マルティン・シュミット (サッカー指導者)

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マルティン・シュミット
名前
ラテン文字 Martin Schmidt
基本情報
国籍 スイスの旗 スイス
生年月日 (1967-04-12) 1967年4月12日(57歳)
出身地 ナーテルス英語版
監督歴
チーム
2001-2003 スイスの旗 FCラロン (コーチ)
2003-2008 スイスの旗 FCラロン
2008-2010 スイスの旗 FCトゥーン U21
2010-2015 ドイツの旗 1.FSVマインツ05 U23
2015-2017 ドイツの旗 1.FSVマインツ05
2017-2018 ドイツの旗 VfLヴォルフスブルク
2019-2020 ドイツの旗 FCアウクスブルク
■テンプレート■ノート ■解説■サッカー選手pj

マルティン・シュミット(Martin Schmidt、1967年4月12日 - )は、スイス出身のサッカー指導者。長年に渡りドイツ・ブンデスリーガ1.FSVマインツ05で指導したことでドイツで知られるようになった。

欧州最高位指導者ライセンスのUEFAプロライセンスを保持。ドイツ屈指の"Mainzer Trainerschmiede"("1.FSVマインツ05監督養成所")[1]の代表格の一人で、ユルゲン・クロップトーマス・トゥヘルら多くの若手監督を抜擢したことで知られるクリスティアン・ハイデルSDによりブンデスリーガの監督に引き上げられた[2]

監督経歴[編集]

34歳で地元アマチュアクラブ、FCラロンのコーチに就任、2003-04シーズンからは同クラブの監督として5シーズンに渡りチームを率いる。2008年7月に スイス・スーパーリーグ1部に属するFCトゥーンのU21チームの監督に就任。

2009年、ドイツシュトゥットガルト郊外で開催されたU20の国際大会でトーマス・トゥヘル監督率いるドイツU19-ブンデスリーガ王者の1.FSVマインツ05を決勝戦で撃破し優勝。「戦術面でドイツ王者のトーマス・トゥヘル監督を上回った」[3]と報道されたこの大会を通してトーマス・トゥヘルはマルティン・シュミットのチームが展開するサッカーに魅了され、トゥヘル自らが同クラブのドイツ・ブンデスリーガ1部に属するトップチームの監督になった際にクリスティアン・ハイデルSDにマルティン・シュミットの獲得を推薦[4]

2010年7月1日に1.FSVマインツ05のU-23チームの監督に就任。例年に渡って残留争いをしていたほぼ若手選手のみのチームを鍛え上げ2013-14シーズンには初の快挙となるドイツ・ブンデスリーガ3部への昇格を果たした[5]。またU-23監督を務めながら同時にトップチームのトーマス・トゥヘル監督と連携してブンデスリーガでの対戦相手の分析もサポートした。

2015年2月17日、ドイツ・ブンデスリーガ1部に属する1.FSVマインツ05 トップチームの監督に就任[6][7]リュシアン・ファーヴルらに続いてドイツ・ブンデスリーガ1部の歴史上7人目となるスイス国籍の監督となった。

1.FSVマインツ05のクラブの伝統でありながらカスパー・ヒュルマンド前監督の下で失われた強度の高いプレッシングサッカーを復活させ[8]、2年目のシーズンとなった2015-16シーズンにはUEFAヨーロッパリーグ本大会への出場権を勝ち取るなどクラブの歴史に残る好結果を残す。2016-17シーズン終了後、契約満了で計7年間所属したクラブを退団した[9]

歴史上2番目に高い1.FSVマインツ05のブンデスリーガ1部における平均勝ち点を記録した(1位はトーマス・トゥヘル、3位はユルゲン・クロップ[10]

2017年9月18日、ドイツ・ブンデスリーガ1部VfLヴォルフスブルクの監督に就任[11]。2019年4月9日にはマヌエル・バウム監督の後任としてFCアウクスブルクの監督に就任[12]。降格危機にあったチームを引き継いだもののアイントラハト・フランクフルトVfBシュトゥットガルト相手に連勝しブンデスリーガ残留を果たした。2シーズン目になった2019-20シーズン後期、バイエル・レバークーゼンボルシア・メンヒェングラートバッハFCバイエルン・ミュンヘンとリーグの強豪相手に連敗した後FCアウクスブルクの監督を解任された[13]

