掃除
掃除(そうじ)とは、掃いたり拭いたりすることによってゴミや汚れを取りのぞくこと[1]。清掃とも言われる。
家事労働のうちの一つ。死馬牛の処理[2]や不要ファイルの削除を指す事もある。
掃除の目的・方法・注意点
掃除の基本的な目的は、ちり・ほこり・しみ等を除去することである。
基本的には帚、塵取り、ハタキ、モップ、雑巾、ブラシなどを用いて行われてきた。また現代では電気掃除機も用いられている。最近ではロボット掃除機も用いられることが増えてきた。
なお、ちり・ほこり・しみの主な原因は、人間、ペット、観葉植物などやその活動である。また、衣服・カーテン・カーペット類の劣化による繊維ごみもある。人やペットの体毛、皮脂、汗、糞尿。また食品の残滓やハネ。他にもインク類のハネこぼれや子供の落書き、区域外から持ち込まれたり舞い込んだりした土埃、粉塵、花粉などがある。
ちり・ほこり・しみ等は、ダニ・ノミ・雑菌類の繁殖培地となり、虫刺され、かぶれ、喘息や、各種炎症・感染症の原因となるほか、カビの発生、腐敗等により悪臭の原因や什器類の劣化の原因となる。地方によっては蚊の発生がマラリアなどの深刻な感染症の原因となるため、観葉植物用の潅水容器、屋外の雨どいや排水設備、防火水槽、エアコン室外機などに溜まった雨水などにボウフラが発生しないよう、とりわけ注意が必要である。
電気まわりの汚れ・粉塵などは絶縁不良、トラッキングを引き起こし、火災の原因となるので掃除を行う。コンピュータやテレビ、換気扇など電気製品、作業機械や工作機械などが粉塵に汚染された状態で放置されていると排熱不良や稼動部の消耗、咬合不良などにより故障の原因となるので掃除を行う。
日常的に管理区域と考えている領域外に汚染源がある場合がある。たとえば天井裏や床下などに侵入したネズミ・昆虫等の糞尿・死骸など。これら目視で確認できない区域を生み出すことは設計の段階でなるべく回避すべきである[要出典]。
天井裏の掃除の必要があると判断される場合は、一般的には押し入れの奥や天袋などに隠されている天井裏への入り口から天井裏へと上り、汚染源を除去する。
自動車や農作業機、室外発動機などの機関部(エンジンルーム)にはしばしばネズミや昆虫が侵入し、捕食した昆虫の残骸や残飯などを放置している場合がある。これらは熱源や電源部、稼動部に接触する事で異常発熱やショート、故障などの原因となるので、定期的に点検し必要に応じて除去する。
一般生活においては目視で発見できる程度の汚れを除去する程度の管理でまず問題は発生しないが、病院や食品工場、半導体工場など高度に衛生、粉塵管理をもとめられる区域では、清掃作業者や清掃活動そのものが新たな汚染源となっていることもあるため、綿密な区域管理と清掃計画を立てる必要がある。
掃除によって回収されたゴミの処理方法は重要な問題である。一般に家庭では自治体等のゴミ収集や下水道へ放流するなどによっているが、自己の管理区域から非管理区域にゴミを分別なく投棄している場合は、投棄されたゴミが新たな汚染源や悪臭元となって管理区域外を汚染している場合がある。たとえば下水管の詰まり、ゴミ置き場の悪臭、地中に埋めたゴミ類の腐敗、焼却処理による粉塵、悪臭などである。
大掃除
一般には、年末(大抵は12月28日)に、徹底的に行う掃除を大掃除(おおそうじ)と言う。一年分の汚れを除去し、新たな年に歳神を迎える準備をし、新年を新たな心持ちで始められるようにする意味がある。また、学校行事で学期末などに一斉に行う掃除も大掃除と呼ばれる。
掃除用具の多岐や高機能化により、日頃から多くの場所を掃除できるようになったためか、大晦日前の住宅街などでも家族総出の大掃除は見られず、大掃除をしない家庭も増えてきた。これは常に掃除し、汚れをすぐに綺麗にしておけば大晦日前に慌てて掃除をする必要はないという考えによる(詳しくは外部リンクも参照のこと)。また、暖かい方が汚れが落ちやすいことと、外出してもどこも混雑すると思われることから、ゴールデンウィークに大掃除を行う家庭も多い[要出典]。
煤払い(すすはらい)
煤払い(すすはらい)とは古くから続く日本の年中行事のことを指し、いわゆる大掃除のことである。現在でも、神社仏閣においては煤払いと称して歳末の恒例行事となっている。
本来は旧暦の12月13日に行われていた。これは徒弟奉公などの人々が新年に間に合うよう里帰りの旅路の時間を考慮して行われていたからである。江戸時代には煤払いの作業後は、冬の時節と重労働を加味して滋養強壮と長寿を願って「鯨汁(クジラ汁)」が日本各地で食されたことが、数々の川柳や書物、物売りの記録から残されており、その習慣は広く一般に普及していた。
