車内放送
車内放送(しゃないほうそう)あるいは車内アナウンス(しゃないアナウンス)とは、列車・電車やバスなどの車内で利用客への案内として行われる放送。
概要
利用中の乗客に対し、次の停車駅や停留所、乗り換え案内等を周知する。乗務員(車掌または運転士)の重要な業務の一つである[1][2]。乗務員自らがマイクロフォンを使って直接しゃべるものと、録音済みの自動音声を用いるものがある。
日本
日本の鉄道における車内放送は車掌による肉声放送または自動放送が主流で、肉声放送の場合は乗務員スペース(車掌室など)に備えられたハンドセット型[注釈 1]マイク、あるいは通称「車掌マイク」とも呼ばれる[3]トークスイッチ付き接話型マイク[4]を使用する。日本の車掌による車内放送は「声のトーンを上げたやや濁声気味の鼻声」という独特のしゃべり方で形容されることが多いが、この理由について鉄道ライターの杉山淳一が2012年に現役車掌に聞いたところ「昔の放送機器は雑音が入りやすく低音が通りにくかったため」「普通の話し声だと、お客さん同士の会話と区別がつかないため」などの理由が挙がったという[5]。
20世紀末になると、ワンマン運転を行う路線、新幹線、大都市の鉄道や地下鉄などを中心に、車掌による肉声放送から自動放送主体に置換えられるようになった。2010年代後半に入り、インバウンド需要への対応を目的として西日本旅客鉄道(JR西日本)や近畿日本鉄道のようにタブレット端末を使用した自動放送も出現している[6]。その一方で、同じインバウンド需要への対応を目的としながら、東海旅客鉄道(JR東海)静岡地区のように、敢えて車掌の肉声による英語での案内放送を行う事例もある。これについては、「まさにザ・日本人の英語という感じ。聞いていて恥ずかしくなる」「流暢ではないけれど、温かみを感じる。臨機応変に対応してもらえる」と賛否が入り混じった議論が巻き起こった[7]。放送言語は日本語・英語の2言語が一般的だが、観光地や空港のある路線ではそれに加えて中国語・韓国語の4か国語での放送を行う例もある。
一方、日本のバスにおいては1970年代以降の路線バスにおけるワンマン運転の普及により、早くから運転士の負担減及び乗客へのサービス低下防止のために自動放送が行われるようになった。当初はあらかじめ録音されたアナウンスを8トラックカセットに収録し、車内放送装置を運転士が手動で操作して再生するというものが主流であった[8]が、現在は音節ごとに収録された音声をつなぎ合わせて再生する音声合成放送装置が主流となり、さらに行先表示器や運賃表示器、乗車整理券発券機等と一体化したバス運行支援システムの一部としても使用される[9][10]。その一方で、運転士がインカム型マイクを装備し肉声による車内放送を行う場合がある。高速バスマーケティング研究所の成定竜一によれば、到着予定時刻など、自動音声での対応に手間がかかる内容や、道路状況など臨機に告知すべき内容を放送しているという[11]。運転士のマイクはバス会社との業務連絡用のマイクを兼ねていることもあり、バス会社とのやりとりがそのまま車内に流れてしまうという事案もある[12]。
なお、鉄道やバスの自動放送音源には様々なナレーターが関わっていることが知られている(後述)。
ヨーロッパ
ヨーロッパの鉄道では車内放送が全くない列車も多い[13]。特にローカル線の各駅停車の列車では何の案内もなく駅に停車し、何の案内もなく静かに駅を出発する[13]。国際列車や高速列車では現地語と英語によるごく簡単な車内アナウンスがある[13]。
路面電車や地下鉄では車掌を乗せていないワンマン運転であることも多く、録音済の音源により次の駅名と乗り換え路線の案内が繰り返し行われる[13]。
なお、バルセロナ地下鉄には男女の会話形式の車内放送を導入している路線もあり、次の駅名や乗り換え路線の問い合わせに対し案内を行う対話形式となっている[13]。
アメリカ合衆国
ニューヨーク市内などのバス(MTAやNYCトランジット)では停留所の告知のアナウンスがない[14]。ただし、バス運転手によっては街路(ストリートやアベニュー)や停留所を自らアナウンスしていることもある[14]。
ニューヨーク市地下鉄では駅名について車内で確認できるようになっておりアナウンスがある[15]。新型車両(R142形電車以降)では全自動の放送装置が搭載されている。
車内自動放送に音源として係わった人物
アナウンス
- 有田洋之[16](日本語)
- 石毛美奈子[17](日本語)
- 一龍斎貞弥[18](日本語)
- 大橋俊夫[19](日本語)
- 岡本洋子[20](日本語)
- 亀井佐代子[21](日本語・英語)
- 久野知美[22][23][24](日本語)
- クリステル・チアリ[25]
- 古賀智子[26](日本語)
- 堺正幸[25](日本語)
- 坂本咲子[27](日本語)
- 下間都代子[28](日本語)
- ジャネット・マリー・バンティング[28](英語)
- ジーン・ウィルソン[25](英語)
- ダヴィーナ・ロビンソン[29](英語)
- 津田英治[30](日本語)
- 透千保[31](日本語)
- 豊田真由美[17](日本語)
- ドナ・バーク[25](英語)
- 直井芳枝[32](日本語)
- 中村啓子[33](日本語)
- 西村文江[25](日本語)
- 三浦七緒子[34][25](日本語)
- 水谷ケイコ[35](日本語)
- 三宅智恵子[36](日本語)
- 室井滋[25](日本語)
- 森谷真弓[25](日本語)
- 横山明日香[37](日本語)
- リアド慈英蘭[38](英語)
- 脇坂京子[25](日本語)
