キスイガメ

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キスイガメ
キスイガメ
キスイガメ Malaclemys terrapin
保全状況評価
LOWER RISK - Near Threatened
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
Status iucn2.3 NT.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: カメ目 Testudines
亜目 : 潜頸亜目 Cryptodira
上科 : リクガメ上科 Testudinoidea
: ヌマガメ科 Emydidae
亜科 : アミメガメ亜科 Deirochelyinae
: キスイガメ属 Malaclemys
Gray, 1844
: キスイガメ M. terrapin
学名
Malaclemys terrapin
(Schoepf, 1793)
和名
キスイガメ
英名
Diamondback terrapin

キスイガメ(汽水亀、Malaclemys terrapin)は、動物界脊索動物門爬虫綱カメ目ヌマガメ科キスイガメ属に分類されるカメ。本種のみでキスイガメ属を構成する。別名ダイヤモンドガメ

目次

[編集] 分布

  • M. t. centrata カロリナキスイガメ

模式標本の産地(模式産地)はチャールストン周辺(サウスカロライナ州)。

アメリカ合衆国(サウスカロライナ州東部、ジョージア州東部、ノースカロライナ州南東部)、イギリスバミューダ諸島

  • M. t. littoralis テキサスキスイガメ

アメリカ合衆国(テキサス州南東部)固有亜種

  • M. t. macrospilota ニシキキスイガメ

アメリカ合衆国(フロリダ州西部)固有亜種

  • M. t. pileata ミシシッピキスイガメ

模式産地はニューオーリンズ(ルイジアナ州)。

アメリカ合衆国(アラバマ州南部、ミシシッピ州南部、フロリダ州北西部、ルイジアナ州南部)固有亜種

  • M. t. rhizophorarum マングローブキスイガメ

アメリカ合衆国(フロリダ・キーズ諸島)固有亜種

  • M. t. tequesta ヒガシフロリダキスイガメ

模式産地はマイアミビーチ(フロリダ州)。

アメリカ合衆国(フロリダ州東部)固有亜種

  • M. t. terrapin キタキスイガメ

模式産地はロングアイランドニューヨーク州)。

アメリカ合衆国(コネチカット州南部、デラウェア州東部、ニュージャージー州東部、ニューヨーク州東部、ノースカロライナ州北東部、バージニア州東部、マサチューセッツ州東部、ロードアイランド州

[編集] 形態

最大甲長23.8cm。オスよりもメスのほうが大型になり、オスは最大甲長15.3cm。成長輪は明瞭な個体が多い。項甲板はやや大型で、後方がやや幅広い等脚台形椎甲板は縦幅より横幅の方が長く、第3椎甲板が最も幅広い。また椎甲板には筋状の盛り上がり(キール)がある。後部縁甲板の外縁はやや鋸状に尖る。英名や別名は背甲の成長輪や斑紋も含めた甲板がダイヤモンドのように見える事が由来とされる。左右の喉甲板の間には切れこみが入らないかわずかに切れこみが入る。左右の肛甲板の間には切れこみが入る。

涙腺が発達し、体内の塩分を濃縮させ排出する事ができる。頭部背面には紡錘型の大型鱗がある。顎の先端は凹まないかわずかに凹む。咬合面に稜や突起がない。顎を覆う角質(嘴)にも鋸状の突起がない。四肢は頑丈で、指趾の間には水かきが発達する。尾は短い。

卵は長径2.6-4.2cm、短径1.6-2.7cmでピンクがかった白の柔らかい殻で覆われる。幼体はキールが明瞭だが、成長に伴い(特にメス)不明瞭になる。孵化直後の幼体は縁甲板外縁に突起がないがやや成長すると尖り、成長に伴い不明瞭になる。

メスはオスに比べると背甲が幅広く甲高が高い。またオスの成体は頭部が中型で吻端がわずかに突出し、咬合面はやや狭い。オスは尾が太くて長く、尾をまっすぐに伸ばした状態では総排泄口全体が背甲の外側に位置する。メスの成体は頭部が大型で吻端が突出せず、咬合面は幅広い。尾が細いうえに短く、尾をまっすぐに伸ばしても総排泄口が背甲よりも内側にある。

  • M. t. centrata カロリナキスイガメ

背甲は第6-7縁甲板で最も幅が広くなる細長い俵型。キールはあまり発達しない。背甲の色彩は暗褐色や緑褐色、明褐色、淡褐色一色や、暗色の輪状や渦巻き状の斑紋が入る個体もいるなど変異が大きい。腹甲の色彩はオレンジ色や緑褐色、灰緑色。皮膚の色彩は灰白色や淡灰色、淡い緑褐色などで、黒く細かい斑点か大型の暗色斑が入る。嘴の色彩は灰白色や淡黄色。頭部背面の大型鱗の色彩は白や灰白色。

