セイヨウハナズオウ

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セイヨウハナズオウ
セイヨウハナズオウ(C. siliquastrum
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
亜科 : ハナズオウ亜科 Cercidoideae
: ハナズオウ属 Cercis
: セイヨウハナズオウ C. siliquastrum
学名
Cercis siliquastrum
L.

セイヨウハナズオウ(西洋花蘇芳、Cercis siliquastrum)は、マメ科ハナズオウ亜科[1]落葉灌木で、南欧から西南アジアにかけて自生する。春に濃い桃色の花をたくさんつける。

特徴[編集]

高さ12メートル、幅10メートルまで生長する。1年ごとに深い桃色の花をつけ、春遅くに幹でも咲き、幹生花の体をなす。春先に花が咲いてから葉が出る。葉はハート型だが角は鋭くなく、時どき先端に浅い切れ込みが入る。細長く平たい豆果)は、垂直方向にぶら下がる。

分類群[編集]

セイヨウハナズオウは1753年リンネ記載し、siliquastrumという種小名を付けた。この語は、「莢(豆果)」を表すラテン語siliquaからの派生である。

セイヨウハナズオウの変種亜種に次のようなものがある。

  • C. s. var. hebecarpa Bornm.
  • C. s. nothosubsp. yaltikirii (Ponert) Govaerts
  • C. s. var. siliquastrum

また、次のシノニムがある。

  • C. siliquastrum var. alba Weston
  • Siliquastrum orbicularis Moench

分布と生態[編集]

西アジアイランイラクイスラエルヨルダンレバノンシリア)や南欧トルコギリシャアルバニアブルガリアユーゴスラビアイタリアフランス)に自生。

雌雄同株虫媒花であり、によって受粉する。

栽培[編集]

セイヨウハナズオウは、肥沃で水捌けのよい、深い土壌を好み、満面の日光か、もしくは部分的な日蔭を好む。日照りにも耐性がある。 栽培品種に次のようなものがある。

  • アルバ 'Alba' - 白花
  • ボドナン 'Bodnant' - 赤紫(桃色と紫の中間色)
  • ルブラ 'Rubra' - 赤紫(桃色と紫の中間色)

ヨコバイカイガラムシアリマキキジラミ(殊にCacopsylla pulchella)といった害虫や、根こぶ病癌腫病バーティシリウム萎凋病などの病気に弱い。

播種挿し木芽接ぎで繁殖する。

魅力的な木目のある硬質の木材が取れる。ベニヤ板に利用され、良いつやが出る。

「ユダの木」[編集]

セイヨウハナズオウは、キリスト教圏、特に欧米では「ユダの木」(英語: Judas tree, ドイツ語: gewöhnlicher Judasbaum)と俗称されるように、伝統的に、イスカリオテのユダ首吊りに使った樹木であると看做されてきた。このような通念は、フランス語の通称「ユダヤの木(フランス語: arbre de Judée)」からおそらく誤って派生したものであろう(「ユダヤの木」とは、この植物が地中海方面に自生していることに関連した表現である)。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ クロンキスト体系ではジャケツイバラ科とする。

参考文献[編集]

  • Rowell, Raymond J. (1980). Ornamental Flowering Trees in Australia. Australia: AH & AW Reed Pty LtdReed. ISBN 058950178X 
  • Plants for a future database: Cercis siliquastrum
  • International Legume Database & Information Service (ILDIS): Cercis siliquastrum
  • The Royal Horticultural Society : Circus siliquastrum
  • USDA Germplasm Resources Information Network (GRIN): Cercis siliquastrum