EMドライブ

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EMドライブの実験装置

EMドライブ: EM-driveelectromagnetic drive)は、イギリス航空宇宙技術者ロジャー・ショーヤー英語版が考案した宇宙機の推進方法[1]ロケットエンジンなどの既存の推進機関とは異なり、推進剤なしで推力を生み出すとされている[1]。EMドライブは、サテライト・プロパルジョン・リサーチ社[2]により2001年に発表された[3]Radio frequency resonant cavity thruster無線周波数共振空洞推進器)とも。

概要[編集]

EMドライブは、マイクロ波を円錐形の[要出典]鏡の密閉容器内で反射させるという機構からなるシステムである[1]。その原理は2017年現在解明されていないが、既存のロケットエンジンイオンエンジンが推進剤を噴射する反作用で加速するのとは異なり、推進剤を用いず推進力が得られるとしている[1]。これは、太陽電池などで電力を確保できれば、半永久的に加速が続けられることを意味しており、実現するのであれば画期的な推進機関になると考えられている[1]

一方で、外部とのやり取りをせずに推進力を得られるという主張に対しては、運動量保存の法則に反しているとの激しい批判も寄せられている[4]永久機関や異星人の宇宙船、反重力装置などの疑似科学の一種だとする科学者も多く、英国政府の援助も打ち切りとなっている[4]

2016年、推力発生のメカニズムにウンルー効果が関わっているのでないかという仮説が提案された[5][6]。ただし、この仮説は光子が質量を持ち、真空中の光速が変化するとする仮定に立脚しているため、主流科学とは大きく乖離している[5]。さらに、ウンルー効果は理論的に予言されているものの、実験的な検証の目処は2017年現在たっていない。ウンルー効果の他には、電磁波の波としての干渉が関わっていて推進力が生じているとする説もある[要出典]

検証実験[編集]

地球上におけるテスト[編集]

EMドライブの追試は、複数の研究機関により試みられている。中国の西北工業大学英語版の研究チームは2010年、2.5 kW の電力を使用したシステムで720 mN の推力を生み出すことに成功したと発表した[7][3]。2014年、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のイーグルワークス・チームは、同様のエンジンで実験を行った結果、中国チームによる報告の一万分の一以下ではあるが、30〜50 µNの推力が発生したことを発表した[8][1]。2015年には、真空チェンバー内でも推力が発生したことが報道されている[9][3]。2016年11月改めてNASAが発表した報告によると1.2±0.1mN/kWの推力を生じるとされている[10][11]

宇宙空間におけるテスト[編集]

2016年11月、International Business Timesは、米国政府がボーイングX-37B のEMドライブ版をテストしており、また中国政府がEMドライブをその軌道宇宙実験室天宮2号に組み込む予定であると報道した。[12][13]

