コンテンツにスキップ

北海道・本州間連系設備

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。114.159.52.134 (会話) による 2012年4月10日 (火) 09:07個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

北海道・本州間連系設備(ほっかいどう・ほんしゅうかんれんけいせつび)は、北海道本州の間を結ぶ一連の電力供給設備で、電源開発が運用している。北本連系(きたほんれんけい)と略されており、こちらのほうが一般的な名称となっている。

概要

日本全国には、連系線という電力会社相互の高電圧の送電線網が通じており、気温変動や予期せぬ発電所の停止などによる電力事情の逼迫を、電力の融通によって補う仕組み(会社間連系)ができ上がっている。

会社間連系は、発電所の建設が抑えられてコスト削減になる。特に北海道は冬に電力消費が多くなる傾向があるのに対し本州は夏に電力消費が多くなる傾向があり電力消費のピークとなる季節が一致しないため、この設備を利用する意味が生じる。一方、送電距離が長くなることや、交流と直流を変換(後述)するサイリスタによる電力ロスが発生する[1]

運用

北海道電力では、一次変電所である西当別変電所を起点に、西野変電所・西双葉開閉所を経由し大野変電所へと至る「道央北幹線・道央西幹線・道南幹線」を連系線としており、主に泊発電所原子力発電所)や知内発電所火力発電所)で発電された余剰電力を東北電力に供給できる態勢がとられている。なお、北海道電力から供給された電力を東北電力の送電網を通じて東京電力など他社へ供給する場合もあり、これを「振替供給」という[2]

津軽海峡をまたぐ区間については、条件が厳しい海底への敷設ということや、効率良く送電することが求められることから、直流送電を行っている。この直流送電を行うための一連の施設群が「北海道・本州間連系設備」であり、1979年(昭和54年)から運用が始まった。これにより、北海道のみ連系線から取り残されていたことによる電力供給の不安[3]が緩和されたほか、北海道の余剰電力を道外に供給できるようになったことで、本州側から見た場合は連系線の強化につながることになった。

設備

古川ケーブルヘッド(北海道函館市)

北海道側の亀田郡七飯町に函館変換所、本州側の青森県上北郡東北町に上北変換所が設けられており、それぞれの施設にある世界最大級のサイリスタを使用して交流直流の変換が行われている。なお、電力品質を一定にするため、AFC(自動周波数制御)装置が設けられている。両変換所から陸上の架空送電線(計124km)を経て津軽海峡を結ぶ海底ケーブルは、送電容量が電圧250kV・電流1200A、敷設長43km、敷設する海底深度(水深)が300mで、世界有数の規模である。

供給能力は、1979年の運用開始時は15万kWだったが徐々に増強され、現在は60万kW[4]である。夏季に首都圏で発生する電力事情逼迫時には、60万kWフルでの送電が行われる。

問題点と課題

電力自由化後、託送可能空き容量が逼迫していることが問題視されており[5]、さらなる設備増強が検討されている[6]。今後10年程度で90万kwに増強する予定である[7]

事故

2011年4月7日に、東北地方太平洋沖地震の余震により、送電が停止した。その影響で泊原子力発電所などの道内の複数の発電所が、周波数上昇を防ぐため出力を下げて運転した[8]。2011年4月8日夜、最大送電能力60万kwのうち、30万kw分の運転を再開し[9]、残る30万kw分も4月9日に再開した。それ以降、60万kwを、東北電力・東京電力にフル送電している。

2012年1月25日、3本ある海底送電ケーブルのうち1本が損傷、一時的にすべての送電が停止された。まもなく2本の送電は再開され、30万kwの送電能力が復活したが、託送分を除いた20万kw分の電力融通しか出来なくなった。船舶が引っかかったのが原因とみられる[10]。同年4月6日に一時的に60万kwの電力融通が復活したものの、同日に道内陸上部において油漏れが発覚し、30万kwしか融通できない状態になり[11]、翌4月7日には、青森県下北郡佐井村内で発生した送電線トラブルの発生で、全く送電できない状態になったものの[12]、これらの復旧と併せ、同年4月9日にようやく全面復旧した[12]

脚注

  1. ^ 送電設備の電気抵抗を落とすために送電線や変電設備を変えることなどの方法で、電力ロスをある程度は軽減できる。
  2. ^ 北本連系に関するご質問への回答 (PDF) 東京電力、2003年11月20日
  3. ^ 道内発電所の運転停止時など。
  4. ^ 連系線設備(建設・増強)に関する勉強会とりまとめ報告書 資料編 (PDF) 図-11、電力系統利用協議会、2007年2月
  5. ^ 現状は北海道→本州のみ10万kwの容量があるが、本州→北海道の空き容量はないため、道内に拠点を持つ事業者が北海道電力以外からの振替供給による電力供給を受けることは不可能である。また、道外の事業者が道内に建設した自社発電所から電力供給を行う際にも制限がある。
  6. ^ 北海道・本州間連系設備におけるAFC機能の調整幅拡大に関する概略検討結果 (PDF) 電源開発、2004年4月22日
  7. ^ 道内-本州 電力融通1・5倍 北電 90万キロワットに増強へ 北海道新聞 2011年5月24日
  8. ^ 北電から本州への送電停止 泊原発、一時出力低下 北海道新聞 2011年4月8日
  9. ^ 『北海道新聞』(2011年4月9日)
  10. ^ 北電から融通一時停止 海底ケーブル1本損傷 東北電 河北新報 2012年1月26日
  11. ^ 北本連系設備の工事完了ならびに補修工事開始について ほくでん 2012年4月6日
  12. ^ a b Jパワー、本州との融通送電復旧 ケーブルや電線トラブル 北海道新聞 2012年4月9日

参考文献

関連項目

外部リンク