フレアーホモロジー

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フレアーホモロジーは、シンプレクティック幾何学や低次元トポロジーの研究に使用されている。最初、フレアーホモロジーはアンドレアス・フレアー(Andreas Floer)により、シンプレクティック幾何学のアーノルド予想の証明に使われた。有限次元のモースホモロジー英語版の無限次元の類似では、高級なホモロジー論として考え出された。フレアーは、同様な構成を 3次元多様体のホモロジー論として提供した。この理論は、現在、多岐にわたり一般化され、3-次元と 4-次元のトポロジーの研究で、基本的な役割を果たしている。これらの研究では、ゲージ理論のテクニックが使われ、3-次元と4-次元の微分可能多様体英語版へ全く新しい驚くべき見地を提供した。

フレアーホモロジーは、無限次元多様体をある興味深い対象へ結び付けることで定義される。例えば、シンプレクティック幾何学のバージョンでは、シンプレクティック多様体の自由ループ空間へ結び付け、また元の 3次元多様体の(インスタントン)バージョンでは、3次元多様体上のSU(2)-接続の空間へ結び付ける。おまかに言うと、フレアーホモロジーは、無限次元多様体の上の自然な函数から計算されるモースホモロジーである。この自然な函数は、シンプレクティックな場合は、自由ループ空間上のシンプレクティック作用英語版であり、3次元多様体の場合は、接続の空間上のチャーン-サイモンズ函数である。ホモロジー論は、この函数の臨界点英語版(critical point)で張られるベクトル空間から構成される。このベクトル空間の線型な自己準同型英語版は、2つの臨界点を結ぶ函数の勾配のフローの線を数えることで定義される。従って、フレアーホモロジーは、の中のこの自己準同型の像を同一視することで形成される商位相空間となる。

インスタントンフレアーホモロジーでは、フレアーホモロジーのオイラー標数は、キャッソン不変量英語版と同一視されるので、キャッソン不変量の一般化とも考えられる。

シンプレクティックフレアーホモロジー[編集]

シンプレクティックフレアーホモロジー (SFHと略記する) は、シンプレクティック多様体とその上の非退化なシンプレクティック写像英語版と結びついたホモロジー論である。シンプレクティック写像がハミルトニアンであれば、ホモロジーはシンプレクティック多様体のループ空間(の普遍被覆)の上のシンプレクティック作用英語版の研究から出て来る。SFH はシンプレクティック写像のハミルトニアンイソトピー英語版では不変である。

ここで、非退化とは、どの固定点でもシンプレクティック写像の微分の固有値には1がないことを意味し、この条件は固定点が孤立していないことを意味する。SFH はそのようなシンプレクティック写像の固定点によって生成される鎖複体のホモロジーである。そこでは微分(写像)が、実直線とシンプレクティック写像のトーラス写像英語版(mapping torus)の直積の中のある擬正則曲線英語版を数え上げる。これ自体は元の多様体よりも2次元大きな次元のシンプレクティック多様体で、概複素構造を適当に選ぶと、その中の穴のあいた(有限エネルギーの)正則曲線は、シンプレクティック写像の固定点に対応する写像トーラスの中のループに漸近的に近づく円筒形の端点を持っている。相対インデックスは固定点のペア毎に定義され、微分(写像)は相対インデックス 1 を持つ正則シリンダーの数を数える。

コンパクト多様体のハミルトニアンシンプレクティック写像のシンプレクティック フレアーホモロジーは、基礎となっている多様体の特異ホモロジーと同型である。このようにして、その多様体のベッチ数の和が、非退化なシンプレクティック写像の固定点の数に対するアーノルド予想の一つのバージョンで予想される下界を意味する。ハミルトニアンシンプレクティック写像の SFH もまた、量子コホモロジーと同値な変形されたカップ積英語版であるパンツペア英語版の積[1]を持っている。積のバージョンでは、完全でないハミルトニアンシンプレクティック写像に対しても存在する。

多様体 M の余接バンドルについて、フレアーホモロジーは非コンパクトであるために、ハミルトニアンの選択に依存している。無限遠点で二乗になっているハミルトニアンに対して、フレアーホモロジーは M の自由ループ空間の特異ホモロジーになっている(このステートメントに対しては、様々なバージョンの証明がある。Viterboによるもの、Salamon-Weberによるもの、Abbondandolo-Schwarzによるもの、Cohenによるもの)。基礎となる多様体のループ空間のホモロジー上の位相的弦理論に対応する余接バンドルのフレアーホモロジーの上の作用素は、さらに複雑になっている。

