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ゴキブリ目
	生息年代: 358.9–0 Ma PreЄ Є O S D C P T J K Pg N 石炭紀 - 現在
	ドミノゴキブリ(Therea petiveriana)
分類
シノニム
	Blattaria （ゴキブリのみを指す）;
科
	ゴキブリ科; シロアリ科;

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ゴキブリ目 （ゴキブリもく、英:Blattodea）は、ゴキブリ科とシロアリ科を含む昆虫の目 (分類学)である^[1]。かつてシロアリは別分類(等翅目,Isoptera)と考えられていたが、遺伝子や分子的な証拠がゴキブリとの親密な関係を示唆している。ゴキブリ目とカマキリ目は現在どちらも網翅上目の一部と考えられている。ゴキブリ目には、約500属4400種のゴキブリと約300属3000種のシロアリが含まれる。

シロアリがコロニーに生息する淡い色で柔らかい体の真社会性昆虫であるのに対し、ゴキブリは暗い色（多くは茶色）で体がスクレロチン硬化した個別性昆虫である。コロニーの中で、シロアリには成熟した雌雄の生殖虫である王と女王、多数の非生殖虫である働きアリと兵アリによる階級（通称カースト）体系がある^[2]。ゴキブリはコロニー型ではないが全ての成虫が繁殖可能なため集合する習性があり、前社会性とみなされる場合もある。このほか両グループの類似点としては、様々な社会的行動、足跡を辿る習性、親族認識、コミュニケーション方法などがある。

系統と進化

107種^{[注釈 1]}を対象に行なったDNA配列の分岐学解析では、シロアリがゴキブリ目の内群に入ることや、キゴキブリ (Cryptocercus) がシロアリの姉妹群であることが示された。カマキリはゴキブリ目の姉妹群であることが示された^[3]。またキゴキブリは、腸内細菌種などの特性をシロアリと共有している^[4]。

ゴキブリのLamproblattidaeとTryonicidaeという科はゴキブリ亜目 (Blattoidea) 内に配置されている。ムカシゴキブリ科とチャバネゴキブリ科についてはラテン学名が刷新されている^{[注釈 2]}。

エッグルトンとベッカローニとインワードら(2007年)に基づくゴキブリ目（ゴキブリ科とシロアリ科）の進化関係は、2019年に多数の学識者によって修正され、クラドグラムに図示されている^[7]^[8]。

このクラドグラムは、アリエノプテラ科をカマキリ目の姉妹群として示している。当初は独自のアリエノプテラ目で、絶滅したゴキブリのウメノコレウス上科に一旦組み入れられたものの^[9]、近年の分析ではアリエノプテラ科とウメノコレウス上科をゴキブリ目に含めないで、網翅上目の姉妹分類に配置している^[10]。

網翅上目

Manipulatoridae (絶滅)

	アリエノプテラ科 (絶滅)

	カマキリ目

ゴキブリ目^{[注釈 3]}

オオゴキブリ亜目

チャバネゴキブリ科
(Ectobiidae)

ヒメゴキブリ亜科
(Pseudophyllodromiinae)

	旧チャバネゴキブリ亜科 (Blattellinae)

	オオゴキブリ科 (Blaberidae)

Solumblattodea

ムカシゴキブリ亜目

	ムカシゴキブリ科 (Corydiidae)

	ホラアナゴキブリ科 (Nocticolidae)

ゴキブリ亜目

ゴキブリ上科

	Tryonicidae科

	ゴキブリ科 (Blattidae)

Kittrickea

Lamproblattidae科

Xylophagodea

キゴキブリ科

キゴキブリ亜科
(Cryptocercidae)

シロアリ科

ムカシシロアリ亜科
(Mastotermitidae)

Euisoptera

	Archotermopsidae亜科

	シュウカクシロアリ亜科 (Hodotermitidae)

Stolotermitidae亜科

レイビシロアリ亜科
(Kalotermitidae)

Stylotermitidae亜科

ミゾガシラシロアリ亜科
(Rhinotermitidae)

	ノコギリシロアリ亜科 (Serritermitidae)

	シロアリ亜科 (Termitidae)

多様性

世界中の至る所でゴキブリは4,000種以上発見されており、各大陸に固有の在来種がいる。これらの大半が雑食性または腐食性であり、特に落ち葉や腐った木の中、鬱蒼と茂る草木、樹皮の割れ目やその下の空洞、丸太の下、ごみの中といった生息範囲に住んでいる。樹上生活型もいれば暗所生活型もおり、水生型もいる^[11]。建物内の人間近辺で生活する種は少数だが、彼らによって世界中に繁殖したことで、害虫とみなされている^[12]。一部の種はセルロースの消化を促進する共生生物を腸に抱えているが、多くの種が共生生物とは別にセルロースを消化する酵素も産生している^[13]。

シロアリは南極以外の全大陸で3,000種以上が発見されている。最多の種がいるのはアフリカで、ヨーロッパや北米に生息する種は比較的少ない。彼らもまた腐食性でその多くが木を食べており、セルロースを消化するための共生原生動物を抱えた特殊な腸である。シロアリは体が柔らかく、できる限り視認されないようにしている。彼らは大まかに湿木、乾木、地下で生活するものに分けられる。一般に、湿木シロアリは針葉樹林を、乾木シロアリは広葉樹林を、地下シロアリは多種多様な場所を生息地としている^[14]。

特徴

シロアリは、コロニーに生息する真社会性昆虫である。彼らにはカースト（階級）があり、各コロニーに王と女王そして多くの非生殖な働きアリがいる。働きアリは、生殖虫と発育途上の幼虫を養うためコロニーに持ち帰る餌探しをする^[15]。ゴキブリも社会性昆虫ではあるがコロニー生活をしておらず、全ての成虫が繁殖可能である。集合型の種もいれば、集合傾向を見せるものや子孫を親が育てる種もいる^[16]。