江戸時代(中期以降)の大掃除は、押入れの奥から出てきたり、襖の下張りなどに使われていた浮世絵や瓦版を見つけては、ついつい読みふけってしまう、といった和やかな一面もあり、商家では、煤払いが終わると誰彼構わず胴上げを行うのが慣わしとなっていた。また、老人や病人、子供など、掃除に参加しない者は掃除を行っていない部屋に退避するか、外出して掃除の邪魔にならないようにしていた。
学校での掃除
日本の初等教育、中等教育の学校では教育の一環として行われる。[3]
アメリカ合衆国や欧州各国の多くの学校では、外部業者の手により掃除が行われる[4]。
21世紀になってから日本の学校での教室掃除がアラビア諸国などに知られるようになり、同地域の一部で教育の一環として行われるようになった。
企業において
- アメリカ
アメリカの企業では、清掃は基本的に清掃業者や清掃の専任者が行う。アメリカは契約社会であり、漠然と会社の従業員になるのではなく、あらかじめ具体的な職種が指定されて雇用契約が結ばれるのであり、あらかじめ交わされる雇用契約書に「job description」などとして、行う職務がかなり具体的に列挙されており、一般にそこには「掃除」などというjobは書かれておらず、その契約書に書かれていないことを従業員にさせては重大な契約違反であるからである。もしも経営者が、従業員に対して、契約書に書かれていないようなオフィス全体や工場全体の掃除に参加することを強要したら、契約違反として裁判を起こされても当然だと見なされている。ただし、デスクワークの従業員が自分専用のデスク上の軽い掃除程度は行うことは一般的である。だがデスクワークの契約で雇用されている従業員が周囲の床の掃除機がけやモップがけは基本的に行わないのである。
- 日本
日本では大企業においてはオフィスなどは、基本的に外部の清掃業者が入り、定期的に(毎日、あるいは数日おきなどに)掃除をおこなっている。
日本の工場では、生産ラインや工具の分解清掃は、製造工程の品質維持を目的とするほか、ラインや工具の耐久性向上、食品ラインなどにおける異物混入事故の予防や発見など通常業務における効果を期待して従業員によって行われる。さらに日本の工場では従業員教育の一環としても行われている面がある。その場合、未熟練作業者が品質に対する理解を深め、あるいはラインや製造工具、作業内容に対する知識を高めるための研修効果が期待されている。
宗教団体・宗教施設での掃除
宗教の種類や宗派ごとに異なるが、概して言えば、多数の信徒が参加して行う掃除や、修行者や僧侶が行う掃除がある。
- お身ぬぐい
- 煤払い
キリスト教の修道院では修道僧が基本的に自力で生活するので、掃除も自分で行う。
所有意識と掃除
領域に対する愛着や責任感、コミュニティを感じるための行動として掃除(維持管理)活動の効果が期待される。また割れ窓理論にみられる犯罪抑止効果が指摘されている[要出典]。
脚注
- ^ 大辞泉
- ^ 小林茂・他編『部落史用語辞典』柏書房1985年8月、185頁。
- ^ 糞尿や雑菌の繁殖元、動植物の遺骸などは「きたないもの」として忌避すべきことは幼少のきわめて初期に教育されるが、一方でこれらを適切に管理することは社会的協調性を獲得する手段として重要な教育目標である。家庭内教育の一環として掃除お手伝いをするほかに、公共教育の一環として清掃活動は重要視される。「触れたくないもの」「忌避すべきもの」を適正に処置できる技術を学ぶこと、あるいはその体験を積み重ねることで、自主自律のための自信の獲得に寄与することが期待される。[要出典] 小中学校の掃除は、業者に委託したほうが正確かつ丁寧であるにもかかわらず、児童・生徒に担当させるのは、上記の教育的効果を意図したものである。[要出典]
- ^ 新井潤美『執事とメイドの裏表 イギリス文化における使用人のイメージ』(白水社2011年)によれば、「イギリスでは宿舎学校でも、自分たちの寝室を生徒が掃除することはない」という。
関連項目
外部リンク
- 大掃除は、もはや師走の風物詩ではない!? マーケティングリサーチから見た近年の大掃除の傾向について[リンク切れ]
- 防犯まちづくりに向けて(独立行政法人建築研究所) (PDF) 所有意識や清掃活動に関する記述[リンク切れ]
- ハウスクリーニング屋さんの掃除の裏技・プロの掃除 プロに見習うお掃除とは!?