インパクトファクター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

インパクトファクター (impact factorIF) は、自然科学社会科学分野の学術雑誌を対象として、その雑誌の影響度、引用された頻度を測る指標である[1]ユージン・ガーフィールド英語版1955年に考案したもので、現在は毎年トムソン・ロイター(旧: Institute for Scientific Information (ISI))の引用文献データベースWeb of Scienceに収録されるデータを元に算出している。対象となる雑誌は、自然科学5,900誌、社会科学1,700誌である。その数値はJournal Citation Reports英語版 (JCR) のデータのひとつとして収録される。

研究者研究機関、および雑誌を評価する目的で参照される場面も多々見られるが、あくまでインパクトファクターはWeb of Scienceに収録された特定のジャーナルの「平均的な論文」の被引用回数にすぎない。

求め方[編集]

インパクトファクターはWeb of Scienceの収録雑誌の3年分のデータを用いて計算される。たとえばある雑誌の2004年のインパクトファクターは2002年と2003年の論文数、2004年のその雑誌の被引用回数から次のように求める。

A = 対象の雑誌が2002年に掲載した論文数
B = 対象の雑誌が2003年に掲載した論文数
C = 対象の雑誌が2002年・2003年に掲載した論文が、2004年に引用された延べ回数
C ÷ (A+B) = 2004年のインパクトファクター

例えば、この2年間合計で1,000報記事を掲載した雑誌があったとして、それら1,000報の記事が2004年に延べ500回引用されたとしたら、この雑誌の2004年版のインパクトファクターは0.5になる。

インパクトファクターは「平均的な論文」の被引用回数を示すものであるため、トムソン・ロイター社はある種の記事(ニュースや投書、訂正記事など)は分母から差し引いている。一方、分子となる被引用のデータには全てのドキュメントタイプが含まれる。インパクトファクターの計算根拠はWeb of Scienceの引用データであるが、これらの引用情報は各著者が論文の末尾に記載した参照文献件目録(renferenceやbibliography)がソースとなっている。引用文献のドキュメントタイプをデータ作成者側のトムソン・ロイター社は把握することができない。分子と分母のドキュメントタイプが一致しないのはこうした理由による。

インパクトファクターはWeb of Scienceに収録される雑誌の3年間のデータを元に算出するものなので、新しく採録雑誌となったものについては最初の3年間はインパクトファクターは付与されず、JCRにも収録されない。[要出典]

インパクトファクターの長所[編集]

異なる雑誌の重要度を比較する場合にインパクトファクターを用いるのは有効である。元々インパクトファクターはWeb of Scienceに収録する雑誌を選定する際の社内指標として開発され、図書館の雑誌の選定や、研究者の論文投稿先、出版社の編集方針を決める指針などに用いてもらうことを意図してリリースされた。したがって自分の書いた論文がより多くの人の目に触れて欲しいと思ったときに、同じ分野の複数の雑誌で各雑誌のインパクトファクターを比較し投稿先を決定することには意味がある。ただし比較を行う場合には同じ分野の中で雑誌同士を比較し、インパクトファクターを分野を超えた絶対的な数値としては用いない、などの注意が必要である。

インパクトファクターに対する誤解[編集]

ガーフィールドはインパクトファクターに対する誤解に対して、次のように述べている。

「私は1955年に最初に雑誌「Science」においてインパクトファクターのアイデアについて言及した。〔中略〕1955年時点では「インパクト」というものがいつの日か大きな論議を巻き起こすものになるとは思い及ばなかった。インパクトファクターは原子力のように有難いようなありがたくないような存在となっている。 誤った方法で乱用されるかもしれないという認識はあったが、その一方で私はインパクトファクターが建設的に用いられることを期待したのである。」[2]

インパクトファクターは「学術雑誌」の評価指標であって、学術雑誌論文はもとより研究者の評価に用いるものではない。しかし、実際には多くの研究者がインパクトファクターに対する誤解を持っている。「この〔論文〕のインパクトファクターを知りたい」「〔私の〕インパクトファクターはいくつか」といった問いは典型的なインパクトファクターへの無理解を示している。自分の投稿した雑誌のインパクトファクターが、あたかも株価のように上昇することを期待するのもインパクトファクターへの無理解から来るものである。自分の投稿した論文掲載誌のインパクトファクターを足し合わせ業績評価とするのも無意味である。

しかしこのような著者個人や個々の論文の影響度の評価に対する需要は高い。例えば科学研究に資金を出している人は、研究の生産性を査定するために成果の比較をしたがるだろうが、これらを客観的かつ定量的な指標を使って比較する場合には、インパクトファクターではなく、インパクトファクターの元になっているWeb of Science収録論文の個々の被引用回数と、その被引用回数が所属の分野の中でどういった位置にいるのかというベンチマークとの突合せが必要である(このベンチマーク指標はEssential Science Indicators (ESI) という別のトムソン・ロイター社データベースに収録されている)。また、2010年代になってからは論文レベル・著者レベルの定量化が可能な代替指標としてAltmetricsが提唱されるようになった。

インパクトファクターは英文誌にのみ付与され、和文誌にはつかないというのも誤りである。Web of Scienceは言語の種類にかかわらず国際的に優れた一流誌を収録することをポリシーとしており、収録の基準を満たすものであれば和文誌も収録されているから、当然そうした質の高い和文誌にはインパクトファクターが付与されている。ただし数として英文誌が圧倒的に多いのは事実である。

インパクトファクターに対する批判[編集]

ある雑誌の平均的な論文の被引用回数が高いということが、本当にその雑誌の価値を示しているかどうかは疑問である。引用がどういった文脈で行われているか(批判的な引用かそうでないか等)は、データ作成者は判断できない。また、ごく一部のスター的な論文が被引用回数を稼ぐことによって、雑誌のインパクトファクター値を引き上げることもよく起こりうる。

さらに計算対象についても、直近2年の論文データしか用いないのは短すぎるとの批判がある[誰?]。インパクトファクターの計算に直近2年の論文データを用いるのは、どの分野においても平均的な論文は出版後2年目3年目に最も多く引用され、徐々に引用されなくなっていく傾向があるためである。しかし実際には分野によってはなだらかな山を描きながら息長く引用され続けるものもあり、この場合には直近2年のデータを用いたインパクトファクターでその論文の掲載誌の影響度をはかることは難しい。これに対する回答として、トムソン・ロイター社は2009年、JCRに5年インパクトファクターを新たな指標として追加した。またJCRに10年間の各雑誌の引用データを掲載しており、各人が自由に目的に応じた計算 / 分析を行えるようにしている。インパクトファクターの本来の意味を誤解して、著者が重要だと考える結果を、海外の著名な論文雑誌に優先して投稿する傾向が強まると、国内の論文雑誌が空洞化する可能性がある。[独自研究?]

日本の大学における教授選考の際、インパクトファクターを合算した点数が選考過程で重視される傾向があり、いわゆる大教室出身者や、凡庸な論文を多数生産する研究者が実力以上に評価されてしまうことがままある[要出典]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ インパクトファクター・引用情報の調べ方(慶應義塾大学信濃町情報センター)
  2. ^ Garfield, E., "The Agony and the Ecstasy - The History and the Meaning of the Journal Impact Factor", presented at the International Congress on Peer Review and Biomedical Publication, Chicago, U.S.A., September 16, 2005, [1] (PDF) p.1 (unpublished, pdf file)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]