西南官話

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西南官話(せいなんかんわ、簡体字: 西南官话、英語:Southwestern Mandarin)は、中国語の方言の一種で、中国西南部の四川省重慶雲南省貴州省の大部分の地区、湖北省の西部、湖南省の北西部、広西壮族自治区陝西省南部、甘粛省南部、江西省の一部分、ミャンマーのコーカン特区で話されている。上江官話、上江方言とも呼ばれる。

西南官話は中国語の方言の中で話者人口が最も多く、使用地区の面積も最も広い方言である。統計によれば、西南官話の話者人口はおよそ2億人で、全国の人口の5分の1を占め、北方方言(官話)の話者人口の3分の1を占める。これは湘語粤語閩語の話者人口の総数に相当する。しかし、中国政府の北京語普及政策のもとで、広東語・福建語・上海語・モンゴル語・朝鮮語・ウイグル語などの言語共に危機に瀕している[1]

西南官話を話す2人の話者、カナダで録音。

下位方言[編集]

下位方言として以下の12個が挙げられる。

特徴[編集]

  • 多数の地域は他の大部分の官話と同様に、陰平陽平上声去声の計四つの声調を持つ。古代入声は全て陽平に変化した。他のおよそ三分の一の地区では依然として入声が保存されている。
  • 基本的に他の官話方言と同様に、清音濁音の区別が存在しない。ただし湖南省の一部の地区の西南官話まだ区別する。
  • 他の官話方言と違って、 歯茎鼻音n軟口蓋鼻音ŋを区別しないが、両唇鼻音mは未だ完全に[n]に合流する。
  • 西南官話の軟口蓋鼻音ŋ末尾はピンイン「i」,「e」の後ろでは保たれず、 歯茎鼻音nと発音される。ピンイン「b」「p」「m」「f」の後の「eng」は「ong」と発音される。
  • 多くの地域では歯茎音s, ʦ, ʦʰそり舌音ʂ,ʐ,ʈʂ, ʈʂʰの区別が存在しない。ただしある限られた地域では北京官話のように歯茎音とそり舌音を厳密に区別する 。
  • 歯茎鼻音n歯茎音lを区別しない。
  • 唇歯音f軟口蓋音x(ピンイン「h」)を区別しない。

脚注[編集]

参考項目[編集]