- 秀平真由美(日本語)
作曲
注釈
出典
- ^ “車掌の仕事”. 東急電鉄鉄道エキスパート職採用サイト. 2019年7月15日閲覧。
- ^ “運転士・車掌の仕事”. そうてつキッズ(相模鉄道小学生向けサイト). 2019年7月15日閲覧。
- ^ “「鉄道甲子園」で車掌気分を GWに関西6社の機器集う”. 朝日新聞. (2012年2月9日) 2019年7月15日閲覧。
- ^ “接話型マイク・ハンドマイク”. 九州電気. 2019年7月15日閲覧。
- ^ 杉山淳一 (2012年6月16日). “車掌さんのアナウンスが独特の鼻声になる理由”. マイナビニュース. 2019年7月15日閲覧。
- ^ “電車内放送、進む国際化 訪日客増加で鉄道各社”. 神戸新聞. (2018年1月24日) 2019年7月15日閲覧。
- ^ “JR東海はなぜ車掌による「英語肉声アナウンス」を始めたのか”. NEWSポストセブン (2019年7月15日). 2019年7月15日閲覧。
- ^ “昭和の丸っこい「モノコックバス」現役! 道北に全国からバスファン いまや観光資源に”. 乗りものニュース (2018年9月5日). 2019年7月15日閲覧。
- ^ “運行支援システム”. レシップ. 2019年7月15日閲覧。
- ^ “音声案内装置”. 小田原機器. 2019年7月15日閲覧。
- ^ “高速バス運転士のマイクアナウンスはなぜ必要? すべて自動音声にすることはできないの?”. バスとりっぷ (2018年3月5日). 2019年7月15日閲覧。
- ^ “高速バス運転手「はい?」と逆ギレ、指示を無視。車内放送で丸聞こえ”. ハフィントン・ポスト. (2018年11月6日) 2019年7月15日閲覧。
- ^ a b c d e 海外鉄道サロン編『ヨーロッパおもしろ鉄道文化』交通新聞社、2011年
- ^ a b 地球の歩き方編集室『地球の歩き方 ニューヨーク マンハッタン&ブルックリン 2018〜2019』2013年、49頁。
- ^ 地球の歩き方編集室『地球の歩き方 ニューヨーク マンハッタン&ブルックリン 2018〜2019』2013年、45頁。
- ^ “有田 洋之|タレント紹介|株式会社 タカラ”. 株式会社タカラ公式サイト. 2020年5月13日閲覧。
- ^ a b 西武鉄道駅メロディオリジナル(ユニバーサルミュージック、2010年1月)(国立国会図書館サーチ)
- ^ (日本語) 【デビュー150日前】スペーシア X 「車内放送」収録の舞台裏 2023年7月16日閲覧。
- ^ “大橋俊夫 Ohhashi Toshio”. オフィスサッキー. 2023年8月8日閲覧。
- ^ バスグラフィック vol.30(2017年3月29日)
- ^ “亀井 佐代子 Kamei Sayoko”. オフィスサッキー. 2023年8月8日閲覧。
- ^ “伊勢崎線~日比谷線、新時代へ 東武の新型電車70000系が7月7日、出発進行!”. 乗りものニュース. メディア・ヴァーグ (2017年7月7日). 2017年7月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月4日閲覧。
- ^ “西武鉄道4000系を改造、観光電車「52席の至福」車両番号も"52"!? 写真52枚”. マイナビニュース. (2016年4月14日) 2016年4月14日閲覧。
- ^ “「女子鉄アナ」久野知美さん、北総鉄道の車内アナウンスを担当 「相互乗り入れも楽しんで」”. 乗りものニュース. (2018年4月23日) 2019年1月26日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 杉山 2011.
- ^ “古賀智子/プロフィール”. 古賀智子の部屋(ラジオパーソナリティ・司会業) /京都. 2019年1月26日閲覧。
- ^ “坂本 咲子 Sakiko Sakamoto”. オフィスサッキー. 2023年8月8日閲覧。
- ^ a b “【阪急沿線おしらべ係 第41回】阪急電車内の自動放送の声はどんな人が担当している?”. 阪急電鉄. 2023年8月8日閲覧。
- ^ “Profile”. Davina Robinson Official Site. 2023年8月8日閲覧。
- ^ “JRの自動音声「中の人」交代 駅名など新たに録音”. 朝日新聞. (2015年4月27日). オリジナルの2016年5月2日時点におけるアーカイブ。 2019年1月26日閲覧。
- ^ “透 千保”. NTB公式サイト. 2019年1月26日閲覧。
- ^ 卒業生からのメッセージ - ブライダル&総合司会者 - ウェイバックマシン(2017年11月22日アーカイブ分)
- ^ “中村 啓子”. 東京俳優生活協同組合公式サイト. 2024年9月22日閲覧。
- ^ 当社で初めて英語放送を導入 8800形・8000形電車に自動放送を導入します (PDF) - 新京成電鉄 2009年3月31日
- ^ “『車内アナウンス』…!?!”. 水谷ケイコのブログ (2011年12月18日). 2019年1月26日閲覧。
- ^ 『三陸鉄道の車内アナウンスCD「今、よみがえる三陸鉄道」を販売』(PDF)(プレスリリース)相模鉄道、2011年7月7日 。2019年1月26日閲覧。
- ^ 本人Twitterより
- ^ しなの鉄道
参考資料
- 杉山淳一 (2011年7月2日). “車内放送に意外な有名人が関わっている”. マイナビニュース 2019年1月25日閲覧。