ゴキブリとシロアリには、彼らが共通祖先から受け継いだと思われる顕著な行動類似点がある。これらには、暖かく湿った場所を好む習性、走触性、穴居性、衛生的行動、食物共有、共食い、排泄行動、振動でのコミュニケーション、親族認識、足跡辿り、仲間を舐めて掃除する（対他グルーミング）、血族の世話（子育て）、触角の手入れ、特定の交配行動などが含まれる^[17]。これら行動の一部に、シロアリと幼虫ゴキブリ間で顕著な類似点があるが、成虫ゴキブリだと当てはまらない。真社会性の進化過程において、各個体が結集したいという願望を共有する必要がある。幼虫ゴキブリには集合傾向があり、成虫は多くの場合縄張りや資源を巡ってお互い積極的に競争する。同様に、シロアリのコロニーではお互いをグルーミングしあう事が一般的だが、この対他グルーミングはゴキブリの実行する一般的行動ではなく、とはいえ個々が自分自身を手入れしている^[17]。この例外種がキゴキブリ属で、彼らは他のゴキブリ達よりもシロアリと密接な関連があると見なされている^[18]。こちらは幼虫が相互グルーミングをし、成虫もまた同様である^[17]。

両グループはまた、自分達の社会環境の影響を受ける。1匹でいる単独シロアリは、2匹一緒でいる場合よりも活力レベルが有意に低下して寿命が短くなる。孤立したゴキブリ幼虫は、集団化している個体の半分にも満たないペースで成長し、生存期待性も乏しい^[17]。

シロアリとゴキブリはどちらも糞食性で糞塊消費を行なっている。成虫シロアリの働きアリは餌探しをして餌を巣に運び込み、そこで餌を口または肛門で生殖虫および幼虫に渡し、栄養素の全てをこのやり方で提供する。幼虫ゴキブリは餌探しが不得意であり、自分の棲み家から出ることは滅多に無く、より大きな個体の糞塊を食べることで大部分の栄養素を採っている。ここから彼らは自分達の食料を消化するのに役立つ微生物叢を取得する^[17]。

キゴキブリ属とシロアリの原始的な種マストテルメス・ダーウィニエンシス (Mastotermes darwiniensis) は、メスの特定生殖構造の部分的な起源、そして双方ともゴキブリに典型的な卵鞘に卵子を産む、という事実を共有する^[19]。

ゴキブリ

詳細は「ゴキブリ」を参照

現生ゴキブリに似た節足動物は、石炭紀の昆虫社会を支配していた。現生ゴキブリは中生代三畳紀から出現したものである^[20]。この昆虫群は夜行性で、食料と水を採餌するのは夜だけである。この個体群はカースト分化しないため、真社会性とは見なされていない。とはいえ彼らは依然として社会性生物であり、100万匹以上の個体に及ぶ集団での生活もできる^[21]。

ゴキブリは背外側が扁平かつ概ね楕円形で、胸部と後頭部を覆う盾状の甲板（前胸背板）がある。触角はよく発達しており長細く、口の部分は齧るのに適したものである。通常は前翼が堅くて後翼が膜状である。脚の基節は扁平で、腿節が折りたたまれた際はきれいに収めることが可能である。ゴキブリは不完全変態である。蛹段階がなく、幼虫は大きさと翼がない点を除けば成虫と似ている^[22]。雌ゴキブリは卵鞘として知られる卵を作り、種にもよるが12-25個の卵をどこにでも産み付ける^[23]。一部の種では子育て行動が見られるが、それ以外の種は幼虫に何も施さない。大部分の種は成虫になるまで3-4ヶ月かかるが^[24]、一部の種では幼虫段階が数年間続くものもいる。幼虫段階の継続時間に影響を与える主要因は、季節差と食事で摂取する栄養量である^[25]。

伝達方法

大半の昆虫種と同様、ゴキブリはフェロモン放出によってお互いにコミュニケーションを図る。また、ゴキブリが体から炭化水素を放出して、触角の相互作用を介して移動することも発見されている。これらの炭化水素はゴキブリのコミュニケーションに一役買っており、その個体が自分の親族であるか否かを察知することさえ可能で、近親交配を防いでいる。実験室で隔離されたゴキブリには極端行動に影響が見られ、これらの炭化水素やフェロモンによる刺激反応が少なく、これらのコミュニケーション技能の開発には恐らく集団環境が必要だと示唆されている^[21]。

シロアリ

詳細は「シロアリ」を参照

シロアリの種全てがそれなりに真社会性であり、コロニーの蟻たちはカースト分化されている。シロアリ個体群の大部分は、採餌、営巣、グルーミング、子育てを担当する働きアリで構成されている。兵アリには捕食者や他の競争相手から巣を守る責任がある。兵アリは下顎が高度に発達しているほか、捕食者に有害な複数の防御物質を分泌できる多くの外分泌腺がある^[26]。

通常、王と女王だけがシロアリ生殖をおこない、他のカーストはすべて非生殖である。生殖には、基本（王と女王による）生殖と補充生殖の2段階がある。基本生殖で生まれたアリ達はコロニー作りを担当し、複眼、翼の名残り（脱皮前にかつて羽があった場所の斑点）などの特徴がある。補充生殖虫は通常、基本生殖虫の片方が死亡した時にコロニー内より発現する^[27]^[28]。

補充生殖虫は、翼の有無がいずれの状況でも発現しうる。補充生殖虫が有翼の場合は親のコロニーから飛び去って雌雄2匹で新たなコロニーを作るが、翼のない場合彼らは親のコロニー内に残る。これら2形態が生じる発達経路の違いは、一般的にコロニー内の食物の入手可能性またはコロニー内での様々なレベルの寄生に依存する^[28]。特定のニンフが発達するカーストは、脱皮間の後期で明確になってくる。この時期に、潜在的な生殖虫は性腺領域が大きくなり始める^[26]。

シロアリのコロニーは、樹皮か塚状または地下の場合もあり、原始的なシロアリは切り株や丸太など密閉構造の内部に営巣する。巣の構造は主にシロアリ自身の排泄物で、他の材料は野菜繊維を噛み砕いたもの（弱い段ボール状の防水性物質になる）と土（強度はあるが水の浸食を受ける）である。

蟻塚は密閉通路によって地面と繋がっている。大半の種の働きアリは体が柔らかくて目は見えず、囲われた巣内で一生涯を暮らし、野外に出ることはない^[29]^{[注釈 4]}。巣は複雑な構造で、トンネルは採餌エリアと繋がっている^[29]。アフリカではシロアリの塚が高さ9m×直径30mになることもあり、繁殖力を高めたエリアを作ったり、小さな生物多様性ホットスポットを作ったりもする^[31]^[32]。

