)は、東スラヴ諸国のみならず、非スラヴ人の国を含む各国でも祝われている。エストニアJaanipäev英語版エストニア語版(ヤーニペェヴ)[注釈 17]ラトビアLīgoロシア語版英語版ラトビア語版(リーゴ)、リトアニアの Rasos (ラーソース)(ないし Joninių diena ヨニニュ・ディエナ=ヨハネの日)は国家の祝日となっている。

日本でのイワン・クパーラ[編集]

この祭りは、東スラブ人が従来住む地域あるいは移住した地域で現在も行われて[要出典]2022-23年ロシアのウクライナ侵攻中には日本でも初めて、2022年と2023年の7月初旬に日本に住むウクライナ人たちを中心にイワン・クパーラの祭りが開催された[21][22]

参考文献[編集]

ロシア語[編集]

Славянские древности: Этнолингвистический словарь[編集]

(ロシア語版) (『古代スラヴ民族言語学辞典』、略称 СДЭС)

Институт славяноведения РАН (ロシア科学アカデミー・スラヴ研究所) 編
編集長 Толстая С. М.(S. M. トルスターヤ)
編集 Агапкина Т. А.(T. A. アガープキナ)、Виноградова Л.Н.(L. N. ヴィノグラードワ)、Петрухин В. Я.(V. Ya. ペトルーヒン)
執筆 Агапкина Т. А.(T. A. アガープキナ)、Белова О. В.(O. V. ベローワ)、Валенцова М.М.(M. M. ヴァレンツォーワ)、Виноградова Л.Н.(L. N. ヴィノグラードワ)、Гура А. В.(A. V. グラ), Кабакова Г. И.(G. I. カバコーワ、Левкиевская Е. Е.(E. E. レフキエーフスカヤ)、Плотникова А. А.(A. A. プロートニコワ)、Седакова И. А.(I. A. セダコーワ)、Толстая С. М.(S. M. トルスターヤ)、Узенёва Е. С.(E. S. ウゼニョーワ)、Усачёва В. В.(V. V. ウサチョーワ)
Москва, "Международные отношения" (モスクワ「国際関係」出版所) 発行
том. 1 (第1巻) 1995年

А(Август) - Г(Гусь) ISBN 5-7133-0704-2 (全584頁)

том. 2 (第2巻) 1999年

Д(Давать) - К(Крошки) ISBN 5-7133-0982-7 (全702頁)

  • Дмитрия св. день(聖ドミトリーの日)93-94頁。
  • Иван Купала(イワン・クパーラ)363-368頁。
том. 3 (第3巻) 2004年

К(Круг) - П(Перепелка) ISBN 5-7133-1207-0 (全704頁)

том. 4 (第4巻) 2009年

П(Переправа через воду) - С(Сито) ISBN 5-7133-0703-4, ISBN 978-5-7133-1312-8 (全656頁)

том. 5 (第5巻) 2012年

С(Сказка) - Я(Ящерица) ISBN 978-5-7133-1380-7 (全736頁)

[編集]

