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甲賀郡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
滋賀県甲賀郡の位置(黄:明治期 薄黄:後に他郡に編入された区域)

甲賀郡(こうかぐん)は、滋賀県近江国)にあった

郡域

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1879年明治12年)に行政区画として発足した当時の郡域は、下記の区域にあたる。

2010年(平成22年)国勢調査に基づく当該区域の面積は554.76k㎡、人口は147,595人。3

地理

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鈴鹿山脈南嶺より水口丘陵、甲賀丘陵、そして県南部、盆地状の高原、信楽高原へと至る地域を呼ぶ。滋賀県南東部一帯を占め、中世には郡中惣として自治意識が高かった。また人の住まう場所として歴史は古く、はるか縄文時代から人の営みがあったことが2003年12月に判明した。主要河川として郡の北を西北西に野洲川が、南東部を郡中部で野洲川に合流する形で杣川が、信楽の中心部を北西に大戸川が流れる(西方で瀬田川に合流)。主要交通機関として、国道1号国道307号JR西日本草津線が通る。古くは、中世の甲賀郡中惣が有名である。近江12郡中、唯一琵琶湖に面していない。

歴史

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近世以降の沿革

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幕末の知行
知行 村数 村名
幕府領 幕府領 13村 東寺村、山夏見村、里夏見村、出屋敷村、八田村、五瀬村、○鮎川村、黒川村、○北土山村、○南土山村、和田村、高山村、小川出村
旗本領 37村 ○菩提寺村、○平松村、妙感寺村、嶬峨上田村、下駒月村、○伊佐野村、音羽野村、市ノ瀬村、平子村、青土村、大久保村、毛牧村、五反田村、相模村、高野村、小佐治村、○大原市場村、隠岐村、神保村、下池田村、○柑子村、○下馬杉村、○上馬杉村、○上磯尾村、○市原村、●○宮町村、○勅旨村、○長野村、神山村、多羅尾村、小川村、杉山村、○上朝宮村、下朝宮村、畑村、中野村、野尻村
幕府領・旗本領 5村 櫟野村、大原上田村、○油日村、鳥居野村、深川市場村
藩領 近江水口藩 26村 ○岩根村、下田村、畑村、松尾村、下村、堂村、○上村、泉村、○北脇村、林口村、氏河原村、東内貴村、西内貴村、宇田村、○北内貴村、小里村、中畑村、新城村、○水口村、今在家村、○上池田村、○稗谷村、虫生野村、○杉谷村、杉谷新田、杣中村
山城淀藩 7村 西寺村、柑子袋村、○正福寺村、吉永村、○前野村、○市場村、○山中村
武蔵川越藩 6村 ○大沢村、○野上野村、大河原村、笹路村、猪鼻村、蟹が坂村
近江山上藩 5村 黒滝村、○山女原村、○神村、○葛木村、○黄瀬村
近江宮川藩 3村 ○平野村、○野川村、○野尻村
丹後宮津藩 3村 ○三雲村、今宿村、岩坂村
近江三上藩 2村 朝国村、植村
近江膳所藩 1村 石部村[2]
河内狭山藩 1村 田代村
水口藩・淀藩 1村 倉治村
水口藩・川越藩 1村 ○頓宮村[3]
淀藩・宮津藩 1村 ●高嶺村[4]
川越藩・宮川藩 1村 ○下山村[3]
山上藩・宮津藩 1村 大原中村
幕府領・藩領 幕府領・水口藩 3村 嶬峨中村、○森尻村[5]、深川村
幕府領・水口藩・淀藩 1村 伴中山村
幕府領・淀藩 1村 針村
幕府領・山上藩・宮川藩 1村 ○野田村[6]
幕府領・旗本領・水口藩 2村 塩野村、山上村
幕府領・旗本領・淀藩 1村 ○牛飼村[7]
幕府領・旗本領・川越藩 1村 ○大野村[7]
幕府領・旗本領・川越藩・山上藩 2村 新宮村、上野村(現・甲賀市甲南町新治)
幕府領・旗本領・宮津藩 1村 ○牧村[7]
幕府領・旗本領・三上藩 1村 ○下磯尾村[8]
旗本領・水口藩 1村 酒人村
旗本領・淀藩 3村 ○上野村(現・甲賀市甲賀町上野)[7]、○田堵野村[7]、○寺庄村[7]
旗本領・淀藩・宮津藩 1村 竜法師村
旗本領・川越藩 2村 名坂村[9]、○岩室村[7]
旗本領・山上藩 1村 柞原村[10]
旗本領・宮津藩 4村 ○徳原村、○滝村[11]、○三大寺村[7]、江田村
  • 慶応4年
  • 明治3年
  • 明治4年
  • 明治5年1月19日(1872年2月27日) - 大津県が改称して滋賀県となる。
  • 明治7年(1874年)(136村)
    • 江田村の一部が分立して西村となる。
    • 森尻村の一部が分立して宝木村となる。
    • 音羽野村・市ノ瀬村が合併して瀬ノ音村となる。
    • 下池田村・上池田村が合併して池田村となる。
    • 上磯尾村・下磯尾村が合併して磯尾村となる。
    • 東内貴村・西内貴村が合併して内貴村となる。
    • 杉谷新田が杉谷村に、今宿村が大野村にそれぞれ合併。
    • 畑村が春日村に、野尻村が宮尻村に、氏河原村が宇川村にそれぞれ改称。
  • 明治8年(1875年)(131村)
    • 山夏見村・里夏見村・出屋敷村が合併して夏見村となる。
    • 下村・堂村・上村が合併して山村となる。
    • 妙感寺村が三雲村に合併。
  • 明治12年(1879年)(124村)
    • 5月16日 - 郡区町村編制法の滋賀県での施行により、行政区画としての甲賀郡が発足。郡役所が水口村に設置。
    • 嶬峨上田村・嶬峨中村が合併して嶬峨村となる。
    • 伊佐野村・平野村が合併して和野村となる。
    • 小里村・今在家村が合併して今郷村となる。
    • 倉治村・新宮村・上野村(現・甲賀市甲南町新治)が合併して新治村となる。
    • 五瀬村・蟹が坂村が南土山村に合併。

