二次元コンプレックス
この項目には性的な表現や記述が含まれます。 |
二次元コンプレックス(にじげんコンプレックス)とは、アニメ・漫画・パソコンゲーム・小説挿絵を含む絵画等の美少女二次元キャラクターに対してのみ、性的感情・恋愛感情を抱く状態を指す[1][2]。二次コン(にじコン)と略され、英語ではこの略称の「Nijikon」で呼ばれる[3][4]。
概要
「二次元コンプレックス」という術語は1970年代後半のアニメブームの後に来た1980年代初頭のロリコンブームの際にアニメ・マンガファンダム内部でアニメの少女キャラクターに対して偏愛する行為に対して一種のジャーゴンとして使われ始めた[5]。当初は「二次元ロリコン」「アニメ・ロリコン」とも呼ばれた[5]。但し、「二次元コンプレックス」というジャーゴンの形成以前にもこうした二次コンを扱ったフィクションは近世以前から存在し、「絵に描かれた架空の存在に対する恋愛感情」という概念そのものは、江戸時代には既に存在していたことがわかる。高取英によれば、(1989年当時の)ロリコン青年は大きく観念派・過激派・実践派に分かれ、その大半は雑誌・写真などのイメージの趣味に限られる観念派だとしている[6]。実態としての行為の対象を持たない二次コンは実践派に入ることはなく、また多くの場合観念派にとどまる。1981年10月に発表されたY・エンドウの「ビョーキ・ウォーズ」によれば、「二次元コンプレックス」は「アニメ狂」(原文ママ)及び「少女フェチ」と関連性があるものとされており、この時点では二次元コンプレックスがロリータ・コンプレックスや少女フェティシズムの変種としてとらえられている[7]。1986年に秀和システムトレーディングの技術者がダベった内容を収録した書籍『パソコンマニアは海へ行こう』p. 120 の注には「2次元コンプレックス: 2次元平面に投影された、つまり絵に描かれた女性に対してしか、性的興味を示さない心理状態。原理的にアニメファンとの区別がつきにくいうえ、ロリコンとの境界もはっきりしない。」と説明されている一方で、本文中では「2次コンは漫画の中の世界に閉じこもってますから、あれが普通だと思ってますからね。たとえばこう、殴ると相手がぱーん、といってふっとんでいくとか。」という発言が収録されており、だいぶカジュアルな概念として扱われているのが伺える(なお、この部分にも注があり「殴ると相手が…: たとえば高橋留美子の『うる星やつら』を見よ。」とある)。教育学者の飯島敏文は二次元コンプレックスを持つことの原因について、幼児期においてキャラクター商品に囲まれて生活することが子供の現実感覚を失わせる遠因になるおそれがあるのではないかと推察している[2]。
二次コンの社会への影響
一見すれば、二次コンは社会に対し影響を加えたり、深刻な対立を生みだすことはなさそうに考えられるが、脚本家の首藤剛志は、WEBアニメスタイルのコラム『シナリオえーだば創作術 誰でもできる脚本家』第55回「『ミンキーモモ』は「ロリコン」を受けて立つ?」にて、「フェミニストによる『生身でなく二次元のキャラクターに愛を注ぐのは、現実の女性に対する蔑視である』という意見が通り、表現規制問題に発展する恐れがある」という旨を「これは自分の妄想に過ぎないが」と断った上で述べている[8]。また、二次元コンプレックスを自認する者の中には二次元キャラクターとの結婚を望む場合があり、法律的に認められた例はない[9]が、インターネット上に二次元キャラクターとの結婚認定証を発行する組織が存在する[1][10]。
二次元コンプレックスを扱ったフィクション
- 『押絵と旅する男』 - 江戸川乱歩の短編小説。『新青年』1929年6月号初出。
- 『衝立の乙女』 - 小泉八雲の短編小説。原題"The Screen-Maiden"。原典は白梅園鷺水こと青木鷺水の『御伽百物語』(1706年)巻四「絵の婦人に契る」。さらにその原典は、陶宗儀編『輟畊録』(てっこうろく、日本では1652年(承応元年)刊行)巻十一「鬼室」に遡る。
この節の加筆が望まれています。 |
「二次コン」の名を冠する催事・団体
脚注
- ^ a b 陳欣「日本マンガと自己形成 :読者の自己恋愛物語をめぐって」2011年3月、弘前大学リポジトリ、PP4-6。
- ^ a b 飯島敏文「成長の出発点としての就学前期の生活経験の意義と課題 -日常生活空間に存する教育資源の活用と環境改善への試論-」、『大阪教育大学紀要 第IV部門 第54巻 第2号』所収、2006年2月、PP179-180。
- ^ Nijikon-UrbanDictionary(英語),2012年6月13日閲覧。
- ^ rec.arts.manga: Frequently Asked Questions(英語),2012年6月13日閲覧。
- ^ a b 「アニメ世界のロリータたち・もしくはアニメ少女キャラは如何にして二次元コンプレックスしたか」蛭児神建監修『ロリコン大全集』、群雄社出版発行・都市と生活社発売、1982年5月、PP68-69。
- ^ 都市のフォークロアの会編『幼女連続殺人事件を読む・全資料-宮崎勤はどう語られたか?』、JICC出版局、1989年11月、PP48-49。
- ^ Y・エンドウ「ビョーキ・ウォーズ」、『COMIC BOX VOL10』再録、1984年2月、ふゅーじょんぷろだくと、P136。(初出『ふゅーじょんぷろだくと 1981年10月号』、ふゅーじょんぷろだくと、1981年10月)
- ^ 『シナリオえーだば創作術 誰でもできる脚本家』第55回「『ミンキーモモ』は「ロリコン」を受けて立つ?」、2012年6月14日閲覧。
- ^ 自然人ではなく著作物なので、“本人”の意思を確認する手段がない。日本国憲法第24条にも違反する
- ^ 二次元キャラクター結婚認定協会、2012年6月13日閲覧。
- ^ 湯本豪一 『図説 江戸東京怪異百物語』 河出書房新社、2007年、76頁。ISBN 978-4-309-76096-4。
- ^ ルーマニアのオタク現象!?-在ルーマニア日本大使館、2012年6月14日閲覧。
- ^ アニメ制作プロジェクト・ブカレスト大学-世界の日本語教育の現場から(国際交流基金),2012年6月14日閲覧。
- ^ NIJIKON-facebook(ルーマニア語),2012年6月14日閲覧。