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自律型無人潜水機

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Bluefin ロボティクス社の自律型無人潜水機
外部からの制御を伴わず自立航法するように設計されたBlackghost AUV

自律型無人潜水機 (autonomous underwater vehicleAUV)は水中で活動するロボットである。UUV(Unmanned Underwater Vehicles)ともよばれる。これは蓄電池燃料電池や閉鎖型内燃機関を動力として深度6000mで活動する物もある。推進装置と動力源の発達により活動距離と時間が伸びた。

歴史

初期のAUVがマサチューセッツ工科大学1970年代に開発された。それらの一つがMITのHart Nautical Galleryに展示されている。同時期にAUVはソビエト連邦でも開発された。(その事は後に明らかになった)軍用のAUVはUnmanned Undersea Vehicles (UUVs)として知られる。それらは水上からオペレータもしくはパイロットが制御する遠隔操作無人探査機(ROV)とは異なる。

石油とガス産業は海洋掘削施設を建造する前にAUVを海底地図の作成に利用するために利用する。AUVによってもたらされる詳細な地図は石油会社にパイプラインや海洋施設の建設において最小の経費と環境への影響を減らす資料を与える。

従来の軍用のAUVは機雷のありかを認識するために地図を作成する。科学者達はAUVを海洋と大陸棚の調査に使用する。他に漁業の資源量把握や海流の調査にも使用される。

随時オペレーションが必要ないことにより自動的に海中でのデータを収集できる。海中の開発において深海での油田開発や修繕経費をこれらの機材で削減可能である。

100種類に及ぶ異なるAUVが20年から30年間に設計されたがいくつかの少数の企業から販売されているに過ぎない。ウッズホール海洋研究所が開発して現在はHydroid社が販売している小型のREMUS 100 AUVは軍用、科学用に現在最も普及しているAUVである。Kongsberg MaritimeとNorwegian Defence Research Establishment(FFI)が開発した大型のHUGIN 3000 AUV は石油、ガス産業において広範に使用されている。他に特筆すべきAUV製造会社としてアメリカのBluefin RoboticsとカナダのInternational Submarine Engineering Ltd.がある。

用途

近年に至るまで技術的な要因によりAUVは複数の限られた用途でしか使用できなかった。より先進的な計算能力と大電力の供給によりAUVは徐々に活躍の場を広げつつある。

商業

石油とガス産業はAUVを掘削施設やパイプライン等の建設前に海洋底の詳細な地図の作成に用いる事で環境に与える影響を最小化し費用対効果を高めることが出来る。AUVは従来の潜水艇を使用した精密な海底測量や海底の地形調査と比較して大幅に費用を低減することが可能である。同様に既に敷設したパイプラインの点検も現在では可能である。他に通信用海底ケーブルの点検等にも使用される。[1]

軍用

典型的な軍用のAUVの用途は機雷の敷設状況や沿岸域の防衛領域での未確認物体の把握である。AUVは同様に対潜水艦戦や有人潜水艦の哨戒にも使用される。

研究

科学者達はAUVを湖沼や海洋や海底の調査に使用する。多種多様なセンサーを元素や化合物の濃度、光の減衰や反射や微生物の存在を測定する為にAUVに搭載可能である。他に鯨や魚類の生態調査にも使用される。[2]

趣味

多くのロボット愛好家達がAUVを趣味として製作する。複数の競技会が存在し、これらの自家製のAUVが目標を達成する為に互いに競う。市販されている同種の潜水機のようにこれらのAUVはカメラやセンサーを備える。限られた資源や経験不足の結果、趣味で作られたAUVの大半は運用深度、耐久性において洗練された市販の機種に及ばない。最終的にこれらのAUVは通常は海洋では運用されず大半はプールや池で運用される。単純なAUV はマイクロコントローラー、PVC耐圧容器、自動ドアロックアクチュエータ、注射器継電器を使用して製作可能である。[3]

機体の設計

ファイル:The eagle flies.JPG
フロリダ沿岸で試験中のBluefin-12 AUV

100以上の異なるAUVが過去50年あまりの間に設計されたたが[4]、しかし、有意な数の販売の実績のあるのは数社に限られる。AUVを国際的な市場で販売するこれらの会社はKongsberg Maritime, Hydroid (現在はKongsbergによって所有される), Bluefin Robotics, International Submarine Engineering Ltd.とHafmyndを含む約10社である。

機体の大きさは人が携行出来る軽量のAUVから全長10m以上の大型の機種まである。かつて軍用と商業用で一般的だった小型機は現在人気を失いつつある。これはAUVの運用効率を高める為には長航続距離と長期間の運行が必要でその為にはより大型の機体が必要であるとの認識が受け入れられてきたからである。しかし、小型軽量のAUVは廉価なので現在も予算の限られる大学等では一般的である。

Bluefin や Kongsbergを含むいくつかの製造会社は政府の支援の恩恵を受ける。市場は3分野に分類される。:科学分野(大学や研究機関を含む)、商業分野(石油とガス)と軍用分野(機雷対策、戦闘海域の準備)である。これらの任務の大部分は類似の設計で巡航モードで使用される。予め設定されたルートに沿って1から4ノットで航行しながらデータを収集する。