脚注

注釈

^ 全シロアリ亜科、全6つのゴキブリ科（亜科は29のうち22）、また群外としてカマキリ目15のうち5つ、を含む代表的な種。
^ ムカシゴキブリ科は現在Corydiidae（旧称がPolyphagidae）。チャバネゴキブリ科は現在Ectobiidae（旧称がBlattellidae）^[5]^[6]。
^ ゴキブリやシロアリは分類（目、亜目、上科、科、亜科など）に表記ゆれがあり、この図では基準を「ゴキブリ目」として他を割り当てた。
^ Trinervitermes trinervoidesはこの例外にあたり、夜間に職蟻は地表にて小集団で餌探しをし、捕食者を抑止するために有害なテルペンを分泌する^[30]。

出典

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外部リンク

ゴキブリ目 - 公益財団法人文化財虫菌害研究所

[3] 全シロアリ亜科、全6つのゴキブリ科（亜科は29のうち22）、また群外としてカマキリ目15のうち5つ、を含む代表的な種。

[8] ムカシゴキブリ科は現在Corydiidae（旧称がPolyphagidae）。チャバネゴキブリ科は現在Ectobiidae（旧称がBlattellidae）^[5]^[6]。

[13] ゴキブリやシロアリは分類（目、亜目、上科、科、亜科など）に表記ゆれがあり、この図では基準を「ゴキブリ目」として他を割り当てた。

[34] Trinervitermes trinervoidesはこの例外にあたり、夜間に職蟻は地表にて小集団で餌探しをし、捕食者を抑止するために有害なテルペンを分泌する^[30]。

[1] “ITIS Standard Report Page: Blattodea”. www.itis.gov. 2018年5月10日閲覧。

[2] シロアリ駆除.JP「シロアリの生態」、株式会社ダストン、2021年3月閲覧

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[22] Resh, Vincent H.; Cardé, Ring T. (2009). Encyclopedia of Insects. Academic Press. p. 109. ISBN 978-0-08-092090-0

[TKBA-23] 町田龍一郎、藤田麻里「ゴキブリの起源は意外と新しかった！～ゴキブリ類の系統進化の再構築～」筑波大学菅平高原実験所,Proceedings of the Royal Society B (2019) doi.org/10.1098/rspb.2018.2076.

[:4-24] Lihoreau, M; Costa, J.T.; Rivault, C (2012). “The social biology of domiciliary cockroaches: colony structure, kin recognition and collective decisions”. Insectes Sociaux 59 (4): 445-452. doi:10.1007/s00040-012-0234-x.

[Bell-25] Bell, William J.; Roth, Louis M.; Nalepa, Christine A. (2007). Cockroaches: Ecology, Behavior, and Natural History. JHU Press. pp. xii, 1. ISBN 978-0-8018-8616-4

[Guide-26] “Order Blattodea: Cockroaches and Termites”. BugGuide. 2015年8月27日閲覧。

[IIBD-27] Hoell, H. V.; Doyen, J. T.; Purcell, A. H. (1998). Introduction to Insect Biology and Diversity (2nd ed.). Oxford University Press. pp. 362-364. ISBN 0-19-510033-6

[28] Park, Yung Chul; Grandcolas, Philippe; Choe, Jae Chun (July 1, 2002). “Colony Composition, Social Behavior and Some Ecological Characteristics of the Korean Wood-Feeding Cockroach (Cryptocercus kyebangensis)”. Zoological Science 19 (10): 1133-1139. doi:10.2108/zsj.19.1133. PMID 12426475.

[:2-29] Rose, T.C.; Ediger, E.F.; Lehman-Schletewitz, J; McClane, N.W.; Schweigert, K.C.; Alzweideh, S; Zeismann, J (2015). “Life history and development‐a framework for understanding developmental plasticity in lower termites”. Development Genes and Evolution.

[30] 小口晃平、杉目康広、下地博之、林良信、三浦徹「シロアリにおける生殖虫分化：異性による生理調節機構の解明」、東京大学大学院、2020年6月10日。
この補充生殖虫とは、シロアリ駆除サイト等で「副女王アリ、副王アリ」と呼ばれるもの。必ずしも常にあるカーストではなく、生殖虫が失われると普段非生殖の働きアリが繁殖個体へと脱皮する「補充生殖虫分化」が起こる。

[:1-31] Korb, J.; Hartfelder, K. (2008). “Life history and development‐a framework for understanding developmental plasticity in lower termites”. Biological Reviews 83 (3): 295-313. doi:10.1111/j.1469-185X.2008.00044.x. PMID 18979593.

[Resh-32] Resh, Vincent H.; Cardé, Ring T. (2009). Encyclopedia of Insects. Academic Press. pp. 536-537. ISBN 978-0-08-092090-0

[33] Adam, R.A.; Mitchell, J.D.; van der Westhuizen, M.C. (2008). “Aspects of foraging in the harvester termite, Trinervitermes trinervoides (Sj?stedt) (Termitidae: Nasutitermitinae)”. African Entomology 16 (2): 153?161. doi:10.4001/1021-3589-16.2.153.

[:0-35] Jouquet, Pascal; Dauber, Jens; Lagerlöf, Jan; Lavelle, Patrick; Lepage, Michel (2005). “Soil invertebrates as ecosystem engineers: Intended and accidental effects on soil and feedback loops”. Applied Soil Ecology 32 (2): 153-164. doi:10.1016/j.apsoil.2005.07.004.

[36] Pennisi, Elizabeth (2015). “Africa's soil engineers: Termites”. Science 347 (6222): 596?597. Bibcode: 2015Sci...347..596P. doi:10.1126/science.347.6222.596. PMID 25657224.