V. I. ダーリ『詳説大ロシア語辞典』第2版(1880-1882年、全4巻)第2巻[注釈 18]
第2版はダーリの没後 1880-1882年に改訂されたもの。一般語彙が1500、諺・慣用句が350追加された。
СПб, "М. О. Вольф".(ペテルブルク、ヴォルフ書店発行)
(※)初版全4巻はダーリの存命中、1863-1866年にモスクワで刊行された。最初の刊行は1861年からダーリの研究ノートを小規模な分冊で発行する形で始まり、結果として2つの出版社が関わることになったので、両社版の間には微妙な差異が見られる。初版アーカイブ:第1巻(1863,А-З)第2巻(1865,И-О)第3巻(1865,П/П-Р)第4巻(1866,Р-Ѵ/С-Ѵ)
V. I. ダーリ『ロシアのことわざ集』第2版(1879年、全2巻)第2巻
第2版は、初版(1862年、全1巻)が2巻となったもので、内容の変更は無い。初版はモスクワ、「大学印刷所」(Университетская типокрафия)発行。第2版はヴォルフ書店(М. О. Вольф)発行で、ペテルブルク・モスクワの同時刊行。
アーカイブ:初版第2版巻1第2版巻2
Y. S. オシポフ編『ロシア大百科事典』(2004年-2017年、全35巻) ISBN 5-85270-320-6
Москва, изд. "Большая российская энциклопедия"モスクワ、「ロシア大百科事典出版局」発行)
うち第10巻(2008年)(ЖЕЛ-ИЗЛ) ISBN 978-5-85270-341-5 / Иванов день(イワーノフ・ヂェーニ=「イワンの日」)を収録。
  • Соколова, В. К. Весенне-летние календарные обряды русских, украинцев и белорусов. ⅩⅨ - начало ⅩⅩ в. (1979)
V. K. ソコローワ『ロシア人・ウクライナ人・白ロシア人の春-夏の行事暦 19世紀-20世紀初頭』(1979年)[注釈 19]
編集発行 Институт этнологии и антропологии имени Н. Н. Миклухо-Маклая АН СССР (нынешней РАН)(ソ連邦科学アカデミー(現:ロシア科学アカデミーミクルーホ=マクライ記念民族学人類学研究所)(ロシア語版)(英語版)
発売 Москва, "Наука" (モスクワ、「ナウカ」出版所)
  • Русская традиционная культура. Фольклор Калужской губернии: альманах, Выпуски 3-4. (1998)
『ロシアの伝統文化‐カルーガ県のフォークロア』(逐次刊行)第3号‐第4号(1998年)[注釈 20]
GoogleBooks (макушка лета の解説有り)
Москва, "Родник"(モスクワ、「ロドニーク」出版所)
A. N. アファナーシェフ『スラヴ人の詩的自然観』第3巻(1994年復刻版)
ロシア民話研究で名高いアファナーシェフの19世紀の著書の復刻版。全3巻で初版はモスクワ「K. ソルダチョーンコフロシア語版英語版書店」発行(первое изд.-Москва. Изд. К. Солдатёнкова)。
репринт-Москва, "Индрик"(復刻版‐モスクワ、「インドリック」出版所) том. 3 (第3巻) ISBN 5-85759-013-2
  • Забылин М. М. Русский народ, его обычай, обряды, предания, суеверия и поэзия. (1880)
M. M. ザブィリン『ロシア民衆の習慣・行事・言い伝え・民間信仰・ポエジー』(1880年)
Москва, Изд. книгопродавца М. Березина(モスクワ、「M. ベレジン書店」発行)
  • Дубровина С. Ю. Состав и системная адаптация лексики православия в русских диалектах (на материале тамбовских говоров):Монография. (2012)
S. Yu. ドゥブローヴィナ 論文「ロシア方言に見られる正教会用語由来の語彙とその受容体系について(タンボフ方言の資料に基づく)」(2012年)
Тамбов(タンボフ)、2012年
アーカイブ(WaybackMachine, 2017年5月17日)
S. M. トルスターヤ『ポリーシャ民間暦最新研究』(2005年)(叢書《スラヴ人の精神文化》)[注釈 21]
Москва, "Индрик"(モスクワ、「インドリック」出版所) ISBN 5-85759-300-X
  • Снегирёв И. М. Русские простонародные праздники и суеверные обряды. Выпуск 4 (1839)
I. M. スネギリョフ『ロシア平民の祝祭日と民間信仰に基づく儀式』第4号(1839年)
Москва, "Университетская типокрафия"(モスクワ、「大学印刷所」発行)
N. M. ガリコフスキー『古代ルーシの異教の残滓とキリスト教との闘い』
  • Котович О. В., Крук И. И. Золотые правила народной культуры. (2010)
O. V. コトヴィチ、I. I. クルーク共著『民衆文化の黄金の規則』(2010年)[注釈 22]
Минск, "Адукацыя i выхавание"(ミンスク、「教育と薫育」出版所) ISBN 978-985-471-335-9
P. A. ベスソーノフ『詳説 白ロシア民謡集』(1871年)
Москва, Типография Бахметева.(モスクワ、バフメーテフ印刷所)
「パンフィール修道院長書簡」(監修・現代語対訳・脚注:V. I. オホートニコワ)/ ロシア科学アカデミーロシア文学研究所(プーシキンセンター)編『古代ルーシ文学資料集』(全15巻)より第9巻(15世紀末-16世紀前半)(2000年)に所収。
プスコフのパンフィール(15-16世紀)‐ 現在のプスコフ州プスコフ市郊外のエリザロヴォ Елизарово 村で、エレアザル修道院ロシア語版(現在は女子修道院だが、当時は男子修道院であった)院長を務める。書簡は1505年。
СПб. изд. "Наука".(サンクトペテルブルク、「ナウカ」出版所)[注釈 23]
【電子版】 プーシキンセンター(2023年8月現在セキュリティ保護なし)、 ウェイバックアーカイブ
  • Терещенко, А. В. "Быт русского народа.", часть 5-я "Простонародные обряды." (1848)
A. V. テレシチェンコ『ロシア民衆の生活』(1848年) ‐ 第5部「民衆のしきたり」
часть 1(第1部) - часть 7(第7部) の全7部から成る。СПб, Типография военно-учебных заведений.(ペテルブルク、「軍学校印刷所」発行)
1848年原書のアーカイブ 第4・5部のみのアーカイブ 復刻版のアーカイブ
(※)復刻版は全2巻(第1巻に第1部-第3部、第2巻に第4部-第7部を収録)。2014年、モスクワ、「ロシア文化研究所」(Институт русской цивилизации)発行。
第1巻(том 1)ISBN 978-5-4261-0090-9
第2巻(том 2)ISBN 978-5-4261-0092-3
K. I. シャラファヂナ「A. N. オストロフスキーの植物相上の "謎かけ"、もしくは "雪娘のために母ヴェスナーが用意した花輪" の民族植物学的解釈」本文[注釈 24]
Ответственный ред. Казанский Н. Н. Acta linguistica petropolitana: Труды института лингвистических исследований РАН, том 6, часть 1. Этноботаника: растения в языке и культуре (2010), стр. 164-188.
N. N. カザンスキー責任編集:叢書『Acta linguistica petropolitana(アクタ・リングィスティカ・ペトロポリターナ):ロシア科学アカデミー言語学研究所論文集』第6巻・第1部「民族植物学:言語と文化の中の植物」(2010年)、164-188頁。ISBN 978-5-02-025607-1
СПб. изд. "Наука".(サンクトペテルブルク、「ナウカ」出版所)[注釈 23]


