キツツキ科
キツツキ科 | ||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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和名 | ||||||||||||||||||||||||
キツツキ(啄木鳥) ケラ(啄木鳥) | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Woodpecker | ||||||||||||||||||||||||
亜科 | ||||||||||||||||||||||||
キツツキ科(きつつきか、Picidae)は、鳥綱キツツキ目の科である。キツツキ(啄木鳥)あるいは古語でケラ(啄木鳥)と呼ばれる。
特徴
分布
北アメリカ大陸、南アメリカ大陸北部および南部、ユーラシア大陸、イギリス、インドネシア、キューバ、スリランカ、日本、フィリピン
形態
最大種はテイオウキツツキで全長53cm。
第1、第4趾が後方(第1趾が退化している種もいる)に、第2、3趾が前方にある対趾足である。第4趾は側面に可動できる。
趾には湾曲した鋭い爪が生える。また、尾羽の羽軸も丈夫に発達している[1]。これにより多くの種では樹木の幹のような垂直面でも静止することができる[1]。頑丈な尾羽は木を登るときにも補助的に使っており、このような尾羽や体幹を利用したロコモーションを木登りといいキバシリ科などの鳥類にもみられる(収斂進化)[1]。
嘴は非常に硬質で細長く、ほぼ真っ直ぐに伸びており、他種よりも硬いものを突いて穴を開けるのに適した構造となっている。
卵の殻は白い。
生態
森林、草原などに生息する。多くの種は渡りは行わず、一定の地域に縄張りを形成し周年生息する。
その名の通り木を突いて穴を開ける行動で知られ、毎秒およそ20回もの速度で嘴の尖った先端を打ち付けて掘削する。
食性は動物食もしくは動物食傾向の強い雑食で、主に昆虫を食べるが鳥類の雛、鳥類の脳(頭蓋骨を突いて掘削して啜る)、果実などを食べる種もいる。木の中や割れ目にいる獲物を舌を伸ばして捕食する。この舌の収納のため、舌が頭骨を回り込むような形で収納されているなど、独特な形状を持ち、硬いものを突く際の衝撃から脳を保護する役目も担っている。 また、一部の種では飛翔しながら飛翔している昆虫も食べる。
繁殖形態は卵生。鳴き声を挙げたり、木を嘴で叩いて求愛(ドラミング)する。キツツキは木を叩く音に由来するとする説もある。漢字表記の「啄木鳥」は「木をついばむ<啄ばむ>鳥」の意。樹洞(多くの種では自ら木材に穴を空けたり、樹洞内に穴を掘って広げる)に巣を作り、卵を産む。雌雄交代で抱卵・育雛を行う。
系統と分類
キツツキ科はミツオシエ科 Indicatoridae と姉妹群であり[2][3]、合わせてキツツキ下目 Picides(またはキツツキ上科 Picoidea)を構成する。
キツツキ科はアリスイ亜科 Jynginae・ヒメキツツキ亜科 Picumninae・ヒスパニオラヒメキツツキ亜科 Nesoctites・キツツキ亜科 Picinae の4亜科に別れ[4](以前はヒスパニオラヒメキツツキ亜科をヒメキツツキ亜科に含めた3亜科だった)、属数・種数のほとんどはキツツキ亜科である。キツツキ亜科には3つの族があるが[4]、そのほかに系統的に独立した2属がある[5]。
キツツキ目 |
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属
属と種数は国際鳥類学会 (IOC) より[6]。30属225種がからなる。
アリスイ亜科 Jynginae
ヒメキツツキ亜科 Picumninae
- ヒメキツツキ属 Picumnus - 27種。ウロコヒメキツツキ、スナイロヒメキツツキ、チャイロヒメキツツキなど。
- ミツユビコゲラ属 Sasia - 3種。
ヒスパニオラヒメキツツキ亜科 Nesoctitinae
- ヒスパニオラヒメキツツキ属 Nesoctites - 1種。
キツツキ亜科 Picinae
- カンムリコゲラ属 Hemicircus - 2種。
- ハシジロキツツキ属 Campephilus - 11種。アカエリエボシゲラ、テイオウキツツキなど。
アフリカコゲラ族 Dendropicini
- ズアカキツツキ属 Melanerpes - 24種。
- シルスイキツツキ属 Sphyrapicus - 4種。 シルスイキツツキなど。
- キューバアオゲラ属 Xiphidiopicus - 1種。
- アフリカアオゲラ属 Campethera - 12種。
- アフリカコゲラ属 Dendropicos - 15種。
- アカゲラ属 Dendrocopos - 24種。
- Picoides - 12種。セグロミユビゲラ、ホオジロシマアカゲラ、ミユビゲラなど。
- ハゲラ属 Veniliornis - 14種。
- ノグチゲラ属 Sapheopipo - 1種。
Megapicini
- コガネゲラ属 Chrysocolaptes - 3種。