[1]

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[注釈 2]

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[注釈 3]

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[13]

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[20]

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[26]

[27]

[28]

[29]

[注釈 4]

[31]

[32]

[5]

[6]

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+{{翻訳直後|1=[[:en:Blattodea]]05:52, 27 February 2021‎ |date=2020年8月}}
-#REDIRECT[[ゴキブリ]]
+{{生物分類表
+| 名称 = ゴキブリ目
+| fossil_range = {{fossilrange|358.9|0}} [[石炭紀]] - 現在
+| 画像 = [[ファイル:Domino cockroach Therea petiveriana.jpg|250px|]]
+| 画像キャプション = ドミノゴキブリ(''Therea petiveriana'')
+|省略 = 昆虫綱
+| 上目 = [[網翅上目]] {{sname||Dictyoptera}}
+| 目 = '''ゴキブリ目''' {{sname|Blattodea}}
+| authority = [[Carl Brunner von Wattenwyl|Wattenwyl]], 1882
+| 下位分類名 = 科
+| 下位分類 =
+* [[ゴキブリ科]]
+* [[シロアリ|シロアリ科]]
+|シノニム =
+* Blattaria （ゴキブリのみを指す）
+}}
+'''ゴキブリ目''' （ゴキブリもく、英:Blattodea）は、[[ゴキブリ科]]と[[シロアリ|シロアリ科]]を含む[[昆虫]]の[[目 (分類学)]]である<ref>{{cite web|url=https://www.itis.gov/servlet/SingleRpt/SingleRpt?search_topic=TSN&search_value=914219|title=ITIS Standard Report Page: Blattodea|website=www.itis.gov|access-date=10 May 2018}}</ref>。かつてシロアリは別分類(等翅目,Isoptera)と考えられていたが、[[遺伝子]]や[[分子]]的な証拠がゴキブリとの親密な関係を示唆している。ゴキブリ目と[[カマキリ目]]は現在どちらも[[網翅上目]]の一部と考えられている。ゴキブリ目には、約500[[属 (分類学)|属]]4400種のゴキブリと約300属3000種のシロアリが含まれる。
+シロアリが[[コロニー]]に生息する淡い色で柔らかい体の[[真社会性]]昆虫であるのに対し、ゴキブリは暗い色（多くは茶色）で体が[[スクレロチン]]硬化した個別性昆虫である。コロニーの中で、シロアリには成熟した雌雄の生殖虫である王と女王、多数の非生殖虫である働きアリと兵アリによる階級（通称カースト）体系がある<ref>シロアリ駆除.JP「[https://www.shiroarikujo.jp/ecology/ シロアリの生態]」、株式会社ダストン、2021年3月閲覧</ref>。ゴキブリはコロニー型ではないが全ての成虫が繁殖可能なため集合する習性があり、前社会性とみなされる場合もある。このほか両グループの類似点としては、様々な社会的行動、足跡を辿る習性、親族認識、コミュニケーション方法などがある。
+==系統と進化==
+[[File: Blattoidae - Fossil.JPG|thumb|left|フランスの[[石炭紀]]地層から出土したゴキブリの化石]]
+種{{Refnest|group="注釈"|全シロアリ亜科、全6つのゴキブリ科（亜科は29のうち22）、また群外としてカマキリ目15のうち5つ、を含む代表的な種。}}を対象に行なったDNA配列の[[分岐学]]解析では、シロアリがゴキブリ目の内群に入ることや、[[キゴキブリ]]{{enlink|Cryptocercus}}がシロアリの姉妹群であることが示された。カマキリはゴキブリ目の姉妹群であることが示された<ref>{{cite journal |author1=Inward, Daegan |author2=Beccaloni, George |author3=Eggleton, Paul |year=2007 |title=Death of an order: a comprehensive molecular phylogenetic study confirms that termites are eusocial cockroaches |journal=Biology Letters |volume=3 |issue=3 |doi=10.1098/rsbl.2007.0102 |pmid=17412673 |pages=331-5 |pmc=2464702}}</ref>。またキゴキブリは、腸内細菌種などの特性をシロアリと共有している<ref>{{cite journal |author=Djernæs, M. |year=2012 |title=Phylogeny of cockroaches (Insecta, Dictyoptera, Blattodea), with placement of aberrant taxa and exploration of out-group sampling |journal=Systematic Entomology |volume=37 |issue=1 |pages=65-83 |doi=10.1111/j.1365-3113.2011.00598.x |s2cid=84271862 }}</ref>。
+ゴキブリのLamproblattidaeとTryonicidae<!--いずれも和名確認できず-->という科は[[ゴキブリ亜目]]{{enlink|Blattoidea}}内に配置されている。[[ムカシゴキブリ]]科と[[チャバネゴキブリ]]科についてはラテン[[学名]]が刷新されている{{Refnest|group="注釈"|ムカシゴキブリ科は現在Corydiidae（旧称がPolyphagidae）。チャバネゴキブリ科は現在Ectobiidae（旧称がBlattellidae）<ref>{{Cite book |title=Animal biodiversity: An outline of higher-level classification and survey of taxonomic richness |last1=Beccaloni |first1=G. W. |last2=Eggleton |first2=P. |work=Zootaxa |publisher=Magnolia Press |year=2011 |isbn=978-1-86977-850-7 |editor-last=Zhang |editor-first=Z.-Q. |volume=3148 |pages=199-200 |chapter=Order Blattodea Brunner von Wattenwyl, 1882 |issn=1175-5334 |chapter-url=http://www.mapress.com/zootaxa/2011/f/zt03148p200.pdf|doi=10.11646/zootaxa.3148.1.37 }}</ref><ref>{{cite journal |title=・Alienoptera - A new insect order in the roach-mantodean twilight zone |journal=Gondwana Research|volume=39|pages=317-326 |year=2016|last1=Bai|first1=Ming|last2=Beutel|first2=Rolf Georg |last3=Klass |first3=Klaus-Dieter |last4=Zhang |first4=Weiwei |last5=Yang|first5=Xingke |last6=Wipfler |first6=Benjamin |doi=10.1016/j.gr.2016.02.002|bibcode=2016GondR..39..317B}}</ref>。}}。
