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'''フィルミクテス門'''('''Firmicutes'''、'''ファーミキューテス'''、'''グラム陽性細菌門''')とは、低GC含量[[グラム陽性菌|グラム陽性]]に特徴付けられる[[細菌]]の[[門 (分類学)|門]]である。グラム陽性低GC含量細菌とも呼ばれる。200近くの[[ (分類学)|]]を含み、細菌では[[プロテオバクテリア|プロテオバクテリア門]]に次ぐ多様性を持つ。
'''フィルミクテス門'''('''Firmicutes'''、'''ファーミキューテス'''、'''グラム陽性細菌門''')とは、[[細菌]]の[[門 (分類学)|門]]の一つである。その多くは低GC含量[[グラム陽性菌|グラム陽性]]に特徴付けられる<ref>{{DorlandsDict|three/000040400|Firmicutes}}</ref>そのため、グラム陽性低GC含量細菌とも呼ばれる。しかし、''[[:en:Megasphaera|Megasphaera]]'', ''[[:en:Pectinatus|Pectinatus]]'', ''[[:en:Selenomonas|Selenomonas]]'' and ''[[:en:Zymophilus|Zymophilus]]のようないくつか系統では多孔質の擬似外膜持ち''、[[グラム陰性菌|グラム陰性]]である。元々は、すべてのグラム陽菌を含むようにファーミキューテス門の分類が行われた。球菌(単球菌)または棒状の形態(桿菌)と呼ばれる丸い細胞を持つ。


[[腸内細菌]]や[[皮膚常在菌]]、[[病原菌]]あるいは[[ヨーグルト]]などの[[発酵食品]]を通じて[[ヒト|人間]]にも比較的なじみの深いグループである。
270以上の[[属 (分類学)|属]]が分類されており、細菌の中では[[プロテオバクテリア|プロテオバクテリア門]]に次ぐ多様性を持つ。多くのファーミキューテス門は、[[乾燥|乾燥に]]耐性があり、極端な条件に耐えることができる内生胞子(芽胞)を生成する。それらはさまざまな環境で見られ、グループにはいくつかの注目すべき病原体が含まれている。[[ヘリオバクテリウム科|ヘリオバクテリア科]]においては、[[無酸素光合成]]によってエネルギーを生成する事が知られている。ビール、ワイン、サイダーの発酵に重要な役割を果たすものも知られている。[[腸内細菌]]や[[皮膚常在菌]]、[[病原菌]]あるいは[[ヨーグルト]]などの[[発酵食品]]を通じて[[ヒト|人間]]にも比較的なじみの深いグループである。


== 特徴 ==
== 特徴 ==
[[ファイル:Bacillus subtilis Spore.jpg|200px|left|thumb|[[枯草菌]]とその芽胞(水色)]]
[[ファイル:Bacillus subtilis Spore.jpg|200px|left|thumb|[[枯草菌]]とその芽胞(水色)]]
[[グラム陽性菌]]はフィルミクテス門(グラム陽性菌門)と[[放線菌|放線菌門]](Actinobacteria)の2つに大別されるが、フィルミクテス門は[[デオキシリボ核酸|DNA]]中のGC含量(全[[核酸塩基]]中の[[グアニン|G]]+[[シトシン|C]]の割合)が低いことが特徴である。GC含量は55%未満で、40%前後のものが多い。特徴的な耐久構造である[[芽胞]]を形成する能力を持つ種が広い分類範囲に含まれることから、芽胞形成能力を持った[[偏性嫌気性生物|偏性嫌気性]]の祖先から進化してきたと考えられている。
[[グラム陽性菌]]はフィルミクテス門(グラム陽性菌門)と[[放線菌|放線菌門]](Actinobacteria)の2つに大別されるが、フィルミクテス門は[[デオキシリボ核酸|DNA]]中のGC含量(全[[核酸塩基]]中の[[グアニン|G]]+[[シトシン|C]]の割合)が低いことが特徴である{{要出典|date=2021年5月}}。GC含量は55%未満で、40%前後のものが多い。特徴的な耐久構造である[[芽胞]]を形成する能力を持つ種が広い分類範囲に含まれることから、芽胞形成能力を持った[[偏性嫌気性生物|偏性嫌気性]]の祖先から進化してきたと考えられている{{要出典|date=2021年5月}}