2016年12月、Yue Chenは、中国科技日報記者に、チームが同地で5年間の資金調達を受けEMドライブを軌道上でテストを行っていたと語った。Chenは、プロトタイプの推力は「マイクロニュートン〜ミリニュートン」のレベルであり、決定的な実験結果を得るために少なくとも100-1000mNまでスケールアップしなければならないと指摘した。それにもかかわらず、彼の目標はドライブの検証を完遂し、その技術を「できるだけ早く」衛星技術の分野で利用できるようにすることだと述べた。[14][15][16][17][18]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f 「ありえない」半永久エンジン、NASAの研究で動く”. ギズモード (2014年8月4日). 2015年6月14日閲覧。
  2. ^ : Satellite Propulsion Research Ltd (SPR)
  3. ^ a b c NASA: 推進剤を必要としない宇宙船用新推進機関の実験に成功”. businessnewsline (2015年5月). 2015年6月14日閲覧。
  4. ^ a b 中国の研究者チーム、「不可能」とされてきた電磁推進の成功を主張”. WIRED (2008年9月29日). 2015年6月14日閲覧。
  5. ^ a b The Curious Link Between the Fly-By Anomaly and the “Impossible” EmDrive Thruster”. MIT Technology Review. 2016年10月4日閲覧。
  6. ^ Mcculloch, M. E. (2015). “Testing quantised inertia on the emdrive”. EPL (Europhysics Letters) 111 (6): 60005. arXiv:1604.03449. doi:10.1209/0295-5075/111/60005. 
  7. ^ Yang Juan; Yang Le; Zhu Yu; Ma Nan (12 2010). “Applying Method of Reference 2 to Effectively Calculating Performance of Microwave Radiation Thruster” (PDF). Journal of Northwestern Polytechnical University (Satellite Propulsion Research Ltd.) 28 (6). http://www.emdrive.com/NWPU2010translation.pdf. 
  8. ^ Anomalous Thrust Production from an RF Test Device Measured on a Low-Thrust Torsion Pendulum”. アメリカ航空宇宙局 (2014年7月28日). 2015年11月9日閲覧。
  9. ^ Evaluating NASA’s Futuristic EM Drive”. NASASpaceFlight.com (2015年4月29日). 2015年11月9日閲覧。
  10. ^ MATT BURGESS; MAYUMI HIRAI , HIROKO GOHARA/GALILEO (2016年11月25日). “常識破りの推進システム「EMドライヴ」は実現可能:NASA研究チーム発表”. WIRED. 2017年2月1日閲覧。
  11. ^ White, Harold; March, Paul; Lawrence, James; Vera, Jerry; Sylvester, Andre; Brady, David; Bailey, Paul (17 Nov 2016). “Measurement of Impulsive Thrust from a Closed Radio-Frequency Cavity in Vacuum”. Journal of Propulsion and Power: 1–12. doi:10.2514/1.B36120. ISSN 0748-4658. http://dx.doi.org/10.2514/1.B36120. 
  12. ^ Russon, Mary-Ann (2016年11月7日). “Space race revealed: US and China test futuristic EmDrive on Tiangong-2 and mysterious X-37B plane”. International Business Times. http://www.ibtimes.co.uk/space-race-revealed-us-china-test-futuristic-emdrive-tiangong-2-mysterious-x-37b-plane-1590289 2016年12月15日閲覧。 
  13. ^ Weinhoffer, Michael (2016年11月14日). “USAF X-37B: America's Secret Unmanned Space Shuttle”. The Avion Newspaper. http://theavion.com/usaf-x-37b-americas-secret-unmanned-space-shuttle/ 2016年12月15日閲覧。 
  14. ^ Russon, Mary-Ann (2016年12月13日). “EmDrive: Chinese space agency to put controversial tech onto satellites 'as soon as possible'”. International Business Times. http://www.ibtimes.co.uk/emdrive-chinese-space-agency-put-controversial-tech-onto-satellites-soon-possible-1596328 2016年12月15日閲覧。 
  15. ^ Russon, Mary-Ann (2016年12月14日). “EmDrive: These are the problems China must fix to make microwave thrusters work on satellites”. International Business Times. http://www.ibtimes.co.uk/emdrive-these-are-problems-china-must-fix-make-microwave-thrusters-work-satellites-1596487 2016年12月15日閲覧。 
  16. ^ 操秀英 (11 December 2016), “电磁驱动:天方夜谭还是重大突破 我国正开展关键技术攻关,争取5年内实现工程应用” (Chinese), Science and Technology Daily, http://digitalpaper.stdaily.com/http_www.kjrb.com/kjrb/html/2016-12/11/content_357004.htm 2016年12月15日閲覧。 
  17. ^ Yan, Li (2016年12月21日). “Mars could be getting closer and closer, if this science isn’t m”. China News Service (中国新闻社). http://www.ecns.cn/2016/12-21/238503.shtml 2016年12月21日閲覧。 
  18. ^ EmDrive: China Claims Success With This "Reactionless" Engine for Space Travel”. Popular Science (2016年12月20日). 2016年12月21日閲覧。

関連項目[編集]