+エッグルトンとベッカローニとインワードら(2007年)に基づくゴキブリ目（ゴキブリ科とシロアリ科）の[[進化]]関係は、2019年に<!--エヴァンジェリスタほか-->多数の学識者によって修正され、[[クラドグラム]]に図示されている<ref name="Eggleton, P. 2007">{{cite journal |author1=Eggleton P. |author2=Beccaloni G. |author3=Inward D. | year=2007 | title=Invited reply: Response to Lo et al. | journal=Biology Letters | volume=3 | issue=5| pages=564-565 | doi=10.1098/rsbl.2007.0367 |pmc=2391203 }}</ref><ref name="Evangelista 2019">{{cite journal |last1=Evangelista |first1=D.A.|last2=Wipfler |first2=B. |last3=O. |first3=Bethoux |last4=Donath |first4=A. |last5=Fujita |first5=M. |last6=Kohli |first6=M.K. |last7=Legendre |first7=F. |last8=Liu |last9=Machida |last10=Misof |last11=Peters |last12=Podsiadlowski |last13=Rust |last14=Schuette |last15=Tollenaar |last16=Ware |last17=Wappler |last18=Zhou |last19=Meusemann |last20=Simon |title=An integrative phylogenomic approach illuminates the evolutionary history of cockroaches and termites (Blattodea) |journal=Proc. R. Soc. B |date=23 January 2019 |volume=286 |issue=1895 |doi=10.1098/rspb.2018.2076|doi-access=free }}</ref>。
+このクラドグラムは、[[アリエノプテラ]]科をカマキリ目の姉妹群として示している。当初は独自のアリエノプテラ目で、<!--ヴルシャンスキーらによって-->絶滅したゴキブリの[[ウメノコレウス]]上科に一旦組み入れられたものの<ref name="Vrsansky Bechly 2018">{{cite journal |last1=Vršanský |first1=Peter |last2=Bechly |first2=Günter |last3=Zhang |first3=Qingqing |last4=Jarzembowski |first4=Edmund A. |last5=Mlynský |first5=Tomáš |last6=Šmídová |first6=Lucia |last7=Barna |first7=Peter |last8=Kúdela |first8=Matúš |last9=Aristov |first9=Danil |last10=Bigalk |first10=Sonia |last11=Krogmann |first11=Lars |last12=Li |first12=Liqin |last13=Zhang |first13=Qi |last14=Zhang |first14=Haichun |last15=Ellenberger |first15=Sieghard |last16=Müller |first16=Patrick |last17=Gröhn |first17=Carsten |last18=Xia |first18=Fangyuan |last19=Ueda |first19=Kyoichiro |last20=Vďačný |first20=Peter |last21=Valaška |first21=Daniel |last22=Vršanská |first22=Lucia |last23=Wang |first23=Bo |title=Batesian insect-insect mimicry-related explosive radiation of ancient alienopterid cockroaches |journal=Biologia |volume=73 |issue=10 |year=2018 |pages=987-1006 |issn=0006-3088 |doi=10.2478/s11756-018-0117-3}}</ref>、近年の分析ではアリエノプテラ科とウメノコレウス上科をゴキブリ目に含めないで、[[網翅上目]]の姉妹分類に配置している<ref>{{Cite journal|last1=Liuo |first1=C.-H. |last2=Beutel |first2=R. G. |last3=Thomson |first3=U. R |last4=Zheng |first4=D.-R. |last5=Li |first5=J.-H. |last6=Zhao |first6=X.-Y. |last7=Zhang |first7=H.-C. |last8=Wang |first8=B. |title=Beetle or roach: systematic position of the enigmatic Umenocoleidae based on new material from Zhonggou Formation in Jiuquan, Northwest China, and a morphocladistic analysis |year=2021 |journal=Palaeoworld |volume=in press |doi=10.1016/j.palwor.2021.01.003 }}</ref>。
+{{clade| style=font-size:75%;line-height:75%
+|label1=[[網翅上目]]
+|1={{clade
+   |1={{clade
+      |1=[[Manipulator (insect)|Manipulatoridae]] (絶滅)
+      |2={{clade
+         |1=[[アリエノプテラ]]科 (絶滅)
+         |2=[[カマキリ]]目
+         }}
+      }}
+   |label2='''ゴキブリ目'''{{Refnest|group="注釈"|ゴキブリやシロアリは分類（目、亜目、上科、科、亜科など）に表記ゆれがあり、この図では基準を「ゴキブリ目」として他を割り当てた。}}
+   |2={{clade
+      |label1=オオゴキブリ亜目
+      |1={{clade
+         |1=[[チャバネゴキブリ]]科<br>(Ectobiidae)
+         |2={{clade
+            |1=[[ヒメゴキブリ]]亜科<br>(Pseudophyllodromiinae)
+            |2={{clade
+               |1=旧チャバネゴキブリ亜科<br>(Blattellinae)
+               |2=[[オオゴキブリ]]科<br>(Blaberidae)
+               }}
+            }}
+         }}
+      |label2=[[Solumblattodea]]
+      |2={{clade
+         |label1=ムカシゴキブリ亜目
+         |1={{clade
+            |1=[[ムカシゴキブリ]]科<br>(Corydiidae)
+            |2=[[ホラアナゴキブリ]]科<br>(Nocticolidae)
+            }}
+         |label2=ゴキブリ亜目
+         |2={{clade
+            |label1=ゴキブリ上科
+            |1={{clade
+               |1=[[Tryonicidae]]科
+               |2=[[ゴキブリ]]科<br>(Blattidae)
+               }}
+            |label2=[[Kittrickea]]
+            |2={{clade
+               |1=[[Lamproblattidae]]科
+               |label2=[[Xylophagodea]]
+               |2={{clade
+                  |label1=[[キゴキブリ]]科
+                  |1=キゴキブリ亜科<br>(Cryptocercidae)
+                  |label2=[[シロアリ]]科
+                  |2={{clade
+                     |1=ムカシシロアリ亜科<br>(Mastotermitidae)
+                     |label2=[[Euisoptera]]
