大病人
大病人 | |
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The Last Dance | |
監督 | 伊丹十三 |
脚本 | 伊丹十三 |
製作 | 伊丹プロダクション |
出演者 |
三國連太郎 津川雅彦 宮本信子 |
音楽 | 本多俊之 |
撮影 | 前田米造 |
編集 | 鈴木晄 |
配給 | 東宝 |
公開 | 1993年5月29日 |
上映時間 | 116分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
癌で余命1年となった男。残りの人生をどう生きるか、どう死ぬかという人間の葛藤を、コメディを交えながら描く。作品の特徴としては、主人公のセリフなど随所に仏教的な死生観が伺われ、実際クライマックスシーンでは、黛敏郎の作曲「般若心経」が朗唱演奏される。
この作品で日本アカデミー賞において三國連太郎が主演男優賞を、小野寺修が録音賞を受賞した。
あらすじ
老境を迎える大物俳優兼映画監督の向井武平(三國連太郎)は、癌に冒された作曲家を自ら演じ、同じ病で妻に先立たれるというストーリーの映画のメガホンをとる。酒好きで胃薬を常用している向井は、ある日体の異変に気づき、離婚寸前の妻・万里子(宮本信子)のすすめで、万里子の学生時代の友人である外科医・緒方(津川雅彦)が勤務する病院で診察を受けることになる。検査の結果、既に手遅れ状態の胃癌であったが、緒方は本人には告知をしないことを決意する。何も知らない向井だが、病院内で知り合った患者仲間(三谷昇)から悲惨な癌患者(高橋長英)の実態を知らされ、自分に抗癌剤が点滴されていることに気づく。向井は激しく緒方をなじり、緒方も向井の扱いに苦悩する。その後、混乱した向井は担当看護婦(木内みどり)を口説いたり、愛人である共演女優(高瀬春奈)を病室へ連れ込んだり、挙句の果て衝動的に自殺を図ったりするが、緒方との対話を通じて、自らの最後の迎え方を決断するようになる…。
スタッフ
- 脚本・監督:伊丹十三
- 音楽:本多俊之
- 撮影:前田米造
- 美術:中村州志
- 編集:鈴木晄
- デジタル合成:島村達雄(白組)、山崎貴(白組)
- 水中映像:中村宏治
- 看護指導:長島美和子
- 技斗:高瀬将嗣、森聖二
- 特殊メイク:江川悦子、宗理起也、寺田まゆみ、神田文裕
- 現像:IMAGICA
- スタジオ:にっかつ撮影所
- 製作者:玉置泰
- プロデュース:細越省吾
- ロケ協力:東十条病院、倉本記念病院(現:セコメディック病院)、横浜総合病院、東京都立松沢病院
キャスト
- 向井武平(大病人):三國連太郎
- 緒方洪一郎(医師):津川雅彦
- 万里子(武平の妻):宮本信子
- 看護婦:木内みどり
- 神島彩(武平の愛人):高瀬春奈
- ミッチャン(小道具係):熊谷真実
- プロデューサー:田中明夫
- 入院患者:三谷昇
- 瀕死の患者:高橋長英
- 患者の妻:左時枝
- 看護婦:南美希子
- 若い看護婦:清水よし子
- 助監督:渡辺哲
- 医師:村田雄浩
- 医師達:山内としお、秋間登、米倉真樹
- レントゲン技師:加藤善博
- 麻酔医:上田耕一
- 手術台の少女:朝岡実嶺
- 臨死体験の少女:溝口利恵
- 麦藁帽子の少女:中野美穂
- 自転車の少女:櫻井淳子
- 映画スタッフ:有薗芳記、小川美那子、関川慎二、天田益男、宮坂ひろし、荒牧太郎 ほか
- 病院の患者たち:里木佐甫良、夏木順平、鹿島信哉、春延朋也
デジタル合成
今作品は主人公が臨死体験を味わうシーンでは、日本映画で初めてのデジタル合成を使用した作品である。
デジタル合成を担当したのは、当時CM業界で有名であった株式会社白組。
主人公が別世界へ引き込まれる背景、洞窟は3DCG。主人公は役者とミッキー3号と命名されたダミーを使い分けている。
少女が頭にかぶっている麦わら帽子から現れる鳥は、白組で飼育された本物の鳥(ギンパラ)をブルーバックで重ね撮りし、合成した。
断崖絶壁のシーンではギアナ高地のエンジェルフォールの写真素材を基にデジタルマットペイントされたもの。
デジタル合成で使用されたソフトは、白組のインハウスソフトと、Adobe社のAfter Effects及びPhotoshopを使用。
関連書籍
- 伊丹十三『「大病人」日記』(文藝春秋、1993年) ISBN 4-16-347570-2
- 立木義浩『伊丹十三映画の舞台裏 大病人の大現場』(集英社、1993年) ISBN 4-08-780191-8