殻斗果

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1. 左から: Quercus pubescens, Quercus cerris, Quercus rubra の殻斗果

殻斗果かくとかまたはどんぐり状果どんぐりじょうか: calybium[1][2][3]とは果実の1型であり、一部または全体が殻斗かくと(cupule, cupula)で覆われた堅果果皮か堅く木化し1個の種子を含んだ非裂開果)のことである(図1)。ブナ科に見られる。殻斗とは総苞片(花の集まりの基部にある特殊化した葉)が合着変形した構造であり、ドングリのお椀やクリいがとなる。

定義[編集]

果実のうち、堅く木化した果皮が1個の種子を包み、裂開しない果実は堅果とよばれる[4][5][6][7][8]ブナ科の堅果は、一部または全体が殻斗で覆われており、殻斗と合わせて殻斗果とよばれる[2][3][9]。殻斗とは、花(雌花)の集まりの基部にある特殊化した葉(総苞片)が木化・合着した構造である[9][10]クリなどでは3個の堅果が(下図2a)、ブナなどでは2個の堅果が(下図2b)、スダジイなどでは1個の堅果が(下図2c)殻斗で完全に包まれているが、クヌギコナラシラカシなどでは1個の堅果の基部側のみが殻斗で包まれている[11][12](下図2d, e)。クリなどの殻斗はいがで覆われ(下図2a)、ブナやクヌギ、カシワアベマキなどでは苞の先端が癒合せずに殻斗がささくれており(下図2b, c)、コナラやマテバシイなどでは殻斗表面が鱗片状(下図2d)、シラカシやアラカシなどでは殻斗表面に環状模様(下図2e)を形成している[11][12]

2a. クリ属の殻斗果: 3個の堅果がいがで覆われた殻斗で包まれている。
2b. ヨーロッパブナの殻斗果: 2個の堅果が殻斗で包まれている。
2c. スダジイの殻斗果: 1個の堅果が殻斗で包まれている。
2d. アカガシワの殻斗果: 1個の堅果の基部が鱗片模様の殻斗で包まれている。
2e. アラカシの殻斗果: 1個の堅果の基部が輪状模様の殻斗で包まれている。

ギャラリー[編集]

コナラ属コナラ亜属

コナラ属アカガシ亜属

クリ属

トゲガシ属

ノトリトカルプス属

ブナ属

マテバシイ属

ナンキョクブナ科ナンキョクブナ属

脚注[編集]

  1. ^ Calybium and cupule”. 広島大学デジタル博物館. 2023年4月29日閲覧。
  2. ^ a b Spjut, R.W. (2015年). “A Systematic Treatment of Fruit Types”. The World Botanical Associates Web Page. 2023年4月28日閲覧。
  3. ^ a b 文部省 & 日本植物学会 (編) (1990). “殻斗果”. 学術用語集 植物学編 (増訂版). 丸善. p. 109. ISBN 978-4621035344 
  4. ^ 清水建美 (2001). 図説 植物用語事典. 八坂書房. pp. 96–100. ISBN 978-4896944792 
  5. ^ 巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編) (2013). “堅果”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. p. 415. ISBN 978-4000803144 
  6. ^ 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編), ed (2015). “植物用語の図解”. 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 10–17. ISBN 978-4582535310 
  7. ^ 山崎敬 (編集), 本田正次 (監修), ed (1984). “1. 果実”. 現代生物学大系 7a2 高等植物A2. 中山書店. pp. 101–110. ISBN 978-4521121710 
  8. ^ 堅果. コトバンクより2022年5月3日閲覧
  9. ^ a b 巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編) (2013). “殻斗”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. p. 206. ISBN 978-4000803144 
  10. ^ 清水建美 (2001). “総苞”. 図説 植物用語事典. 八坂書房. p. 150. ISBN 978-4896944792 
  11. ^ a b 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 (2012). “ブナ科”. 草木の種子と果実. 誠文堂新光社. pp. 137–141. ISBN 978-4-416-71219-1 
  12. ^ a b 崎尾均 (2000). “ブナ科”. 樹に咲く花 離弁花1. 山と渓谷社. pp. 208–281. ISBN 4-635-07003-4 

関連項目[編集]

  • ドングリ
  • 種実類 … 種子が食用とされるもののうち、穀類でも豆類でもないもの。クリなど殻斗果に加えて、アーモンドなどの核果の核、マツなどの種子が含まれる。食用部が堅い殻で包まれている果実、果実の一部または種子はナッツともよばれ、含まれるものは種実類とおおよそ重なる。