町村制以降の沿革

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1.水口村 2.石部村 3.土山村 4.三雲村 5.岩根村 6.下田村 7.伴谷村 8.柏木村 9.大野村 10.佐山村 11.鮎河村 12.山内村 13.大原村 14.油日村 15.宮村 16.竜池村 17.寺庄村 18.貴生川村 19.南杣村 20.北杣村 21.雲井村 22.長野村 23.小原村 24.朝宮村 25.多羅尾村(紫:甲賀市 桃:湖南市)
  • 明治22年(1889年4月1日 - 町村制の施行により、以下の町村が発足。特記以外は全域が現・甲賀市。(25村)
    • 水口村 ← 水口村、林口村、松尾村、中畑村、新城村
    • 石部村 ← 石部村、東寺村、西寺村(現・湖南市)
    • 土山村 ← 南土山村、北土山村、青土村、瀬ノ音村、平子村、野上野村、大沢村
    • 三雲村 ← 柑子袋村、平松村、針村、夏見村、吉永村、三雲村(現・湖南市)
    • 岩根村 ← 岩根村、朝国村、菩提寺村、正福寺村(現・湖南市)
    • 下田村(単独村制。現・湖南市)
    • 伴谷村 ← 春日村、八田村、伴中山村、下山村、山村
    • 柏木村 ← 北脇村、酒人村、植村、宇田村、泉村、名坂村
    • 大野村 ← 大野村、今郷村、徳原村、前野村、頓宮村、市場村
    • 佐山村 ← 隠岐村、神保村、小佐治村、和野村、岩室村、嶬峨村
    • 鮎河村 ← 鮎川村、大河原村
    • 山内村 ← 山中村、猪鼻村、笹路村、山女原村、黒滝村、黒川村
    • 大原村 ← 大久保村、神村、櫟野村、大原上田村、大原中村、鳥居野村、相模村、大原市場村、高野村
    • 油日村 ← 和田村、毛牧村、五反田村、高嶺村、上野村、油日村、田堵野村、滝村
    • 宮村 ← 野川村、柑子村、上馬杉村、下馬杉村
    • 竜池村 ← 竜法師村、磯尾村、野田村、野尻村、池田村
    • 寺庄村 ← 深川村、深川市場村、森尻村、宝木村、寺庄村、葛木村、稗谷村
    • 貴生川村 ← 虫生野村、宇川村、内貴村、北内貴村
    • 南杣村 ← 杉谷村、塩野村、市原村、新治村
    • 北杣村 ← 三大寺村、高山村、岩坂村、杣中村、牛飼村、山上村
    • 雲井村 ← 牧村、宮町村、黄瀬村、勅旨村
    • 長野村 ← 長野村、江田村、神山村、田代村、畑村
    • 小原村 ← 中野村、柞原村、小川村、小川出村、杉山村、西村
    • 朝宮村 ← 下朝宮村、宮尻村、上朝宮村
    • 多羅尾村(単独村制)
    • 下駒月村が蒲生郡南比都佐村の一部となる。
  • 明治27年(1894年8月18日 - 水口村が町制施行して水口町となる。(1町24村)
  • 明治31年(1898年)4月1日 - 郡制を施行。
  • 明治36年(1903年6月1日 - 石部村が町制施行して石部町となる。(2町23村)
  • 大正5年(1916年)4月1日 - 土山村が町制施行して土山町となる。(3町22村)
  • 大正10年(1921年8月15日 - 長野村が町制施行して長野町となる。(4町21村)
  • 大正12年(1923年)4月1日 - 郡会が廃止。郡役所は存続。
  • 大正15年(1926年7月1日 - 郡役所が廃止。以降は地域区分名称となる。
  • 昭和5年(1930年11月3日 - 長野町が改称して信楽町となる。
  • 昭和17年(1942年
    • 1月1日 - 貴生川村・北杣村が合併して貴生川町が発足。(5町19村)
    • 2月11日 - 寺庄村が町制施行して寺庄町となる。(6町18村)
    • 7月1日 - 柏木村が水口町に編入。(6町17村)
  • 昭和18年(1943年2月11日 - 寺庄町・竜池村・南杣村・宮村が合併して甲南町が発足。(6町14村)
  • 昭和23年(1948年10月10日 - 水口町の一部(泉・酒人・宇田・植・北脇)が分立して柏木村が発足。(6町15村)
  • 昭和29年(1954年9月1日 - 信楽町・雲井村・小原村・朝宮村・多羅尾村が合併し、改めて信楽町が発足。(6町11村)
  • 昭和30年(1955年
    • 4月1日
      • 大野村・土山町・山内村・鮎河村が合併し、改めて土山町が発足。(6町8村)
      • 佐山村・大原村・油日村が合併して甲賀町が発足。(7町5村)
    • 4月10日 - 三雲村・岩根村が合併して甲西町が発足。(8町3村)
    • 4月15日 - 伴谷村・柏木村・水口町・貴生川町が合併し、改めて水口町が発足。(7町1村)
  • 昭和31年(1956年
    • 4月1日 - 土山町の一部(今郷)が水口町に編入。
    • 10月1日 - 甲賀町の一部(嶬峨・和野)が水口町に編入。
  • 昭和33年(1958年)10月1日 - 下田村が甲西町に編入。(7町)
  • 平成16年(2004年)10月1日 - 以下の合併により甲賀郡消滅。
    • 石部町・甲西町が合併して湖南市が発足。
    • 水口町・土山町・甲賀町・甲南町・信楽町が合併して甲賀市が発足。