+                     |2={{clade
+                        |1={{clade
+                           |1=[[Archotermopsidae]]亜科
+                           |2=シュウカクシロアリ亜科<br>(Hodotermitidae)
+                           }}
+                        |2={{clade
+                           |1=[[Stolotermitidae]]亜科
+                           |2={{clade
+                              |1=レイビシロアリ亜科<br>(Kalotermitidae)
+                              |2={{clade
+                                 |1=[[Stylotermitidae]]亜科
+                                 |2={{clade
+                                    |1=ミゾガシラシロアリ亜科<br>(Rhinotermitidae)
+                                    |2={{clade
+                                       |1=ノコギリシロアリ亜科<br>(Serritermitidae)
+                                       |2=シロアリ亜科<br>(Termitidae)
+                                       }}
+                                    }}
+                                 }}
+                              }}
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+            }}
+         }}
+      }}
+   }}
+}}
+==多様性==
+世界中の至る所でゴキブリは4,000種以上発見されており、各大陸に固有の在来種がいる。これらの大半が[[雑食]]性または[[腐食動物|腐食]]性であり、特に落ち葉や腐った木の中、鬱蒼と茂る草木、樹皮の割れ目やその下の空洞、丸太の下、ごみの中といった生息範囲に住んでいる。樹上生活型もいれば暗所生活型もおり、水生型もいる<ref name=Bell2007>{{cite book|author1=Bell, William J. |author2= Roth, Louis M.|author3= Nalepa, Christine A. |title=Cockroaches: Ecology, Behavior, and Natural History |url=https://books.google.com/books?id=R7eVRP08kasC&pg=PA55 |year=2007 |publisher=JHU Press |isbn=978-0-8018-8616-4 |pages=55-58}}</ref>。建物内の人間近辺で生活する種は少数だが、彼らによって世界中に繁殖したことで、[[害虫]]とみなされている<ref name=Costa>{{cite book|author=Costa, James T.|title=The Other Insect Societies |url=https://books.google.com/books?id=PYRFDrZs9QAC&pg=PA147 |year=2006 |publisher=Harvard University Press |isbn=978-0-674-02163-1 |pages=147-148}}</ref>。一部の種は[[セルロース]]の消化を促進する共生生物を腸に抱えているが、多くの種が共生生物とは別にセルロースを消化する酵素も産生している<ref>{{cite journal |author=Slaytor, Michael |year=1992 |title=Cellulose digestion in termites and cockroaches: What role do symbionts play? |journal=Comparative Biochemistry and Physiology B |volume=103 |issue=4 |pages=775?784 |doi=10.1016/0305-0491(92)90194-V}}</ref>。
+シロアリは[[南極]]以外の全大陸で3,000種以上が発見されている。最多の種がいるのはアフリカで、ヨーロッパや北米に生息する種は比較的少ない。彼らもまた腐食性でその多くが木を食べており、セルロースを消化するための共生[[原生動物]]を抱えた特殊な腸である。シロアリは体が柔らかく、できる限り視認されないようにしている。彼らは大まかに湿木、乾木、地下で生活するものに分けられる。一般に、湿木シロアリは針葉樹林を、乾木シロアリは広葉樹林を、地下シロアリは多種多様な場所を生息地としている<ref name=TermiteBiology>{{cite web|title=Termite Biology and Ecology|url=http://www.chem.unep.ch/pops/termites/termite_ch2.htm|work=Division of Technology, Industry and Economics Chemicals Branch|publisher=United Nations Environment Programme|access-date=15 March 2017|url-status=dead|archive-url=https://web.archive.org/web/20141110052539/http://www.chem.unep.ch/pops/termites/termite_ch2.htm|archive-date=10 November 2014}}</ref>。
+==特徴==
+シロアリは、コロニーに生息する[[真社会性]]昆虫である。彼らにはカースト（階級）があり、各コロニーに王と女王そして多くの非生殖な働きアリがいる。働きアリは、生殖虫と発育途上の幼虫を養うためコロニーに持ち帰る餌探しをする<ref name=Horwood>{{cite techreport |first1=M.A.|last1=Horwood|first2=R.H. |last2=Eldridge |title=Termites in New South Wales Part 1. Termite biology |institution=Forest Resources Research |year=2005|url=http://www.dpi.nsw.gov.au/__data/assets/pdf_file/0016/252007/Termites-Part-1--Termite-biology.pdf|issn=0155-7548}}</ref>。ゴキブリも社会性昆虫ではあるがコロニー生活をしておらず、全ての成虫が繁殖可能である。集合型の種もいれば、集合傾向を見せるものや子孫を親が育てる種もいる<ref name=Costa2006>{{cite book |author=Costa, James T. |title=The Other Insect Societies |url=https://books.google.com/books?id=PYRFDrZs9QAC&pg=PA148 |year=2006 |publisher=Harvard University Press |isbn=978-0-674-02163-1 |page=148}}</ref>。