ベラルーシ語[編集]

// Паэзія беларусскага земляробчага календара. / Склад. А. С. Ліс (Минск, 1992.) с.554-612.
U. A. ワシリエヴィチ「ベラルーシの民間暦」‐A. S. リス編『ベラルーシの農事暦に見られる詩情』554-612頁に所収。ミンスク、1992年。[注釈 25] アーカイブ
(※)1993年、ワシリエヴィッチの単独自著として、ミンスク「収穫」(Ураджай)出版所より発行、全79頁。ISBN 5-7860-0757-X

ポーランド語[編集]

H. ビェゲレイセン『婚礼』(1928年) アーカイブ
Lwów, "Instytut Stauropigjański"(リヴォフ、「スタウロピギャンスキ・インスティトゥート」発行)

英語[編集]

  • Українсько-Англійский словник. Ukrainian-English Dictionary. (4th printing 1990)

『ウクライナ語‐英語辞典』(1990年第4刷) ISBN 0-8020-6421-3

Complied by Andrusyshen, C. H., 1907
4th printing 1990 by Univ. of Toronto Press, (1st printing 1955 by The Gospel Press, Saskatoon.) Copyright 1955 by Univ. of Saskatchewan, Canada
C. H. アンドルーシェン 編、1907年
第4刷‐1990年、カナダトロント大学出版局 発行。(第1刷‐1955年、カナダ・サスカトゥーン「ゴスペル・プレス」発行) 🄫サスカチュワン大学、1955年

日本語[編集]

  • 戸辺又方『ロシアの言語と文化』(1996年、ナウカ)
ISBN 4-88846-040-X
(机上版)ISBN 4-7674-9030-8 (携帯版)ISBN 4-7674-9033-2