変遷表

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自治体の変遷
明治22年4月1日 明治22年 - 大正15年 昭和1年 - 昭和19年 昭和20年 - 昭和29年 昭和30年 - 昭和64年 平成1年 - 現在 現在
水口村 明治27年8月18日
町制施行
水口町
水口町 水口町 水口町 昭和30年4月15日
水口町
平成16年10月1日
甲賀市
甲賀市
柏木村 柏木村 昭和17年7月1日
水口町に編入
昭和23年10月10日
分立
柏木村
伴谷村 伴谷村 伴谷村 伴谷村
貴生川村 貴生川村 昭和17年1月1日
貴生川町
貴生川町
北杣村 北杣村
土山村 大正5年4月1日
町制施行
土山町
土山町 土山町 昭和30年4月1日
土山町
鮎河村 鮎河村 鮎河村 鮎河村
山内村 山内村 山内村 山内村
大野村 大野村 大野村 大野村
佐山村 佐山村 佐山村 佐山村 昭和30年4月1日
甲賀町
大原村 大原村 大原村 大原村
油日村 油日村 油日村 油日村
寺庄村 寺庄村 昭和17年2月11日
町制施行
寺庄町
昭和18年2月11日
甲南町
甲南町 甲南町
竜池村 竜池村 竜池村
宮村 宮村 宮村
南杣村 南杣村 南杣村
長野村 大正10年8月15日
町制施行
長野町
昭和5年11月3日
改称
信楽町
昭和29年9月1日
信楽町
信楽町
朝宮村 朝宮村 朝宮村
雲井村 雲井村 雲井村
小原村 小原村 小原村
多羅尾村 多羅尾村 多羅尾村
石部村 明治36年6月1日
町制施行
石部町
石部町 石部町 石部町 平成16年10月1日
湖南市
湖南市
三雲村 三雲村 三雲村 三雲村 昭和30年4月10日
甲西町
甲西町
岩根村 岩根村 岩根村 岩根村
下田村 下田村 下田村 下田村 昭和33年10月1日
甲西町に編入

行政

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歴代郡長
氏名 就任年月日 退任年月日 備考
1 明治12年(1879年5月16日
松田宗寿 明治26年(1893年7月6日 蒲生郡長も兼任
大正15年(1926年6月30日 郡役所廃止により、廃官

脚注

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  1. ^ 領主から年貢免除の特権を与えられた土地。
  2. ^ 宿駅地子高あり。
  3. ^ a b 寺社除地は後に川越県が管轄。
  4. ^ 寺社領は後に大津県が管轄。
  5. ^ 寺社除地は後に水口県が管轄。
  6. ^ 寺社除地は後に宮川県が管轄。
  7. ^ a b c d e f g h 寺社除地は後に大津県が管轄。
  8. ^ 寺社除地は後に吉見県が管轄。
  9. ^ 川越藩領は後に水口県が管轄。
  10. ^ 記載は柞原下野村。
  11. ^ 寺社除地は後に宮津県が管轄。
  12. ^ 狭山藩は明治2年12月26日(1870年1月27日)に廃藩。

参考文献

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  • 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 25 滋賀県、角川書店、1979年4月1日。ISBN 404001250X 
  • 旧高旧領取調帳データベース

関連項目

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