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タブラチュア

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ドイツ民謡「小鳥は来たよ」の五線譜(上段)とギター・タブ譜(下段)

タブラチュア (Tablature, Tabulature) は記譜法の一種で、楽器固有の奏法を文字や数字で表示するものである。また、タブラチュア譜(タブ譜、奏法譜)は、それらを記載した楽譜である。

五線譜の発達とともに廃れていったが、ポピュラー音楽の発展とともに再び広く使われるようになっている。

歴史

語源

タブラチュア (tablature) の語は、一覧表などを意味するラテン語である tablatura から来ている。英語では table。現代では「タブ譜」(英語では guitar tabs)などの省略形で親しまれている。

起源

現存する世界最古のタブラチュア譜は紀元前2世紀ギリシアのもので、デルフォイの神殿宝物庫石壁に刻まれていたものである。ただしこれは歌詞の上に音高を表す文字が刻まれているもので、現在のものとは違って音価は表されていない。[1]

発展

現代に連なるタブラチュアが使われ始めたのは14世紀以降である。

この時期は宗教音楽の発展とともに楽譜の必要性が高まり、楽器毎に進化を遂げていった。これは声楽も例外ではなく、これはやがて五線譜発展の一助となった。さらに鍵盤楽器のためにキーを数字や文字で示した鍵盤奏法譜、ダンスのステップを文字で示した舞曲譜なども現れた。

1507年にはタブラチュア譜による世界初のリュートの曲集がフランチェスコ・スピナッチーノ(リューティスト)の手により出版された。これは弦を押さえる指のポジションが記号化されており、音高と音長が示されていることもあって現代的なタブラチュアの元祖といえるものである。この時代はイタリアスペインフランスドイツなどでリュート演奏が盛んに行われており、タブラチュアも各地で独自の発展を遂げ、時代によって大幅な変化が加えられていった。

その後合理的な五線譜が一般的になってくると、楽器ごとに固有の書式を持つ煩雑さから敬遠されるようになり、タブラチュア譜は衰退していった。しかし20世紀以降、庶民が気軽に楽器を演奏する時代になってくると、楽典の知識がなくても理解が容易で、楽器の操作とほぼ一対一に対応している簡易な表記が見直されるようになった。現代以降はギターを中心に一般的な楽譜となっている。特にギターでは、異なる弦の異なるポジションで同じ高さの音を出せるが、それぞれの場合で音色や経済性(どれだけ楽に前後の音を弾けるか)が異なるので、初心者でも試行錯誤することなく最適なポジションで弾ける利点がある。

欠点としては、五線譜と違い、楽典の知識を持っていてもタブラチュア譜を見て調性や和音を直感的に知るのが難しく、(そのために書かれた)特定の楽器を手っ取り早く演奏できるが、和声を加えたり延長するなどのアレンジを行うには適していない。

現代のタブラチュア譜

現代のタブラチュア譜は基本的に五線譜と同じ様式で、そこにのポジションほか楽器固有の情報を文字で付加するなどの書式追加がなされているものが多い。

ギター

一般的な6弦ギター用のタブラチュア譜は、各々の弦に対応した六線譜を用意し、一番上を1弦・一番下を6弦とし、数字で指板のポジションを示すものである。0は開放弦となる。線の本数は弦に応じて増減する。ベースギター用では4本が一般的。音の長さを表すときは、二分音符と全音符は数字を丸で囲み、必要に応じて五線譜と同じように棒や旗、点、スタッカートなどをつける。

また、ギター独特の奏法を記すために以下のような記号も使われる。

× ブラッシング 指板側の指を弦が指板に付かないように軽く押さえて、音程の定まらない音を出す
/ \ スライド 同じ弦上の高さの違う音の間を指板を押さえる指を滑らせる
H ハンマリング 押弦している指で弦を叩くようにして、より高い音を出す
P プリング 押弦している指で弦を引っ掛けるようにして離して、より低い音を出す
Tr トリル ハンマリングとプリングを繰り返す
T タッピング 両手の指でトリルを行う
C チョーキング 押弦している指を押さえたまま弦と直角方向に動かして弦を引っ張り、より高い音を出す
W.C ダブルチョーキング 2本の弦をピッキングして低音弦のみチョーキングし同じ音にする
Vib ビブラート 押弦している指で弦を揺らす
Harm ハーモニクス フレット上の弦に指を軽く触れた状態で弾く
P,H ピッキング・ハーモニクス 弾く際にピックを持った親指をフレット上の弦に一瞬触れさせてハーモニクスを出す
T,H タッピング・ハーモニクス 指でフレット上の弦を軽く叩いてハーモニクスを出す
B.M ブリッジ・ミュート 右手で弦を軽く触れさせてピッキングする
Arm. アーミング トレモロ・アームを使い音を変化させる

三線(さんしん)

伝統的な工工四(くんくんしー)は、「合」「乙」「老」「四」などの漢字で各ポジションを表し、原稿用紙のような升目に縦書きで書かれる。アップストローク(三線はダウンストロークが基本)やハンマリングに対応した記号も添える。三線の調弦(ちんだみ)は絶対音程だけでなく弦間の相対音程もバリエーションがあるが、工工四は音高ではなくポジションを表すのでタブラチュア譜とみなせる。最近は沖縄音楽の人気に伴い、ギターのタブラチュア譜のように水平方向に弦に対応した3本の直線を描き、その上に工工四の漢字を五線譜風の音長(四分音符、8分音符など)や小節記号を付加して記述したモダンな工工四タブ譜が普及している。

ハーモニカ(ブルース・ハープ)

ハーモニカ用のタブラチュア譜は、三線譜を用意して第一間を吸音、第二間を吹音とし、数字が呼吸の位置(穴番号)を示すものが代表例。

ドラムス

ドラムス用のタブラチュア譜はドラム譜と呼ばれる。一般的な五線譜を使って線や間(つまり音高)それぞれに打楽器を割り当てるもの。

鍵盤楽器

鍵盤楽器用のタブラチュア譜は、五線譜の線を指に対応させ、音高を文字で表示するものが代表例。

管楽器

リコーダーティン・ホイッスルバグパイプ等の管楽器用のタブラチュアは、五線譜と併用する。音符の下に指穴の数だけ丸(○)を縦に並べ、押さえる穴を塗りつぶす(●)ものが代表的。

参考

  1. ^ 楽譜の歴史, ヤマハ

関連項目

外部リンク