ピエール・ブルデュー
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ピエール・ブルデュー(Pierre Bourdieu, 1930年8月1日 - 2002年1月23日)は、フランスの社会学者。コレージュ・ド・フランス名誉教授。哲学から文学理論、社会学、人類学まで研究分野は幅広い。著書『ディスタンクシオン』が有名。文化資本、社会関係資本、象徴資本の用語や、ハビトゥス(Habitus)、界、象徴的暴力などの概念で知られる。
略歴
- 1930年 フランスに生まれる。
- 1951年 名門リセ・ルイ=ル=グランを経て高等師範学校(ユルム校)で哲学を学ぶ。
- 1954年 高等師範学校を卒業。哲学のアグレガシオンを取得。この年より、アルジェリアで対フランス独立戦争。
- 1955年 リセ教師を務めていたが、陸軍に徴兵されアルジェリアに出征。兵役期間終了後もアルジェリアに留まり、教師を務める。傍ら、アルジェリア社会の社会人類学的なフィールドワークをおこなう。
- 1958年 アルジェリア臨時独立政府発足。アルジェ大学に助手として着任。
- 1964年 フランス国立社会科学高等研究院(ÉHÉSS)教授。
- 1981年 コレージュ・ド・フランス教授。
- 2002年 死去。
思想
- ハビトゥス(羅:habitus - 英:habit - 日:習慣,習癖)をキー概念として、人間の日常行動の論理を解明し、構造主義民族学を批判的に発展させた。
- 主に教育と社会階級について分析。単に裕福な家庭の子が進学で有利というだけでなく、文化資本(上品で正統とされる文化や教養や習慣等)の保有率が高い学生ほど高学歴であることを統計的に証明した。またその子供も親の文化資本を相続し、同じく高学歴になることも統計的に証明した。彼はこれを文化的再生産と呼んだ。特権的文化の世代間継承と、学校がそれに果たす役割を解明。社会構造が再生産され変化するメカニズムについて考察し、現象学的主観主義を発展させることも目指した。これらの研究は、自己を他者から区別する「卓越化」が構造化される過程の分析から、階級闘争まで触れた著書『ディスタンクシオン』としてまとめられた。社会的地位の再生産に関する、マルクス主義とは異なる新しい理論として、ヨーロッパだけでなく日本やアメリカでも注目された。
- ハイデガー批判をし、デリダと論争をした。彼のハイデガー批判の内容はアドルノのモノマネだという批判もある。
- 晩年は新自由主義やグローバリゼーションを批判。1995年のフランスのストライキでは、失業者、ホームレス、不法移民を支援したほか、積極的に政治的な発言をした。新自由主義を批判した著書は数ヶ国語に翻訳され、ヨーロッパ、米国、南米での反グローバリゼーション運動に影響を与えた。
日本語訳著書
単著
- 『構造と実践――ブルデュー自身によるブルデュー』(新評論, 1988年)
- 『ディスタンクシオン――社会的判断力批判(1・2)』(藤原書店, 1990年)
- 『社会学の社会学』(藤原書店, 1991年)
- 『話すということ――言語的交換のエコノミー』(藤原書店, 1993年)
- 『資本主義のハビトゥス――アルジェリアの矛盾』(藤原書店, 1993年)
- 『美術愛好――ヨーロッパの美術館と観衆』(木鐸社, 1994年)
- 『芸術の規則(1・2)』(藤原書店, 1995年-1996年)
- 『ホモ・アカデミクス』(藤原書店, 1997年)
- 『教師と学生のコミュニケーション』(藤原書店, 1999年)
- 『ハイデガーの政治的存在論』(藤原書店, 2000年)
- 『メディア批判』(藤原書店, 2000年)
- 『市場独裁主義批判』(藤原書店, 2000年)
- 『実践感覚(1・2)』(みすず書房, 2001年)
- 『ピエール・ブルデュー――1930-2002』(藤原書店, 2002年)
- 『政治――政治学から「政治界」の科学へ』(藤原書店, 2003年)
- 『住宅市場の社会経済学』(藤原書店, 2006年)
- 『実践理性――行動の理論について』(藤原書店, 2007年)
- 『結婚戦略――家族と階級の再生産』(藤原書店, 2007年)
共著
- (ジャン=クロード・パスロン)『再生産――教育・社会・文化』(藤原書店, 1991年)
- (ジャン=クロード・シャンボルドン, ジャン=クロード・パスロン)『社会学者のメチエ――認識論上の前提条件』(藤原書店 1994年)
- (ハンス・ハーケ)『自由―交換――制度批判としての文化生産』(藤原書店, 1996年)
- (ジャン=クロード・パスロン)『遺産相続者たち――学生と文化』(藤原書店, 1997年)
- (ロイック・J・D・ヴァカン)『リフレクシヴ・ソシオロジーへの招待――ブルデュー、社会学を語る』(藤原書店, 2007年)