できちゃった結婚
できちゃった結婚(できちゃったけっこん)あるいはできちゃった婚(できちゃったこん)とは、妊娠したことをきっかけとして結婚すること[1]。 「でき婚[注 1]」「おめでた婚[注 2]」「授かり婚(さずかりこん)[注 3]」「既成事実婚(きせいじじつこん)」ともいう[1][注 4]。
日本では1990年代後半より、妊娠をきっかけとする結婚の報道が増え、実態が徐々に社会に知られたことによってこうした呼称が使われるようになった。ほかにも結婚・出産と二重の幸福を意味する「ダブルハッピー」(結婚情報誌『ゼクシィ』の用語)、妊婦姿での結婚式から「マタニティウェディング」[3]などの表現も考案されている。修飾語と被修飾語が逆の「婚前妊娠」とも呼ばれている[2]。
英語(米俗)では、shotgun weddingまたはshotgun marriageなどと表現される。妊娠した娘の父親が相手の男性に散弾銃を突きつけて婚約を迫ったということに由来する。
統計
厚生労働省の資料[4]によれば、日本において嫡出第1子出生数のうち妊娠期間よりも結婚期間の方が短い(つまり結婚前に妊娠している)割合は、標準化後の数値で1980年(昭和55年)に10.6%だったものが2004年(平成16年)には26.7%と、約20年間で倍増している(出産の割合であり、結婚の総件数に占める割合ではないことに注意)。また、2004年において、15歳から19歳では82.9%、20歳から24歳では63.3%、25歳から29歳では22.9%、30歳以降で約一割となっており、この割合は若い年代ほど大きくなる傾向にある。
婚前妊娠増加の原因として、平成17年版の国民生活白書では
- 婚前交渉を許容する社会的意識が一般化したこと
- その上で、法的な婚姻関係を重視する伝統的な意識が依然存在し、妊娠後の結婚増加に繋がっている
と分析している[5]。
また、結婚情報誌『ゼクシィ』の編集部は、マスメディアを通じて芸能人の婚前妊娠が多数報道されている現状も影響していると論評している[6]。
結婚式と披露宴
出産予定日が近くなるにつれ母体への負担が大きく、結婚式や披露宴などの行事の実施自体が困難になるため、早急に結婚式や披露宴などを執り行なったり、式を行わず入籍だけで済ませることも多い。準備に時間のかからない1.5次会(披露宴と2次会の中間形態)を行うケースもある[7]。そのため、従来の日本の結婚式や披露宴では重視される傾向の強い、大安吉日などの日取りには特にこだわらない場合が多い。
新婦が身重の状態のままで挙式したり、子供を産み終え母子ともに落ち着いてから子連れで挙式する人もあり、その形態は様々であるが、従来の結婚式や披露宴とは大きく異なる。また、妊婦用のウェディングドレスを用意、仕立てる結婚式場や披露宴会場もある。
芸能界との関係
芸能界では結婚と妊娠を同時に発表するケースが頻繁にあるが、現在では芸能事務所側が「できちゃった結婚」に相当する言葉をタブー視する傾向にあり、各報道機関の配信記事でもこれに配慮して結婚と妊娠を分けて表現するのが主流となっている。特に女性側が芸能人である場合、結婚と妊娠はその活動の継続や休業タレントとしての路線変更などに直結することから、婚約や結婚の公表時に妊娠していなければ、芸能事務所が当事者のコメントとは別に行うプレスリリースに「妊娠はしていない」という情報をわざわざ付記し、報道機関でも場合によってはその旨を加えて報道するのが一般的になっている。
ちなみに、芸能界におけるできちゃった婚の元祖は1958年10月の二代目中村扇雀と扇千景のカップルとされる[8]が、1939年に霧島昇とミス・コロムビアが結婚した際も結婚前に妊娠している。また、1949年に代議士同士で交際していた園田直と松谷天光光が結婚に至った時の決め手も松谷の妊娠であり、それを表現した「厳粛なる事実」は当時の流行語となった。
脚注
注釈
出典
- ^ a b デジタル大辞泉「できちゃった婚」より。
- ^ a b “婚前妊娠”. 実用日本語表現辞典. weblio. 2015年5月9日閲覧。
- ^ マタニティウェディング(テイクアンドギヴ・ニーズ)
- ^ 結婚期間が妊娠期間より短い出生の傾向(厚生労働省資料『「平成17年度「出生に関する統計」の概況 人口動態統計特殊報告』)
- ^ 平成17年版 国民生活白書 法律婚を重視する伝統的な意識が「できちゃった婚」に反映されている
- ^ できちゃった結婚をちょっとまじめに考えてみる 結婚が先か、妊娠が先か
- ^ 株式会社SOZO"1.5次会とは|1.5次会.com"(2011年5月12日閲覧。)
- ^ 日刊ゲンダイ 20世紀のスキャンダル史より[要検証 ]