オオバコ

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オオバコ
オオバコ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : シソ類 lamiids
: シソ目 Lamiales
: オオバコ科 Plantaginaceae
: オオバコ属 Plantago
: オオバコ P. asiatica
学名
Plantago asiatica
L.
和名
オオバコ(大葉子)
英名
Chinese Plantain, Arnoglossa

オオバコ(大葉子、車前草[注釈 1]学名Plantago asiatica)とはオオバコ科オオバコ属多年草。高地から平地まで、道端などによく生える野草で、地面から葉を放射状に出して、真ん中から花穂をつけた茎が数本立つ。葉は薬草として利用され、漢方薬でも使われている。中国では車前草(しゃぜんそう)ともいう[2]

名称

和名の由来は、葉が広く大きいことから「大葉子」と名付けられたと一般にいわれるが、当て字だとする説もある[3]。地方により、別名ガエルッパゲーロッパオンバコともよばれ[4]、弱ったカエルをこの葉陰におくと元気になるという俗説からカエルバともいわれる[3]

中国では車前草と書き、「車前(しゃぜん)」は漢名で、人や車(牛車馬車)が多く通る轍(わだち)によく生え、踏みつけに強いことからこの名がつく[4][5]

分布・生育地

日本では北海道から沖縄までの全土のほか[6]、国外では千島朝鮮半島中国台湾サハリンシベリア東部、マレーシアなど東アジアを中心に広く分布する[7]。高地から平地までの野原荒れ地道端などにごく普通に自生する雑草である[4][7]。踏みつけに強く、人などがよく踏む道端などの場所のほか、校庭公園などでもよく見られ、草丈が高くなる草が生えないような場所を選んで生育する[8]。踏みつけが弱い場所では、高くのびる性質を持たないので、他の草に負けてしまう。

形態・生態

花茎のほかはは立たず[9]、地面に埋まっている。

は葉と同じかそれより長い葉柄があり、形は楕円形か卵形から広卵形もしくは、さじ形をしており、多くは根生葉で根元からロゼット状に四方に広がり多数出る[7][9]。葉には毛はほとんど生えておらず[5]、5 - 7条の葉脈が縦に平行に走り、基部に浅い切れ込みがあり、生育状態が良いと葉の縁は波打つ[7][9]

花期は春から秋(4 - 9月)にかけて[6]風媒花[2]、棒のように細長い10 - 30 cmの長さの花茎を出す[10]。花茎の頂に長い緑色の穂にがびっしりと密につき、白色もしくは淡い紫色の小花が下から上に向かって順次咲く[11]は4枚あり、花冠はロート状で4裂する[7]。花には雌性期(しせいき)と雄性期(ゆうせいき)があって[5]、雌性先熟で、雌しべが先にしおれてから、長くて目立つ白い雄しべが出る[9]

果実蒴果で長楕円形をしており、熟すると円錐状の上半分が帽子のように横にとれて、中から5 - 8個の種子が現れる[2][9][6]。種子は平たい長楕円形[6][8]。種子は果実からこぼれ落ちるほか、雨などに濡れるとゼリー状の粘液を出してべたつき、動物など他のものに付いて遠くに運ばれて分布を広げていく[2][9][6]

オオバコが生えるような背の高い草が生えない場所では、日光が得られる代わりに、しばしば踏みつけられることになるが、踏みつけにも耐えられるように茎葉は丈夫に出来ており、茎は短く地面に埋まっていて節間隔は短く、葉柄には丈夫で硬い筋が通っていて、地面に平行して横向きに葉が生えているので折れにくくなっている[8]

利用

葉や種子は咳止めなど薬用になり、若い芽は食用になる[2]。また子供たちの遊びでは、花柄を根本から取り、2つ折りにして、2人が互いに引っかけあって引っ張り合い、どちらが切れないかを競うオオバコ相撲が知られ[2]スモトリグサ(相撲取り草)の別名もある[3]

食用

若葉は茹でて、水にさらすと食用になる[5]。外皮からとれる食物繊維は、カロリーが低く満腹感を感じさせるもので、ダイエッターの食材になり、ダイエット食品の材料としても使われている[12]

生薬

オオバコの成熟種子を車前子(しゃぜんし)、花期の全草を天日で乾燥したものを車前草(しゃぜんそう)といい、日本薬局方に収録された生薬である[9]。また、葉だけを乾燥させたものを車前葉(しゃぜんよう)という。成分として、花期の茎と葉に、配糖体のアウクビンウルソール酸を含み、種子にコハク酸アデニンコリン脂肪酸を含む[3]

種子、全草とも煎じて用いられ、服用すると止め、たんきり、下痢止め、消炎、むくみ利尿に効用があるとされる[3][9]。また、葉も種子も熱を冷ます効用がある[4]漢方では、車前子は牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)などの漢方薬に配合される。車前葉は漢方薬として慢性気管支炎高血圧症に使われる[10]

民間療法では、膿が出るような腫れ物には、葉を火であぶってよく揉んでから、患部に貼り付けると治るといわれる[8]。また、夏場に全草を採取して天日干しし、煎じてお茶代わりに飲むと、消炎、利尿、下痢止め、胃腸病によいと言われている[8]

脚注

注釈

  1. ^ 「シャゼンソウ」とも読むが、慣例的に「オオバコ」とも読む。[1]

出典

参考文献

  • 内藤俊彦『秋の花』北隆館〈フィールド検索図鑑〉、1995年9月1日、237頁。ISBN 4-8326-0371-X 
  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、123頁。ISBN 4-09-208016-6 
  • 亀田龍吉・有沢重雄『花と葉で見わける野草』近田文弘監修、小学館、2010年、58頁。ISBN 978-4-09-208303-5 
  • 川原勝征『食べる野草と薬草』南方新社、2015年11月10日、109頁。ISBN 978-4-86124-327-1 
  • 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年4月10日、58頁。ISBN 978-4-09-208303-5 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『草木の種子と果実』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2012年9月28日、69頁。ISBN 978-4-416-71219-1 
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、72頁。ISBN 4-06-195372-9 
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、27頁。ISBN 4-416-49618-4 
  • 山田孝彦、山津京子『万葉歌とめぐる野歩き植物ガイド』(初版)太郎次郎社エディタス、2013年8月15日、111頁。ISBN 978-4-8118-0762-1 

関連項目

外部リンク