  • M. t. littoralis テキサスキスイガメ

背甲は第6-7縁甲板で最も幅が広くなる細長い俵型。甲高は中央部より後方で最も高くなる。キールは瘤状。腹甲の色彩は淡黄色や薄白色。皮膚の色彩は白や灰白色、暗灰色で、黒い斑点が入る。上顎や下顎を覆う角質(嘴)の色彩は白や灰白色で、上顎の嘴には不明瞭な暗色の斑紋が入る個体もいる。頭部背面の大型鱗の色彩は白や灰色だが、オレンジ色や褐色の個体もいる。

  • M. t. macrospilota ニシキキスイガメ

背甲は第6-7縁甲板で最も幅が広くなるやや幅広い俵型。甲高は中央部より前方で最も高くなり、ややドーム状に盛りあがる。キールは先端が丸い瘤状で発達する。背甲の色彩は黒や暗褐色で、中央部に黄色やオレンジ色の斑紋が入る。腹甲の色彩は黒や暗褐色で、外縁やシームの周辺の一部はオレンジ色や黄褐色。皮膚の色彩は白や灰白色、淡いピンク色で、黒い斑点が入る。頭部には斑紋がないか、小型で不明瞭。上顎や下顎を覆う角質(嘴)の色彩は白や灰白色。頭部背面の大型鱗の色彩は白や灰白色、淡いピンク色、オレンジ色。

  • M. t. pileata ミシシッピキスイガメ

背甲は第6-7縁甲板で最も幅が広くなる俵型。甲高は中央部より前方で最も高くなる。キールは瘤状。腹甲の色彩は黄色や黄褐色で、甲板ごとに黒や暗褐色の斑紋が入る。皮膚の色彩は灰色や暗灰色で、黒い斑点が入る。上顎や下顎を覆う角質(嘴)の色彩は灰白色や灰褐色で、上顎の嘴には暗色の斑紋が入る。頭部背面の大型鱗の色彩は黒や暗褐色。

  • M. t. rhizophorarum マングローブキスイガメ

背甲は第6-7縁甲板で最も幅が広くなる細長い俵型。キールは先端が丸い瘤状で発達する。腹甲の色彩はオレンジ色や黄褐色。皮膚の色彩は灰色や灰白色で、黒い斑紋や不規則な筋模様が入る。上顎や下顎を覆う角質(嘴)の色彩は灰白色や灰褐色。頭部背面の大型鱗の色彩は黒や暗褐色。

  • M. t. tequesta ヒガシフロリダキスイガメ

背甲は第6-7縁甲板で最も幅が広くなる俵型。甲高は中央部より前方で最も高くなる。キールは瘤状で発達する。腹甲の色彩は黒や暗褐色で、外縁やシームの周辺はオレンジ色や黄褐色。皮膚の色彩は灰色や淡灰色、暗灰色で、黒い斑紋や不規則な筋模様が入る。上顎や下顎を覆う角質(嘴)の色彩は灰白色や灰褐色で、上顎の嘴には暗色の斑紋が入る。

  • M. t. terrapin キタキスイガメ

背甲は第8縁甲板で最も幅が広くなる幅広い卵型。キールはあまり発達しない。背甲の色彩は暗褐色や明褐色、淡褐色一色や、明色の輪状や渦巻き状の斑紋が入る個体もいるなど変異が大きい。腹甲の色彩はオレンジ色や緑褐色、灰緑色。皮膚の色彩は灰白色や淡灰色、淡い緑褐色などで、黒く細かい斑点が入る個体が多い(短い筋模様が入ったり、斑点が不明瞭な個体もいる)。上顎や下顎を覆う角質(嘴)の色彩は灰白色や淡黄色。頭部背面の大型鱗の色彩は頭部の色彩とほぼ同じ個体が多いが、白や灰褐色の個体もいる。

[編集] 分類

形態やミトコンドリアDNA塩基配列による分子系統学的解析からチズガメ属単系統群を形成すると考えられ、さらにこの2属からなる単系統群はアカミミガメ属の一部と単系統群を形成すると考えられている。