フレアーホモロジーのシンプレクティックバージョンは、ホモロジカルミラー対称性予想の定式化の中で決定的な方法となっている。

PSS同型[編集]

1996年、S. Piunikhin、D. Salamon、M. Schwarzは、フレアーホモロジーと量子コホモロジー環との間の関係についての結果をまとめ、次のように定式化した。Piunikhin, Salamon & Schwarz (1996)

  • 半正なシンプレクティック多様体 (M,ω) のループ空間のフレアーコホモロジー群は、Mの通常のコホモロジーと自然に同型となる。ただし、被覆変換に関する適当なノビコフ環とのテンソル積を取るものとする。
  • この同型は、フレアーホモロジー上のパンツペアの積を持つMのコホモロジーの量子カップ積構造と密接に関連する。

上記の半正という条件とシンプレクティック多様体Mがコンパクトであるという条件は、ノビコフ環と、フレアーホモロジーと量子コホモロジーの定義の双方を得るために必要となる。半正という条件は次の3点のことを言う。

  • 任意のπ2(M)に属するAと λ≥0 に対して<[ω],A>=λ<c1,A>が成立する (M単調という)。
  • 任意のπ2(M)に属するAに対し、<c1,A>=0が成立する。
  • <c12(M)>=NZにより定義される最小チャーン数 N≥0 が n-2に等しいかまたは大きい.

シンプレクティック多様体 M の量子コホモロジー群は、通常のコホモロジーとノビコフ環 Λ のテンソル積、つまり、

QH_*(M)=H_*(M)\otimes\Lambda.

と定義できる。このフレアーホモロジーの構成は、M 上の概複素構造の選択とは独立であることも説明するし、モース理論擬正則曲線英語版の考え方から得られたフレアーホモロジーとの同型も説明できる。ここで、背景としてホモロジーとコホモロジーの間のポアンカレ双対があることに注意が必要である。

3次元多様体のフレアーホモロジー[編集]

閉じた3次元多様体英語版について、複数のフレアーホモロジーの間には同値関係が予想されている。3つのタイプのホモロジー群が互いに同値で、完全三角性を形成していることが予想されている。3次元多様体の結び目は、それぞれの理論のチェイン複体のフィルトレーションを引き起こし、チェインのホモトピータイプが結び目不変量となる。(それらのホモロジーは、組み合わせ的に定義されたコバノフホモロジーと同次ような形式的な性質を満たす。

これらのホモロジーは、4次元シンプレクティック多様体のタウベスによるグロモフ不変量と同じように、4次元多様体のドナルドソン不変量やサイバーグ不変量と密接に関連している。3次元ホモロジーをこれらの理論に対応させる微分(写像)は、3次元多様体の交叉 R の上の微分方程式であるヤン・ミルズ理論サイバーグ・ウィッテン理論英語版[2]、とコーシー-リーマン方程式[3]、をそれぞれ)の解を考えることで理解される。3次元多様体のフレアーホモロジーも境界を持つ4次元多様体の相対的な不変量の対象となるべきで、3次元多様体を境界として張り合わせることで得られる閉4次元多様体の不変量と、張り合わせる構成により関連付ける。(これは位相的場の理論の概念と密接に関連する。) ヒーガードフレアーホモロジーに対し、3次元多様体のホモロジーが最初に定義され、閉4次元多様体の不変量は、後日、この方法で定義された。

3次元多様体のホモロジーの境界を持った3次元多様体への拡張も存在していて:縫い合わせフレアーホモロジー(Juhasz 2008) や境界を持つフレアーホモロジー(Lipshitz, Ozsvath & Thurston 2008)がある. これらは2つの境界を持つ3次元多様体の境界に沿った併合として記述される3次元多様体のフレアーホモロジーの張り合わせ公式により、閉3次元多様体の不変量に関連していると期待されている。