- エビチャゲラ属 Blythipicus - 2種。
- アカハラコガネゲラ属 Reinwardtipicus - 1種。
Malarpicini
- イワキツツキ属 Geocolaptes - 1種。
- モリゲラ属 Piculus - 7種。
- ハシボソキツツキ属 Colaptes - 12種。アリツカゲラ、キューバハシボソキツツキ、ハシボソキツツキなど。
- クリチャゲラ属 Celeus - 11種。
- クマゲラ属 Dryocopus - 7種。
- Chrysophlegma - 3種。
- アオゲラ属 Picus - 12種。
- ズアカミユビゲラ属 Dinopium - 4種。マライズアカミユビゲラなど。
- タケゲラ属 Gecinulus - 2種。
- Micropternus - 1種。
- カレハゲラ属 Meiglyptes - 3種。
- ボウシゲラ属 Mulleripicus - 3種。
人間との関係
開発による生息地の破壊などにより生息数が減少している種もいる。
前近代から「舌が長い鳥」として認識されており、江戸期の『和漢三才図会』第42巻に、和名「牙良豆豆木(ケラツツキ)」と共に(舌長と)記述が見られる。
日本では、「ケラが頭(上)で鳴くと天気が悪くなる」とする類の俗信が、青森県・秋田県・群馬県・岐阜県・福井県・和歌山県に見られる(鈴木棠三 『日本俗信辞典 動物編』 角川ソフィア文庫、2020年、258頁。)。また、「赤土で包んで焼くと、中で黒い粉になるから、1週間ほど飲むと頭痛が治る」(石川県)、「キツツキの黒い粉は肺結核の薬になる」(高知県)とする俗信があり(前同 258頁)、青森県三戸郡では、「デデッコッコ(キツツキ)は井戸神の御使いゆえ、中に入れる」とする(前同 258頁)。
史実かは別として、近世期の軍記物である『甲陽軍鑑』では、川中島の戦いで武田勢が山にこもった上杉勢を動かすために取った戦法として、「キツツキ戦法」が記述される。
画像
出典
- ^ a b c 藤田祐樹. “鳥とヒトの二足歩行”. 化石研究会会誌38号. 2019年11月20日閲覧。
- ^ Johansson, Ulf S.; Ericson, Per G. P. (2003), “Molecular support for a sister group relationship between Pici and Galbulae (Piciformes sensu Wetmore 1960)”, J. Avian Biol. 34 (2): 185–197, doi:10.1034/j.1600-048X.2003.03103.x
- ^ Hackett, S. J.; Kimball, Rebecca T.; et al. (2008), “A Phylogenomic Study of Birds Reveals Their Evolutionary History”, Science 320 (5884): 1763–1768
- ^ a b Benz, B. W.; Robbins, M. B.; Peterson, A. T. (2006), “Evolutionary history of woodpeckers and allies (Aves: Picidae): Placing key taxa on the phylogenetic tree”, Mol. Phylogenet. Evol. 40: 389–399
- ^ Fuchs, J.; Ohlson, J. I. (2007), Synchronous intercontinental splits between assemblages of woodpeckers suggested by molecular data, 36, p. 11–25
- ^ Gill, Frank; Donsker, David, eds. (2010), “Woodpeckers & allies”, IOC World Bird Names (version 2.5)
参考文献
- 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』、講談社、2000年、101、201頁。
- 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』、講談社、2000年、60-98、183-184頁。
- 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ2 アマゾン』、講談社、2001年、79、147頁。
- 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ3 中央・南アメリカ』、講談社、2001年、68、221-222頁。
- 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科8 鳥II』、平凡社、1986年、148-153頁。