種内では形態、ミトコンドリアDNAの制限酵素や塩基配列による分子系統学的解析から、フロリダ半島東部を境界線(さらに北部とする説もあり)とした2グループに分かれると考えられている。個体変異や地理変異が大きく分布域に対して比較的多い7亜種に分かれるが、これは生息域が汽水域に限られるため各個体群間の交流が制限され分化が起こりやすいためと考えられている。一方で亜種間における分布の境界が不明瞭、形態が類似するうえに個体変異が大きく中間型の個体が多く見られる、分子系統学的解析でも上記の2グループ間も含め顕著な差異がないことなどから連続的な地理変異として亜種によっては有効性を疑問視する説もある。

バミューダ島の個体群は人為移入個体群とする説もあった。半化石の放射性炭素年代測定法による解析から、海流などにより3,000-400年前に偶然漂流した個体に由来するとする説が有力とされる。形態やミトコンドリアDNAの塩基配列による分子系統学解析から、亜種カロリナキスイガメに近縁か亜種カロリナキスイガメと考えられている。

  • Malaclemys terrapin centrata (Latreille, 1802) カロリナキスイガメ Carolina diamondback terrapin
  • Malaclemys terrapin littoralis (Hay, 1904) テキサスキスイガメ Texas diamondback terrapin
  • Malaclemys terrapin macrospilota (Hay, 1904) ニシキキスイガメ Ornata diamondback terrapin
  • Malaclemys terrapin pileata (Wied-Neuwied, 1865) ミシシッピキスイガメ Mississippi diamondback terrapin
  • Malaclemys terrapin rhizophorarum Fowler, 1906 マングローブキスイガメ Mangrove diamondback terrapin
  • Malaclemys terrapin tequesta Schwartz, 1955 ヒガシフロリダキスイガメ Florida east coast diamondback terrapin
  • Malaclemys terrapin terrapin (Schoepf, 1793) キタキスイガメ Northern diamondback terrapin

[編集] 生態

塩性湿原干潟河口などの汽水域に生息し、和名の由来になっている。亜種や地域によってはマングローブ林に生息する。野生下では淡水域や海洋に生息することは極めてまれ。半水棲で水生傾向が強いが、上陸し日光浴を行うことも好む。南部個体群は夏季に水場が干上がったり、塩分濃度が上昇すると泥中で休眠する。冬季になると水中の落ち葉や泥の中で冬眠するが、陸上で冬眠する事もある。熱帯域に分布する個体群は周年活動する。

食性は動物食傾向の強い雑食で、主に動物の死骸を食べるが、魚類昆虫甲殻類貝類環形動物などの生体も食べる。メスは硬い殻で覆われた貝類や甲殻類も破砕して食べる。塩分濃度の高い汽水内では飲水は行わず、塩分濃度の低い場所に移動して飲水すると考えられている。

繁殖形態は卵生。主に3-5月に水中でオスがメスの総排泄口の臭いを嗅いだり吻端を摺り寄せて、メスが受け入れると交尾を行う。4-7月に塩性湿原の周辺や中州に1回に4-22個の卵を年に2-5回に分けて卵を産む。卵は野生下ではニュージャージー州の個体群で61-104日、フロリダ州の個体群で60-73日で孵化する。飼育下では24.5-26℃の環境下で約82日、28.5-29.5℃の環境下で54日で孵化した例がある。性染色体を持たず発生時の温度により性別が決定(温度依存性決定)し、24℃ではオスのみ、30℃ではメスのみが産まれた例がある。

[編集] 人間との関係

食用とされる事もある。種小名terrapinは、アルゴンキン語族の言語で「食用ガメ」を指すtoropeに由来する。19世紀から大量に食べられるようになり、1920年代に最盛期を迎えた。そのため19-20世紀初頭にかけては食用に養殖も試みられていたが、現在は食用としての大規模な流通は行われていない。

ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されている。主に飼育下繁殖個体が流通するが、まれに野生個体も流通する。亜種を明記されずに流通する事も多く、亜種が明記されていても亜種間雑種と思われる個体が流通することもある。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 海老沼剛 『爬虫・両生類ビジュアルガイド 水棲ガメ1 アメリカ大陸のミズガメ』、誠文堂新光社2005年、25-27頁。
  • 千石正一監修 長坂拓也編著 『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、215頁。
  • 安川雄一郎 「チズガメ属の分類と自然史(前編)」『クリーパー』第16号、クリーパー社、2003年、9-10頁。
  • 安川雄一郎 「アカミミガメ属(スライダーガメ属)の分類と自然史1」『クリーパー』第36号、クリーパー社、2007年、25頁。
  • 安川雄一郎 「キスイガメ属の分類と自然史」『クリーパー』第47号、クリーパー社、2009年、3-7、20-52頁。

[編集] 外部リンク

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