学名は細胞壁の構造に由来しており、[[ラテン語]]でfirmusフィルムス(強固な)+cutisクティス(皮膚)という意味になっている。ただし、[[国際細菌命名規約]]は門の階級について規定しないため、厳密に言えばFirmicutesは学名ではなく、ただのラテン語名に過ぎない。ファーミキューテスはこれを英語風に発音したものである。
学名は細胞壁の構造に由来しており、[[ラテン語]]でfirmusフィルムス(強固な)+cutisクティス(皮膚)という意味になっている{{要出典|date=2021年5月}}。ただし、[[国際細菌命名規約]]は門の階級について規定しないため、厳密に言えばFirmicutesは学名ではなく、ただのラテン語名に過ぎない。ファーミキューテスはこれを英語風に発音したものである{{要出典|date=2021年5月}}


== 下位分類 ==
== 系統 ==
下位分類としては5綱が知られている。歴史的にはモネラ界を大別する4門の1つであり、[[グラム陽性菌]]全てを含む門としてフィルミクテス綱(バシラス、クロストリジウム類)、放線菌綱、デイノコッカス-サーマス綱が分類されていた時期もある。その後性質の違いによりバシラス、クロストリジウム類以外が分離され、さらに[[16S rRNA系統解析|16S rRNA]]で系統が整理された結果、新たにウェイロネラ科 (Veillonellaceae)(擬似的にグラム陰性に染まる)などもフィルミクテス門に分類される結果となった。クロストリジウム綱やバシラス綱は生化学的性質に基づいて分類されており、今後分類が再編される可能性がある。


=== 概要 ===
なお、系統的に近い[[モリクテス綱]](無壁の細菌)に関しては、フィルミクテス門に含まれる場合と、テネリクテス門として独立させる場合で意見が分かれている。Bergey's Manual 2ndでは現在テネリクテス門を分けているが、近年の系統解析ではフィルミクテス門に含まれる見解が支配的である。
ァーミキューテス門の下位分類としては5綱が知られている。歴史的にはモネラ界を大別する4門の1つであり、[[グラム陽性菌]]全てを含む門としてフィルミクテス綱(バシラス、クロストリジウム類)、放線菌綱、デイノコッカス-サーマス綱が分類されていた時期もある{{要出典|date=2021年5月}}。その後性質の違いによりバシラス、クロストリジウム類以外が分離され、さらに[[16S rRNA系統解析|16S rRNA]]で系統が整理された結果、新たにウェイロネラ科 (Veillonellaceae)(擬似的にグラム陰性に染まる)などもフィルミクテス門に分類される結果となった{{要出典|date=2021年5月}}。クロストリジウム綱やバシラス綱は生化学的性質に基づいて分類されており、今後分類が再編される可能性がある{{要出典|date=2021年5月}}。


なお、系統的に近い[[モリクテス綱]](無壁の細菌)に関しては、フィルミクテス門に含まれる場合と、テネリクテス門として独立させる場合で意見が分かれている{{要出典|date=2021年5月}}。Bergey's Manual 2ndでは現在テネリクテス門を分けているが、近年の系統解析ではフィルミクテス門に含まれる見解が支配的である{{要出典|date=2021年5月}}。
=== [[バシラス綱]] ===