3次元多様体英語版がサイバーグ-ウィッテンの場合に、クロンハイマー(Kronheimer)とムロフカ(Mrowka)の始めた接触構造英語版を持っているとき、3次元多様体のフレアーホモロジーは別なホモロジーの要素を持つことになる。(一つの接触構造を選択すると、埋め込まれた接触ホモロジー(embedded contact homology)[4](ECHと省略する)が定義される。埋め込まれた接触ホモロジーは、Hutchings (2009)に解説されているので、参照)

これらの理論はすべて、もともと相対的次数を持っていることになり;これらは、SWFについては(2-平面の場のホモトピークラスを割り当てることで)絶対的次数へ持ち上げられ、また ECH については SWF-ECH の同型を使い持ち上げる。

インスタントンフレアーホモロジー[編集]

インスタントンフレアーホモロジーはフレアー自身により導入され、ドナルドソン理論英語版と結ばれた3次元多様体の不変量である。3次元多様体のSU(2)-主バンドルの上のチャーン・サイモンズ汎函数を使って求めるフレアーホモロジーで、チャーン-サイモンズ汎函数の臨界点では、平坦接続英語版となり、フローラインがインスタントン英語版となる。つまり実直線と3次元多様体の交点の上の反自己双対接続となる。 フレアーがフレアーホモロジーを提出し、すぐにドナルドソンはコボルディズム英語版がこれらの写像を導くということを示した。このことは位相的場の理論として知られるようになる構造の最初の例となった。

サイバーグ-ウィッテンフレアーホモロジー[編集]

サイバーグ-ウィッテンフレアーホモロジーは、spinc構造英語版をもった3次元多様体のホモロジー論で、3次元多様体のサイバーグ-ウィッテン方程式によって生成され、ホモロジーの微分(写像)は3次元多様体と実直線の積の上の(モノポール方程式として知られている)サイバーグ-ウィッテン方程式の不変な解により生成される。方程式の解は、正負の無限遠点で不変解に近づく。

SWF は、厳密にピーター・クロンハイマー英語版トーマス・ムロフカ英語版の本により定義され、そこではモノポールフレアーホモロジーと呼ばれている。有理数係数ホモロジー3-球の別の SWF 構成はManolescu (2003)Froyshov (2010)により与えられた。それらはモノポールフレアーホモロジーと一致すると予想されているが、証明されてはいない。

クリフォード・タウベス英語版は、SWF と ECH が同型であることを証明した。(後出)

ヒーガードフレアーホモロジー[編集]

ヒーガードフレアーホモロジー は、ピーター・オズバス英語版ゾルタン・ザボー英語版によるspinc 構造を持つ閉3次元多様体の不変量です。ラグランジアンフレアーホモロジー(後出)と類似した構成を経て、多様体のヒーガード分解英語版と使って構成された。Kutluhan, Lee & Taubes (2010)では、ヒーガードフレアーホモロジーとサイバーグ-ウィッテンフレアーホモロジーが同型であるという証明がアナウンスされた。またColin, Ghiggini & Honda (2011) では、ヒーガードフレアーホモロジーに(逆の向きづけを)プラスしたバージョンと、埋め込まれた接触ホモロジーが同型であることを証明したことがアナウンスされた。

3次元多様体の中の結び目は、ヒーガードフレアーホモロジー群のフィルトレーションを導き、フィルトレーションされたホモとピータイプは強力な結び目不変量で、結び目フレアーホモロジーと呼ばれる。これはアレクサンダー多項式をカテゴリ化(categorification)英語版する。結び目フレアーホモロジーはOzsvath & Szabo (2003)で定義され、またこれとは独立にRasmussen (2003)によっても定義された. 結び目フレアーホモロジーは、結び目種数を識別することがしられている。Manolescu, Ozsvath & Sarkar (2009)は、ヒーガード分解のグリッド図式[5]を用いて、結び目フレアーホモロジーを組み合わせ的に構成した。

結び目上で分岐するS^3の二重被覆のヒーガードフレアーホモロジーは、コバノフホモロジースペクトル系列英語版によって、関連付けられる。(Ozsvath & Szabo 2005).

上に「ハット」のついたヒーガードフレアーホモロジーは、Sarkar & Wang (2010)で導入された. 「プラス」と「マイナス」のついたヒーガードフレアーホモロジーと関連するオズバス-ザボー(Ozsvath-Szabo)の4次元多様体不変量は、(Manolescu, Ozsvath & Thurston 2009)に示されているように、組み合わせ的に記述することができる.