+ゴキブリとシロアリには、彼らが共通祖先から受け継いだと思われる顕著な行動類似点がある。これらには、暖かく湿った場所を好む習性、[[走性#分類|走触性]]、穴居性、衛生的行動、食物共有、[[共食い]]、排泄行動、振動でのコミュニケーション、親族認識、足跡辿り、仲間を舐めて掃除する（対他[[グルーミング]]）、血族の世話（子育て）、触角の手入れ、特定の交配行動などが含まれる<ref name=Abe>{{cite book|author1=Abe, Y.|author2=Bignell, David Edward|author3=Higashi, T.|title=Termites: Evolution, Sociality, Symbioses, Ecology|url=https://books.google.com/books?id=pg3oCAAAQBAJ&pg=PA61 |year=2014 |publisher=Springer |isbn=978-94-017-3223-9 |pages=61-63}}</ref>。これら行動の一部に、シロアリと幼虫ゴキブリ間で顕著な類似点があるが、成虫ゴキブリだと当てはまらない。真社会性の進化過程において、各個体が結集したいという願望を共有する必要がある。幼虫ゴキブリには集合傾向があり、成虫は多くの場合縄張りや資源を巡ってお互い積極的に競争する。同様に、シロアリのコロニーではお互いをグルーミングしあう事が一般的だが、この対他グルーミングはゴキブリの実行する一般的行動ではなく、とはいえ個々が自分自身を手入れしている<ref name=Abe/>。この例外種が[[キゴキブリ]]属で、彼らは他のゴキブリ達よりもシロアリと密接な関連があると見なされている<ref>{{cite journal |author=Djernæs, M. |author2=Klass, Klaus-Dieter |author3=Picker, Mike D. |author4=Damgaard, Jakob |year=2011 |title=Phylogeny of cockroaches (Insecta, Dictyoptera, Blattodea), with placement of aberrant taxa and exploration of out-group sampling |journal=Systematic Entomology |volume=37 |issue=1 |pages=65-83 |doi=10.1111/j.1365-3113.2011.00598.x |s2cid=84271862 }}</ref>。こちらは幼虫が相互グルーミングをし、成虫もまた同様である<ref name=Abe/>。
+両グループはまた、自分達の社会環境の影響を受ける。1匹でいる単独シロアリは、2匹一緒でいる場合よりも活力レベルが有意に低下して寿命が短くなる。孤立したゴキブリ幼虫は、集団化している個体の半分にも満たないペースで成長し、生存期待性も乏しい<ref name=Abe/>。
+シロアリとゴキブリはどちらも糞食性で糞塊消費を行なっている。成虫シロアリの働きアリは餌探しをして餌を巣に運び込み、そこで餌を口または肛門で生殖虫および幼虫に渡し、栄養素の全てをこのやり方で提供する。幼虫ゴキブリは餌探しが不得意であり、自分の棲み家から出ることは滅多に無く、より大きな個体の糞塊を食べることで大部分の栄養素を採っている。ここから彼らは自分達の食料を消化するのに役立つ[[微生物叢]]を取得する<ref name=Abe/>。
+キゴキブリ属とシロアリの原始的な種マストテルメス・ダーウィニエンシス{{enlink|Mastotermes darwiniensis}}は、メスの特定生殖構造の部分的な起源、そして双方ともゴキブリに典型的な[[卵鞘]]に卵子を産む、という事実を共有する<ref>{{cite book|author1=Resh, Vincent H.|author2=Cardé, Ring T.|title=Encyclopedia of Insects |url=https://books.google.com/books?id=Jk0Hym1yF0cC&pg=PA109 |year=2009|publisher=Academic Press |isbn=978-0-08-092090-0 |page=109}}</ref>。
+==ゴキブリ==
+[[File:American-cockroach.jpg|thumb|[[ワモンゴキブリ]]]]
+{{main|ゴキブリ}}
+現生ゴキブリに似た[[節足動物]]は、[[石炭紀]]の昆虫社会を支配していた。現生ゴキブリは[[中生代]][[三畳紀]]から出現したものである<!--英語版出典（2007)よりも新しい研究（2019,日本語)で「三畳紀」と判明。）--><ref name=TKBA>町田龍一郎、藤田麻里「[https://www.sugadaira.tsukuba.ac.jp/activity/studies/study_abst.html ゴキブリの起源は意外と新しかった！～ゴキブリ類の系統進化の再構築～]」[[筑波大学]]菅平高原実験所,Proceedings of the Royal Society B (2019) doi.org/10.1098/rspb.2018.2076.</ref>。この昆虫群は夜行性で、食料と水を採餌するのは夜だけである。この個体群はカースト分化しないため、真社会性とは見なされていない。とはいえ彼らは依然として社会性生物であり、100万匹以上の個体に及ぶ集団での生活もできる<ref name=":4">{{Cite journal|last1=Lihoreau|first1=M|last2=Costa|first2=J.T. |last3=Rivault|first3=C|date=2012 |title=The social biology of domiciliary cockroaches: colony structure, kin recognition and collective decisions |journal=Insectes Sociaux|volume=59|issue=4|pages=445-452|doi=10.1007/s00040-012-0234-x|s2cid=10205316}}</ref>。
+ゴキブリは背外側が扁平かつ概ね楕円形で、胸部と後頭部を覆う盾状の甲板（前胸背板）がある。触角はよく発達しており長細く、口の部分は齧るのに適したものである。通常は前翼が堅くて後翼が膜状である。脚の基節は扁平で、腿節が折りたたまれた際はきれいに収めることが可能である。ゴキブリは[[変態#不完全変態|不完全変態]]である。蛹段階がなく、幼虫は大きさと翼がない点を除けば成虫と似ている<ref name="Bell">{{cite book |author1 = Bell, William J.|author2 = Roth, Louis M. |author3 = Nalepa, Christine A. |title = Cockroaches: Ecology, Behavior, and Natural History|url = https://books.google.com/books?id=R7eVRP08kasC|year = 2007|publisher = JHU Press|isbn = 978-0-8018-8616-4|pages = ''xii'', 1}}</ref>。雌ゴキブリは卵鞘として知られる卵を作り、種にもよるが12-25個の卵をどこにでも産み付ける<ref name=Guide>{{cite web |url=http://bugguide.net/node/view/342386 |title=Order Blattodea: Cockroaches and Termites  |publisher=BugGuide |access-date=27 August 2015}}</ref>。一部の種では子育て行動が見られるが、それ以外の種は幼虫に何も施さない。大部分の種は成虫になるまで3-4ヶ月かかるが<ref name=IIBD>{{cite book |author1=Hoell, H. V. |author2=Doyen, J. T. |author3=Purcell, A. H. |year=1998 |title=Introduction to Insect Biology and Diversity |edition=2nd |publisher=Oxford University Press |pages=362-364 |isbn=0-19-510033-6}}</ref>、一部の種では幼虫段階が数年間続くものもいる。幼虫段階の継続時間に影響を与える主要因は、季節差と食事で摂取する栄養量である<ref>{{cite journal | last1 = Park | first1 = Yung Chul| last2 = Grandcolas| first2 = Philippe| last3 = Choe| first3 = Jae Chun| date = July 1, 2002| title = Colony Composition, Social Behavior and Some Ecological Characteristics of the Korean Wood-Feeding Cockroach (Cryptocercus kyebangensis)| journal =  Zoological Science| doi = 10.2108/zsj.19.1133| pmid = 12426475| volume=19 | issue = 10| pages=1133-1139| s2cid = 32792216}}</ref>。
+=== 伝達方法===
+大半の昆虫種と同様、ゴキブリは[[フェロモン]]放出によってお互いにコミュニケーションを図る。また、ゴキブリが体から[[炭化水素]]を放出して、触角の相互作用を介して移動することも発見されている。これらの炭化水素はゴキブリのコミュニケーションに一役買っており、その個体が自分の親族であるか否かを察知することさえ可能で、近親交配を防いでいる。実験室で隔離されたゴキブリには極端行動に影響が見られ、これらの炭化水素やフェロモンによる刺激反応が少なく、これらのコミュニケーション技能の開発には恐らく集団環境が必要だと示唆されている<ref name=":4" />。
