フランス料理の切り方一覧

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本稿ではフランス料理の切り方一覧(フランスりょうりのきりかたいちらん)として、フランス料理に使われる切りかた、特に野菜の切り方について説明する。

さまざまな切り方[編集]

「~ェ(: -é(e))」式の単語は、切り方そのものを表す動詞の過去分詞形に由来する(-é が男性形、-ée が女性形。発音は同じ)。
それ以外の単語は、切った後の食材の形状や状態、その切り方を用いる料理などに因む(tailler en ~「~状に/~用に切る/刻む」という風に用いる)。

アッシェ(仏: haché(e)wiktionary:fr:haché
日本名:みじん切り[1]
非常に細かく切ったもの[1]ジェリエンヌを切るとすぐにできる。切断面が多いので水分が抜けやすい。みじん切り#角切りよりも細かく」を参照
語源の アッシュ(: hache斧/鉞のこと。
アリュメット(仏: allumette
日本名:マッチ棒切り
マッチ棒の軸のように5mm角に切ったもの[1]。なお allumetteマッチ棒のこと。
フィユタージュ(仏: Feuilletage、パイ生地)を細かく切って長方形に焼いたパイのことでもある(allumette (biscuit))。
使用している料理:アリュメット(ジャガイモをアリュメットに切り、で揚げ塩で味付けした料理)
エスカロップ(仏: escalope
1cm前後の、やや厚めの薄切り[1]エマンセよりも厚め。、特に仔の薄切りに使われる[1]
エマンセ(仏: émincé(e)
日本名:薄切り[2]
薄く切ったもの[1]エスカロップより薄切り[1]。色々な食材、主に肉料理に使われる[1]
なお語根のマンス mince は「薄い」。
エマンセ・ロン(仏: émincé(e) rond
日本名:薄切り
丸く薄く切ったもの。 ポテトチップに使われる。
なお rond は輪切りにした食材のこと。
オリーヴ(仏: olive
オリーヴの実のような形に切ったもの。シャトーに似るが面がない。
カルティエ(: quartier
日本名:串切り[1]
オレンジやレモンなど、薄皮を残して皮を剥き、果肉だけにする[1]
ココット(仏: cocotte
日本名:ココット切り
3cm 位に切り、フットボール状に面取りしたもの。: なお cocotte は(蒸し焼き用の蓋付き)両手鍋のこと(「こっこちゃん」、つまり雌鶏を表す幼児語でもある)。
ゴーフレット(仏: gaufrette
じゃがいもを薄い格子状(クリスカット)にしたもの。マンドリーヌ(スライサー)を使って90度ずつ回転させながら切る。ポテトチップに使われる。
なお gaufrette にはウエハースの意味があるが、ここでは小型のワッフルのこと。
コルレット(仏: collerette
日本名:輪切り
皮を剥いた後、そのまま切ったもの。なお collerette は子供服中世服飾の飾りのこと。
シズレ(仏: ciselé(e)
日本名:千切りまたはみじん切り[1]
野菜に使われる。スィズレ ciseler (原形)は「(金石に)彫刻を施す」こと。
ジェリエンヌ,ジュリエンヌ(仏: julienne
日本名:千切り[1]
マッチ棒より細い糸状に切ったもの[1]。長さは4~5cm[2]
にんじんやじゃがいもが使われることが多い。これは Jean Julien というコックの名に因む。
使用している料理:コンソメジュリエンヌ(コンソメスープにジェリエンヌした野菜を浮かべた料理)
デザート用にカットしたオレンジのジュリエンヌ(千切り)
シャトー(仏: château
日本名:シャトー切り
ココットより少し大きく5cm位のフットボール状に切ったもの[1]。: なお château は châteaubriant(シャトーブリアン)の付け合わせのジャガイモの切り方に因む[1](単語そのものは城郭の意味もある)。
ダルヌ(仏: darne
日本名:筒切り
大きな魚などに使われる。なお darne とは(魚の)切り身のこと。
デ(: dés
日本名:角切り[2]
食材を立方体に切る[2]。1cm角に切ったものはマセドワーヌ、2~3mm角に切ったものはブリュノワーズと呼ばれる[2]