2020年12月、1.FSVマインツ05のスポーツディレクターに就任した。

日本韓国の選手と縁があり、1.FSVマインツ05では日本A代表岡崎慎司武藤嘉紀韓国A代表具滋哲(ク・ジャチョル)や朴柱昊(パク・チュホ)を、そしてFCアウクスブルクでは韓国A代表池東沅具滋哲(ク・ジャチョル)、韓国元U19代表のセオン・ホーン・チョンらを指導している。特に武藤嘉紀JリーグFC東京から1.FSVマインツ05への移籍を強く希望した監督であり[14][15]、初の欧州挑戦となった武藤はシュミット監督の下で42試合の公式戦に出場、13得点6アシストを記録した[16]

戦術の特徴[編集]

  • ラルフ・ラングニックユルゲン・クロップトーマス・トゥヘルの影響を受けており、4-4-2もしくは4-2-3-1を土台にアグレッシブで切り替えの早い組織的なプレッシングサッカーを信条とする[17][18]
  • 相手の陣地へ押込むハイプレス、ハイライン、ゲーゲンプレス等で攻撃的かつ能動的な守備を実践し、ボール奪取後は縦志向の強い攻撃と短時間でシュートにまで持ち込む攻守に切れ目のないサッカーを志向する[17][18]
  • 勝利への強い意志とチーム戦術を実行する上での積極的かつ情熱的なプレーを強く求める[19]

人物[編集]

  • 第9代国際サッカー連盟(FIFA)会長のジャンニ・インファンティーノとは幼馴染みである(共にスイス・ヴァレー州の基礎自治体ブリーク出身)[20]
  • トーマス・トゥヘルとは2009年に対戦した時から親交が続いており、シュミットが欧州最高位指導者ライセンスのUEFAプロライセンスを取得した際はトゥヘルがメンターであった。その後トゥヘルの下でヘッドコーチになるオファーを受けるが、監督としてのキャリアを優先しこのオファーを断っている[21]
  • ブンデスリーガの監督としては珍しくサッカー指導者以外の職業経験も豊富。自動車整備士としての資格を保有するシュミットはプロのサッカー監督になる前はポルシェの修理工場を保有し、10年間に渡ってドイツツーリングカー選手権世界ツーリングカーカップにおけるレーシングチーム担当の技術者として活動。またスイスには2006年にシュミットが設立した制服卸売の会社も存在している(現在は親族が受け継いでいる)[22]。これらのサッカー業界以外での様々な経験は「プロのサッカー監督として活動する上でとても役に立っている、特に人材マネジメントとチームビルディングにおいて多くのことを学べた」と語っている[23]
  • マルコ・ローゼは教え子である。シュミットは選手として引退間近であったローゼを選手兼アシスタントコーチに任命、これがローゼの指導者としてのキャリアの始まりであった。
  • ドイツ語、英語、フランス語に堪能。イタリア語も日常会話レベルで話せる。
  • 大抵のブンデスリーガの監督は人気が少ない郊外に住居を構えるが、対照的にシュミットは「ファン・サポーターと同じ空気を吸いたい」と街の中心地で暮らすのを好む。マインツでも中心地にあたる旧市街に住み、ファン・サポーターにとって毎日の生活の中で交流しやすい監督として知られた[24]
  • 「ブンデスリーガの監督になったからと言ってこれまでの暮らしを変えようとはしないよ。今まで通り街中を散歩もするし、同じ飲食店にも寄るし、テラスでコーヒーも飲むし、天気が良ければ自転車でクラブハウスに行くさ。たしかにブンデスリーガの監督は信じられないほどの地位が与えられる。特権もね。だからこそ本当の自分を失ってはならない。いくらブンデスリーガの監督だからと言ってそこまで重要人物の様に振舞う必要もない。VIPから急に一般人に戻ることもよくあるしね」(ドイツを代表する全国紙「ディー・ツァイト」(Die Zeit)がシュミットを「ドイツ・ブンデスリーガで最も庶民的な監督」と紹介したことについて)[25]
  • 2020年9月以降、スポーツ専門チャンネルのドイツ版Sky Sports(スカイスポーツ)でドイツ・ブンデスリーガ1部の試合の戦術解説も行っている[26]