埋め込まれた接触ホモロジー[編集]

ミカエル・ハッチングスによれば、埋め込まれた接触ホモロジーは、(クリフォード・タウベス英語版の仕事である)サイバーグ-ウィッテンフレアーホモロジーの中のとspinc構造の選択に対応する第二ホモロジークラスを持つ3次元多様体の不変量に同型である。また結果として(Kutluhan, Lee & Taubes 2010Colin, Ghiggini & Honda 2011) でアナウンスされているが)(向きを逆にした)ヒーガードフレアーホモロジーのプラスバージョンに同型である。タウベスのグロモフ不変量英語版の拡張としてみることが可能でもあるので、この不変量はサイバーグ-ウィッテン不変量英語版と同値であることが知られている。このことは閉じた 4次元シンプレクティック多様体からある非コンパクトなシンプレクティック4次元多様体 (つまり、接触3次元多様体と R との積)へ拡張される. この構成はシンプレクティック場の理論の類似で、閉じたレーブ軌道英語版のある集合により生成され、この微分(写像)がレーブ軌道のある集まりに端点を持つ正則曲線の数を数える;SFT と異なるところは、生成するレーブ軌道の集まりについての技術的な条件と、端点でフレドホルム指数英語版 1 を持つすべての正則曲線を数えないが、「ECH指数」により与えられる移動的な条件も満たすもののみ数える。このことは特に考えている曲線が埋め込まれていることを意味する。

3次元接触多様体は任意の接触形式に対して閉じたレーブ軌道を持つであろうというワインシュタイン予想英語版が、ECH が非自明な多様体で成立する。このことはタウベスにより、ECH 密接に関連するテクニックを使い証明された;この仕事を拡張すると、ECH と SWF の間の同型が得られる。ECH の(うまく定義できる)多くの構成は、この同型に依拠している。(Taubes 2007).

ECH の接触要素は、特に素晴らしい形をしていて:レーブ軌道の空集合に付随するサイクルである。

埋め込まれた接触ホモロジーは、(境界があってもよい)曲面のシンプレクティック写像のトーラス写像を定義するかもしれず、周期フレアーホモロジーとして知られている。ECH は、曲面のシンプレクティック写像のシンプレクティックフレアーホモロジーを一般化する。より一般的には、3次元多様体の安定ハミルトニアン構造英語版の観点から定義されるかもしれない。このことは、接触構造、安定ハミルトニアン構造がゼロにならないベクトル場(レーブベクトル場)を定義することと似ている。ハッチングスとタウベスは、これらに対するワインシュタイン予想の類似、つまりいつでもこれらが閉軌道を持っていることを証明した(ただし、2-トーラスの写像トーラスではない場合とする)。

ラグランジアン交叉フレアーホモロジー[編集]

シンプレクティック多様体の2つのラグラジェ部分多様体のラグラジアンフレアーホモロジーは、2つの部分多様体の交叉の点により生成される鎖複体のホモロジーで、その微分(写像)は擬正則的英語版ホイットニーディスク英語版を数える. M シンプレクティック写像のシンプレクティックフレアーホモロジーは、周囲の多様体が M × M であるようなラグラジアンフレアーホモロジーの特別な場合と考えることができ、ラグランジュ部分多様体はシンプレクティック写像の対角成分とグラフになる。(上記の)ヒーガードフレアーホモロジーの構成は、ラグラジアンフレアーホモロジーの変形に基づいている。この理論も、ザイデル-スミスとマノレスクがラグラジアン交叉フレアーホモロジーとして、組み合わせ的に定義されたコバノフホモロジーの位置であることが予想している。

シンプレクティック多様体の3つのラグランジュ部分多様体 L0, L1, と L2 が与えられると、ラグラジアンフレアーホモロジー上の積構造があり:

HF(L_0, L_1) \otimes HF(L_1,L_2) \rightarrow HF(L_0,L_2),

これが正則三角形を数えることで定義される(すなわち、頂点と辺をもつ三角形の正則写像は、適当な交叉点とラグランジュ部分多様体へ写像される)。

この問題についての論文は、深谷, Oh, 小野, と太田によっていて;最近のラロンデとコルニートの「クラスタホモロジー」[6]が別のアプローチを提供しています。ラグランジュ部分多様体のペアに対していつでもこの方法が適用でないが、ハミルトニアンイソトピーを使うと、この問題を解消することができる。