トゥルネ(仏: tourné(e)
日本名:面取り
食材の表面に螺旋状に飾り切りを入れる[2]
トゥルネ tourner (原形)は「旋盤ろくろで加工する、形を整える」こと。
トロンソン(仏: tronçon
日本名:輪切りまたは筒切り
こちらは木材に使われることもある。
語根のトロン tronc は(樹木の)幹、(動物の)躯幹および胴体のこと。
ノワゼット(仏: noisette
鹿や仔背肉などを円形に切ったもの。なお noisette はセイヨウハシバミの実(ヘーゼルナッツ)のこと。
パヴェ(仏: pavé
舗石のように分厚く切ったもの。なお pavé は舗石(のように四角くて大きな塊)のこと。
バトネ(仏: bâtonnet
日本名:拍子木切り[2]
約5mm角、4~5cmの棒状に切ったもの[1][2]。bâttonnetは小さい(バトン)のこと[1]
バルド(仏: barde
豚の背脂薄切り(ラードベーコン)。ラルドンとは違い、こちらは薄く切ったものに鳥肉など包んで焼くのに用いる。
なお barde には(中世の)馬鎧の意味もある。
ブリュノワーズ(仏: brunoise
約5mmの正方形に切ったもの。マセドワーヌよりも細かい賽の目切り[1]みじん切り#細かい角切り」および「あられ切り」を参照
ペイザンヌ(仏: paysanne
日本名:色紙切り[1]
1~2cm角の薄切りにしたもの[1]。なお paysanne は田舎風のこと[1]
ポン・ヌフ(仏: pont neuf
日本名:拍子木切り
1cm 角、長さ 6~7cm ほどに切ったもの。 ポン・ヌフセーヌ川にかかるの名であり、その近くで売られていたフライドポテトの形が由来である。そのためジャガイモだけに使われる呼び方である。
ブール(仏: boule
球形に剥いたもの。もしくはセルクルで刳り抜いたもの。バターソテーなどに使われる。なお boule はボールのこと。
マセドワーヌ(仏: macédoine
日本名:賽の目切り[1]
約1cm角の立方体に切ったもの[1]。フルーツや野菜に使われる。 ドミノ(仏: domino)とも呼ばれる。角切り」を参照
なおマセドワーヌは数種類の野菜や果物を混ぜ合わせたサラダや温製料理のこと(語頭が大文字ならマケドニア)。
ミニョネット(仏: mignonnette
仔羊や羊の背肉から切り出した小円形の切り身。
可愛らしいという意味をもつ mignon は、ここではフィレ・ミニョン(ヒレ肉末端部の切り身)などにみられるように、肉の切り身のこと。それに指小辞 -ette (小さい~、~のようなもの)がついたのが mignonnette である(粗挽き胡椒の意味もある)。
メダイヨン(仏: médaillon
日本名:輪切り
肉や魚などに使われる。なお médaillon は肉、フォア・グラ伊勢えびなどの輪切りを用いた料理のこと(元来の字義は「(裏に細工の無い)大型のメダル」)。
ラルドン(仏: lardon
日本名:紐切り
脂肪分の少ない赤身肉に差し込む為に切り出した、ベーコンや豚の背脂のこと。
リュバン(仏: ruban)日本名:桂剥き
帯状に薄く剥いたもの。 皮むき機を使う方法もある。ruban はリボンのこと。
ルウェル(仏: rouelle
厚めに丸く切った、骨付きの仔牛や豚のもも肉およびすね肉や魚肉、特に仔牛のもも肉を指す。
日本の輪切りに対応させるには、古風あるいは方言的な言い回しである。
ロンデル(仏: rondelle
日本名:輪切り
にんじん、じゃがいも、ソーセージなどを 5mm 位の厚さに切ったもの。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 椎名眞知子「野菜の切り方」『ちょっと正しく頑張ればこんなにおいしいフランスの家庭料理: ドゥニさんと築いた真の味わい嘘と迷信のないフランス料理教室』イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ企画、2009年、145頁。ISBN 978-4901490238 
  2. ^ a b c d e f g h 川上文代「野菜をエレガントな形に大変身させましょう」『フランス料理の教科書』(新装版)新星出版社、2017年、154頁。ISBN 978-4405093393 

関連項目[編集]