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前川千帆

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前川 千帆(まえかわ せんぱん、1888年10月5日 - 1960年11月17日)は日本版画家漫画家日本版画協会創立時(1931年)から会員で、毎年、同展に出品し、同協会の相談役も務めた[1]。日版会の創立者の1人、日展会員[1]

来歴

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1888年、京都市に石田政七の三男に生まれる。名は重三郎。1904年に父が死去すると、母方の親戚の前川氏を名乗る。関西美術院浅井忠鹿子木孟郎洋画を学ぶ。その後、上京して東京パック社北沢楽天主宰)に勤めたのち読売新聞社に入社、『京城日報』(大正4年同6年)を経て、1918年にはふたたび読売新聞社に入社、『國民新聞』に移って漫画をもっぱら描き、次第に漫画家として認められる[1]。その傍ら、木版画を製作、1919年には第1回日本創作版画協会展に「病める猫」を出品している。同展第4回(昭和11年)に出展し会員となる[1]

その持ち味は飄逸(ひょういつ)な画風にあり、人々の生活に取材した風景画などは個性的で、日展[注 1]帝展にも作品を出品している。1960年10月に東京女子医科大学病院(東京)で幽門狭窄の術後、11月に再手術を受け、同月17日に心臓衰弱により没した[1]

私生活

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1937年(昭和12年)、関東大震災で焼け出され再び読売新聞社に入社すると、連続漫画「あわてものの熊さん」の執筆を始める。1945年(昭和20年)4月には岡山県久米郡に疎開し、戦後1950年4月には上京して杉並区に住まいを構えた[1]

作品

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  • 「雪の余呉湖」 木版画 1924年
  • 「あわてものの熊さん」 新聞漫画[2]
  • 「梅林」 木版画 1927年(昭和2年)
  • 第4回創作版画協会展「温泉(別所)」「郊外風景」その他を出品 1936年(昭和11年)
  • 「軽井沢外人街」 木版画
  • 「日本の民俗図譜 浦佐の裸祭り」 木版画 1946年、ボストン美術館所蔵

主な展覧会

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帝展

版画の出展を認めた1927年から出品。

  • 第8回「国境の停車場」 木版画 (1927年)
  • 第12回「屋上展望」 1931年(昭和6年)
春陽会展
  • 第9回「登山軌道」など出品(1931年)
新版画展
  • 「庄内の女」「かくまきの女」その他 (1942年
文展
  • 第7回「紙漉場」 (1913年)大正2年
  • 第9回「訓練」 (1915年)大正4年

主な著作

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発行年順。常用漢字で記す。

  • 『版画浴泉譜』(アオイ書房、1941)20回完成。NCID BN14342937
    • 『版画浴泉譜』(龍星閣、1954)NCID BN13898917 1944年に20回完成。
  • 『続版画浴泉譜』全1巻、OCLC 1330717622
  • 『続続–浴泉譜』(1952)全1巻、OCLC 1330719030
  • 山崎 斌、前川 千帆『竹青集』(草木屋出版部、1941)NCID BN10085672
  • 前川 千帆『新野外小品』(アオイ書房〈『書窓』版画帖十連聚 その4〉、1942)NCID BB0240018X
  • 前川 千帆『童心』(〈鶴文庫〉、1948)NCID BB01365935
  • 前川 千帆(1888〜) 『阿寒往復』(北海道豆本の会〈ゑぞ・豆本 第21号〉、1958)NCID BC18242493
  • 前川 千帆、山崎 斌『前川千帆 : 版画を中心にしてのその画業その他』限定版(月明会出版部、1962)NCID BB03405600
展覧会図録
  • 小川 治平、前川 千帆、『世界新漫画鳥瞰図』大澤米造 編(国際情報社〈国際写真情報 第3巻第1号=新年特別附録〉1924) NCID BB14314041。地図資料: [縮尺決定不能]。内匡: 71×103cm。「国際情報社編輯局案」。
  • 小杉 放庵木村 荘八、前川 千帆、藤井 浩祐『近代作家の回顧 : 小杉放庵 木村荘八 前川千帆 藤井浩祐』(国立近代美術館 編・刊、1965)NCID BA3296216X
  • 前川 千帆『前川千帆 : 女性シリーズ版画展』(東邦画廊 編・刊、1970)NCID BD04550111
  • 前川 千帆『前川千帆名作展 : 平木浮世絵財団』(リッカー美術館 編・刊、1977)NCID BN05228351
  • 織田 一磨、恩地 孝四郎、川西 英、川上 澄生、谷中 安規、永瀬 義郎、平塚 運一、前川 千帆、山本 鼎、吉田 博『近代日本創作版画10人展』(町田市立博物館、1979)NCID BD07847580
  • 前川 千帆 作『前川千帆展 : 平木コレクションによる』西山 純子 編(千葉市美術館 編・刊、2021)NCID BC08485229

参考文献

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主な執筆者、編者の順。

脚注

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注釈

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  1. ^ 戦後は日展第4回に「浴泉(第二)」「花うり女」「梅林」その他を出品(昭和25年)。同第7回(1953年)「温泉宿の二階」と「浴泉裸女」「踊り子」などを出す。

出典

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  1. ^ a b c d e f 前川千帆”. 東文研アーカイブデータベース. 東京文化財研究所. 2024年8月1日閲覧。
  2. ^ 『マンガの主人』 1965, pp. 70–74

関連項目

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