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セイヨウネズ

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セイヨウネズ
セイヨウネズ
保全状況評価[1]
LOWER RISK - Least Concern
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
分類
: 植物界 Plantae
: 球果植物門 Pinophyta
: マツ綱 Pinopsida
: マツ目 Pinales
: ヒノキ科 Cupressaceae
: ビャクシン属 Juniperus
: セイヨウネズ J. communis
学名
Juniperus communis L.
和名
セイヨウネズ
英名
Common Juniper
亜種変種

本文参照

セイヨウネズ(西洋杜松、学名:Juniperus communis)は、ヒノキ科ビャクシン属針葉樹である。全ての樹木の中で最も広い分布域を持つものの1つであり北半球の寒い地域全域に分布する。北極から北緯30度程度までの北アメリカヨーロッパアジアに自生する。

特徴

セイヨウネズは低木だが、時には10mにも達するものもある。葉は常緑の針状で、螺旋状についている。雌雄異体で、雄花と雌花は別の木に咲き、風を利用して受粉する。球果は木質とならず、やや肉質の漿果状となり、最初は緑色であるが18か月ほどで熟し、青色のワックス質に覆われた紫から黒色になる。直径4-12mmの球形で、1つあたり通常3つ(時には6つ)の種子を持つ。鳥に食べられ、糞と一緒に落とされることで種子が遠くまで運ばれる。雄球花は2-3mmの大きさで黄色く、3月から4月頃に花粉を飛ばす。

分布域が広いことから、種内でも非常に遺伝的な多様性が高く、いくつかの亜種がある。亜種間の関連はまだはっきりしておらず、遺伝的なデータと外見は必ずしも一致していない。

亜種、変種

セイヨウネズの亜種、変種には下記のものがある。

  • Juniperus communis セイヨウネズ
    • subsp. communis セイヨウネズ - 通常、真直ぐに立った低木で、葉の長さは8-20mmで松かさは5-8mmと葉よりも小さい。比較的低緯度から中緯度にかけて分布する。
    • subsp. alpina (Suter) Čelak. リシリビャクシン – 通常、地を這う様な藪で、葉の長さは3-8mm、松かさの長さは7-12mmと葉よりも長い。亜北極やアルプス山脈の高緯度地帯で良く見られる。亜種以下のレベルにおく植物学者もおり、その場合は Juniperus communis var. saxatilis Pallas や Juniperus communis var. montana とされる。またかつて東ヨーロッパやロシアでは、別種 J. sibirica Burgsd とされていた。

利用

この木はよく園芸用に使われるが、小さいため他の木材のように使うことはできない。しかしスカンジナビア半島では、バターチーズなどの日用品を入れる入れ物や、木製のバターナイフとして加工される。

収れん作用を持つ紫色の熟した松かさは生で食べると苦いが、乾燥させて肉、ソースファルスジンなどの香り付けに使われる。実際にジンという言葉はネズの類を表す フランス語: genévrier (ジュネヴリエ)もしくはセイヨウネズを表す genièvre (ジュニエーヴル)に由来する。

また味もとても強いため、ジビエなど、癖の強いものの調理に少量だけ使われる。フィンランドの伝統的なビールサハティ」(Sahti)を作るためにも必須である。さらに、ローマ帝国ペダニウス・ディオスコリデスによる『デ・マテリア・メディカ』(『薬物誌』、『ギリシア本草』)には、避妊用に使われたと記述される。

画像

脚注