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ イワン(Иван)は、今日でも民間人男性に多い名前だが(英語のジョン John に相当)、正教会での正式名は「イオアン(Иоанн)」。洗礼者「クパーラ」も民間呼称で、教会では「クレスチーチェリ(Креститель)」又は「プレッチェーチャ(Предтеча)」。「洗礼者ヨハネ」は日本正教会では「前駆授洗イオアン」と訳されている。
  2. ^ 20-21世紀のほとんどの期間は、グレゴリオ暦7月7日。なお、東スラヴ地域では少数派だが、修正ユリウス暦使用教会では、修正ユリウス暦6月24日=グレゴリオ暦6月24日。
  3. ^ 「潤膏者」は日本正教会の訳語で、: Myroblyte: Мироточец
  4. ^ 日本語版「アギオス・ディミトリオス聖堂 (テッサロニキ)」も参照。各国語版リンク有り、ロシア語版は「秀逸な記事」(2023年7月現在)。
  5. ^ 西方教会での記念日はグレゴリオ暦4月9日および10月8日。東方と西方で日付も異なる聖人の例である。尚、現代のカトリック教会では、テッサロニキの聖デメトリウス(別名「シルミウムの聖デメトリウス)の記念日は一般ローマ暦英語版[4]からは外されており(2023年7月現在)、デメトリウスの名を冠した、あるいは守護聖人として戴く修道会や教会以外ではまったく祝われなくなっている。
  6. ^ ペトルの日ロシア語版。「ペトル(ペトロ)の日」は、あくまでロシアの民間呼称で、教会では正式にはパウェル(聖パウロ)も同じ日に祝われる「聖使徒ペトル・パウェル祭ロシア語版英語版」である。
  7. ^ ペトルの日は民間暦では本格的な夏日の始まりの目安とされ[5]、この日を境に農村は夏でもっとも忙しく厳しい労働の時期に入る。
  8. ^ 授洗者(洗礼を授ける者)の教会での正式名称 "Креститель"(クレスチーチェリ)の最初の1音節。
  9. ^ 造語法則からの直訳は「イワン的なもの」「イワン性」。
  10. ^ 「日至」(形容詞「夏の」を付けて「夏至」となる)を意味する "солнцеворот"(ソンツェヴァロート)は、現代では俗語である。
  11. ^ ヤリーロ」はスラヴ神話の、即ちキリスト教から見ればペイガニズム(狭義の「異教」)の神々の神格の一柱。
  12. ^ 直訳は「色彩豊かなイワン」だが、形容詞 цветной(ツヴェトノィ)には、 цветная неделя(ツヴェトナヤ・ニヂェーリャ)【=受難週の前の1週間、聖枝祭[16]まで】という用法もある。ロシア語版 "Вербная неделя в славянской традиции" も参照。(尚、現代ロシア語の「ツヴェトノィ」には「有色人種の」という意味もあるが、この文脈では除外する。)
  13. ^ ワルフォロミーは男の聖人(使徒バルトロマイ)、ワルワーラは聖女(聖バルバラ)の名。一般人の命名に広く使われるのはワルワーラのほうである。
  14. ^ ベラルーシ語版の導入部では、「クパーレ」は "Ноч на Івана Купалу" 即ち「イワン・クパーラの前夜」と定義されているが、Infobox には "Іван Купала"(イワン・クパーラ)という呼称も入っている(2023年7月現在)。
  15. ^ a b 名+姓の語感だが、「姓」の語幹は "Вядзьма"(ヴャージマ)=「魔女」(ロシア語の ведьма(ヴェーヂマ)、вядьма(ヴャーヂマ)に相当)、"Калдун"(カルドゥーン)=「魔法使い」(男性名詞)(ロシア語の колдун(コルドゥーン)に相当)。いづれもこの日に暗躍するとされる邪悪な存在である。
  16. ^ 「名+姓」そのままである。「ペトロフ」は、姓のペトロフも、「ペトルの日ロシア語版」(Петров день ペトロフ・ヂェーニ)のペトロフも、名「ペトル」から派生した物主形容詞で、姓も元々は「ペトルの」の意味であった。この呼称が「イワンの日」(ユリウス暦6月24日‐教会では「前駆授洗イオアン誕生祭」)から5日後の「ペトル(聖ペトロ)の日」(同6月29日‐教会では「聖使徒ペトル・パウェル祭ロシア語版英語版」)へ、という繋がりに由来するという仮説は容易に成り立つ。尚、現代ロシア語では、3つの姓「イワノフ、ペトロフ、シードロフ(Иванов, Петров, Сидоров)」がワンセットで「甲、乙、丙」「A氏、B氏、C氏」「何某」の意味で多用される。即ち「イワン・ペトロフ」は「ごくありふれた名+姓」の語感も有する。
  17. ^ 直訳は「Jaan の日」。
  18. ^ 「大ロシア語」とは、今でいう「ロシア語」のことである。ロシア帝国時代はベラルーシを「白ロシア(ベロルシア)」、ウクライナを「小ロシア(マロロシア)」と呼んでいたので、これらと区別するために「ロシア」を「大ロシア」と言う習慣があった。