アティヤ-フレアー予想[編集]

アティヤ-フレアー予想はインスタントンフレアーホモロジーとラグラジアン交叉フレアーホモロジーを結び付けます:曲面 \Sigma に沿ってヒーガード分解英語版を持つ3次元多様体 Y を考えます。するとゲージ同値[7]を法とした平坦接続英語版の空間は、次元が6g − 6のシンプレクティック多様体である。ここの g は曲面 \Sigma種数である. ヒーガード分解では、\Sigma は2つの異なる3次元多様体の共通の境界で;境界をもった3次元多様体の上のゲージ同値を法とした平坦接続の空間 (同じことだが、各々の3次元多様体へ拡張した \Sigma の上の接続の空間) が \Sigmaの上の接続の空間のラグランジュ部分多様体である。このようにして、これらのラグラジアンフレアーホモロジーができる。代わりに、3次元多様体 Y のインスタントンフレアーホモロジーを考えることもできる。アティヤ-フレアー予想とは、これら2つが同型であろうということを述べている。Salamon & Wehrheim (2008) はこの予想を証明するためのプログラムを提示している。

ミラー対称性との関係[編集]

マキシム・コンツェビッチの提出したホモロジカルミラー対称性予想は、カラビ-ヤウ多様体 X のラグランジュ部分多様体のフレアーホモロジーと、ミラーとなっているカラビ-ヤウ多様体の上の連接層Ext群との間の同値性を予想する。この状況下では、フレアーホモロジーではなく、フレアーチェーン群が焦点化される。同様にパンツペアの積へ、擬正則的なn-面体を使い多重な複体に構成することができる。これらの複体は A_\infty-関係を満たし、シンプレクティック多様体の中のすべての(障害のない)ラグランジュ部分多様体のカテゴリから、A_\infty-カテゴリへの写像がある。これは深谷圏英語版と呼ばれる。

さらに詳しくは、ラグラジアンというとき、次数付きであることとspin構造英語版をデータとして加える必要がある。これらの構造を選んだラグラジアンは、元となっている物理へ敬意を表して、メンブレーン (M-理論)英語版と呼ばれる。ホモロジカルミラー対称性予想は、カラビ-ヤウ多様体 X の深谷圏と、ミラーペアの連接層の導来圏DG-圏英語版[8]の間に、互いに森田同値があることを言っている。

シンプレクティック場の理論 (SFT)[編集]

シンプレクティック場の理論(SFTと略す)は、接触多様体英語版とそれらの間のシンプレクティックコボルディズム英語版で、元はヤコフ・エリアシュバーグ英語版, アレクサンダー・ギベンタール英語版ヘルムート・ホーファー英語版によっている. このシンプレクティック場の理論は、部分複体、有理的シンプレクティック場の理論と接触ホモロジーからなり、微分代数のホモロジーとして定義され、選ばれた接触形式レーブベクトル場英語版の閉じたレーブ軌道により生成されます。微分(写像)は、接触多様体の上の円筒の中にあのある正則曲線の数を数える。そこでの自明な例は、閉じたレーブ軌道の上の(自明)な円筒の分岐被覆となっている。さらにこれは、円筒形、あるいは線型接触ホモロジーと呼ばれる線型ホモロジーを意味している(時々、記号の混乱ですが、単に接触ホモロジーとも言われる)。このチェーン群は閉じた軌道により生成されたベクトル空間で、微分(写像)は正則な円筒のみを数える。しかし、円筒形接触ホモロジーは、正則ディスクの存在のためにいつも定義されるとは限らない。円筒形接触ホモロジーが意味を持つような状況下では、ループをループ上のアルファ(交叉)を作る自由ループ空間の上の作用汎函数の(少し変形した)「モースホモロジー」としてみなすことができるかもしれなし。レーブの軌道は、この汎函数の臨界点である。

SFT は、相対接触ホモロジー英語版として知られる接触多様体のルジャンドル部分多様体英語版の相対不変量も導く。SFT の生成子はレーブコードで、レーブコードとはラグランジアン上に始点と終点を持つレーブベクトル場の軌跡のことで、その微分は与えられたレーブコードに近似する終点を持つ接触多様体のシンプレクティック化英語版である正則な帯状領域の数を数える。