=== 系統樹 ===
系統樹はAnnotree<ref>{{cite journal |last1=Mendler|first1=K|last2=Chen|first2=H|last3=Parks|first3=DH|last4=Hug|first4=LA|last5=Doxey|first5=AC |date=2019 |title=AnnoTree: visualization and exploration of a functionally annotated microbial tree of life |journal=Nucleic Acids Research |volume=47|issue=9| pages=4442–4448 |url=http://annotree.uwaterloo.ca/app/ |doi=10.1093/nar/gkz246|pmid=31081040|pmc=6511854|doi-access=free}}</ref>とGTDB (release 05-RS95 (17 July 2020))<ref>{{cite web |title=GTDB release 05-RS95 |url=https://gtdb.ecogenomic.org/about#4%7C |website=[[Genome Taxonomy Database]]}}</ref>を利用して作成された。
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==== [[バシラス綱|バシラス綱{{要出典|date=2021年5月}}]] ====
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* バシラス目/Bacillales
* バシラス目/Bacillales
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通性または偏性好気性のグループ。バシラス([[桿菌]])と名前は付いているが、これは[[バシラス属|''Bacillus'']]属に由来するものでこの綱の性質を表すものではない。ラクトバシラス目は無芽胞で乳酸発酵をする種([[乳酸菌]]、[[レンサ球菌]]、[[ミュータンス菌]]など)を多く含む。バシラス目には芽胞を形成する多くの種が含まれる(無芽胞のものもいる)。[[枯草菌]]、[[炭疽菌]]や[[ブドウ球菌]]がバシラス目の代表例である。
通性または偏性好気性のグループ。バシラス([[桿菌]])と名前は付いているが、これは[[バシラス属|''Bacillus'']]属に由来するものでこの綱の性質を表すものではない。ラクトバシラス目は無芽胞で乳酸発酵をする種([[乳酸菌]]、[[レンサ球菌]]、[[ミュータンス菌]]など)を多く含む。バシラス目には芽胞を形成する多くの種が含まれる(無芽胞のものもいる)。[[枯草菌]]、[[炭疽菌]]や[[ブドウ球菌]]がバシラス目の代表例である。


=== [[クロストリジウム綱]] ===
==== [[クロストリジウム綱|クロストリジウム綱{{要出典|date=2021年5月}}]] ====
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* クロストリジウム目/Clostridiales
* クロストリジウム目/Clostridiales
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偏性嫌気性。多くが芽胞形成能力を持つ。この綱の代表的な生物である[[クロストリジウム属|''Clostridium'']]属は、[[破傷風菌]]や[[ボツリヌス菌]]など地球上で最も強力な毒素を産生する能力を持つ種を含む。[[ウェルシュ菌]]もクロストリジウム属に含まれる。クロストリジウム目は[[ヘリオバクテリア]](Heliobacteria)と呼ばれる[[光合成細菌]]も1科含んでいる。
偏性嫌気性。多くが芽胞形成能力を持つ。この綱の代表的な生物である[[クロストリジウム属|''Clostridium'']]属は、[[破傷風菌]]や[[ボツリヌス菌]]など地球上で最も強力な毒素を産生する能力を持つ種を含む。[[ウェルシュ菌]]もクロストリジウム属に含まれる。クロストリジウム目は[[ヘリオバクテリア]](Heliobacteria)と呼ばれる[[光合成細菌]]も1科含んでいる。


=== [[エリュシペロトリクス綱]] ===
==== [[エリュシペロトリクス綱|エリュシペロトリクス綱{{要出典|date=2021年5月}}]] ====
* エリュシペロトリクス目/Erysipelotrichales
* エリュシペロトリクス目/Erysipelotrichales
16S rRNA配列によって定義されている小さめの鋼。[[哺乳類]]や[[鳥類]]に分布する通性嫌気性菌。8属を含む。
16S rRNA配列によって定義されている小さめの鋼。[[哺乳類]]や[[鳥類]]に分布する通性嫌気性菌。8属を含む。


=== [[ネガティウィクテス綱]] ===
==== [[ネガティウィクテス綱|ネガティウィクテス綱{{要出典|date=2021年5月}}]] ====
* セレノモナス目
* セレノモナス目
嫌気性で、グラム陰性に染まる1群。31属を含む。[[外膜]]を有する。
嫌気性で、グラム陰性に染まる1群。31属を含む。[[外膜]]を有する。


=== テルモリバクテ綱 ===
==== サーモリバクテリア{{要出典|date=2021年5月}} ====
* テルモリトバクテル目/Thermolithobacterales
* テルモリトバクテル目/Thermolithobacterales
''Thermolithobacter''属の1属のみを含む。[[鉄]]を還元する偏性嫌気性菌。
''Thermolithobacter''属の1属のみを含む。[[鉄]]を還元する偏性嫌気性菌。