  19. ^ 「ベロルシア」のソ連時代の訳語は、「ベラルーシ」よりも「白ロシア」の方が一般的である。
  20. ^ カルーガ県ロシア語版英語版は1796年‐1929年の行政区画。現在のロシアカルーガ州とかなり重なるが、完全に同一ではない。
  21. ^ ポリーシャの」と仮訳を宛てたが、原語Полесскийはそれ以外にも様々な地域の実際の地名に使われている。
  22. ^ クルークの名と父称は、ロシア語式では「イワン・イワーノヴィチ」だが、ベラルーシ語式では「ヤンカ・ヤンカヴィチ」、即ちイニシャルはラテン文字で Y. Y.、キリル文字で Я. Я. となる。
  23. ^ a b ロシアの出版社「ナウカ」の本社所在地はモスクワだが、モスクワ・サンクトペテルブルクノヴォシビルスクの3都市に拠点がある(2023年8月現在)。
  24. ^ 劇作家A. N. オストロフスキーの戯曲『雪娘』(スネグーロチカ)(1873年。ロシア民話のスネグーロチカを素材とし、アファナーシェフの『スラヴ人の詩的自然観』第2巻(1868年)に着想を得て書かれた)第4幕第2場で、雪娘は母親のヴェスナー(「春」、フルネームはヴェスナー=クラスナー「麗しき春」)に「恋心を知りたい」と懇願する。最初は父のマロース(ジェド・マロース)に従えと言った母親も(父親はそうなれば娘が太陽に溶かされるであろうことを知っていた)、ついに根負けして、自分の花の冠を娘の頭にかぶせる。その花輪には「乙女の恋に効く」草花がふんだんに使われており、娘の頭にそれを置く前に、母は花や草の名と、それぞれの「乙女心への効用」を歌うように語る。
  25. ^ ワシリエヴィチのフルネームの綴りは、ベラルーシ式でУладзімір Аляксандравіч Васілевіч、ロシア式でВладимир Александрович Василевичとなる。即ち名はどちらもウラジーミルだが、イニシャルはキリル文字ではベラルーシ式:Ул、ロシア式:В。ラテン文字ではベラルーシ式:U、ロシア式:V。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e (民族言語学辞典巻2 1999) 363頁(Иван Купала)。
  2. ^ a b (民族言語学辞典巻2 1999) 93頁(Дмитрия св. день)。
  3. ^ (カルーガ県のフォークロア 1998)
  4. ^ 日本語版「カトリック教会の聖人暦」とリンクしているが、聖人のリストはたがいに微妙に異なっている。
  5. ^ (戸辺 1996) 145頁
  6. ^ (ソコローワ 1979) 252頁
  7. ^ たき火飛び越え祝う祭り「イワン・クパーラの夜」、ウクライナ(AFP BB News、2023年)
  8. ^ たき火を飛び越える東スラブ地方の伝統祭り「イワナ・クパーラ」開催(ウラジオストクチャンネルニュース、2021年)
  9. ^ クパワの夜:スラブ信仰とキリスト教の伝統の融合(ポーランドの文化、2016年)
  10. ^ (研究社露和辞典 1988) 700頁
  11. ^ (研究社露和辞典 1988) 903頁
  12. ^ (民族言語学辞典巻2 1999) 364頁(Иван Купала)
  13. ^ (ザブィリン 1880) 71頁
  14. ^ (アファナーシェフ 1994) 713頁
  15. ^ (「タンボフ」 2012) 92頁
  16. ^ カトリック教会の「枝の主日」に相当。復活大祭復活の主日)の1週間前の主日(日曜日)。
  17. ^ a b (ソコローワ 1979) 230頁
  18. ^ (宇英辞典 1990) 439頁
  19. ^ (「ポリーシャ民間暦」 2005)
  20. ^ (スネギリョフ 1879) 21頁
  21. ^ イワン・クパーラの祭り:ウクライナの魂の唄-八千キロの彼方から2022.7.9於小平中央公園(Yamareco、2022年)
  22. ^ “ウクライナ伝統の夏祭り「クパーラ祭」 東京・港区のNPO法人が川崎市多摩区の稲田公園で9日に開催”. 東京新聞. (2023年7月7日). https://www.tokyo-np.co.jp/article/261425 2023年7月13日閲覧。 

関連項目[編集]

 

外部リンク[編集]

  • ロシアの夏至祭はどのようなものか(国立国会図書館) - 回答文中、「洗礼者ヨハネの祝日である旧暦6月23日の夕方から翌日にかけて行われる」(一応出典付き)は、「洗礼者ヨハネの祝日である旧暦(ユリウス暦)6月24日の前日夕方から当日にかけて行われる」と訂正すべきところ。