シャクヤク

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シャクヤク
Paeonia lactiflora Pink Hawaiian Coral.jpg
シャクヤクの翁咲き
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
: ユキノシタ目 Saxifragales
: ボタン科 Paeoniaceae
: ボタン属 Paeonia
: シャクヤク P. lactiflora
学名
Paeonia lactiflora
Pall.[1]
和名
シャクヤク(芍薬)
シャクヤクの栽培

シャクヤク芍薬)はボタン科の多年草。学名 Paeonia lactiflora。高さ約60cm。葉は複葉。初夏、大形の紅・白色などのボタンに似た花を開く。アジア大陸北東部の原産。品種も多い。

概要[編集]

牡丹が「花王」と呼ばれるのに対し、芍薬は花の宰相、「花相」と呼ばれる。ボタンが樹木であるのに対して、シャクヤクは草本である。そのため、冬には地上部が枯れてしまい休眠する。ボタンの台木として使用されるが、シャクヤク自体の花も美しく、中国の代には育種が始まった。江戸時代には「茶花」として鑑賞され、品種改良も行われた古典園芸植物でもある。また熊本藩では武士の素養として園芸を重要視し、奨励された。特に六種類の植物が盛んに栽培、育種され、これを「肥後六花」と総称するが、キク朝顔椿等と共にシャクヤクもそこに加わっている。この熊本で育種された系統を「肥後芍薬」と呼ぶ。これを含め日本のシャクヤクは一重咲きが中心で、特に雄蕊が大きく発達して盛り上がり花の中央部を飾るものが多く、全般にすっきりした花容である。この花型を「金蕊咲き」と呼び、海外では「ジャパニーズ・タイプ」と呼んでいる。

花の形は「一重咲き」「八重咲き」「翁咲き」などがある。

株分けで増やすことが一般的。

歴史[編集]

中国で、宋代には育種が始まっている。

近代に入り西洋にも紹介され、19世紀には特にフランスで品種改良がなされ、豪華な千重咲き大輪の品種群が生まれた。明治時代以降の日本では、神奈川県農事試験場がこれらを導入し従来の日本の品種群との交配を重ねて、新たな一群が作られた。その後日本でも切り花用品種の育成が続いているほか、伊藤東一によりボタンの黄花品種との交配により濃黄色の品種がいくつか生まれ、世界的にも注目された。また20世紀後半にはアメリカでの育種が進み、いくつかの近縁種との種間交雑も試みられ、従来にない花色を備えたものもいろいろと現れている。外国での品種は「洋芍」とよばれる。

薬用[編集]

シャクヤクまたは近縁植物の根は、消炎・鎮痛・抗菌・止血・抗けいれん作用がある生薬であり[2][3]日本薬局方に収録されている[4]。生薬名「芍薬」(シャクヤク)。初出は『神農本草経[2]。漢方ではポピュラーな生薬で葛根湯十全大補湯芍薬甘草湯大柴胡湯当帰芍薬散など多くの漢方方剤に配合される[5]。根には配糖体であるペオネフリン、アルカロイドであるペオニンが含まれる[6]

現在、中国では芍薬を赤芍白芍とを区別して用いている。一時期、赤花を赤芍、白花を白芍としたり、野生品を赤芍、栽培品を白芍としたりしたが、外皮をつけたまま乾燥したものを赤芍、外皮を取り去って乾燥させたものを白芍とするのが正しい区別である[2][3]

近縁種[編集]

ボタンやヤマシャクヤク、パエオニア・ムロコセウィッチー、パエオニア・テヌイフォリア、パエオニア・オフィキナリスなど日本から中央アジア、地中海沿岸まで十数種が分布している。

その他[編集]

  • 美女の形容として「立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花」がある。
  • 小野小町の百夜通い伝説の一つに、小町を慕う深草少将に毎晩芍薬を一株ずつ通い路に植えて百株になったら契りを交わすと約束するものがある。

脚注[編集]

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  1. ^ Paeonia lactiflora”. Germplasm Resources Information Network (GRIN) online database. 2012年8月20日閲覧。
  2. ^ a b c 御影雅幸、小野直美「「原著」赤芍と白芍に関する史的考察 (PDF) 」 、『日本東洋医学学会誌』第60巻第4号、2009年、 p.p.419-428、 ISSN 0287-48572012年8月20日閲覧。
  3. ^ a b 宮原桂 『漢方ポケット図鑑』 源草社、2008年、p.p.156。ISBN 4-906668-62-5
  4. ^ 「医薬品各条」『日本薬局方第15改正』(PDF) 厚生労働省2008年3月31日、p.p.1242。2010年2月9日閲覧。
  5. ^ 大塚敬節 『漢方医学』 創元社〈創元医学新書〉、1990年2月1日(原著1956年7月25日)、第3版、p.p.208,220,226,229。ISBN 4-422-41110-1
  6. ^ 北川勲、三川潮ほか 『生薬学』 廣川書店、1988年10月25日(原著1980年4月10日)、第3版、p.p.234-235。

関連項目[編集]