自責点
自責点(じせきてん)は野球の試合において投手の責任とされる失点のこと[1]。
自責点の考え方
- 自責点は、安打、犠飛、犠打、刺殺、四死球(故意四球を含む)、暴投、ボーク、野手選択、盗塁によって進塁した走者が得点したときに記録される。
- 野手(投手自身も含む)の失策、捕逸、打撃妨害、走塁妨害によって出塁した走者、ファウルフライに対して失策があった後に安打などで出塁した走者、失策がなければアウトになったはずの走者が得点した場合は、自責点とならない。
- 失策、捕逸、打撃妨害、走塁妨害によって進塁した走者が得点した場合は、これら守備側のミスがなくても得点ができたと記録員が判断したときに限って自責点となる。
- 第3アウトを取る機会を得た後の失点は自責点にはならない。例えば、二死で打者の打ったゴロを内野手が失策し、打者走者が出塁した場合、守備側に第3アウトを取る機会があったと考え、それ以後の攻撃側の得点は、その投手の自責点にはならない。一死走者なしから安打で出塁を許し、一死一塁から内野手の失策により一死一・二塁となり、次打者を三振に取り二死一・二塁となった場合も同様で、失策前の走者が生還したとしても自責点にはならない。
- 実例として、2007年4月1日に行われた東北楽天ゴールデンイーグルス対オリックス・バファローズ戦(フルキャストスタジアム宮城)の3回裏二死でオリックスの投手・吉井理人は打者に内野ゴロを打たせたがその打球を三塁手が失策、次の打者に四球を与えて満塁とし、続く打者のホセ・フェルナンデスに本塁打を打たれ、さらに第3アウトを取れずに再び満塁とされてから山﨑武司にも満塁本塁打を許した。この例において吉井の失点は8であるが、自責点は0。
- 日本プロ野球では二死後に失策でアウトを取る機会を逸した場合のみ、以降の失点が自責点にはならないという解釈をしていた時期があった。大阪近鉄バファローズ#ミケンズ・ルール参照。
イニングの途中で交代した投手の自責点
イニングの途中で投手が交代した場合は、アウトの機会は、交代したときのアウトカウントから数え直す。そのため、個人の自責点を合計したものがチームの自責点と一致するとは限らない。
- 先の例で、二死満塁になったところで投手を交代した場合には、先に投げていた投手には自責点が記録されないが、交代後の投手には自責点1が記録される。ただしチームとしてはエラーの時点で第3アウトをとる機会があったとみなし、チーム自責点は0と記録される。
走者を残した状態でのイニング途中に投手が交代し、救援投手が安打を打たれるなどして走者が得点した場合、原則として残した走者の数までは前任投手の自責点または失点となる[2]。
【例】投手 P が2連続四球で走者一・二塁(二塁走者 A、一塁走者 B とする)。投手が P から R に交代。打者 C は三塁ゴロで A が三塁フォースアウト。打者 D も三塁ゴロで B が三塁フォースアウト。次打者 E が本塁打して3得点。 ― この例では、得点した全走者(C、D、E)が投手 R のときに出塁しているが、自責点は投手 P に2点(C、D の得点)、R に1点(E の得点)が記録される。
- 【実例】2010年のパシフィック・リーグクライマックスシリーズファーストステージ第1戦(埼玉西武対千葉ロッテ)で、千葉ロッテの先発投手成瀬善久は、7回まで1失点(自責点1)に抑え、8回表の先頭打者に安打を喫したところで降板した。後続の内竜也投手は無死一・二塁から先頭打者を三塁でフォースアウトとしたが、その後満塁として走者全員を生還させた。この場面では成瀬に1失点(計2失点)、内に3失点(エラーが絡んだため自責点は1)が記録されている。
ただし、前任投手が残した走者が盗塁刺、牽制死、守備妨害など、打者の打撃によらないでアウトになった場合、および打者の打撃によるものでも余塁を奪おうとしてアウトになった場合は、そのアウトの数だけ「残した走者の数」が差し引かれる。
【例】投手 P は四球で走者 (A) を出し、救援投手 R に交代。打者 B は安打したが、一塁走者 A が三塁を欲張り送球によりアウト。この間に B は二塁に進塁。打者 C が安打して B が生還。 ― この例では投手 P は一人の走者を残して降板し、かつその走者は打者の打撃の結果としてアウトになったが、自責点は記録されず、救援投手 R に1点の自責点が記録される[3]。
日米における自責点決定時期の違い
日本プロ野球と米国メジャーリーグでは投手自責点の決定時期が異なる。日本では得点がカウントされた時点でその得点が自責点かそうでないかが決定されるのに対して、メジャーリーグでは当該イニング終了まで決定が保留され、その後、失策その他のミスプレイが無かった場合に走者はどこまで進むことができたかを検討・推定してイニングを再構成するという手順をとる。この違いのため、結果的に日本プロ野球の方が投手の自責点になりにくい。
- たとえば、走者三塁で捕逸が発生して三塁走者が生還した場合、日本ではかかる得点は即時に非自責点として記録される。これに対して米国ではイニング終了まで、それが自責点になるかどうかの判断を保留する。これは捕逸の後に打者が安打した場合に、捕逸がなくても得点できたことになり、この得点を自責点とするためである。
- 捕手の打撃妨害により打者が一塁を得たケースなど、それが無かったら打者はどうなっていたかの推定が困難な場合には、投手に有利となる方向で検討・再構成が行われる[4]。
自責点に関する記録
日本プロ野球
記録はいずれも2011年シーズン終了時点
通算記録
順位 | 選手名 | 自責点 |
---|---|---|
1 | 米田哲也 | 1659 |
2 | 鈴木啓示 | 1588 |
東尾修 | ||
4 | 金田正一 | 1434 |
5 | 梶本隆夫 | 1395 |
シーズン記録
順位 | 選手名 | 所属球団 | 自責点 | 記録年 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 真田重蔵 | パシフィック | 163 | 1946年 | |
2 | 小林恒夫 | 松竹ロビンス | 158 | 1951年 | セ・リーグ記録 |
3 | 高野裕良 | 大洋ホエールズ | 156 | 1950年 | |
4 | 長谷川良平 | 広島カープ | 150 | 1950年 | |
5 | 内藤幸三 | ゴールドスター | 134 | 1946年 | |
真田重男 | 松竹ロビンス | 1950年 | |||
天保義夫 | 阪急ブレーブス | 1950年 | パ・リーグ記録 |