天津煎餅
天津煎餅(てんしんせんべい、中国語 ティエンチンチエンビン Tiānjīn jiānbǐng)は、中国の華北地方でよくみられる、水で溶いた緑豆の粉、粟の粉、または小麦粉と卵を丸い鉄板に広げて焼いた、一銭洋食に似た辛い味の軽食の一種。
概要
天津では、単に「煎餅」(チエンビン、jiānbǐng)もしくは「嘎巴」(ガーバ、gāba)[1]。とも呼ばれる。カート式の屋台に七輪やガスコンロを置き、「鏊子」(アオズ、àozi)と呼ばれる丸い鉄板を使って、街角で焼きながら売るスタイルが普通。
山東煎餅から派生し、天津で改良されたものと言われる。本場、天津では、もともと山東煎餅のように粟の粉を使っていたのが、緑豆の粉との混合になり、後に緑豆の粉中心に変化した言われる。緑豆を使うのがもっともうま味があるとされる。また、粉ではなく、生の緑豆を水に漬けて軟らかくし、表皮を除いてから、すりつぶす方法もある。
しかし、天津以外では、緑豆よりもコストの安い小麦粉を混ぜたり、完全に小麦粉に変えたものが多く、本場のものとは風味が異なるものになっていることが多い。
味付けも、本来は麦味噌と薬味の刻みネギだけというシンプルなものであったが、現在では唐辛子味噌、腐乳を加えたり[2]、煎りゴマやクミンをまぶしたりする事が増えつつある。
作り方
- 緑豆などの粉を水で溶き、少量の塩、五香粉などを加える。
- 鉄板に油を敷く。
- 水で溶いた粉を鉄板に乗せ、素早くとんぼのような形をした木のへら(三角拐子)を回転させるように動かして、丸く、大きく、薄い形に広げる。
- 鶏卵をひとつ上に割り落とし、とんぼで黄身をつぶして、やはり丸く広げる。
- 上にきざみ葱を振りかける
- 火が通り、粉がきつね色に変わりはじめたら、コテで鉄板から剥がし、上に味噌だれと、希望により唐辛子味噌を塗り、短く切った油条(揚げパン)または薄く揚げた「薄脆」を乗せ、折りたたんで完成。
- 山東省などでは、最後に魚肉ソーセージも夾む場合がある。
変種
煎餅餜子
煎餅餜子(チエンビングオズ、 jiānbǐngguǒzi)は、緑豆の煎餅で、天津で「餜子」または「棒槌餜子」と呼ばれる揚げパン(油条)を包んだもの。一般に中国各地で「天津煎餅」として売られているものの多くは、実際には煎餅餜子であって、煎餅ではない。
北京では、1980年代から街頭で見かけるようになったが、「餜子」ではなく「薄脆」(バオツイ、báocùi)と呼ばれる薄く揚げたクラッカーのようなものを挟むことも多い[3]。
嘎巴菜
嘎巴菜(ガーバツァイ、 gābacài)は、緑豆の煎餅を細切りにして、とろみのある餡をかけた食品[4]。天津では朝食に食べることが多いが、天津以外で目にすることはほとんどない。
脚注
- ^ 韓根東 編、『天津方言』pp74-75、北京燕山出版社、1993年、北京
- ^ 張生良 主編、『中国小吃搜索 引擎』p31、山西経済出版社、2010年、太原
- ^ 陳連生、肖正剛、『北京小吃-京汁京味説講究』p32、中国軽工業出版社、2009年、北京
- ^ 韓根東 編、『天津方言』p75、北京燕山出版社、1993年、北京