市販されているAUVはウッズホール研究所によって開発され現在はHydroid, Incによって販売されるREMUS 100 AUVのような小型の設計から大型のKongsberg MaritimeのHUGIN 1000 と 3000 AUVやノルウェー防衛研究所によって開発されたBluefin Roboticsの直径12と21インチ(300と530mm)の機体やInternational Submarine Engineering Ltd.のエクスプローラーまである。大半のAUVは従来の魚雷のような外観でこれは最適の大きさで流体力学的効率と扱いやすさの最良の妥協点であるように見られる。これらのいくつかの機体ではモジュラー設計を採用することによって運用者によって手軽に構成を変更できる。

市場は拡大しており、現在では純粋な開発よりも商業的な需要に応じた設計になりつつある。次の段階ではハイブリッド式AUV/ROVが調査や権利介入の用途に用いられると予想される。これはより多くの制御と水中停止能力が必要である。再び市場は金融的な需要と節約と高価な船の時間を節約する目的で動く。

現在、大半のAUVは大半の運用者の投資を維持する為に音響伝送システムの伝達範囲内で非監視任務対応能力を備える。これは万能ではない。一例として、カナダは海洋法に関する国連条約の76条における彼らの主張を裏付ける為に北極海氷山の下の海底の測量の為に2機のAUV(ISE Explorers)を受領した。

同様に水中グライダーのような超低出力、長航続距離の機体は回収されるまでに数週間から数ヶ月間、潜航してデータを収集して衛星中継でデータを伝送する能力を持つ。

2008年の時点で自然界に見られるデザインを模倣した新型のAUVが開発中である。大半は現在実験段階であるがこれらの生体工学に基づく機体は自然界において成功したデザインを模倣することによってより高い推進効率や優れた機動性が得られる。これらはフェスト社のAquaJelly社のバイオニック マンタである。

センサー

主に海洋学の道具としてAUVは自動航法の為のセンサーと海洋の地図機能を持つ。一般的なセンサーには方位磁石、水深計、サイド・スキャン・ソナー、や他のソナー磁力計温度計、導電計がある。カリフォルニア州モントレー湾で2006年9月に直径21-インチ (530 mm)のAUVが全長300フィート (91 m)のハイドロフォンアレイを巡航速度3-ノット (5.6 km/h)で曳航する実演が行われた。

航法

AUVは海底に設置された発信機からの信号を用いる水中音響測位システムで誘導される。これは長基線音響測位システム(LBL)航法として知られる。水上の支援船から得られる超短基線(USBL)または短基線測位は海中の潜水機が水上の支援船のGPSによる位置との相対的な位置を音の到達時間と方位で算出する物である。

運用は完全に自動化されておいており、AUVは浮上時には備えられたGPSを使用する。GPSの電波を受信できない潜航時には搭載された慣性航法装置で測位する。圧力センサーで垂直方向の測位を行う。これらの観測データはカルマンフィルターでふるいにかけてから最終的な航法に用いる。慣性航法装置とGPS受信機を組み合わせたりGPS信号の受信が途切れた場合には方位磁石を併用する。

推進

AUVは複数の推進技術に依存する事が出来るがプロペラを基にした推進器コートノズルが圧倒的に普及している。これらの推進器は通常電気モーターを動力としていて、モーター内部が錆びないように水密構造によって水の進入を防ぐ構造になっていたり、モーター内に油を満たす事により水の進入を防ぐ構造になっている。

動力源

現在の大部分のAUVはリチウムイオンリチウムイオンポリマーニッケル・水素等の蓄電池をバッテリーマネジメントシステムを備えて使用している。いくつかのAUVは1回ごとのミッションにおいて余分な費用がかかるが、おそらく2倍の活動時間が得られる一次電池を動力源として使用する。いくつかの大型のAUVはアルミニウム系の準燃料電池を動力としているが整備や高価な再充填が必要で安全に処理する必要のある廃棄物を生成する。新たな潮流は異なる蓄電池と電気二重層コンデンサを備えた電力システムである。

日本におけるAUV開発

日本でも東京大学生産技術研究所浦環研究室や大学の海洋関係の研究室や国際電信電話(KDD)の研究所等で研究が行われてきた。1990年代以降にはツインバーガーPTEROAシリーズアールワン・ロボットやKDDのアクアエクスプローラシリーズが開発された。その為、この分野では世界的に見ても高い水準にある。[5]

関連項目

出典

参考文献

  • 海中ロボット総覧 浦 環, 高川 真一 (著) 成山堂書店 (1994/02) ISBN 9784425560219
  • 海中ロボット 浦 環, 高川 真一 (著) 成山堂書店 (1997/05) ISBN 9784425560417
  • 自律型潜水艇研究の動向と展望, 藤井 輝夫 日本造船学会誌, Vol.739, (1991.1), pp15-22
  • 1996 Symposium on Autonomous Underwater Vehicle Technology ISBN 9780780331853
  • Autonomous Underwater Vehicle Technology, Proceedings of the AUV Symposium on, 20-21 August 1998, Cambridge, Massachusetts ISBN 9780780351912
  • Review of Autonomous Underwater Vehicle (Auv) Developments ISBN 9781155106953
  • "Follow the Leader" Tracking by Autonomous Underwater Vehicles (AUVs) Using Acoustic Communications and Ranging ISBN 9781423500117
  • Technology and Applications of Autonomous Underwater Vehicles ISBN 9780415301541
  • Underwater Robots: Motion and Force Control of Vehicle-Manipulator Systems ISBN 9783642068591

外部リンク

グループと計画

研究機関

大学での研究

用途論文

水中グライダー

企業