SFT では、接触多様体はシンプレクティック写像をもつシンプレクティック多様体の写像トーラス英語版に置き換えることができます。円筒形接触ホモロジーはうまく定義でき、シンプレクティック写像のべきのシンプレクティックフレアーホモロジーによって与えられるが、(有理)シンプレクティック場の理論と接触ホモロジーは、一般化されたシンプレクティックフレアーホモロジーと考えることができる。しかし、シンプレクティック写像が時間依存のハミルトニアンの時間が一定という重要な場合では、これらの高次の不変量はこれ以上の情報をもってはいないことが示されている。

フレアーホモトピー[編集]

いくつかの対象のフレアーホモロジーを構成する考えられる方法の一つは、通常のホモロジーが求めるフレアーホモロジーとなっている関連するホモトピー論のスペクトル英語版を構成することではないでしょうか。他のホモロジー論をそのようなスペクトルに適用することは、他の興味深い不変量へ結び付くかもしれない。この戦略は、ラルフ・コーヘン, ジョン・ジョーンズ, とグラミエ・セーガル英語版により提案され、Manolescu (2003) によりサイバーグ-ウィッテンフレアーホモロジーのある場合に実現され、コーヘンにより余接バンドルのフレアーホモロジーに対して実現された。

解析的基礎[編集]

これらのフレアーホモロジーの多くは完全で厳密に構成されているわけではなく、多くの同値関係が予想はされているものの、証明されてはいない。テクニカルな困難は、擬正則曲線のコンパクト化[9]は、解析の中にある。ホーファーは、クリス・ウィスコスキ(Kris Wysocki) とエドゥアルド・ゼンダー(Eduard Zehnder)の協力を得て、「高次元多様体」の理論と「一般化されたフレドホルム理論」を経て、新しい解析的な基礎を開発している。高次元多様体のプロジェクトは未だに完全ではないが、横断性がより簡単な方法を使って示された重要なケースがある。

計算[編集]

フレアーホモロジーは、明確な計算をすることが一般には困難で、例えば、全つの曲面のシンプレクティック写像のシンプレクティックフレアーホモロジーが完成したのは、2007年であった。ヒーガードフレアーホモロジーには、この考え方から大きな成功への道がある;研究者たちは様々たクラスの3次元多様体のホモロジーを計算するために、代数的な構造を開拓しているし、実際に理論の多くの計算の組み合わせ的なアルゴリズムを見つけた。このことは既存の不変量や構造へ結び付けると同時に、3次元多様体のトポロジーへの多くの見方を生みだしてきた。

日本語化にあたっての脚注[編集]

  1. ^ コボルディズムのパンツ分解の積のことであり、位相的場の理論の公理的な取り扱いで重要な役割を果たします
  2. ^ サイバーグ・ウィッテン・ゲージ理論英語版
  3. ^ コーシー-リーマン方程式と擬正則曲線の定義式との関係は、英語版の擬正則曲線のコーシー-リーマンの方程式との類似(Analogy with the classical Cauchy-Riemann equations)に記載擬正則曲線英語版がある。
  4. ^ 英語版では、"Floer Homology"にリンクが張られてるが記載がないので、記載のある文献を上げる。
  5. ^ 2次元平面上へ結び目を射影して、平面の上で格子を描き、格子との交点に符号を与えて、結び目不変量を求める組み合わせ的手法のこと
  6. ^ クラスタホモロジーとは、ディスクが非局所的に余次元1でバブルになるので、代数的にモデリングすることが困難になる点を、モースフローを次のように拡張することで、克服する方法です。擬正則ディスクのモジュライ空間をラグランジュ部分多様体の上のモース函数を、負のグラジエントフローまで拡張すると、クラスタ化されたモジュライ空間ができます。これらをコンパクト化すると、次数付きの可換微分代数ができ、このホモロジーがクラスタホモロジーと呼ばれている。
  7. ^ ゲージ理論
  8. ^ DG-圏は、Differentail Graded Categoryの訳語である。
  9. ^ コンパクト化(compactification)の意味は、数学と物理(弦理論)では異なっている。ここでは、数学側の意味へリンクをはっている。物理側(特に弦理論)はこちらコンパクト化 (物理)英語版である。

参考文献[編集]

書籍とサーベイ[編集]

研究論文[編集]