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88式地対艦誘導弾

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88式地対艦誘導弾
74式特大型トラックに搭載された88式地対艦誘導弾発射筒
種類 地対艦ミサイル
製造国 日本の旗 日本
設計 陸上自衛隊研究本部
製造 三菱重工業
性能諸元
ミサイル直径 約0.35 m
ミサイル全長 約5 m
ミサイル重量 約660 kg
射程 150-200 km(推定)
誘導方式 慣性誘導アクティブレーダ複合指令誘導
飛翔速度 1,150km/h
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88式地対艦誘導弾(88しきちたいかんゆうどうだん)は、日本陸上自衛隊が装備している地対艦ミサイル対艦誘導弾)システム。略称はSSM-1で、広報を対象とした対外愛称はシーバスター。隊内間の通称はSSM1988年から配備されている

概要

周囲を海に囲まれた日本は、艦船による侵攻に対する防衛兵器として1970年代から対艦ミサイルの開発に取り組んでおり、航空自衛隊においては、80式空対艦誘導弾(ASM-1)1980年(昭和55年)から配備されていた。これを基に陸上自衛隊が運用する対艦ミサイルとして開発された。

運用

発射態勢
捜索レーダー

システム一式は、捜索・標定レーダー装置(JTPS-P15)ペアで6組12基、レーダー中継装置(JMRC-R5)12基、指揮統制装置1基、射撃統制装置(JTSQ-W5)4基、発射機16基、装填機16基、ミサイル96発から成る。システム一式は4個射撃中隊を隷下に持つ各地対艦ミサイル連隊に配備され、2011年5月時点で計5個連隊の編制をもつ。連隊の本部管理中隊に捜索・標定レーダー装置とレーダー中継装置と指揮統制装置、各中隊本部に射撃統制装置が1基づつ、各中隊に発射機と装填機が4基づつとミサイルが24発づつ配備される。

システムは整地道路での機動性を高めるためにすべて車載化されており、車体は装甲を持たないトラックを利用しており、発射機は6本の発射チューブが74式特大型トラックの荷台に載せられた形になっている。

また、地平線や水平線外射撃が可能な約50kmを超える射程と、対艦ミサイルとしては本システムだけが持つ地形追従飛行能力を活かして、指揮装置や発射機を内陸部に設置してミサイルを発射することができ、敵から距離を離すことでシステムの被発見率と生残性を高めることができるようになっている。このため上富良野駐屯地等の内陸部にも地対艦ミサイル連隊が編成されている[1]

ミサイル発射時にはレーダー装置JTPS-P15が海岸線に進出し、レーダー装置や海上自衛隊護衛艦潜水艦が探知した目標情報がレーダー中継装置を経由して指揮統制装置に送られる。指揮統制装置による目標決定と発射諸元の計算の後、目標情報は射撃統制装置を経由して発射機に送られ、斜め上方へ傾斜させられた発射機の発射チューブからミサイルが発射される。ミサイルは中間誘導が慣性航法装置、終末誘導がミサイル自身によるアクティブホーミングで飛行し、陸上と海上で低空飛行を行うことで被発見率を下げており、電波妨害を受けた場合にミサイルを妨害発信源に突入させることも可能である。ミサイル本体は空対艦ミサイルASM-1から発展したもので、ミサイル本体中ほどに4枚の翼を持つ形状が共通している。射程延伸のため、エンジン固体燃料ロケットからターボジェットエンジンに変更され、発射時の加速用に固体燃料ロケットブースターが追加されている。

平成3年度以降、毎年秋頃には米カリフォルニア州のポイントマグー射場にて射撃訓練を行っており、電波妨害下での射撃も含め全てのミサイルの命中に成功している。陸上自衛隊では、88式地対艦誘導弾は日本国にとっての戦略的な装備であると広報している。

江畑謙介は、水平線の向こうを捜索できないレーダーの特性上、JTPS-P15に捜索標定を依存する陸上自衛隊の運用法では、十分な運用ができないとして批判。これからは捜索標定に無人航空機(UAV)等を活用すべきであると主張した。

派生型・後継型

88式を基礎に、海上自衛隊向けの艦対艦ミサイル90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)」、哨戒機搭載用の空対艦ミサイル「91式空対艦誘導弾(ASM-1C)」が開発されている。

また平成24年度(2012年度)予算から後継システムの12式地対艦誘導弾の取得が開始される予定である[2]。これは防衛省技術研究本部88式地対艦誘導弾(改)として開発を行っていたもので、88式地対艦誘導弾と比べて、コスト低減、射程の延長、推力偏向装置付きブースターと垂直発射方式の採用による即応性と陣地選定の自由度向上、誘導システムの改良による命中率と生存性の向上が図られており、中間誘導では慣性誘導に加えてGPSでも誘導を行うことができるように改良されている[3]

配備部隊

北部方面隊

東北方面隊

西部方面隊

富士教導団

廃止部隊

東部方面隊

登場作品

実写映画
館山市品川ゴジラを攻撃する。
ゴジラの東京上陸を阻止するために渋谷を中心とした関東地方一帯から発射される。
発射機が中隊ごと1547年へ飛ばされ、直後に合戦に巻き込まれる。
漫画
小林源文著。陸上自衛隊が、ソ連海上艦隊への迎撃に使用。
アニメ作品
大友克洋監修の、アニメ映画『最臭兵器』に登場。
暁美ほむらが11話の戦闘で使用。
ゲーム

参考文献

脚注

  1. ^ 3SSMRは主に道北及び道東海岸、6SSMR(宇都宮駐屯地・廃止)は日本海岸へ上陸する艦船への対処が目的。
  2. ^ JGSDF
  3. ^ 誘導武器の開発・調達の現状 平成23年防衛省経理整備局 システム装備課

関連項目

外部リンク