== 病原性を持つ系統 ==
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ファーミキューテスは、マウスとヒトの腸内細菌叢の大部分を占めている<ref name="LeyPeterson2006">{{Cite journal|year=2006|title=Ecological and evolutionary forces shaping microbial diversity in the human intestine|journal=Cell|volume=124|issue=4|pages=837–848|DOI=10.1016/j.cell.2006.02.017|PMID=16497592}}</ref>。[[腸内細菌|腸内細菌叢]]の一部であるファーミキューテスは、エネルギー吸収に関与しており、糖尿病と[[肥満]]の発症に関連している可能性があることが示されている<ref name="LeyTurnbaugh2006">{{Cite journal|year=2006|title=Microbial ecology: human gut microbes associated with obesity|journal=Nature|volume=444|issue=7122|pages=1022–1023|bibcode=2006Natur.444.1022L|DOI=10.1038/4441022a|PMID=17183309}}</ref><ref>{{Cite news|last=Henig|first=Robin Marantz|url=https://www.nytimes.com/2006/08/13/magazine/13obesity.html?pagewanted=3&ei=5070&en=0c39c5880e4d7067&ex=1166850000|title=Fat Factors|date=2006-08-13|newspaper=New York Times Magazine|accessdate=2008-09-28}}</ref><ref>{{Cite journal|date=August 2005|title=Obesity alters gut microbial ecology|journal=Proc. Natl. Acad. Sci. USA|volume=102|issue=31|pages=11070–11075|bibcode=2005PNAS..10211070L|DOI=10.1073/pnas.0504978102|PMID=16033867|PMC=1176910}}</ref><ref>Komaroff AL. The Microbiome and Risk for Obesity and Diabetes. JAMA. Published online December 22, 2016. doi:10.1001/jama.2016.20099</ref>。健康なヒト成人の腸において、最も豊富な系統は''[[フィーカリバクテリウム|Faecalibacterium]] prausnitziiであり、''腸全体の細菌数の5%を構成している。この種は、肥満によって引き起こされる軽度の炎症の減少に直接関連している<ref>{{Cite journal|last=Chakraborti|first=Chandra Kanti|date=15 November 2015|title=New-found link between microbiota and obesity|journal=World Journal of Gastrointestinal Pathophysiology|volume=6|issue=4|pages=110–119|DOI=10.4291/wjgp.v6.i4.110|PMID=26600968|PMC=4644874}}</ref>。''F. prausnitzii''は、非肥満の子供よりも肥満の子供の腸内で、より高いレベルで発見されている。

複数の研究で、痩せた対照よりも肥満の人に多くのファーミキューテスが見られた。肥満患者では、特にファーミキューテス門細菌の内でも''Lactobacillusの相対存在量が''高いことが発見されている。減量食を摂取した肥満患者は腸内のファーミキューテスの量が減少していることを示した研究例もある<ref>{{Cite journal|last=Million|first=M.|last2=Lagier|first2=J.-C|last3=Yahav|first3=D.|last4=Paul|first4=M.|date=April 2013|title=Gut bacterial microbiota and obesity|journal=Clinical Microbiology and Infection|volume=19|issue=4|pages=305–313|DOI=10.1111/1469-0691.12172|PMID=23452229}}</ref>。

マウスの食餌の変化は、ファーミキューテスの数の変化を促進することが示されている。標準的な低脂肪/高多糖類食を与えられたマウスよりも、西洋型食餌(高脂肪/高糖)を与えられたマウスの方が、比較的豊富なファーミキューテスが見られた。ファーミキューテスの量が多いことは、マウス内の脂肪過多と体重の増加にも関連していた<ref>{{Cite journal|last=Turnbaugh|first=Peter J.|date=17 April 2008|title=Diet-Induced Obesity Is Linked to Marked but Reversible Alterations in the Mouse Distal Gut Microbiome|journal=Cell Host & Microbe|volume=3|issue=4|pages=213–223|DOI=10.1016/j.chom.2008.02.015|PMID=18407065|PMC=3687783}}</ref>。具体的には、肥満マウスでは、[[モリクテス綱|''モリクテス''綱]](''Mollicutes'')が最も存在量が多かった。この肥満マウスの微生物叢を無菌マウスの腸に移植すると、ファーミキューテスの存在量が少ない痩せたマウスに微生物叢を移植したマウスと比較して、無菌マウスはかなりの量の脂肪を獲得した<ref>{{Cite journal|last=Million|first=M.|date=April 2013|title=Gut bacterial microbiota and obesity|journal=Cell Microbiology and Infection|volume=19|issue=4|pages=305–313|DOI=10.1111/1469-0691.12172|PMID=23452229}}</ref>。

