自動車損害賠償責任保険

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自動車損害賠償責任保険(じどうしゃそんがいばいしょうせきにんほけん)、略称自賠責保険(じばいせきほけん)とは、自動車損害賠償保障法によって、自動車および原動機付自転車を使用する際に加入が義務づけられている損害保険。加入が義務付けられていることから、俗に強制保険とも呼ばれる。

概要

自賠責保険は1955年の自動車損害賠償保障法施行に伴い開始された対人保険制度で、その目的は交通事故が発生した場合の被害者の補償である。あらかじめ自賠責保険に加入させることで被害者は最低限の損害賠償金を受け取ることができる状態になる。

自賠責保険では過失割合にかかわらず、負傷した者は被害者として扱われて相手の自賠責保険から保険金が支払われる。ただし、過失割合が70%を超える場合は重過失減額として、過失割合に応じて20-50%の減額が適用される。また、最低限の補償の確保を目的としているので、保険金の上限が被害者1人につき死亡3000万円・後遺障害4000万円・傷害120万円までと低い。補償額の少ない自賠責保険を補うために任意の自動車保険に別途加入することが一般的になっている。

車検のある自動車や250ccを超えるオートバイの場合は、車検の機会に更新して車検証の期限が満了する期間の契約を行うのが通例となっているが、車検のない250cc以下のオートバイでは契約期間を1年から5年までの期間で任意に契約でき、コンビニエンスストア郵便局でも加入や更新手続きができる場合もある。なお、自動車損害賠償保障法第10条と同法施行令第1条の2の規定により自衛隊国連軍在日米軍の車両は自賠責保険の付保は要しないとされている[1]。また、農耕作業の用に供することを目的として製作した小型特殊自動車は加入自体ができない。

自賠責保険に加入すると、保険会社から「保険標章」と呼ばれる自賠責保険の満了年月を記したステッカーが交付される。検査対象外軽自動車、原動機付自転車及び締約国登録自動車などの車両には、保険標章の貼り付けが義務付けられており[2]、貼り付けられていない場合は公道の走行が認められない。保険標章を貼り付ける位置は、自動車がフロントガラス、オートバイがナンバープレートとなっている。

自賠責保険に加入しないまま自動車や原動機付自転車を運行させた場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられるほか、道路交通法上の違反点数6点が加算され、運転免許の停止または取消処分がなされる。(ただし過失の場合はその限りではない。)

政府保障事業

政府保障事業は自賠責保険を補完する国の事業で、正式名称は自動車損害賠償保障事業である。加害者を特定できないひき逃げ事故や加害車両が無保険車の場合には、被害者が自賠責保険による損害賠償を加害者から受けられないため、自動車損害賠償保障法に基づき政府が自賠責保険の支払基準に準じた損害額を被害者に支払う。政府が損害賠償金を立替払いしているに過ぎないため、加害者が特定される無保険車事故の場合には、後から政府は立替払いした金額を加害者に請求する。損害保険会社であれば、どこの窓口でも政府保障事業に対する被害者からの請求を受け付けている。

賠償金未回収問題

この政府保証事業については、交通事故の加害者が国に対し、立て替えられた賠償金を弁済する義務がある。にもかかわらず、弁済されないまま回収されないケースが多く、2011年3月末現在での未回収残高が458億円にも及び過去最大となったことが、2011年会計検査院の指摘によって判明している。会計検査院は国土交通省に対し、無保険車を減らすための対策が不十分であることを指摘している[3]

自賠責制度PRキャラクター

国土交通省が女優やタレントをPRキャラクターに起用して、毎年、ポスターや新聞・雑誌広告などで自賠責保険や政府保障事業といった自賠責制度全体の広報活動を行っている。

自動車損害賠償責任共済

全国共済農業協同組合連合会(JA共済)や個別の農業協同組合および全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)においては、共済事業として自動車損害賠償責任共済(自賠責共済)を行っているが、内容としては損害保険会社が行っている自賠責保険と同じである。

脚注

  1. ^ ただし、自衛隊の車両でも道路運送車両法が適用される(一般のナンバープレートが付いている)ものは加入義務がある。
  2. ^ 自動車損害賠償保障法 第九条の三
  3. ^ 自賠責、458億円未回収…立て替え賠償分 読売新聞 2011年10月29日

外部リンク