監督成績[編集]

2020年3月9日現在
クラブ 就任 退任 記録
勝率
マインツ05 U23 2010年7月1日 2015年2月16日 166 63 39 64 037.95
マインツ05 2015年2月17日 2016年5月22日 91 33 21 37 036.26
VfLヴォルフスブルク 2017年9月18日 2018年2月19日 22 5 11 6 022.73
FCアウクスブルク 2019年4月9日 2020年3月9日 32 9 7 16 028.13
合計 311 110 78 123 035.37

脚注[編集]

  1. ^ Mainzer Trainerschmiede mainz05.de 2019年4月10日
  2. ^ マインツに息づくサッキ流【後編】ドイツ屈指の「指導者養成所」に フットボリスタ 2019年7月23日
  3. ^ Schmidt wurde Trainer in Mainz, weil er Tuchel auscoachte Sueddeutsche.de 2016年10月21日
  4. ^ Kumpel Martin Schmidt erklärt: So tickt PSG-Trainer Thomas Tuchel wirklich watson.ch Sport 2020年8月22日
  5. ^ Aufstieg in die 3. Bundesliga für Martin Schmidt rro.ch Fussball 2014年6月1日
  6. ^ “Mainz trennt sich von Trainer Hjulmand, Schmidt übernimmt” (German). dfb.de. (2015年2月17日). http://www.dfb.de/news/detail/mainz-trennt-sich-von-trainer-hjulmand-116462/ 2015年2月17日閲覧。 
  7. ^ 岡崎のマインツ新監督「相手陣内で一番ボールを奪うチームに」 サンスポ 2015年2月20日
  8. ^ Martin Schmidt der Vollgas-Trainer Sueddeutsche.de 2015年2月17日
  9. ^ 武藤&岡崎指導のマインツ指揮官が退任! 昨季6位でEL出場…今季15位で1部残留 footballchannel.jp 2017年5月23日
  10. ^ transfermarkt Mitarbeiterhistorie transfermarkt.de 2020年10月23日
  11. ^ 低迷ヴォルフスブルク、監督解任を発表。新監督は武藤嘉紀の元上司 footballchannel.jp 2017年9月19日
  12. ^ アウグスブルクが監督解任、後任に岡崎&武藤恩師のマルティン・シュミット氏 ウルトラサッカー 2019年4月10日
  13. ^ アウグスブルク、監督解任を発表!Kicker日本語版 2020年3月9日(2020年3月10日閲覧)
  14. ^ 武藤獲得を喜ぶマインツ監督「スピード、テクニック、知性を併せ持っている」 theworldmagazine.jp 2015年5月31日
  15. ^ 出場も確約。マインツ監督が語る武藤嘉紀と岡崎慎司の違い スポルティーバ 2015年7月31日
  16. ^ 武藤を前線でフィットさせたシュミット クロップやトゥヘルを超えていた theworldmagazine.jp 2016年3月10日
  17. ^ a b Schmidts Mainzer Spielverlagerung.de 2016年3月2日
  18. ^ a b Mainzer 4-4-2 schlägt Gladbacher 4-1-4-1 Spielverlagerung.de 2016年1月29日
  19. ^ Martin Schmidt マインツでの記者会見 faz.net 2015年2月17日
  20. ^ 旧友がFIFAの会長に bild.de 2016年3月11日
  21. ^ Der dritte Lehrling bei Mainz 05 Frankfurter Allgemeine 2015年10月16日
  22. ^ Ein Mann voller Überzeugungskraft Sport1 News 2015年12月10日
  23. ^ Mainz-Trainer Martin Schmidt im Porträt Deutsche Welle 2016年3月2日
  24. ^ マルティン・シュミット監督のマインツでの仕事ぶりと暮らしを紹介する動画 RZOberwallis TV 2012年3月1日
  25. ^ Mainz-Trainer Schmidt blick.ch 2018年9月30日
  26. ^ Martin Schmidt wird TV-Experte Sport1 News 2020年9月7日

外部リンク[編集]