+==シロアリ==
+[[File:Termites_marked_with_traceable_protiens.jpg|thumb|シロアリ]]
+{{main|シロアリ}}
+シロアリの種全てがそれなりに真社会性であり、コロニーの蟻たちはカースト分化されている。シロアリ個体群の大部分は、採餌、営巣、グルーミング、子育てを担当する働きアリで構成されている。兵アリには捕食者や他の競争相手から巣を守る責任がある。兵アリは下顎が高度に発達しているほか、捕食者に有害な複数の防御物質を分泌できる多くの外分泌腺がある<ref name=":2">{{Cite journal|last1=Rose|first1=T.C. |last2=Ediger|first2=E.F.|last3=Lehman-Schletewitz|first3=J |last4=McClane |first4=N.W. |last5=Schweigert |first5=K.C. |last6=Alzweideh |first6=S|last7=Zeismann|first7=J|date=2015 |title=Life history and development‐a framework for understanding developmental plasticity in lower termites |journal=Development Genes and Evolution}}</ref>。
+通常、王と女王だけがシロアリ生殖をおこない、他のカーストはすべて非生殖である。生殖には、基本（王と女王による）生殖と補充生殖の2段階がある。基本生殖で生まれたアリ達はコロニー作りを担当し、複眼、翼の名残り（脱皮前にかつて羽があった場所の斑点）などの特徴がある。補充生殖虫は通常、基本生殖虫の片方が死亡した時にコロニー内より発現する<ref>小口 晃平、杉目 康広、下地 博之、林 良信、三浦 徹「[https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2020/6903/ シロアリにおける生殖虫分化：異性による生理調節機構の解明]」、[[東京大学]]大学院、2020年6月10日。<br>この補充生殖虫とは、シロアリ駆除サイト等で「副女王アリ、副王アリ」と呼ばれるもの。必ずしも常にあるカーストではなく、生殖虫が失われると普段非生殖の働きアリが繁殖個体へと脱皮する「補充生殖虫分化」が起こる。</ref><!--or can develop in addition to the queen--><ref name=":1">{{Cite journal|last1=Korb |first1=J. |last2=Hartfelder|first2=K. |date=2008 |title=Life history and development‐a framework for understanding developmental plasticity in lower termites |journal=Biological Reviews |volume=83 |issue=3 |pages=295-313 |doi=10.1111/j.1469-185X.2008.00044.x|pmid=18979593|s2cid=12390627 }}</ref>。
+補充生殖虫は、翼の有無がいずれの状況でも発現しうる。補充生殖虫が有翼の場合は親のコロニーから飛び去って雌雄2匹で新たなコロニーを作るが、翼のない場合彼らは親のコロニー内に残る。これら2形態が生じる発達経路の違いは、一般的にコロニー内の食物の入手可能性またはコロニー内での様々なレベルの寄生に依存する<ref name=":1" />。特定のニンフが発達するカーストは、脱皮間の後期で明確になってくる。この時期に、潜在的な生殖虫は性腺領域が大きくなり始める<ref name=":2" />。
+[[File:RayNorris termite cathedral mounds.jpg|thumb|シロアリの蟻塚。オーストラリア、[[ノーザンテリトリー]]]]
+シロアリのコロニーは、樹皮か塚状または地下の場合もあり、原始的なシロアリは切り株や丸太など密閉構造の内部に営巣する。巣の構造は主にシロアリ自身の排泄物で、他の材料は野菜繊維を噛み砕いたもの（弱い段ボール状の防水性物質になる）と土（強度はあるが水の浸食を受ける）である。
+蟻塚<!--Aerial nests （空中の巣）-->は密閉通路によって地面と繋がっている。大半の種の働きアリは体が柔らかくて目は見えず、囲われた巣内で一生涯を暮らし、野外に出ることはない<ref name=Resh/>{{Refnest|group="注釈"|Trinervitermes trinervoidesはこの例外にあたり、夜間に職蟻は地表にて小集団で餌探しをし、捕食者を抑止するために有害な[[テルペン]]を分泌する<ref>{{cite journal |author=Adam, R.A. |author2=Mitchell, J.D. |author3= van der Westhuizen, M.C. |year=2008 |title=Aspects of foraging in the harvester termite, ''Trinervitermes trinervoides'' (Sj?stedt) (Termitidae: Nasutitermitinae) |journal=[[African Entomology]] |volume=16 |issue=2 |pages=153?161 |doi=10.4001/1021-3589-16.2.153|s2cid=83651179 }}</ref>。}}。巣は複雑な構造で、トンネルは採餌エリアと繋がっている<ref name=Resh>{{cite book|author1=Resh, Vincent H.|author2=Cardé, Ring T.|title=Encyclopedia of Insects |url=https://books.google.com/books?id=Jk0Hym1yF0cC&pg=PA537 |year=2009|publisher=Academic Press |isbn=978-0-08-092090-0 |pages=536-537}}</ref>。アフリカではシロアリの塚が高さ9m×直径30mになることもあり、繁殖力を高めたエリアを作ったり、小さな[[生物多様性ホットスポット]]を作ったりもする<ref name=":0">{{Cite journal| last1 = Jouquet| first1 = Pascal| last2 = Dauber| first2 = Jens| last3 = Lagerlöf| first3 = Jan| last4 = Lavelle| first4 = Patrick| last5 = Lepage| first5 = Michel| year = 2005| title = Soil invertebrates as ecosystem engineers: Intended and accidental effects on soil and feedback loops| url = https://www.researchgate.net/publication/222669345 | journal = Applied Soil Ecology | doi = 10.1016/j.apsoil.2005.07.004| volume=32| issue = 2| pages=153-164}}</ref><ref>{{Cite journal |last=Pennisi |first=Elizabeth |date=2015 |title=Africa's soil engineers: Termites |journal=Science |volume=347| issue=6222 |pages=596?597 |doi=10.1126/science.347.6222.596 |pmid=25657224 |bibcode=2015Sci...347..596P }}</ref>。
+==関連項目==
+*[[プロトファスマ]]-ゴキブリ目の祖先とされる石炭紀の昆虫
+*[[アプソロブラッティナ]]-外観はゴキブリと似ているが、系統的には異なる石炭紀の昆虫
+== 脚注 ==
+=== 注釈===
+{{Reflist|group="注釈"}}
+=== 出典===
+{{Reflist|2}}
+== 外部リンク ==
+*[https://www.bunchuken.or.jp/wp-bunchuken/wp-content/uploads/2013/02/62_7.pdf　ゴキブリ目] - 公益財団法人 文化財虫菌害研究所
+{{DEFAULTSORT:こきふりもく}}
+[[Category:ゴキブリ]]
+[[Category:昆虫]]
+[[Category:生きている化石]]