[[糞|人間の糞便]]''から分離された[[クリステンセネラ属|クリステン]]''[[クリステンセネラ属|セネラ]]属(''[[:en:Christensenella|Christensenell]]、''クロストリジウム綱)の存在は[[ボディマス指数|、肥満度指数の]]低下と相関することがわかっている<ref>{{Cite journal|last=Goodrich|first=Julia K.|last2=Waters|first2=Jillian L.|last3=Poole|first3=Angela C.|last4=Sutter|first4=Jessica L.|last5=Koren|first5=Omry|last6=Blekhman|first6=Ran|last7=Beaumont|first7=Michelle|last8=Van Treuren|first8=William|last9=Knight|first9=Rob|year=2014|title=Human Genetics Shape the Gut Microbiome|journal=Cell|volume=159|issue=4|pages=789–799|DOI=10.1016/j.cell.2014.09.053|ISSN=0092-8674|PMID=25417156|PMC=4255478}}{{オープンアクセス}}</ref>。

== 引用文献 ==
<references />

== 外部リンク ==
[https://web.archive.org/web/20130127030659/http://www.bacterio.cict.fr/classifphyla.html#Firmicutes Phylum "Firmicutes"] - J.P. Euzéby: List of Prokaryotic names with Standing in Nomenclature


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2021年5月17日 (月) 06:45時点における版

グラム陽性細菌門
クロストリジウム・ディフィシル (Clostridium difficile)
分類
ドメイン : 細菌 Bacteria
: グラム陽性細菌門
Firmicutes
下位分類(綱)

フィルミクテス門Firmicutesファーミキューテスグラム陽性細菌門)とは、細菌の一つである。その多くは低GC含量、グラム陽性に特徴付けられる[1]。そのため、グラム陽性低GC含量細菌とも呼ばれる。しかし、Megasphaera, Pectinatus, Selenomonas and Zymophilusのようないくつかの系統では多孔質の擬似外膜持ちグラム陰性である。元々は、すべてのグラム陽性菌を含むようにファーミキューテス門の分類が行われた。球菌(単球菌)または棒状の形態(桿菌)と呼ばれる丸い細胞を持つ。

270以上のが分類されており、細菌の中ではプロテオバクテリア門に次ぐ多様性を持つ。多くのファーミキューテス門は、乾燥に耐性があり、極端な条件に耐えることができる内生胞子(芽胞)を生成する。それらはさまざまな環境で見られ、グループにはいくつかの注目すべき病原体が含まれている。ヘリオバクテリア科においては、無酸素光合成によってエネルギーを生成する事が知られている。ビール、ワイン、サイダーの発酵に重要な役割を果たすものも知られている。腸内細菌皮膚常在菌病原菌あるいはヨーグルトなどの発酵食品を通じて、人間にも比較的なじみの深いグループである。

特徴

枯草菌とその芽胞(水色)

グラム陽性菌はフィルミクテス門(グラム陽性菌門)と放線菌門(Actinobacteria)の2つに大別されるが、フィルミクテス門はDNA中のGC含量(全核酸塩基中のG+Cの割合)が低いことが特徴である[要出典]。GC含量は55%未満で、40%前後のものが多い。特徴的な耐久構造である芽胞を形成する能力を持つ種が広い分類範囲に含まれることから、芽胞形成能力を持った偏性嫌気性の祖先から進化してきたと考えられている[要出典]

学名は細胞壁の構造に由来しており、ラテン語でfirmusフィルムス(強固な)+cutisクティス(皮膚)という意味になっている[要出典]。ただし、国際細菌命名規約は門の階級について規定しないため、厳密に言えばFirmicutesは学名ではなく、ただのラテン語名に過ぎない。ファーミキューテスはこれを英語風に発音したものである[要出典]

