MusicBrainz
MusicBrainz(ミュージック ブレインズ)は、オープンコンテントな音楽データベースを作ることを目的としたネット上のプロジェクトである。 freedbプロジェクトに似ており、CDDBへの制限に対応して発足した。 しかし、MusicBrainz は単にコンパクトディスク (CD) という情報に関する情報、すなわちそのメタデータの保持だけでなく、さらに一種の構造化された「音楽に関するウィキペディア」となるべくその目標を押し拡げている[1]。
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概要 [編集]
MusicBrainz のデータベースはアーティストと CD のようなその録音作品、およびそれらの関係に関する情報を保存する。 こうした作品の情報にはアルバムの題名、曲名、各トラックの長さが最低限含まれ、さらに、リリースされた日付と国といった情報や、CD のディスク ID、各トラックへの音響デジタル指紋 (acoustic fingerprint)、自由形式の文章や添付された注釈を付加することができる。 2007年末現在ではおよそ 35 万のアーティスト、53 万あまりのリリース (トラックの構成により区別される作品)、そして 630 万のトラックが登録されている[2]。
ユーザーは、この MusicBrainz のデータベースにアクセスできるソフトウェアを使うことで、MP3, Ogg Vorbis, AAC といった自身のもつデジタル・ファイルに「タグ」をつけることができる。 一方、データベースのデータは、参加者による入力に多くを頼っているが、データの信頼性を保つために編集された内容には一定期間の保留状態に置かれ、他の参加者による検証と一定の賛同が得られなければ恒久的なものとはされない。
さらに、データベースの情報は MusicBrainz 共通のスタイル・ガイドラインに従って保守されている[3]。 例えば、英文の題名での大文字・小文字の使い分けは、文頭・文末および 4 文字以上の単語は常に大文字で始まり、残りのうち 3 文字以下の前置詞等の品詞が小文字となるといったように、ほとんどのデータが英文の題名の特定の規範的な方法で統一されている。 これによってユーザーはばらついたスタイルのデータを得る心配が少なくなる。 またこれには地域別の習慣の違いに対する配慮も行われており、例えば、日本人アーティストにより日本でリリースされた作品に関しても特別な規定がある。 欧米では大小文字の別は題名の一部をなすものではないとみなされており、よって上述のような統一的なスタイルの対象となるのに対し、日本の習慣では題名の文字使いにより細かなこだわりがあるとして、英文であってもカバーに記されている通りに正確に記録することが特に求められている[4]。
技術的には、MusicBrainz は音楽のメタデータを記述するためにセマンティック・ウェブ技術で標準的な RDF/XML を用いており、プロトコル HTTP の GET と POST メソッドを介して自動的な処理が可能である。
MusicBrainz のコア・データ (すなわちアーティスト、トラック、アルバムといった主要な情報) はパブリック・ドメインであり、編集情報 (moderation data) を含む付加的な情報は、電子フロンティア財団 (EFF) の定めたオープン・オーディオ・ライセンス (Open Audio License) の元で運用されている。 このライセンスは、クリエイティブ・コモンズでいう表示-継承 (帰属-同一条件許諾、Attribution-ShareAlike) ライセンスである。 MusicBrainz サーバのソフトウェアのライセンスには GNU GPL が適用されているが、Relatable 社の TRM を用いたバイナリ実行コードのバージョンはプロプライエタリ・ソフトウェアによるコードの利用が認められている。
歴史 [編集]
MusicBrainz は CDDB の商業化などを受けて、ロバート・ケイ (Robert Kaye) により設立され 1999 年に現在の名前が選択された。 2004年12月に MusicBrainz プロジェクトは非営利の MetaBrainz 財団 (MetaBrainz Foundation) へと引き継がれた[5]。MetaBrainzの主な企業顧客にはBBC、Amazon.com、Spotify、Last.fmなどがある。
MusicBrainz は初期には、音響デジタル指紋の照合に Relatable 社が特許をもつ TRM という技術を用いていた。 この機能は多くのユーザーを引き付けることとなり、データベースの急速な成長を促すのに貢献した。 しかし、2005年までにはこの機能はもはやデータベースの数百万のトラックに十分対応できないことが明かとなり、2006年に、MusicBraiz と MusicIP との提携によって、音響指紋に関して MusicIP の MusicDNS サービス (en:MusicDNS) を用いることが合意された[6]。 このサービスでは、同一の曲を調べるために、音響指紋に基づいて各々の曲に PUID (Portable Unique IDentifier) と呼ばれる UUID のデジタルデータを与えている。
