対生成

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泡箱で観測した光子による電子・陽電子対生成の例。
: 右側から入射した光子(γ)
: 生成された電子(e-
:生成された陽電子(e+
光子の軌道は泡箱で直接観測できないが、電子と陽電子の軌道からそれを逆算することができる。上図にはその逆算された入射軌道が描かれている。
上図の抜粋。電子と陽電子がらせん軌道を描いているのはそれらが電荷を持ち、図と垂直方向にかけられた強い磁場の影響を受けているため(ローレンツ力)。電子と陽電子で回転方向が逆なのは電荷の正負が逆なため(光子は電荷を持たないため磁場の影響を受けず直進している)。
上図の反応のファインマン・ダイアグラムによる表現。光子による電子・陽電子対生成を表す。

対生成(ついせいせい, Pair production)は、高いエネルギーを持った光子が原子核などに衝突したときに、粒子反粒子が生成される自然現象のこと。量子力学の用語である。対生成とは逆に粒子と反粒子とが衝突すると、対消滅が起こる。

原子核などの光子に対する標的が存在すると、運動量とエネルギーの保存則を両立できるため、対生成が起こり得る。入射するガンマ線のエネルギーが1.02MeV以上、すなわち電子陽電子の質量の和に相当するエネルギーを超えると、電子と陽電子の対生成が可能となる。

一方、原子番号が173を超える超重原子K殻(1s軌道)の電子の束縛エネルギーは、対生成に必要なエネルギーを超える。もし、1s軌道に電子がない場合は、ディラックの海にある負のエネルギー準位にある電子が、そのままのエネルギーで1s軌道に遷移し、対生成が起こる。この現象は真空の崩壊と呼ばれている。ただし、このような超重原子は安定的に存在しないため、ウラン原子核同士を加速して近接させ、瞬間的に形成される擬似的な超重原子が放出する陽電子を検出する試みが行われている。

関連項目[編集]