系統

概要

ァーミキューテス門の下位分類としては5綱が知られている。歴史的にはモネラ界を大別する4門の1つであり、グラム陽性菌全てを含む門としてフィルミクテス綱(バシラス、クロストリジウム類)、放線菌綱、デイノコッカス-サーマス綱が分類されていた時期もある[要出典]。その後性質の違いによりバシラス、クロストリジウム類以外が分離され、さらに16S rRNAで系統が整理された結果、新たにウェイロネラ科 (Veillonellaceae)(擬似的にグラム陰性に染まる)などもフィルミクテス門に分類される結果となった[要出典]。クロストリジウム綱やバシラス綱は生化学的性質に基づいて分類されており、今後分類が再編される可能性がある[要出典]

なお、系統的に近いモリクテス綱(無壁の細菌)に関しては、フィルミクテス門に含まれる場合と、テネリクテス門として独立させる場合で意見が分かれている[要出典]。Bergey's Manual 2ndでは現在テネリクテス門を分けているが、近年の系統解析ではフィルミクテス門に含まれる見解が支配的である[要出典]

系統樹

系統樹はAnnotree[2]とGTDB (release 05-RS95 (17 July 2020))[3]を利用して作成された。

Firmicutes G

Limnochordia

Firmicutes E

"Thermaerobacteria"

"Symbiobacteriia"

"Sulfobacillia"

"Selenobacteria"

Negativicutes

Firmicutes B

"Syntrophomonadia"

"Dehalobacteriia"

"Peptococcia"

"Desulfitobacteriia"

"Moorellia"

"Thermincolia"

"Desulfotomaculia"

"Halanaerobiaeota"

"Halanaerobiia"

Firmicutes A

"Thermosediminibacteria"

"Thermoanaerobacteria"

"Mahellia"

Clostridiia s.s.

Firmicutes D

"Proteinivoracia"

"Dethiobacteria"

"Natranaerobiia"

"Fusobacteriota"

Fusobacteria

"Bacillota"

"Alicyclobacillia"

"Desulfuribacillia"

"Bacillia" s.s.

[[バシラス綱|バシラス綱[要出典]]]

化膿レンサ球菌
  • バシラス目/Bacillales
  • ラクトバシラス目/Lactobacillales

通性または偏性好気性のグループ。バシラス(桿菌)と名前は付いているが、これはBacillus属に由来するものでこの綱の性質を表すものではない。ラクトバシラス目は無芽胞で乳酸発酵をする種(乳酸菌レンサ球菌ミュータンス菌など)を多く含む。バシラス目には芽胞を形成する多くの種が含まれる(無芽胞のものもいる)。枯草菌炭疽菌ブドウ球菌がバシラス目の代表例である。

[[クロストリジウム綱|クロストリジウム綱[要出典]]]

破傷風菌
  • クロストリジウム目/Clostridiales
  • テルモアナエロバクテル目/Thermoanaerobacteriales
  • ハロアナエロビウム目/Halanaerobiales
  • ナトラナエロビウス目/Natranaerobiales

偏性嫌気性。多くが芽胞形成能力を持つ。この綱の代表的な生物であるClostridium属は、破傷風菌ボツリヌス菌など地球上で最も強力な毒素を産生する能力を持つ種を含む。ウェルシュ菌もクロストリジウム属に含まれる。クロストリジウム目はヘリオバクテリア(Heliobacteria)と呼ばれる光合成細菌も1科含んでいる。

[[エリュシペロトリクス綱|エリュシペロトリクス綱[要出典]]]

  • エリュシペロトリクス目/Erysipelotrichales

16S rRNA配列によって定義されている小さめの鋼。哺乳類鳥類に分布する通性嫌気性菌。8属を含む。

[[ネガティウィクテス綱|ネガティウィクテス綱[要出典]]]

  • セレノモナス目

嫌気性で、グラム陰性に染まる1群。31属を含む。外膜を有する。

サーモリソバクテリア綱[要出典]