2006年1月には、スペイン、バルセロナに本拠を置く Linkara サービスが MusicBrainz のデータを用いた最初の商業的ベンチャーとることが公表された[7]。 さらに2007年6月、BBC は、MusicBrainz のライヴ・データフィード (live data-feed) [8]のライセンスを受けたことが公表され、これによって BBC の音楽ウェブページのディスコグラフィなどが MusicBrainz のデータで補強されることとなった。 また BBC オンラインの音楽編集者も、MusicBrainz コミュニティに参加しデータベースの増強へ貢献する予定である[9]。
対応する主なソフトウェア [編集]
- Amarok ― Linux など Unix系 OS におけるデスクトップ環境 KDE のオーディオ・プレーヤー。
- Banshee ― Linux などにおける Mono および GTK# 上で作られたオーディオプレーヤー。 (en:Banshee (music player))
- CDex ― Microsoft Windows で動作する CD リッパー。 (en:CDex)
- Easy CD-DA Extractor ― Windows 用の CD リッパー(シェアウェア)。
- iEatBrainz ― Mac OS X 用の MusicBrainz クライアント。 (en:iEatBrainz)
- Jaikoz ― タグをまとめて操作できるツール (マスタガー) で、Java で記述され OS を問わず利用できるクロスプラットフォームのソフトである。(en:Jaikoz)
- Max ― Mac OS X の CD リッパー、オーディオ・コードの変換ツール。(en:Max (ripping software))
- MusicBrainz Picard ― MusicBrainz のアルバム指向のタグ・エディター。Python で記述されたクロスプラットフォームのソフト。(en:MusicBrainz Picard)
- MusicBrainz Tagger ― Windows で標準的な MusicBrainz クライアント。 廃止されることが決まっている。(en:MusicBrainz Tagger)
- MusicIP Mixer ― スマートなプレイリスト作成と管理を行えるクロスプラットフォームのオーディオ・プレーヤー。 (en:MusicIP Mixer)
- PinkyTagger ― Qt で作成された Linux 用のマスタガー。 (en:PinkyTagger)
- Quod Libet ― GTK+ を用いた Unix 系 OS のオーディオ・プレーヤー。 (en:Quod Libet)
- Sound Juicer ― Unix 系 OS の GNOME 環境向けの CD リッパー。 (en:Sound Juicer)
関連項目 [編集]
脚注 [編集]
- ^ Highfield, Ashley. (2007年6月27日). “IEA Future Of Broadcasting Conference における基調講演”. BBC Press Office. 2008年2月11日閲覧。
- ^ “Database Stats”. MusicBrainz. 2007年12月31日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “MusicBrainz Wiki, StyleGuideline”. 2008年5月14日閲覧。
- ^ “MusicBrainz Wiki, CapitalizationStandard/JapaneseReleasesClarification”. 2008年5月14日閲覧。
- ^ Kaye, Robert (2006年3月12日), “The MetaBrainz Foundation launches!” (プレスリリース), MusicBrainz community blog 2006年8月3日閲覧。
- ^ “New fingerprinting technology available now!” (プレスリリース), MusicBrainz community blog, (2006年3月12日) 2006年8月3日閲覧。
- ^ Kaye, Robert (2006年1月20日). “Introducing: Linkara Musica”. MusicBrainz 2006年8月12日閲覧。
- ^ “MusicBrainz Product, LiveDataFeed”. 2008年5月14日閲覧。
- ^ Kaye, Robert (2007年6月28日). “The BBC partners with MusicBrainz for Music Metadata”. MusicBrainz 2007年7月10日閲覧。