  • テルモリトバクテル目/Thermolithobacterales

Thermolithobacter属の1属のみを含む。を還元する偏性嫌気性菌。

病原性を持つ系統

ファーミキューテスは、マウスとヒトの腸内細菌叢の大部分を占めている[4]腸内細菌叢の一部であるファーミキューテスは、エネルギー吸収に関与しており、糖尿病と肥満の発症に関連している可能性があることが示されている[5][6][7][8]。健康なヒト成人の腸において、最も豊富な系統はFaecalibacterium prausnitziiであり、腸全体の細菌数の5%を構成している。この種は、肥満によって引き起こされる軽度の炎症の減少に直接関連している[9]F. prausnitziiは、非肥満の子供よりも肥満の子供の腸内で、より高いレベルで発見されている。

複数の研究で、痩せた対照よりも肥満の人に多くのファーミキューテスが見られた。肥満患者では、特にファーミキューテス門細菌の内でもLactobacillusの相対存在量が高いことが発見されている。減量食を摂取した肥満患者は腸内のファーミキューテスの量が減少していることを示した研究例もある[10]

マウスの食餌の変化は、ファーミキューテスの数の変化を促進することが示されている。標準的な低脂肪/高多糖類食を与えられたマウスよりも、西洋型食餌(高脂肪/高糖)を与えられたマウスの方が、比較的豊富なファーミキューテスが見られた。ファーミキューテスの量が多いことは、マウス内の脂肪過多と体重の増加にも関連していた[11]。具体的には、肥満マウスでは、モリクテスMollicutes)が最も存在量が多かった。この肥満マウスの微生物叢を無菌マウスの腸に移植すると、ファーミキューテスの存在量が少ない痩せたマウスに微生物叢を移植したマウスと比較して、無菌マウスはかなりの量の脂肪を獲得した[12]

人間の糞便から分離されたクリステンセネラ属(Christensenellクロストリジウム綱)の存在は、肥満度指数の低下と相関することがわかっている[13]

引用文献

  1. ^ "Firmicutes" - ドーランド医学辞典
  2. ^ Mendler, K; Chen, H; Parks, DH; Hug, LA; Doxey, AC (2019). “AnnoTree: visualization and exploration of a functionally annotated microbial tree of life”. Nucleic Acids Research 47 (9): 4442–4448. doi:10.1093/nar/gkz246. PMC 6511854. PMID 31081040. http://annotree.uwaterloo.ca/app/. 
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  4. ^ “Ecological and evolutionary forces shaping microbial diversity in the human intestine”. Cell 124 (4): 837–848. (2006). doi:10.1016/j.cell.2006.02.017. PMID 16497592. 
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  7. ^ “Obesity alters gut microbial ecology”. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102 (31): 11070–11075. (August 2005). Bibcode2005PNAS..10211070L. doi:10.1073/pnas.0504978102. PMC 1176910. PMID 16033867. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1176910/. 
  8. ^ Komaroff AL. The Microbiome and Risk for Obesity and Diabetes. JAMA. Published online December 22, 2016. doi:10.1001/jama.2016.20099
  9. ^ Chakraborti, Chandra Kanti (15 November 2015). “New-found link between microbiota and obesity”. World Journal of Gastrointestinal Pathophysiology 6 (4): 110–119. doi:10.4291/wjgp.v6.i4.110. PMC 4644874. PMID 26600968. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4644874/. 
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  12. ^ Million, M. (April 2013). “Gut bacterial microbiota and obesity”. Cell Microbiology and Infection 19 (4): 305–313. doi:10.1111/1469-0691.12172. PMID 23452229. 
  13. ^ Goodrich, Julia K.; Waters, Jillian L.; Poole, Angela C.; Sutter, Jessica L.; Koren, Omry; Blekhman, Ran; Beaumont, Michelle; Van Treuren, William et al. (2014). “Human Genetics Shape the Gut Microbiome”. Cell 159 (4): 789–799. doi:10.1016/j.cell.2014.09.053. ISSN 0092-8674. PMC 4255478. PMID 25417156. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4255478/. オープンアクセス

外部リンク

Phylum "Firmicutes" - J.P. Euzéby: List of Prokaryotic names with Standing in Nomenclature